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feel.16
03.
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「…やっと」
すごいしか言えない私を、後ろから長い腕でふんわり黎くんが抱きしめる。
「つかまえた」
黎くんの甘い声が上から降り注いで、浮世離れした極上の眺望も一瞬で霞んだ。黎くんが少しだけ切羽詰まったように私の髪に唇を寄せる。
「もう。どこにも行くなよ」
振り仰いだら黎くんが美しい瞳を切なげに揺らして、私を引き寄せるとその引き締まった胸の中に強く抱きしめた。
「黎くん、…」
黎くんの心臓の音が聞こえる。黎くんの体温を感じる。
男らしく爽やかな黎くんの匂いに包まれる。
初めて。
悪夢のような教室で私を救い出してくれた時と同じ。
優しさと愛おしさと慈しみ深さしかない。
黎くんの匂いは視えないけれど、触れる温もりも鼓動も匂いも声も、五感全てで感じる。愛しい。
「ごめんね。大好き、…」
自分に自信がなくて黎くんを信じられなかった。
自分を守るために黎くんを傷つけた。
今でも。
こんなに何もかもが完璧で、才能に溢れた、カッコよくて素敵な男の子が自分を認めてくれたことが信じられないけど。分不相応な気がするけど。長年培われた卑屈な精神はそうそうすぐには消えてくれないけど。
「どうか、…」
何よりも大切な人を傷つけるくらいなら自分が傷つく方がいい。
信じられなくて後悔するよりも信じて裏切られた方がいい。
「黎くんが飽きるまで、そばに居させて下さい」
悲壮な覚悟で大それた願いを口にしたのに、私の髪に黎くんのくぐもった笑い声が漏れた。
わ、…笑われた。
「じゃあ、…」
微妙な気分の私の頤に黎くんの長い指がかかり、
「一生問題ねえな」
心ごと全部とろかすような優しくて甘いキスが落ちてきた。
黎くんに溶かされて身体中の力が抜ける。
甘くて柔らかい唇と奔放にまさぐる舌の心地よさに膝から崩れ落ちていく。息継ぎもままならなくて必死でしがみ付く私を支えてくれる黎くんの腕の強さも、触れている胸の温かさも、髪や耳を撫でる手の優しさも、泣きたいくらい愛しい。
早く。もっと。たくさん。
自分でも知らなかった自分が一気に目覚めて黎くんを欲してやまない。
触れ合ったまま黎くんが私を軽々と抱き上げて、広すぎるベッドに落とす。趣あふれる部屋の内装も肌触りの良いシーツも気にする余裕がまるでなかった。ほんの少しも離れたくなくて伸ばした手で黎くんのしなやかな身体を抱きしめる。
間を隔てている数ミリの布がもどかしい。
黎くんに触りたい。黎くんの全てを抱きしめたい。
「黎くん、…」
熱に浮かされたまま呼ぶと、言葉ごと奪うような深いキスになだめられた。
「…お前。急に煽んなって」
微かに楽しそうな笑みを見せて、黎くんの滑らかな素肌が私を辿る。
黎くんの手。指。唇。舌。黎くんに溶かされて世界が透明になる。
常にまとわりついている匂いも色もなくなって、そこに触れている黎くんだけになる。
身体の奥が甘くうずいて隅々まで快感に痺れて頭が蜂蜜色に染まる。
恍惚の海に漂い出しそうになって、…唐突に気が付いた。
すごいしか言えない私を、後ろから長い腕でふんわり黎くんが抱きしめる。
「つかまえた」
黎くんの甘い声が上から降り注いで、浮世離れした極上の眺望も一瞬で霞んだ。黎くんが少しだけ切羽詰まったように私の髪に唇を寄せる。
「もう。どこにも行くなよ」
振り仰いだら黎くんが美しい瞳を切なげに揺らして、私を引き寄せるとその引き締まった胸の中に強く抱きしめた。
「黎くん、…」
黎くんの心臓の音が聞こえる。黎くんの体温を感じる。
男らしく爽やかな黎くんの匂いに包まれる。
初めて。
悪夢のような教室で私を救い出してくれた時と同じ。
優しさと愛おしさと慈しみ深さしかない。
黎くんの匂いは視えないけれど、触れる温もりも鼓動も匂いも声も、五感全てで感じる。愛しい。
「ごめんね。大好き、…」
自分に自信がなくて黎くんを信じられなかった。
自分を守るために黎くんを傷つけた。
今でも。
こんなに何もかもが完璧で、才能に溢れた、カッコよくて素敵な男の子が自分を認めてくれたことが信じられないけど。分不相応な気がするけど。長年培われた卑屈な精神はそうそうすぐには消えてくれないけど。
「どうか、…」
何よりも大切な人を傷つけるくらいなら自分が傷つく方がいい。
信じられなくて後悔するよりも信じて裏切られた方がいい。
「黎くんが飽きるまで、そばに居させて下さい」
悲壮な覚悟で大それた願いを口にしたのに、私の髪に黎くんのくぐもった笑い声が漏れた。
わ、…笑われた。
「じゃあ、…」
微妙な気分の私の頤に黎くんの長い指がかかり、
「一生問題ねえな」
心ごと全部とろかすような優しくて甘いキスが落ちてきた。
黎くんに溶かされて身体中の力が抜ける。
甘くて柔らかい唇と奔放にまさぐる舌の心地よさに膝から崩れ落ちていく。息継ぎもままならなくて必死でしがみ付く私を支えてくれる黎くんの腕の強さも、触れている胸の温かさも、髪や耳を撫でる手の優しさも、泣きたいくらい愛しい。
早く。もっと。たくさん。
自分でも知らなかった自分が一気に目覚めて黎くんを欲してやまない。
触れ合ったまま黎くんが私を軽々と抱き上げて、広すぎるベッドに落とす。趣あふれる部屋の内装も肌触りの良いシーツも気にする余裕がまるでなかった。ほんの少しも離れたくなくて伸ばした手で黎くんのしなやかな身体を抱きしめる。
間を隔てている数ミリの布がもどかしい。
黎くんに触りたい。黎くんの全てを抱きしめたい。
「黎くん、…」
熱に浮かされたまま呼ぶと、言葉ごと奪うような深いキスになだめられた。
「…お前。急に煽んなって」
微かに楽しそうな笑みを見せて、黎くんの滑らかな素肌が私を辿る。
黎くんの手。指。唇。舌。黎くんに溶かされて世界が透明になる。
常にまとわりついている匂いも色もなくなって、そこに触れている黎くんだけになる。
身体の奥が甘くうずいて隅々まで快感に痺れて頭が蜂蜜色に染まる。
恍惚の海に漂い出しそうになって、…唐突に気が付いた。
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