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しおりを挟む「なんでお前はあいつを殺したの?」
江藤佳佑のいきつけの喫茶店でコーヒーにシロップとミルクを3つずつ入れながら、成瀬哲太は唐突に、それでいてさりげなく僕にその言葉を投げかけた。
あれはコーヒーと呼べるんだろうか。そんなことを考えながらそのコーヒーを凝視する。
「そんな怖い顔するなよ。ま、そりゃ言いたくないか。」
成瀬の見解は的を得ていないが、言わなくて良いならそれにこしたことはない。
「そんなことより早く金返せよ。いつまで待たせるつもり?」
「まぁそう言うなよ。俺とお前の仲だろ。それに、あんな大金そんなすぐに返せるわけないだろ。」
「僕と君の仲ってどんな仲?君なんか友達でもなんでもない。しかもすぐって、もう3年は経ってるぞ。この三年間君は何をやっていたんだ!」
僕は思わず裏で携帯をいじっている店員にまで聞こえるような声量で怒鳴った。手元のカフェオレが静かに揺れた。
「‥ごめん。とにかく、金さえ返してくれれば僕は君とはこの先一切関わらない。そもそも未だに君と会ってること自体おかしいんだ。」
「わかったよ。今月か来月中には返す。それで本当に終わりでいいんだな?」
「あぁもちろんだ。‥もう金は用意できてるんだろう。」
成瀬の頬が僅かに引きつった。
「いや、あと少しだ。もうちょっと待っててくれ。」
そういうと、恐らく三個分のシロップが下に溜まったコーヒーを一気に飲み干し、
「じゃあ、今日はぼちぼち帰るわ。」
と言い、成瀬は店を出た。
「成瀬の野郎、早いとこ金返してもらってどっかに埋めねぇとな。」
江藤は周りに聞こえないくらい声を押し殺しながら、静かに殺気を喫茶店内に漂わせた。
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