同衾から始まる恋人契約

夏菜しの

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 週末の明日は蓮とデートだ。
 どうしても指輪の代金を受け取って貰えなかったので、じゃあ今後の支払いをすべて持ちますと返したら、いつの間にか明日デートすることになっていた。
 その上支払いの話はうやむやにされてたし。
 解せぬ……


 さて私は年齢=彼氏いない歴のお付き合い初心者なので、念のためにネットで〝デートの準備〟をキーワードにして検索してみた。

・服の準備と試着
・爪切り、ネイル
・眉毛や鼻毛など最低限のムダ毛処理
・デート前のシャワーは逆に時短に繋がる
・体臭と口臭のニオイ対策
・最終ムダ毛チェック
・天気に合わせた持ち物
 などなど

 まず一言言わせて欲しい。
 なんで〝ムダ毛〟を二度書いた?
 初心者な私だけど簡単に騙せると思うなよ? あっでも待って、大事なことは二度言うっていうじゃない。じゃあこれが一番大事なのかも?
 やらないとは言わないけどね、このムダ毛処理ってシャワーの時短と絡めてみると完全にアレの事だよね……
 ほんと大きなお世話っ!


 うっうん、ゴホゴホ。
 き、気を取り直して順番に行こうかな。
 えーとまずは一番、服の準備からね。

 ワンルームに備え付けの小さなクローゼットを開けて服を出す。大学進学と共に実家を出た私は専ら生活するのが優先で誰に見せることもない服なんかにお金をかけている余裕はなかった。
 ぶっちゃけ私が服に求めるのは着やすさと耐久度。
 その結果、出てきたのはカジュアル系八割、他二割と言う配分だった。ちなみに他二割には会社に着ていくスーツなんかも含んでいたりする。
 適当によさげなのをベッドの上に広げてみたのだが……

「うえっこれはヤバい」
 何がって、色合いが。
 白と黒。カーキにベージュとここまで華やかさは皆無。
 かろうじてあるピンクのドレスは結婚式なんかで着る用に買った一張羅。普通のデートにこんなん着て行ったら浮きまくり待ったなしだ。

 うむぅ無難な白と黒で固めるか……?
 でもこんな適当なので蓮の隣に立っていいのかなあ。
 スーツの似合う長身のイケメンはきっとどんな服も着こなしてくるだろう。その隣に白黒地味専の私。
 背景かな?


 やっぱ二割から何とか絞り出すしかないな。
 えーとこれは季節が駄目でしょ。こっちは……あれ? これいつ買ったっけ?

 ……。
 ……ハッ!
 そうそう、大学一年のコンパんときだわ。
 ハ? マジで?
 おおよそ八年前とか! これだから年齢=彼氏いない歴の女はもう!!


 気分転換にお風呂に入って一番大事っぽいムダ毛でも処理してくるかなあ。
 いいや現実逃避よくない!

 だったら今から買いに~とちらっと時計を見るといつの間にやら二十二時過ぎだった。おおよそ三時間。服選びに何時間掛かってんだって話だが、まだ決まってないんだからもう笑えない。
 せめて明日の約束がお昼だったのなら買うチャンスもあったのだけど、残念ながら明日は朝からで九時の待ち合わせだ。ネット注文もいまから頼んで明朝来るわけもなし。
 うん手詰まり。
 ……これはもう仕方ないよね?

 スマホを手に取り〝蓮〟を表示、押すか押さざるか散々悩んだ末に、ええいと通話ボタンを押す。これほど緊張したことが今まであっただろうかってくらいうるさい鼓動に耐えながら呼び出し音を聞きつつじっと待った。

 通話が繋がる。
「も、もしもし、姫宮です」
 想像以上の上ずった声。おまけに早口だ。
『ああ莉桜か。どうかした?』
 落ち着け自分。ハアと息を吐いてから、さっき考えておいた言葉を紡ぎだすことだけに集中した。
「明日のデートですけど、参考までにどこに行くつもりでしょうか?」
 ワンチャン、遊園地やラウワンみたいな遊ぶ場所だったら、白黒カジュアルもありかなと思ってる。
 そうじゃなかったら明日は服買うからさ! 明後日に延期をお願いしたいです!

『特に決めてないけど、車でどこかに行こうかなと思ってる』
 超漠然としてる!!
 聞きたいのはそのあとなのよねー
 しかしその後は~なんて聞こうものなら、『こんな電話までしてどんなけ期待してんだよ』なーんて思われても恥ずかしい。
 そんなところはまだ私も乙女なのかとちょっと安心したよ。

「そうですか。ちなみに蓮さんはどういう服で行きますか?」
『別に普通だけど?』
 それ一番ダメな答えですわー
 耐久度で服を選ぶ私の普通は、きっと蓮の普通とは程遠くて、このまま行くと明らかに浮く未来しか見えない。

『もしかして明日の服で悩んでいるのか?』
「……はい」
『僕は莉桜と会えることが一番で、正直服なんてどうでもいいんだけどなあ。でも女性はそういうのを気にするんだろう。
 じゃあどうかな、今から一緒に買いに行かないか?』
「残念ですがもうお店は開いてませんよ」
『いやそれだったら大丈夫だ、知り合いの店ならまだ頼めば開けてくれる。
 今から迎えに行くから準備しておいてくれ』
 それだったら予定を明後日に~と言うより前に通話は切れていた。
 どれだけせっかちなのよ!?
 なんて思ってると、間髪入れずにメッセージが届いた。メッセージはもちろん蓮からで『住所送っておいてくれ』だってさ!

 これはデートか、それともデートじゃないのか? 私の脳内で天使っぽい白いとの悪魔っぽい黒いので議論が始まっていた。
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