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第二部 ―青空かすむ怠惰の魔女―
ep.33 その日、女王の約束は果たされた。
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「「えぇぇぇぇぇ!?」」
マニーとヘルは叫んだ。
自分達の目線よりも、遥かに高い位置にその「顔」がある。
普段は160cm少々あるサリバの身長が、今や40m位まで伸びているのだ。
伸びている、というよりかはふt… そのままズームアップされたかのような「おたふく顔のルックス」、といった方が正しいだろうか。
魔法の力なのだろう、大剣以外の全てが巨大化しているのだからもう、笑うしかない。
「おい何じゃありゃあ!?」
「サリバに、そんな力が!?」
なんて、これにはジョン達もビックリ。
するとサリバ、自分の今の姿に驚いているのか、自身の両手の平を見ながら、
『おー』
と、スローに野太い声を鳴らしたのだ。まるでボイスチェンジャーの犯人Aみたいな声。
だが、満更でもないようで。
『おぅ?』
彼女がボケーっとした表情で、暗黒城へとゆっくり手を伸ばした。
暗黒城には無数のイバラが張り巡らされており、マニー達も侵入に苦戦している。しかし、
ジャリ! ジャリジャリジャリジャリ…!
サリバのその大きい手が、イバラをいとも簡単に粉砕したのだ。
巨人ともなれば紙粘土レベルで、かすり傷にもならないという事なのだろう。こうして、どんどん城からイバラが剥がされていった。
「ひぇぇ~!!」「逃げろぉぉ~!!」
悪魔達もこうなっては歯が立たないのか、皆一目散に逃げていく。
極めつけは、城の頂上にあたる細い屋根を…
『おーうー』
バキッ!!
ヤバい、ヤバいヤバイヤバイ、屋根をへし折っちゃったよ! 今の彼女は怖すぎる!!
なんて言葉では足りないほど、素手で城を破壊していったのである。
ボケーっとした表情を微塵も変えず、その馬鹿力。ここまでくるともはや大災害だ。
――――――――――
ガラガラガラガラ…!
その頃、僕達がいる冷暗所でも、先の巨大サリバによる破壊で大きな揺れが生じた。
辛うじて立てるものの、上からどんどん鉄や瓦礫などが落ちてくる。先程まで相手の魔法暴発で近寄れなかったが、こうなったらもう前進あるのみ。
「来るなといっている!!」
チアノーゼの怒りは、城全体を覆っていたイバラとなって現れ、サリバが剥いでもなお増殖を続けていた。
このままだと、クリスタルに封印されている主がどうなるか分からない。が、
ピカーン
「うあっ…! うぐっ!」
サリバの破壊行為によって、屋根をへし折られた上階から、陽の光が差し込んできた。
チアノーゼがすぐにガードに入り、部屋の壁から氷柱とイバラを発現。それを傘代わりに、暗い場所へと走っていったのである。
「まて!!」
僕達は全力で追いかけた。人間離れしたスピードで逃げていく吸血鬼を、これ以上暗がりに籠れる場所へ移動させるわけにはいかない。
城はその間にも、どんどん上階の天井が崩れ、光が差す面積が増えてきた。
――――――――――
それもこれも、サリバが城を壊してくれたおかげ… だろうか?
そのボケーっとした表情からは、意図が読めないけど、彼女のその覚醒がなければ今頃、僕達はどうなっていたか。
シュン。シュンシュンシュン…
おっと、サリバの身体が急に縮み始めたぞ?
つまり、覚醒したらそれっきりというのではなく、時間制限があるようだ。よってタイムリミット、サリバの身体はどんどん空気が抜けた風船のように、小さくなっていった。
シューン… ポン♪
「わっ! あ、戻った」
サリバは元に戻り、キョトンとした顔で、その場に尻餅をつく形で座り込んでいた。
その間、およそ1分。とても短い時間だが、その分個体のデカさと怪力は、この異世界で僕が見てきた中で最強最大。
自分でも信じられないのか、正に驚異的な覚醒であった。
――――――――――
もう、どれくらいの時間、戦ってきたのだろう?
朝を迎え、日が昇っている今のうちに、ケリをつけたい。
攻撃を仕掛け、激しい移動をしていくにつれ、日除けの天井がどんどん少なくなっていく。
チアノーゼは、それでも逃げては魔法を放ち、逃げては魔法を放ちを繰り返した。もう、からくり城としての機能をほぼ失い、自分の思うように戦えなくなってきているのだ。
「くらえー!!」
バーン!!
僕は予知した未来と、出しきれる力を振り絞り、チアノーゼに黒焔の改心を食らわせた。
重い打撃と熱風が、回避が鈍っているチアノーゼを吹き飛ばす。
「あーっ!」
ドーン!!
チアノーゼの背中が、後ろの大きな柱が立った日除けの壁へとぶつかり、転倒した。
同時に、それ以外の天井も地響きによって全て崩れ、日除けはその柱のみとなる。
柱の上にある天井は、一本の木材で支えられており、今にも折れそうであった。
「アキラ! 遅くなった!」
そこへ、漸くマニーとヘルも飛んできた。
サリバの件で中へ進めなかった様だが、これでもうチアノーゼは逃げられないだろう。全て、太陽の光が容赦なく降り注いでいるからだ。
彼女は遂に追い詰められた。
「はぁ…! はぁ…!」
僕達はその大きな柱を囲むように、それぞれの角度から刃先を向け牽制した。
武器もある。魔法無効化もある。どこへ逃げようと陽の光にやられ、灰にされる。
「こ… 殺せ…! それが、あなた達の望みでしょう!? いいわよ、私の負けよ…!」
チアノーゼが息を切らしながら、負傷した部分を押さえ、涙目で僕を睨む。
本当に、これでいいのだろうか。僕達は驚くほど静かであった。
「どうせ、報われない… なら、早く私を楽にしてよ…! 割れたガラスは、もう、元には戻らない…! 人を傷つける、凶器でしかないの…! そんなものを、残し続けて、いったい何になるの!?」
「あんた… 死ぬほど辛い想いをしてきたんだな」
僕はそう呟いた。
今の言葉をきいて、壮絶な過去のトラウマがあると悟ったからだ。彼女は激高した。
「黙れ!! 知った様な口を利くな!! あ、あなたに、私の何が分かるっていうのよ! 私は、ただ… グスッ 誰かに、認めてもらいたかっただけなのに…! うぅぅ」
目から、大粒の涙が流れ落ちていく。
その時の彼女は、吸血鬼の姿ではなく、1人の「少女」としての姿だった。
僕は続けた。
「ずっと、孤独だったんだろう? 俺は認めるよ。あんたのこと」
「…!?」
「だから―― その手を伸ばして。さぁ」
僕は、武器を持っていない方の手を差し伸べた。
チアノーゼは、信じられないといった表情だ。だけど、皆がこうして静かに見守っているという事は――。
チアノーゼは、ゆっくり立ち上がった。
僕の言葉通り、手を差し伸べると―― 裏手に隠している、ナイフで刺し殺すと約束して。
パーッ!
刹那。
チアノーゼが僕にナイフを突こうとした瞬間、柱の上の天井が切られ、日除けが完全に「なきもの」にされたのだ。彼女は陽の光に晒された。
「あ゛ぁぁぁぁぁ…!!」
白く透き通った肌が、顔が、頭髪が、全て煙をあげて燃えていく。
チアノーゼは悲鳴を上げ、そのままサラサラと砂のように落ちていった。
吸血鬼が、灰となった瞬間であった。
ストッ
柱の下、その灰が積もった隣へ、アゲハが落り立つ。
女王は静かに納刀した。最後の日除けを一刀斬ちしたのは、他でもないアゲハだったのだ。
同時に、メンバーが目くばせで各自、イヤホンを外していく。
テレパシーも、透視も、その役目を果たしたのであった。
アゲハは最後に、こういって締める。
「約束通り、あなたを“救い”にきた―― さらばだ。チアノーゼ」
衣服が残り、灰が積もった山の上には、クリスタルが日光に反射して輝いていた――。
【クリスタルの魂を全解放まで、残り 13 個】
マニーとヘルは叫んだ。
自分達の目線よりも、遥かに高い位置にその「顔」がある。
普段は160cm少々あるサリバの身長が、今や40m位まで伸びているのだ。
伸びている、というよりかはふt… そのままズームアップされたかのような「おたふく顔のルックス」、といった方が正しいだろうか。
魔法の力なのだろう、大剣以外の全てが巨大化しているのだからもう、笑うしかない。
「おい何じゃありゃあ!?」
「サリバに、そんな力が!?」
なんて、これにはジョン達もビックリ。
するとサリバ、自分の今の姿に驚いているのか、自身の両手の平を見ながら、
『おー』
と、スローに野太い声を鳴らしたのだ。まるでボイスチェンジャーの犯人Aみたいな声。
だが、満更でもないようで。
『おぅ?』
彼女がボケーっとした表情で、暗黒城へとゆっくり手を伸ばした。
暗黒城には無数のイバラが張り巡らされており、マニー達も侵入に苦戦している。しかし、
ジャリ! ジャリジャリジャリジャリ…!
サリバのその大きい手が、イバラをいとも簡単に粉砕したのだ。
巨人ともなれば紙粘土レベルで、かすり傷にもならないという事なのだろう。こうして、どんどん城からイバラが剥がされていった。
「ひぇぇ~!!」「逃げろぉぉ~!!」
悪魔達もこうなっては歯が立たないのか、皆一目散に逃げていく。
極めつけは、城の頂上にあたる細い屋根を…
『おーうー』
バキッ!!
ヤバい、ヤバいヤバイヤバイ、屋根をへし折っちゃったよ! 今の彼女は怖すぎる!!
なんて言葉では足りないほど、素手で城を破壊していったのである。
ボケーっとした表情を微塵も変えず、その馬鹿力。ここまでくるともはや大災害だ。
――――――――――
ガラガラガラガラ…!
その頃、僕達がいる冷暗所でも、先の巨大サリバによる破壊で大きな揺れが生じた。
辛うじて立てるものの、上からどんどん鉄や瓦礫などが落ちてくる。先程まで相手の魔法暴発で近寄れなかったが、こうなったらもう前進あるのみ。
「来るなといっている!!」
チアノーゼの怒りは、城全体を覆っていたイバラとなって現れ、サリバが剥いでもなお増殖を続けていた。
このままだと、クリスタルに封印されている主がどうなるか分からない。が、
ピカーン
「うあっ…! うぐっ!」
サリバの破壊行為によって、屋根をへし折られた上階から、陽の光が差し込んできた。
チアノーゼがすぐにガードに入り、部屋の壁から氷柱とイバラを発現。それを傘代わりに、暗い場所へと走っていったのである。
「まて!!」
僕達は全力で追いかけた。人間離れしたスピードで逃げていく吸血鬼を、これ以上暗がりに籠れる場所へ移動させるわけにはいかない。
城はその間にも、どんどん上階の天井が崩れ、光が差す面積が増えてきた。
――――――――――
それもこれも、サリバが城を壊してくれたおかげ… だろうか?
そのボケーっとした表情からは、意図が読めないけど、彼女のその覚醒がなければ今頃、僕達はどうなっていたか。
シュン。シュンシュンシュン…
おっと、サリバの身体が急に縮み始めたぞ?
つまり、覚醒したらそれっきりというのではなく、時間制限があるようだ。よってタイムリミット、サリバの身体はどんどん空気が抜けた風船のように、小さくなっていった。
シューン… ポン♪
「わっ! あ、戻った」
サリバは元に戻り、キョトンとした顔で、その場に尻餅をつく形で座り込んでいた。
その間、およそ1分。とても短い時間だが、その分個体のデカさと怪力は、この異世界で僕が見てきた中で最強最大。
自分でも信じられないのか、正に驚異的な覚醒であった。
――――――――――
もう、どれくらいの時間、戦ってきたのだろう?
朝を迎え、日が昇っている今のうちに、ケリをつけたい。
攻撃を仕掛け、激しい移動をしていくにつれ、日除けの天井がどんどん少なくなっていく。
チアノーゼは、それでも逃げては魔法を放ち、逃げては魔法を放ちを繰り返した。もう、からくり城としての機能をほぼ失い、自分の思うように戦えなくなってきているのだ。
「くらえー!!」
バーン!!
僕は予知した未来と、出しきれる力を振り絞り、チアノーゼに黒焔の改心を食らわせた。
重い打撃と熱風が、回避が鈍っているチアノーゼを吹き飛ばす。
「あーっ!」
ドーン!!
チアノーゼの背中が、後ろの大きな柱が立った日除けの壁へとぶつかり、転倒した。
同時に、それ以外の天井も地響きによって全て崩れ、日除けはその柱のみとなる。
柱の上にある天井は、一本の木材で支えられており、今にも折れそうであった。
「アキラ! 遅くなった!」
そこへ、漸くマニーとヘルも飛んできた。
サリバの件で中へ進めなかった様だが、これでもうチアノーゼは逃げられないだろう。全て、太陽の光が容赦なく降り注いでいるからだ。
彼女は遂に追い詰められた。
「はぁ…! はぁ…!」
僕達はその大きな柱を囲むように、それぞれの角度から刃先を向け牽制した。
武器もある。魔法無効化もある。どこへ逃げようと陽の光にやられ、灰にされる。
「こ… 殺せ…! それが、あなた達の望みでしょう!? いいわよ、私の負けよ…!」
チアノーゼが息を切らしながら、負傷した部分を押さえ、涙目で僕を睨む。
本当に、これでいいのだろうか。僕達は驚くほど静かであった。
「どうせ、報われない… なら、早く私を楽にしてよ…! 割れたガラスは、もう、元には戻らない…! 人を傷つける、凶器でしかないの…! そんなものを、残し続けて、いったい何になるの!?」
「あんた… 死ぬほど辛い想いをしてきたんだな」
僕はそう呟いた。
今の言葉をきいて、壮絶な過去のトラウマがあると悟ったからだ。彼女は激高した。
「黙れ!! 知った様な口を利くな!! あ、あなたに、私の何が分かるっていうのよ! 私は、ただ… グスッ 誰かに、認めてもらいたかっただけなのに…! うぅぅ」
目から、大粒の涙が流れ落ちていく。
その時の彼女は、吸血鬼の姿ではなく、1人の「少女」としての姿だった。
僕は続けた。
「ずっと、孤独だったんだろう? 俺は認めるよ。あんたのこと」
「…!?」
「だから―― その手を伸ばして。さぁ」
僕は、武器を持っていない方の手を差し伸べた。
チアノーゼは、信じられないといった表情だ。だけど、皆がこうして静かに見守っているという事は――。
チアノーゼは、ゆっくり立ち上がった。
僕の言葉通り、手を差し伸べると―― 裏手に隠している、ナイフで刺し殺すと約束して。
パーッ!
刹那。
チアノーゼが僕にナイフを突こうとした瞬間、柱の上の天井が切られ、日除けが完全に「なきもの」にされたのだ。彼女は陽の光に晒された。
「あ゛ぁぁぁぁぁ…!!」
白く透き通った肌が、顔が、頭髪が、全て煙をあげて燃えていく。
チアノーゼは悲鳴を上げ、そのままサラサラと砂のように落ちていった。
吸血鬼が、灰となった瞬間であった。
ストッ
柱の下、その灰が積もった隣へ、アゲハが落り立つ。
女王は静かに納刀した。最後の日除けを一刀斬ちしたのは、他でもないアゲハだったのだ。
同時に、メンバーが目くばせで各自、イヤホンを外していく。
テレパシーも、透視も、その役目を果たしたのであった。
アゲハは最後に、こういって締める。
「約束通り、あなたを“救い”にきた―― さらばだ。チアノーゼ」
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