Feel emotion ー恋なんていらない、はずなのに。年下イケメン教え子の甘い誘いにとろけて溺れる…【完結】 

remo

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feel.emotion

03.

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実は、ANは元々榊さんが研究開発した薬だった。

アパート火災の時。
焼け跡から榊さんの指輪が発見されて、その中にANが入っていたから混乱を招いたけれど、あれは厳密にはANではなく榊さんが開発したオリジナルの試薬品で、調査の結果、ANが出回るよりずっと前の物だと判明した。

つまり、有住教授は榊さんの研究成果を盗用し、我が物顔で公表した挙句、そこから危険薬を製造して密売していたのだ。

『ANは抗不安薬として即効的で活気的な効果が期待できる一方、依存性、耐性が見られて危険も大きい』

『くれぐれも気を付けて』

榊さんは有住教授に不審を抱いて、その研究を見届けるためにこの研究センターに赴任してきたらしい。教授が正当に医薬品にしてくれたらそれでも良いと思っていたらしいけれど。

「毒薬変じて薬となるって言うけど、薬は使い方次第で毒にも救いにもなる」

有住教授は悪用の限りを尽くしていた。

感情の匂いが視える榊さんは、感情崩壊の危険から人を救うことにいち早く力を注いでおり、持ち歩いていたオリジナルの試薬は、感情の中和効果が期待できるものだった。

現在、そのオリジナル薬は、仮称sakakioriginalspirit(SOSエスオーエス)として榊さんの手で実用化が進められ、治験に使われている。そして、治験者の中には、執行猶予付きの判決を受けて釈放された麻生美南さんもいる。

『感情に支配されたら負けなのよ』

彼女は決して特別な人だったわけじゃなく、明日の私かもしれない。
黎くんが美南さんを傷つけたことを謝りに行ったら、憑き物が落ちたみたいに素っ気なく、榊さんを絶賛していたと言っていた。女心と秋の空。明日の気持ちは分からない。

「柳さんがあんたの新薬に期待してるってさ」

榊さんのSOSは、副反応が少なく安全性が高い医薬品として好評で、認可が心待ちにされている。

『…感情とは、非常に厄介なものです。でも、人が人として生きていく最大の理由でもあるんでしょうな』

黎くんは、柳刑事と連絡を取り合って警察組織の活動に協力している。

「そう。柳さん、元気にしてる?」

自分の特殊感覚を関係機関に役立てている黎くんと、薬学方面から精神を救う方策を追及している榊さんは、絶妙な信頼関係を築いている、ように見える。

「あー、この前会った時は万年寝不足だって言ってた。あんたに睡眠不足を解消する薬を作って欲しいってさ」
「はは、無理だな」
「即答かよ」

榊さんは研究成果が認められて教授に昇進し、有住教授に代わってセンター長に就任した。私は同じ志を持つ仲間として榊さんと一緒に薬品開発に携われることを、本当に幸せだと思っている。
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