ひきこもぐりん

まつぼっくり

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番外編

お手紙書きます

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『お父さん、お母さん、兄嫁ちゃん、おにいへ。異世界転移して半年が経ちました。僕は元気です。外に出ているどころか、旅までしてしまいました。もう引きこもりじゃないから安心してね。カラスの獣人さんのつがいになりました。もぐらを可愛いと言ってくれます。毎日お腹一杯ご飯を食べさせてくれます。みんなに会えないのはとてもさみしいけど、幸せだから心配しないでね。また明日もお手紙書くね。今までありがとう。大好きだよ。 竜斗』

 ジズに買ってもらったレターセット。いつか届くと信じて毎日家族に手紙を書いてるのだ。
 あ、そうだ。大事な事を書くの忘れた。便箋は埋まっちゃったから、ジズがことあるごとに買ってくれるレターセットを詰め込んだ缶を開けてごそごそ。
 小さなカードを取り出してもう1文。

『明日ジズの実家にご挨拶に行くの。王族なんだけど。一周回って笑えてくる。あ、いや、やっぱり吐きそう…』

 語尾がへろへろな字になったけど、まぁ良い。本当に吐きそうだ。…緊張して。カードを封筒に入れて、糊付け。うーん…どうしよ…今日はせっかくだから王都のポストに出してみようかな。一度だけ、本当に一度だけだけど、机に置いておいたお手紙がなくなった事があった。どこかへ無くしたか、誰かがポストへ出してくれたか、どうなったかはわからない。それから机に置いておいてもそのままだし、何となくポストに出したり、ギルドに出したり、お出かけ先でわざと忘れてみたり。毎日毎日同じ文章とその日にあった事をちょろっと。いつか、届くといいな。それくらいの気持ちでね、やっています。

「リュー、書けましたか?」

 ふわりと翼ハグ。あったかぬくぬく。

「書けたよ。わざわざ部屋でなくても良いのに。」

 自分が居たら書けないこともあるでしょう?とお手紙タイムにジズはそっと離れてくれる。そんな必要はないのに。

「今日は神殿に行ってみましょうか。」

「神殿?」

 神殿って教会みたいなとこだよね。えええ、あれですか。魔力の多い全属性魔法使いが囚われてたりします?お相手は…狼さんか、あ、竜人?ドラゴン来ちゃう?探し求めてたつがいだったりします…?ふぁ、この国終わっちゃうじゃん。王都一瞬じゃん。ドラゴンになれちゃう竜人さん。やばいよねぇ。唯一人を求めて、つがいがいなくなったら狂っちゃうんだよねぇ。あれ?そういえば獣人さんたちは獣の姿になれるの?

「ふふ。また妄想ですか?」

「ねぇ、ジズ。ジズは本物のカラスになれるの?」

 ここに来るまで、馬車や歩きやジズに抱えられて飛んだりと数週間かけてゆっくりと旅をした。
 見たことのない食材や尻尾や耳のある獣人さんたちを見て、異世界だと再認識。まだちょっとぐいぐい来る人は苦手だけど、僕がびくりと体を跳ねさせれば、直ぐに翼ハグして守ってくれるジズがいる。うん、好き。

「カラスに?それはなれないですね…私達獣人は獣の一部があるだけです。私は獣ではなく鳥ですが。」

 そっかそっか。そこはやっぱりそうだよね…獣になれたらそれは凄くファンタジー。夢あるけどね、獣姦とかさ…やっぱ狼とかライオンとかトラとかの獣姦はさ…夢あるよね。あ、でもジズはカラスだしな…獣姦とか…ない。うん、ない。なんか、ない。

「うん。くふふ。そうだよね。ジズがジズで良かったぁ。」

「私もリューがリューで良かったです。さて、そろそろ行きましょうか。」

「うん?」

「今日は神殿に手紙を置いてみませんか?」

 なにそれ届きそう…!

「行きます…!置きます…!んんっ、」

 以前は鼻キスやほっぺすりすりだったのに、今では唇にキス。ジズからしたら挨拶みたいなものかもしれないけれど、僕は挨拶でハグやキスをする文化はなかったし、一々照れてしまう。

「…ちゅうするの、慣れない。」

「可愛いです。慣れなくても良いのでは?」

 私だけですし、とにっこりジズさん。

「ハグとかほっぺすりすりとかは挨拶でしょ?」

「…そんな挨拶聞いたことありませんが。誰かにされたのですか?」

「え………ジズ。」

僕は筋金入りのひきこもり。こんな挨拶をする相手はジズしかいないの知ってるでしょうが。

「…なるほど。恐ろしい勘違いです。リュー、それは私がリューを一目見たときから愛しく思っていたからです。一般的な挨拶ではありませんので、絶対に私以外にしないでくださいね?」

 そうなの?すりすりするの恥ずかしかったけどなんかこう、そういう文化なのかと思ってた。いきなりやらなくて良かった。変質者だと通報されちゃう。…あれ、両思いになる前からされてたな…うん?ジズは変質者…?

「…通報されないようにね?」

 犯罪、だめ、ぜったい。

「何だか凄い妄想してます?リューだけですからね?」

 僕だけかぁ。くふふと笑みが溢れる。

「じゃあ、もっかいキスしとこ?」

「…このまま押し倒しても?」

 いいよって言いたい。けど…

「…お手紙。」

「そうでした。私とした事が…リューのご家族への手紙は最優先事項です。」

 当たり前のように届くはずのない、もしかしたら届くかもしれないお手紙を最優先事項にしてくれるジズはとても優しい人。

「ジズありがと。だいすき。」

「……」

「ふは!」

 僕からの好きの言葉はやっぱり照れちゃうのが可愛過ぎる…!
















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