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34.真実を貫く魔王剣
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「ガマニエル様、ご心配には及びませんわ」
「このくらいの愛の試練、乗り越えてこそ真の愛妾」
しかも自分で愛妾て、…とマーカスが感心を通り越して唖然としている間に、秒で立ち直ったアマリリスとアネモネは、苦悩にうつむいたままのガマニエルに駆け寄り、両サイドからその巨体を揺さぶり起こした。
「ガマニエル様っ、私たちの絆が試されていますわ」
「さあ、さっさとあの卑劣な魔王どもをやっつけて下さいませ」
「その間の醜い魔物の相手はお任せください」
「アネモネに」「お姉様に」
ガマニエルの両脇でアマリリスとアネモネが騒ぎ出し、仲よくハモった。
「あらアネモネ、あの魔物、あなたにとってもお似合いよ」
「まあ、せっかくですけどゲテモノ好きのお姉様にお譲りしますわ」
「何言ってんのよ、アブノーマル思考の変態趣味のくせに」
「いいえ、お姉様にはとても及びませんわ」
ここに来て、低レベルな姉妹喧嘩となすりつけ合戦を繰り広げる姉姫たちを見ながら、なるほど、とマーカスは会得していた。月夜の砂漠で、ガマニエルの強さに一目ぼれしたマーカスだったが、一瞬ガマニエルが目を疑うほどの美しい青年に見えた。その秘密を知りたくてここまで付いてきたが、つまりあれが魔王の呪いだったのだ。呪いを解くために、ガマニエルは美女を必要としていたのだ。
だから、氷の洞窟にベタ惚れの愛妻アヤメを置いてきたのか。
「今の姿なら、月皇子と大差ないのに」「醜さ加減はいい勝負なのに」「魔王様、こいつら失礼でやんすよ。やっぱり喰ってもいいっすか」
これ見よがしにゲテモノ扱いされ、押し付け合われているゴブリンたちはさすがに凹んで嘆きが止まらない。
「まあ待て。ここからが本番だ。この究極の悪役、魔王ドーデモード様に任せるのだ」
なんだかワクワクしてきたドーデモードが剣を手に玉座から立ち上がった。
「これは代々魔王にのみ伝わる伝説の魔王剣。真実を貫く刃だ」
じゃじゃーんと、暗く禍々しい妖気を放つ、見るからに極悪そうな剣を掲げると、おおおっと感嘆を漏らしたのはゴブリンたちだけで、ガマニエルは暗く沈んだまま、美女たちはぎゃあぎゃあ騒いだまま、トカゲの妖怪はすっかり傍観者の顔でのうのうと見守っている。
「ええーい、注目せんかっ!!」
頭に血が上ったドーデモードが剣を投げると、魔王剣が巨大なガマニエルの肩口を掠めて床に落ちた。
「「きゃああああっ」」
あっという間に剣の妖気でガブリエルの衣服が焼け焦げ、醜い斑模様の分厚いガマ妖怪の皮膚が溶けて、ガマニエルは痛みに肩を押さえてうずくまった。
「ガマニエル様に何するのよっ」
「このくっそ醜い悪魔っっ」
アマリリスとアネモネが吠える。
「醜さなら私よりもそのガマ妖怪の方が上だろう」
罵られて憮然とするが、やっと場の注目を集めたドーデモードは気を取り直してふんぞり返る。
「ずいぶんとガマニエルに懐いているようだが、分かっているのか? お前らが慕うその世界一醜い男は、お前らを引き裂くためにここに連れてきたのだ。自らの美を取り戻すためにな」
「え、…」
「なんですって!?」
元気に吠えていたアマリリスとアネモネが固まる。
「お前らを八つ裂きにして腸を私に差し出せば、ガマニエルは元の姿に戻る。月も太陽も魅了する極上の月皇子にな!」
広間にドーデモードの勝ち誇った笑い声が響き、
「さすが魔王様」「極悪っ」「血も涙もないっ」
いい感じにゴブリンたちの合いの手が入る。いよいよ調子に乗ったドーデモードは、大仰に芝居がかった仕草で、
「ガマニエル、貴様にその剣をくれてやろう。そこの生意気な女どもを切り裂け。それでお前とお前の国にかけた呪いが解ける」
高らかに宣言して顎をしゃくり、ゴブリンたちが拾って掲げた魔王剣をガマニエルに差し出した。
「まさか、ガマニエル様に限って…」
「そんなバナナっ」
「…お姉様、古いですわ」
差し出された剣とガマニエルを交互に見交わす姉姫二人は動揺が隠し切れない。
「ガマニエル様はお受け取りにならないわ」
「そうよ、醜い悪魔はアンタ一人で充分よっ!!」
が、美は正義。月よりも太陽よりも美しいガマニエル様が、金と銀に煌めく私たちを八つ裂きにするなどありえない、と気を取り直して、ガマニエルに疑いを持った自分たちの後ろめたさを隠すように威勢よく吠えた。
しかし、そんな自称健気な2人の目の前で、
「え、まさか、…」
「まさかまさかのガマニエル様、…?」
ガマニエルは魔王剣を手に取ったのだった。
「このくらいの愛の試練、乗り越えてこそ真の愛妾」
しかも自分で愛妾て、…とマーカスが感心を通り越して唖然としている間に、秒で立ち直ったアマリリスとアネモネは、苦悩にうつむいたままのガマニエルに駆け寄り、両サイドからその巨体を揺さぶり起こした。
「ガマニエル様っ、私たちの絆が試されていますわ」
「さあ、さっさとあの卑劣な魔王どもをやっつけて下さいませ」
「その間の醜い魔物の相手はお任せください」
「アネモネに」「お姉様に」
ガマニエルの両脇でアマリリスとアネモネが騒ぎ出し、仲よくハモった。
「あらアネモネ、あの魔物、あなたにとってもお似合いよ」
「まあ、せっかくですけどゲテモノ好きのお姉様にお譲りしますわ」
「何言ってんのよ、アブノーマル思考の変態趣味のくせに」
「いいえ、お姉様にはとても及びませんわ」
ここに来て、低レベルな姉妹喧嘩となすりつけ合戦を繰り広げる姉姫たちを見ながら、なるほど、とマーカスは会得していた。月夜の砂漠で、ガマニエルの強さに一目ぼれしたマーカスだったが、一瞬ガマニエルが目を疑うほどの美しい青年に見えた。その秘密を知りたくてここまで付いてきたが、つまりあれが魔王の呪いだったのだ。呪いを解くために、ガマニエルは美女を必要としていたのだ。
だから、氷の洞窟にベタ惚れの愛妻アヤメを置いてきたのか。
「今の姿なら、月皇子と大差ないのに」「醜さ加減はいい勝負なのに」「魔王様、こいつら失礼でやんすよ。やっぱり喰ってもいいっすか」
これ見よがしにゲテモノ扱いされ、押し付け合われているゴブリンたちはさすがに凹んで嘆きが止まらない。
「まあ待て。ここからが本番だ。この究極の悪役、魔王ドーデモード様に任せるのだ」
なんだかワクワクしてきたドーデモードが剣を手に玉座から立ち上がった。
「これは代々魔王にのみ伝わる伝説の魔王剣。真実を貫く刃だ」
じゃじゃーんと、暗く禍々しい妖気を放つ、見るからに極悪そうな剣を掲げると、おおおっと感嘆を漏らしたのはゴブリンたちだけで、ガマニエルは暗く沈んだまま、美女たちはぎゃあぎゃあ騒いだまま、トカゲの妖怪はすっかり傍観者の顔でのうのうと見守っている。
「ええーい、注目せんかっ!!」
頭に血が上ったドーデモードが剣を投げると、魔王剣が巨大なガマニエルの肩口を掠めて床に落ちた。
「「きゃああああっ」」
あっという間に剣の妖気でガブリエルの衣服が焼け焦げ、醜い斑模様の分厚いガマ妖怪の皮膚が溶けて、ガマニエルは痛みに肩を押さえてうずくまった。
「ガマニエル様に何するのよっ」
「このくっそ醜い悪魔っっ」
アマリリスとアネモネが吠える。
「醜さなら私よりもそのガマ妖怪の方が上だろう」
罵られて憮然とするが、やっと場の注目を集めたドーデモードは気を取り直してふんぞり返る。
「ずいぶんとガマニエルに懐いているようだが、分かっているのか? お前らが慕うその世界一醜い男は、お前らを引き裂くためにここに連れてきたのだ。自らの美を取り戻すためにな」
「え、…」
「なんですって!?」
元気に吠えていたアマリリスとアネモネが固まる。
「お前らを八つ裂きにして腸を私に差し出せば、ガマニエルは元の姿に戻る。月も太陽も魅了する極上の月皇子にな!」
広間にドーデモードの勝ち誇った笑い声が響き、
「さすが魔王様」「極悪っ」「血も涙もないっ」
いい感じにゴブリンたちの合いの手が入る。いよいよ調子に乗ったドーデモードは、大仰に芝居がかった仕草で、
「ガマニエル、貴様にその剣をくれてやろう。そこの生意気な女どもを切り裂け。それでお前とお前の国にかけた呪いが解ける」
高らかに宣言して顎をしゃくり、ゴブリンたちが拾って掲げた魔王剣をガマニエルに差し出した。
「まさか、ガマニエル様に限って…」
「そんなバナナっ」
「…お姉様、古いですわ」
差し出された剣とガマニエルを交互に見交わす姉姫二人は動揺が隠し切れない。
「ガマニエル様はお受け取りにならないわ」
「そうよ、醜い悪魔はアンタ一人で充分よっ!!」
が、美は正義。月よりも太陽よりも美しいガマニエル様が、金と銀に煌めく私たちを八つ裂きにするなどありえない、と気を取り直して、ガマニエルに疑いを持った自分たちの後ろめたさを隠すように威勢よく吠えた。
しかし、そんな自称健気な2人の目の前で、
「え、まさか、…」
「まさかまさかのガマニエル様、…?」
ガマニエルは魔王剣を手に取ったのだった。
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