貴方は僕の運命のひと

まつぼっくり

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一番に出会いたかった


宛名を書き、なんとか手紙を書き終えるとアランに渡す。
手紙や小包なんかはギルドから直接送れるらしく、アランが明日出してくれると言ってくれたので甘えてしまう。。

手紙を書いている間に思ったよりも時間が経っていたようで、キッチンにはいい匂いが立ち込めている。

「わぁ。いい匂いですね。何を作ってくれてるんですか?」

お手伝い出来なくて申し訳ない気持ちが顔に出ていたのか穏やかな顔で頭を撫でられながら席に促される。

「ミートボールのトマト煮を作ったんだ。あとはサラダだな。」

大きめのミートボールと沢山の野菜とマカロニのようなものがトマトベースで煮込まれていて深めのお皿によそってある。
サラダも緑の葉野菜が艶々としていてとても綺麗だ。

「アランは本当に料理が上手ですね!凄く美味しそうです!」

2人で向かい合って頂きますを言って食べ始める。
本当に美味しいのと、今まで食事をしながら話す習慣があまりなかったので黙々と食べてしまい、視線を感じてふと顔をあげるとこちらを見ているアランと目があった。

「ひとりで無言で食べちゃってすみません。とても美味しいです!」

食べているところを見られていて恥ずかしい気持ちを誤魔化すようについ声が大きくなってしまう。
アランはそんなことお見通しなのかいつもの優しげな雰囲気で気にしている様子はない。

「ミナトは食べながら話さないし話しかけると食べるのを中断して聞いてくれるし育ちがいいな。」

「うーん、裕福な家でしたしその分恵まれていたかもしれないですけど育ちが良いのではなくてただ誰かと一緒に食事をするのに慣れていなくて…」

アランが眉間に皺を寄せる。あまり聞いていて気持ちの良い話ではないなと話題を変えようとするが、良い話題が出てこない。

「俺はミナトの事ならどんな話でも聞きたいと思っている。嫌でなければ話してくれないか?」

いつの間にか眉間の皺も消え、元通りの雰囲気だ。

「嫌とかではないし特に面白い話でもないんですけど…その前に、僕の話ってアイラさんたちからどういう風に聞いてますか?」

「生い立ちが複雑で、甘えるのにも自分の気持ちを伝えるのにも慣れておらず、努力家で可愛くて息子のような存在だと聞いた。あとは監禁された経緯を聞き出したときにルーラの領主との話も聞いた。」

勝手にすまない。と謝ってくるアランに首を振る。思いがけずアイラさんたちの気持ちを知れて息子のような存在という言葉が嬉しくて、目元がじんわりと潤んでくる。

「信じられないかもしれないですけど、僕はこの世界の人ではないんです。僕がいたところでは獣人はいなくて人族だけの世界でした。」

驚いた表情のアランだがそれでも言葉を挟むことなく続きを促される。

「何故此方に来たのか、意味があるのかは分かりません。元いた世界には家族がいて、でも誰とも血が繋がっていなくて。友達も上手く作れなくて自分の居場所を作ることが出来なくて辛くて。」

僕がお腹に宿ったことを知った男は母を捨てた。
母は未婚のまま僕を出産し、僕がまだ小さい時に義父と結婚した。
結婚生活は直ぐに義父の浮気によって破綻する。
母は僕を置いて家を出た。数年後には義父は再婚する。
2人の間には可愛い女の子が生まれて僕だけが邪魔だった。
邪魔だけど、世間体を気にしなくてはいけないような地位にいた義父は僕を手放す事も出来ず。
他の家庭よりもお金をかけてもらったと思う。
でも愛情は貰えなかったんだ。

僕は今までの話を言葉に詰まりながらも説明する。
途中からアランが手を伸ばして僕の手を握ってくれたから、つかえながらだけど全部言いたいことが言えたと思う。

「…シエロさんの事も本当に好きだったんです。好きだと思っていたし、このままシエロさんに僕の全部を貰って欲しかった。でもね?今考えると僕がシエロさんの事を好きになったのは初めて優しくしてくれて、必要としてくれて、甘えさせてくれて。今まで経験がないから直ぐに好きって思っちゃったのかなあ、なんて思うんです。」

ほんと僕ってチョロすぎますよね。
そう言ってあははと笑おうとしたけれど目からはぼたぼたと涙が溢れてしまって、顔があげられない。
だってあんなに優しい気持ちになったりドキドキしたりきゅんとしたり、初めてだったんだ。
わかっていたけど求められて嬉しかったんだ。
頭のなかがぐるぐるしてくる。
泣いているのもあって頭が重い。

その時ふわりとアランの香りがして、気づくと厚くて広いアランの胸板に顔を埋めていた。

「…アランの腕の中はあったかいですね?それにいつもいい匂い。落ち着く匂い。安心する匂い。眠くなっちゃいます。」

そう言うと背中を一定のリズムでポンポンとされ、泣いたのもあって本当に眠くなってしまう。
まだ食事中なのに、と頑張って瞼を上げようとするがなかなか上手くいかない。

「話してくれてありがとな。俺はずっとミナトのそばにいる。だから安心して今は寝てしまえ。」


うとうとと眠りに落ちそうなときに聞こえた言葉。

「俺が1番に出会いたかった。」

切に願うようで…悲しそうな辛そうな声で僕の心はぎゅっとする。
それはまるで共鳴しているようで、その後に続いた大事な言葉を聞き逃したような気がした。
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