十七歳の狸さん

まつぼっくり

文字の大きさ
6 / 8
楓夜と雪成

毎朝すること

しおりを挟む
 
 楓と雪の生まれ変わりである楓夜ふうや雪成ゆきなりは今日もらぶらぶでいちゃいちゃである。



 目が覚めて、一番にすることは雪成の胸に耳をあてて心臓が動いているかチェックすることだ。
 前世では、起きたときはまだ暖かかった。なのに息をしていなくて、次第に冷たくなっていって。
 今ではしっかりトラウマで朝はもちろん夜中に思い出して飛び起きることもある。そんな時は雪の胸の音を聞くと良く眠れるのだ。

 雪は昔から可愛い。狸の姿も人間の姿も可愛いかった。昔から華奢で小柄で何度も言うが可愛い。それに加えて今では梅雨時には喘息が強く出て少々辛そうだが、それ以外では健康体である。夏には日焼けして海で遊べるし、冬には着込んで雪景色を見に行ける。
 先に待っていると思い込んでいた雪が今世で十も年下なのには驚いたが、俺と同じ世界、そして国に生まれる為に神のところで働いていたようで…胸が熱くなった。

 俺の今世はというとこの国の一番の都で生まれ育ち、物心ついたときから待ち合わせスポットで雪を待っていた。中々現れない雪に寂しさや時折苛立ちを感じながら、都内の待ち合わせスポットを回る日々。
 ただ、諦めるという選択肢はなくて。必ず雪も来るという確信はこの地に生を受け、前世の記憶があることからひとつも疑うことはなかった。





 トクトクという心臓の音とスゥスゥと穏やかな寝息。
 とても幸せな音を噛み締めてるとそっと回った腕にぎゅっと力がこもる。
 むにゃむにゃと笑みを浮かべて寝言を言うものだから、可愛くて耳を当てていた胸に顔を押し付けた。

「んむ?ふうちゃん、せっちゃ、また、おっぱいなのお…?ぼ…く、ねむい。から、すきにのんでもいいよ…」

 瞳は閉じたまま、楓花と雪花の夢をみているのか。
 可愛い雪の可愛い寝言。そんな雪が飲んで良いと言いながらパジャマ代わりの緩いTシャツをぺろりと捲ったものだから、白い肌に映える薄紅色のぷっくりとした果実に吸い付いた。


「ひっ、あぁぁぁぁ!」
 ジュッジュッと何も出ないそこに執拗に吸い付き、もう片方は二本の指でキツく摘まむ。
 摘まんだそれを転がして、引っ張って。薄い紅色から濃い紅色に変化したら優しく舐めて。

 腰に響く声をあげてはいるが、まだ夢の中なのか俺の頭を撫でる手つきはそろりと優しく、夢の中で二人を撫でているのだろう。幼子を残して逝かなければならなかった雪を想うと胸が締め付けられて、ぎゅっと抱き締めた。



「ん…?あれ?楓夜だ。」

「雪成、はよ。」

「わ!」

 驚いた声をあげてモゾモゾと布団に隠れる雪。
 これは朝勃ちだと思ってるな。

「あのね…えっちなゆめ、みた…」

「ん?」

「楓花と雪花におっぱいあげてたんだけどね、途中から楓とえっちしてる夢みちゃった…楓夜じゃなくて楓。金髪で、ドキドキしちゃった。えへ。」

「金髪にするか?」

「ふふ。何で?金髪の楓も黒髪の楓夜も変わらず大好きだよ?」

 僕ももう狸には変化できないよ。

 そう言って微笑む雪をやっぱりキツくキツく抱き締めた。



「…子狸の雪も今の雪成も愛してる。生きてさえいてくれれば何でもいい。」

「もうっ、子狸じゃないってば!大人だよ!…大人だから、ね?夢の続き、して?」

「あぁ、もう可愛いなァ。」



 この後、三度繋がって未だにベッドの中。
 休日って最高だ。


「楓夜、子供たちのこと教えて?」

 雪はいつも子供たちの話をせがむ。

 カカに会いたいと泣く二人を抱き締めて眠ったこと。

 毎年雪の誕生日には墓標に向かって話しかけていたこと。

 初めての恋も初めての恋人も俺にじゃなくて氷雨さんに報告していたこと。

 おねしょを二人して隠したり、二人が悪戯に入れ替わって学校へ行き、先生たちに雷を落とされたこと。

 どんなに小さな話でも泣いたり笑ったりしながら楽しそうに聞き入る雪。


 何度も中に吐き出した、この薄い腹に手を当てて、強く願う。
 もう一度、家族になりたい。

 自分の家族を持って、幸せに暮らしたであろう子供たち。
 前世に未練はないかもしれない。
 でも、あいつらも俺と似ていて雪が大好きだったから。
 もしかしたら…なんて思ってしまうのは。
 思いを馳せるのだけは許して欲しい。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

記憶喪失ですが、夫に溺愛されています。

もちえなが
BL
目覚めると、そこは知らない天井だった。 そして、見知らぬ黒髪の男に強く抱き締められた。 「リーヴェ……あぁ、よかった……! あなたがいなかったら、俺は……」 涙をこぼし、必死に縋ってくる彼――オルフェは、自分の“夫”だという。 だが主人公・リーヴェには、彼との記憶が一切なかった。 「記憶などどうでも良い。 貴方が健やかに生きてくれれば俺はそれだけで良い」 溺愛、過保護、甘やかし―― 夫・オルフェに沢山の愛を注がれながら過ごす幸せな日々。 けれど、失われた記憶の先には、 オルフェの語ろうとしない“過去”が隠されていて――。 記憶喪失から始まる、 甘くて切ない再恋物語。 スパダリ黒髪眼鏡攻め × 金髪美少年受け。

双子のスパダリ旦那が今日も甘い

ユーリ
BL
「いつになったらお前は学校を辞めるんだ?」「いつになったら俺らの仕事の邪魔をする仕事をするんだ?」ーー高校二年生の柚月は幼馴染の双子と一緒に暮らしているが、毎日のように甘やかされるも意味のわからないことを言ってきて…「仕事の邪魔をする仕事って何!?」ーー双子のスパダリ旦那は今日も甘いのです。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

処理中です...