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feel.5
02.
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「ケガ大丈夫なら、…リンゴ観に来る?」
黎くんが私の手を引いて、街中をゆっくり歩く。
黎くんの滑らかな手の感触で頭がいっぱいで、ほとんど前が見えない。
全神経が黎くんの手の温もりに集中している。
すれ違う人みんながつながれた手を見ている気がする。
どうしてつないでくれたのか、何か意味があるのか。
聞きたいけど、聞けない。
昔。教育実習の最終日にも。
教室から校門まで、黎くんは手をつないでくれた。
理由はやっぱり聞けなかった。
聞けないまま、手を離してしまった。
思わず。
黎くんの手を強く握りしめると、黎くんが驚いたみたいに私を見るから、
「あ、いや、…」
やらかした、と思って手を離そうとしたら、
「…煽ってくんね」
黎くんが少し笑って恋人つなぎに変えた。
笑いを含んだ黎くんの声。
密着した指と指、手のひら。
触れ合う手首、滑らかな腕。
街の喧騒が消えた。
絶えず付きまとう匂いも色も。
透明な石鹸。濁った水に一滴。
清涼。浄化。許し。救い。緩和。
世界が透明になる。
黎くんだけになる。
『オキシトシンって知ってる? 幸せホルモンって言われたりするんだけど。あんたにはほとんどそれがない。触れ合わないからね』
有住教授に言われたことがある。
『悪循環よね。その感覚過敏な症状は、絶対的な信頼感、心からの愛情を身体で感じることで、改善されるかもしれないのに』
その意味が分かったような気がする。
黎くんは、指先1つで私を救う。
つないだ手に理由はなくても。
ただの気まぐれでも。
私には、奇跡みたいな意味がある。
黎くんを見て振り返る人がたくさんいた。
熱い視線を送ってくる人もたくさんいた。
でも、もう気にならなかった。
黎くんが手をつないでくれた。
私にとってはそれがすべて。
「リンゴアートミュージアムっていう企画展を今ちょうどやってて。可愛いし分かりやすいから、どうかなって」
黎くんに連れられて入った超高層ビルは、
都心の一角に贅沢に建てられ、海抜270mの屋外展望台を有し、オープンエアーで都会の街並みを一望できた。
展望施設内にギャラリーがあり、そこで展覧会が行われていた。
『リンゴアートミュージアム ー現代アートの神髄ー』
生のリンゴはもとより、絵画、ガラス細工、オブジェ、彫像、…
ありとあらゆるリンゴアートの傑作が圧倒的な迫力で空間を魅了していた。
『リンゴ。みに来る?』 → 『現代リンゴアートミュージアム展、観に来ない?』
って、そういうことか‼
それはさすがに分かるか――いっ
黎くんが私の手を引いて、街中をゆっくり歩く。
黎くんの滑らかな手の感触で頭がいっぱいで、ほとんど前が見えない。
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思わず。
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黎くんが少し笑って恋人つなぎに変えた。
笑いを含んだ黎くんの声。
密着した指と指、手のひら。
触れ合う手首、滑らかな腕。
街の喧騒が消えた。
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透明な石鹸。濁った水に一滴。
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その意味が分かったような気がする。
黎くんは、指先1つで私を救う。
つないだ手に理由はなくても。
ただの気まぐれでも。
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でも、もう気にならなかった。
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「リンゴアートミュージアムっていう企画展を今ちょうどやってて。可愛いし分かりやすいから、どうかなって」
黎くんに連れられて入った超高層ビルは、
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ありとあらゆるリンゴアートの傑作が圧倒的な迫力で空間を魅了していた。
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