十七歳の狸さん

まつぼっくり

文字の大きさ
5 / 8

さよならと再会

しおりを挟む


楓へ

楓は人間だからわからなかったかもしれないけど、僕はひとめ見て、僕の番って気づいたよ。

だってとってもいい匂い。
楓と出会えて幸せでした。
ありがとう。

楓より少し早くお空に行くけど、僕はお空で徳をつんで、絶対絶対来世でも楓と一緒になるよ。
来世では身体が強く生まれてくるようにお願いするね。
そうしたら今度は一緒におじいちゃんになろう?
だから、待ち合わせ場所を決めとこう。
次、生まれたら、生まれた国の一番の都の定番の待ち合わせ場所に集合しよう?
成人したらお休みの度に待つよ。
だから早く迎えにきてね?

僕を追いかけてきちゃだめだよ?そうしたら来世で一緒になれないもの。
雪花セツカ楓花フウカをよろしくお願いします。


楓、雪花、楓花
大切な僕の家族。愛してるよ。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



出会って五年、雪は眠ったまま目覚めなかった。
元々身体が弱いとは聞いていた。しかし季節の変わり目に寝込むような事があっても死ぬようなものではなかった。

四年前、小さな双子を抱えた雪と再会したときはそれはもう驚いた。獣人では男でも孕むことがあるとは聞いていたが、まさか雪もそうだったなんて考えもせずに中に何度も注いでしまって、あの一晩の交合で孕み、出産や育児の一番大変な時に一緒にいてやれなかったことを悔いた。
それでも「この子達を与えてくれてありがとう。」と本当に嬉しそうに微笑む少し大人びた雪は立派に子を育てる親であった。
この一年間で根回しは済んでおり、雪たちは自然とこの国での暮らしに馴染んでいった。

子供たちの四歳の誕生祝いも過ぎ、やっと手が離れてきて、これから雪との二人の時間が少しずつ取れるようになると思っていた。
雪が亡くなって、最近やっと浪と暮らし始めた氷雨さんに手紙を渡された。
雪は知っていたのだ。そして氷雨さんも。思わず掴みかかって詳細を問いただす。

それは今まで幸せに暮らしてきた自分を呪い殺したいような話だった。
あの時、雪が何かしてくれたのには気づいていた。なぜ、問い詰めなかった、なぜ、雪は何も言わなかった。

あの時雪と出会わなかったら、なんて本末転倒なことばかり考えて、頭が可笑しくなりそうだった。

そんな俺を正常に戻してくれたのは雪花と楓花で。
俺とじゃないと食事も睡眠もしない。
この子たちは雪が残してくれた宝だ。














少し黄ばんでしまった手紙を丁寧に畳んで握りしめたままベッドに横になる。
雪、もういいだろうか?雪花は人間で、跡取りとして育て上げた。
楓花は雪に似た狸の獣人で幻獣の森で番を見つけた。
二人とも家族に恵まれて幸せに暮らしている。
もう側にいっていいか?一緒にいたのはたった四年なのに思い出は風化することなく、年々思いは増していく。
雪はひとめで番だとわかったのだろう?
私は日毎に番を追い求める。
私も人間ではなく、獣人として幻獣の森で生まれ、雪と出会いたかった。

白い光に包まれて、その先で雪が笑ったように見えた。









「おいこら。なぁんで俺が十年以上待つんだよ。」

「…今何歳?」

「今年で三十二。」

「え!?僕、やっと二十歳になって、成人したから今日からずっとここで待とうと思ってたんだよ!」

「何か言うことは?」

「えっと、ごめんなさい。」

「身体は?」

「ちょっと喘息あるけどその他は健康です!」

「バース性は?」

「男性体のオメガです!」

「花丸だな?」

「えへ。ぎゅうして?」

「相変わらず可愛いなァ。」

「待たせてごめんなさい。だいすき!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

記憶喪失ですが、夫に溺愛されています。

もちえなが
BL
目覚めると、そこは知らない天井だった。 そして、見知らぬ黒髪の男に強く抱き締められた。 「リーヴェ……あぁ、よかった……! あなたがいなかったら、俺は……」 涙をこぼし、必死に縋ってくる彼――オルフェは、自分の“夫”だという。 だが主人公・リーヴェには、彼との記憶が一切なかった。 「記憶などどうでも良い。 貴方が健やかに生きてくれれば俺はそれだけで良い」 溺愛、過保護、甘やかし―― 夫・オルフェに沢山の愛を注がれながら過ごす幸せな日々。 けれど、失われた記憶の先には、 オルフェの語ろうとしない“過去”が隠されていて――。 記憶喪失から始まる、 甘くて切ない再恋物語。 スパダリ黒髪眼鏡攻め × 金髪美少年受け。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

双子のスパダリ旦那が今日も甘い

ユーリ
BL
「いつになったらお前は学校を辞めるんだ?」「いつになったら俺らの仕事の邪魔をする仕事をするんだ?」ーー高校二年生の柚月は幼馴染の双子と一緒に暮らしているが、毎日のように甘やかされるも意味のわからないことを言ってきて…「仕事の邪魔をする仕事って何!?」ーー双子のスパダリ旦那は今日も甘いのです。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

処理中です...