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究極の雨男

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 究極の雨男、それは俺の事である。
 幼稚園の遠足から大学の入学式から何ならサークルの合宿だって、俺が楽しみにして、てるてる坊主を作った行事は軒並み雨である。
 てるてる坊主が駄目なんだと、反対に吊るしても雨。
 何もしないでただお願いしても雨。
 普通の日も毎日雨が降らないようにお願いしてる。お願いしないと雨が降るから…
 幼い頃は行事やイベントが雨でも自分が雨男だとは気がつかなかった。
 だってそうだろう?行事は一人でやるものじゃない。でも住んでいるところがド田舎で、幼稚園から地元にひとつしかない高校までほぼ持ち上がり。
 それでイベントの度に雨で中止やら小雨決行やらしていたら、ね?
 一度風邪をひいて運動会を休んだら、綺麗な秋晴れで、ね?
 雨が降る度に「雨男か雨女がこの学年にはいるな~!」って苦笑いしているクラスメイトや先生の本当の笑顔が写っている写真をみちゃったから。
 そこから時雨しぐれが雨男だ!って広まって、行事も半分くらい行けなくなって、欠席だと晴れで…
 っていうか、もう名前からして雨男の容疑はかけられてたのだ。
 影で雨男と言われていたのは知っている。でも、雨男なんて迷信だと思っていた。

 俺が生まれたとき、時雨がパラパラと降ったらしい。
 いや、もう、確定。

 小学校高学年になると、行事前の「時雨、参加するのかな?」の雰囲気が嫌で、でも全てを欠席するわけにはいかなくて…

 いつか発展途上国の水が必要な国へ行って雨を沢山降らせて、少しでも良いからこの不思議な体質で良かったなあと思えるような人生にしたい。そう思って進学する大学も決めた。
 好きな人と同じサークルになって少しでも近づきたくて合宿に参加したけど、やっぱり雨で。
 地元から離れたのに俺が雨男だってのはもう知られていて、「あいつ、何で来たんだよ。」って話しているのを聞いてしまって、悲しくて「用事思い出したから帰るね!」って走り出そうと足を踏み出したところで床が抜けるようにアスファルトが抜けたのだ。
 助けて、と後ろを振り返るが誰もこちらを見ていなくて、そのまま真っ暗な下へ落ちていった。


「うわああああああああっ!」

 ぶわっと舞う土埃、え?えぇ?俺、今、地面から出てきた?
 灼熱の太陽と地割れしている地面。
 ええええええ!日本の反対側はブラジルじゃないの…?
 ここは…砂漠?いや、砂じゃない。沙漠?

「う、ああっ!」
 何かが頬で蠢く。こわい!
「ひぇっ!」
 そこには大きな…馬?
 大きくて、とにかく大きくて、牛みたいな顔だけど、鋭利な角が生えていて足が6本。そんな怖い動物がペロペロと俺の頬を舐める。
 顔大きい…怖い…マジで怖い。無理…
 この動物以外何もいない。植物もない地割れした地面が続く。
 ぶちりと、意識が途切れる音が聞こえた気がしてそのまま目の前が真っ暗になった。


 ゆっくりと目を開けると真っ暗で、寒い。
 目からじわじわと涙が滲む。目を開くまで夢だって言い聞かせてた。寒くて地面が固くても、目を開けたら自分の部屋だって…
 僅かな期待は打ち砕かれてもう一度眠ろうと冷えた手足を縮こませて寝返りを打つと、暖かな感触。

「牛モドキさん…」

 ずっと側にいて暖めてくれていたのか。怖い顔なのに優しい…
 牛擬きさんの暖かい胸に心細さから顔を埋めて、暫くしくしくと涙を流した。

「うっ、ぐすっ、モドキさぁん。それでね、俺ね、あめおどごでえ~、」

 後半は愚痴りまくった。この地に飛ばされるほどに俺の体質は疎まれていたいたのだろうか、

「ふう、沢山泣いて話したら喉かわいた…水のみたいな…」

 ないよね?そんな期待を持ってモドキさんを見詰めるけど、ペロペロと涙の跡を舐めるだけ。

「モドキさんも喉乾いたよね?」

 うーん…久しぶりに歌うか。子供の頃に良く歌ったあの、童謡を!

「~~~~~♪」




 サァーーーー

 わ!降った!でも、これじゃ飲めないな。体は濡れて冷えるし寒い。こう、手の中だけに雨が降ればなあ。あ、止んだ。嫌だと思ったから?
 もうさ、この牛モドキさんみて察するけど、ここは異世界というやつだろう?姉ちゃんが言ってた。時雨の体質は異世界トリップして雨乞の巫女になるべきだって。姉ちゃん、俺、男。
 ちなみに姉ちゃんの名前は満月みづきで、本当に満月のように神秘的で華やかな見た目だった。見た目はな!中身は頭のおかしいおっさんだ。
 いや、姉ちゃんの回想はいいんだ。まずは水。何が言いたいかと言うと、異世界といえば!何か、魔法とか、使えんの?という事で。

「手の中だけに雨雨雨~!」

 ぽこぽこと涌き出るのを期待したけど、両手をつけて皿にしたところにザーっと雨が降り、あっという間に溜まる。
 牛モドキさんの目の前に差し出すと控えめに鼻で押しやってきて、まるで「お前が飲め」と言っているようである。
 それでもぐいっと手を押しやると控えめにひと舐め。
 可愛い。見た目は魔物系のイメージだけど、可愛くて優しい!きゅんってする!
 その後は何度か手に水を出して牛モドキさんと一緒に喉の渇きを潤した。

 さて、もう一眠りして今は朝。
 ジリジリと真っ赤な太陽が肌を焼き付けるようである。
 うーん。まじで異世界。だってさ、太陽が真っ赤なんだ。普通さ、目視で真っ赤には見えないよね?それが真っ赤で燃えてるのがわかるの。暑いわけだよね?
 ここにいても見渡す限り地割れした地面だし、とりあえず歩くことにしようとするも如何せん暑すぎる。
 モドキさんも足が熱そうに見えて、歩く道の前に雨を降らせてそこをモドキさんと共にテクテクと歩く。
 それにしてもお腹すいた…
 昨日から何も食べてないし、当たり前か。モドキさんは大丈夫なのかな?
 チラリと隣のモドキさんを見ると何を勘違いしたのかうつぶせになって首をくいっと。背中に乗れってこと?
 なにこのモドキさん。超イケメン。俺が好きだったあの男の万倍はイケメン。

「うわぁん!モドキさんんん!すき!めっちゃすき!この優男!!」

 モドキさんの首に抱きついてぐりぐりぐりぐり。

「ありがと、モドキさん。でも大丈夫!これでも男だから!」

 折角だからと目の前の雨で喉を潤してモドキさんのお腹を背凭れにして休憩。これで食べ物だけあればなあって細く息を吐きながら落ちる前から被っていた帽子を深く被り直す。
 こんなに歩いた事はない。足が痛い。辛うじて長袖だが薄いシャツは日射しを遮りきれずに肩がヒリヒリと痛む。なんでこうなったんだろうと涙が滲む。
 ダメだ。お腹が空いて悪い方にしか思考が回らない。
 モドキさんがいるだけいいんだ。じゃなきゃひとりぼっちだった。悶々とネガティブ思考の渦に飲み込まれているとモドキさんの鼻が現実に引き戻してくれる。
 やたらと後ろを見るからつられて振り返ると俺たちの歩いた跡が緑の道になっている。
 その緑の中でやけに映えるピンク色。これは、果物?え?

「モドキさん…これ、食べれる?」
「ブモォー」
「え?え!モドキさんの鳴き声初めて聞いた。すき!」

 そして肯定か否定がわからないけど、食べてみる。もうお腹すいて死にそうだし。
 かぷりと齧るとじゅわりと果汁が溢れる。

「おいひ!爽やか!」

 ガブガブと3食ぶりの食べ物を噛み締めながらボロボロと涙が出てくる。昨日もモドキさんに愚痴りながら泣き叫んだのに。

「うあー、美味しいよお。意味わかんないよお。モドキさあぁん!」

 ぺろぺろと涙を舐めるモドキさん。モドキさんもお腹空いてるよね。ごめんね?ともうひとつ果物をもぎ取ってモドキさんに差し出せば、またもや鼻先で押される。

「もおおお!この優男ぉ!モドキさんが気にしないくらい果物でてよおおお!」

 ポコポコポコっと効果音が出そうな勢いで緑が成長して果物が実る。

「魔法怖い…」

 ビビりながらも果物をもいでモドキさんへ。ひとつをガブッと一口で飲み込んで、そのあとは果物を無視してひたすら緑の草たちを食むモドキさん。
 そっか。そっちだよね。牛さんぽいもんね。
 ふふっと笑いが込み上げてきて、笑った自分に気がついてやっと人心地つけた。やっぱり食べ物があるって大事だ。
 モドキさんの背を撫でて、休憩は終わり。

 丸一日歩いた。夜はしっかりモドキさんと寝て、今は二日目。
 何故だかわからないけど、果物でお腹は満たされている。今日も朝からえっちらおっちら歩いてしばらくすると建物と人が…見える
 !ひ、と?人だ、よね?ん?人じゃないかも…
 俺は視力が良い。両目とも2.0なのだ。まだ少し距離があるけど俺たちの真正面で頭を下げている人たちは、どうみてもケモミミがある。そして、しっぽもある。褐色の肌に白っぽいだぼっとした服を金の装飾品で留めているその人たちは遠目からでもムキムキで…何度でも言うが耳としっぽが…
 異世界って理解していたけど、やっぱり異世界ってわけですね!


 畏まった挨拶とお詫びと感謝をのべられて、「お助け頂けますか?」っていうからさ、もう腹くくって「出来ることなら。」って答えたよ。まぁ、一番は水問題だよね。それであれよあれよと宮殿に運び込まれて体を清められて祭壇で歌を歌ったりして、沢山雨を降らせました。それはもう、沢山!
 正直楽しかった。今までどうにか雨を降らせないように考えてたし。それがここじゃ熱烈歓迎!だもん。そりゃ楽しいよ。みんな優しいし。大きくて、優しい。毎日ありがとうって感謝されて。今は水道を作りたくて頑張っているところ。
 宮殿や大きな町には水が溜められるけど、田舎は雨を降らせることしかできないから。とりあえず渇れている井戸に雨降れ~!ってお祈りしてるけど、各家庭に水道とかあったら良くない?って。学校でも学んでいたし、毎日が充実してる。



 それで、なんで、俺は押し倒されているのかな?
 この国の王様はアウロと言って虎の獣人だ。長い名前は発音が難しい。髪はくすんだ金髪で所々黒くて、ムキムキの、同色の胸毛ぼーんの獣人さんだ。ちなみに年は32歳。
 毎晩毎晩、水問題についての感謝を言いに部屋を訪れてくれるんだけど、この人距離感が凄く近くて。きっとこっちに来たばかりの頃ホームシックに陥って毎晩ベソベソしてたからだと思われる…
 ここは椅子とかソファーとかがなくて、絨毯の上にクッションとか沢山置いて直座りなんだけど、いつも両手を握られたり、肩を抱かれたりしながら「ありがとう」って言ってくれる。だから「出来ることをしているだけです。」って答えるんだけど…今日は、水問題が落ち着いてもうひとつだけ助けて貰えないだろうか?って聞かれて、いつものように「出来ることなら。」って。






「アウロ?何で俺、押し倒されてるんですか?」
「あぁ、今日も良い香りで可愛くて素敵だよ、時雨。」
「貴方も今日も良い香りでかっこよくて素敵な王様ですよ。で、何で俺、押し倒されてるんですか?」
「うん?出来ることなら助けてくれると言ってくれたからだけど、もしかしてまだ怖いかい?」

 ん?何が?

 顔に出ていたのか、体を起こしてアウロの膝の上に降ろされる。これはいつもの体勢だ。

「先日、全身舐めてマーキングしたいと言ったら、食べられそうで怖いと言っていただろう?だからまだしたくないのだと思って我慢していたのだが…」
「それは、牙がちらっと見えたから…俺人間だし、アウロは肉食獣だし…」
「ん?」
「んん?えっと、そもそも今日は何を助けて欲しいの?」
「…世継ぎ問題だ。」

 ん?アウロは攻撃する為の魔力が強すぎて普通の獣人さんと子作りすると相手が壊れちゃうってやつ?
 口に出ていたのか、ざっくりと言えばそうだと返される。

「俺じゃ解決しなくないですか?」
「時雨しかいないだろう…」
「え?でも、お世継ぎって子供を作るって事ですよ?親になるって事ですよ?両親は相思相愛じゃないと子供が可哀想ですよ?」

 アウロの膝の上から顔を覗き込む。

「その純粋な眼で見ないでくれ…今、とても胸が痛い…時雨は私の事が好きではなかったのか…」
「そもそもアウロは俺が好きだったんですか?」
 俺は、正直アウロが好きだ。優しくて甘くて格好よくて、何より民たちを大事にしていて。あの、モドキさんと一緒に初めて対面した時に周りに止められながらも地べたに膝をついて俺なんかに頭を下げるなんて格好良すぎる姿を見せたこの王様に恋に落ちない方がおかしい。

「可愛いと言えば格好良いと答えてくれた。」
「まぁ、可愛いは置いといてアウロはムキムキでイケメンだし。」
「好きだと告げたら俺も好きだと答えてくれたではないか!」
「まあ、本心だけど、アウロは社交辞令かと。」
「付き合ってくれと言ったらいいよと!」
「どっか行くのかなって。」

 なんか、ごめん。

「伝わってなかったのか。」
「う、ごめんなさい。それじゃあ俺たち相思相愛ですか?」
「はぁ。可愛いから許す。いや、そうじゃないな。時雨に伝わるように告げられなかった私の落ち度だ。すまない。仕切り直して良いか?」
「…はい。」
「時雨が好きだ。愛している。番になって欲しい。これから先、共に歩んでくれるだろうか?」
「はい。俺もアウロが大好きです。でも、ひとつだけ聞いてもいいですか?俺が雨を降らせられなくなったらどうするの?」

 それが俺を臆病にさせる。

「元々この世界の問題なんだ。時雨には本当に感謝している。だが、もし時雨が雨を降らせられなくても愛しただろうし、これからそうなっても変わらない愛を誓う。」
「ありがとう。よろしくお願いします。俺からも愛を誓います。」

 硬い太ももに膝立ちして、チュッとアウロの鼻に誓いのキスを送る。

「ふふ。吃驚してるアウロも可愛い。」
「時雨、口付けをしても?」
「はい。」

 もう俺はアウロのものなんだから、聞かなくていいよ、と瞳を閉じればぐるぅっと喉の鳴る音がしてまた、後ろに押し倒された。



「アッ、んっ、ふあッ」



 ぐちゅぐちゅと飲みきれない唾液が口の端から伝い落ちる。



「ンッ、アウロのべろ、ザラザラしてる…」



 そして長い。それで上顎をなぞられれば腰が浮いてしまう。



「時雨の舌は柔らかくて気持ちが良い。そして甘いな。」

「ッはあ、ちゅう、気持ちいいです…」



 好きな人と両思いってだけでも胸がいっぱいなのにその人と初ちゅう!どちらかと言えば細身の、スキニーとかが似合う人がタイプであったのに、今は好きになったこの人がタイプだと胸を張って言える。何てチョロいんだ。サークルの先輩はどうした、変わり身早すぎだろう?と頭の片隅のそれまた端の方で思わなくもないけど、でもアウロが好きなんだもの!このほわほわなくすんだ金髪の胸毛も好きなんだもの!とアウロのムキムキなお胸に下から抱きつく。



「また可愛いことをして。どうした?怖いか?」

「いいえ。アウロの事、好きだなあって思ったら抱きつきたくなったのです。」



 …あれ?何か失敗した?アウロ、瞳孔開いてない?



「んーッひ、あッ」



 またキスだと瞳を閉じれば軽く掠めるだけのキスを唇に落としてそのまま首もとへと降りてくる。アグアグと甘噛みされ体が僅かに強ばる。



「すまない。怖かったか?食ったりしない。」
「んーん。ちょっとだけ怖かったのと、くすぐったかったのと、あと気持ちよかったです…」
「…駄目だ。時雨が可愛すぎる…マーキングしとかないと。」

 マーキングって、俺は電柱か何かですか?


「あッ、や、やだっ、ひぅッ」

 ペロペロと首筋から指の一本一本まで綺麗に舐められて。
 嫌なのに、脇まで舐められて。拒否の言葉を口にすればピンと尖ってしまっている乳首を摘ままれた。

「でも、時雨のここは嬉しそうだな?」
「ひあッ、だってえ…」

 くにゅくにゅと優しくて摘まんで時に軽く潰して引っ張って。
 なんで片方だけ?と見上げれば意地悪顔をしたアウロ。

「こっちは舐めような。」

 キラリと光る牙にびくついたのは恐怖ではないのはもうバレているだろう。笑みを浮かべながら近づく虎を受け入れるように抱き締めた。




「アッアッ、も、だめッ。」
「ん?まだだいじょうぶだろ?ほあ、もういっかい。」
「ひゃあッ、なめたまましゃべらないでよおっ、んやあッ」

 ピクピクと薄くて少なくなった精液をぺろりと舐められまた腰が疼く。散々ザラザラとした舌で乳首を弄られ臍や脇腹、恥骨など、全身愛撫されてアウロよりも大分小さいながらも存在を主張するぺニスに行き着いた時には天国を見た。
 それでも二度、三度と搾り取られれば辛くなってくる。

「ね、あうろ、もうマーキングおしまいにしよ?もう全部舐めたよ?」

 正直、もう寝たい…

「よしよし。疲れたな。あとはだらりとしていて良いからもう一ヵ所だけ頑張ってくれ。」
「…ん。わかった、もうひとつだけなら」

 頭をヨシヨシされるのが気持ち良い。コロリと転がされてうつ伏せで、枕を差し出されたので抱きつくとこのまま寝てしまいそうだ。

「ッ、んんんっ!やっ!なに?」

 生暖かくて、ザラザラとした先ほどまで感じていた感触があり得ないところを這っている。

「やだっ、そんなところ、汚いッ!だめだよっ」
「、時雨に汚いところなどない。とても綺麗だ。」

 でも、だって、だめ、と繰り返すがお尻をぐいっと開かれて固定されて、その長い舌がお尻の孔の皺を一本ずつ舐め広げる。
 ピチャ、クチュ、と卑猥な音がして、どうにか逃げようと腰を捩る。

「ふふ。可愛い時雨、番が尻を振って誘っているようにしか見えないぞ。初めてでも痛くならように調合されている香油を使うからな。力を抜いてくれ。」
「んえ?や、ひゃあッ、や、だ。抜いてえッ」

 アウロの武骨な指が入ってくるのがわかる。異物か入り込む違和感に涙がぼろぼろと溢れる。

「時雨、本当に嫌だったら言ってくれ。今ならまだ、止めれる。」

 泣かせたくはない。そう身をのり出して涙をペロペロと舐めるアウロとモドキさんが重なって少しだけ騒いでいた鼓動が静まる。

「指、びっくりした。でも、大丈夫だから、続き、して?」

 深呼吸と同時に指が奥まで入り込む。深く呼吸すると上手だと褒められるように背中にキスが贈られる。

「アァッ!」

 アウロの指先がその一点を掠めた時、チカチカと火花が散ったようだった。

「ここか。」
「アッアッ、いアッ、やアーッあ、ああッ」

 いつの間にか増やされた指でその場所を重点的に擦られる。

「や、やだあッ、あうろッ、こわいっ」
「大丈夫だ。怖がらないで気持ちいいのだけ追っていろ。」
「あんッやだッ、キモチイイよおっ、あうろ、キモチイイ!」
「すまん…限界だ…」

 抜かれた指にまた喘げば膝を持って引き寄せられてぴとりと熱いものが押し付けられる。振り向こうとすれば優しく前を向かされた。

「香油で痛くないとはいえ、見ない方が良い。二度目からはどんなに見ても良いから。今お預けはキツイ。」

 そんなに大きいの…?逆に怖いよ!とそろりと後ろ向きに視線を送れば先っぽは俺のについてるはずなのに。え?長くない?そして太すぎない?無理だと伝える前にズンっと低い音が下腹から響く。

「お、うアッ」
「ほら、先が入ったぞ。もう少し頑張ろうな。…ん?」

 時雨、もしかして今ので気をやったのか?
 そう言って嬉しそうに俺のぺニスに手をやってついた薄い精液を舐める。その仕草にきゅっと後ろが絞まったのを自分でも感じる。もう良いや。認めよう、とっても気持ちいいのだ。

「ッこら。あまり絞めるな。これでも我慢しているのだ。」
「や、あッ。あうろ、我慢しないでッ。キモチイイのいっぱいしてえっ」
「ッぐるううっ!」

 最後に聞こえたのはアウロの堪えるような喉の音。
 薄れる意識の中、やっぱ虎も猫科だよなー喉鳴らしちゃってーなんてどうでも良いことが浮かんで消えた。









「うっうっ、モドキさあん!!それでね、俺知らなかったんだよ、男が子を産む為には一年くらい中出ししまくって体を作り替えるだなんて!沢山出せば出す程早く作り替えられるなんて!毎日エッチした方が良いなんて!あれから毎日だよ!うぅ…モドキさあん、」

 涙を流す俺の頬をペロペロ舐めるのは相変わらず優男なモドキさん。

「時雨!ここにいたのか!」

 ぞろぞろと部下を引き連れて来るアウロはいつどこにいてもすぐに俺の事を探し出してしまう。

「神獣様もご機嫌麗しく…」

 アウロが頭を下げるのは俺とこのモドキさんだけ。モドキさんは俺の前に立ちはだかるとブモモっとアウロを叱ってくれる。(たぶん)

「モドキさん、本当に優男!だいすき!」


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みんなの感想(1件)

ななん
2022.03.28 ななん

え、どうしましょう。。。
とっても可愛いお話で、転移してからは終始ニヤついてしまいました(*^^*)
モドキさん、私も好きです!
時雨がいつまでも幸せでありますように(๑•̀ㅂ•́)و✧

まつぼっくり
2022.03.28 まつぼっくり

ななん様
感想をありがとうございます…!
嬉しいです🥰

実はムーンさんのあとがきの方には書いたのですが…モドキさんは雌なんです。
優男と呼んでる時雨は一体いつモドキさんが女の子だと気づくのか…!
そんな時雨をアウロはいつでも優しく見守ってくれています。
愛されて、子宝にも恵まれて、ハッピーエンドです~😌!



解除
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