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第二部 ―青空かすむ怠惰の魔女―
ep.34 やさぐれエルフな氷の帝王、降臨。
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※ここまでの道筋(~ep.33)
暗黒城を覆う氷柱とイバラは、チアノーゼの死と同時にフェードアウトしていった。
禍々しい景観をもったオブジェクトが消えた事で、露わになった城は、屋根と壁の一部が損傷。全壊とまではいかないが、ミサイルでも撃たれたのかというほどの傷跡を残した。
騒ぎが収まった事で、現場には少しずつ、付近の住民が見物にきた。
僕達から任務成功の吉報をきき、パトロールの序でにマイキやキャミもかけつけ、現場にはバリゲード。そして地下の冷暗所に集められていた遺体の収集を急ぐ。
当然、氷の魔法は解けているので遺体も全て露わになったわけだが、中にはコロニーから行方不明だった人の姿もあり、悲願の対面で涙する遺族も。
「うぅ… やっと、やっと会えた… ごめんね、怖い思いをさせて… うぅぅ!」
遺族は、今日までの間ずっと、どんな思いで過ごしてきたのだろう?
遺体が生前どの様な生涯を歩んできたのか、分からないけど、いずれにせよ心が痛む光景だ。
一連の失踪事件は、これらが証拠として見つかったことでチアノーゼが主犯だと断定。
こうしてまた一つ、国が平和を取り戻したのであった。
「サリバ、ケガはない!?」
「うん、大丈夫だよ。イシュタの方こそ大丈夫なの?」
「うん。あ、ジョナサンあまり無理しないで…!」
と、現場付近ではサリイシュが合流がてらお互いの無事に安堵し、イシュタの肩に担がれているジョンの体調も気遣う。
ジョンは前回の傷が開いたのだろう、今も痛そうにしているが、命に別状はない。やっと一段落したのだから、今度こそ無理せず休んでほしいものである。
「サリバ! イシュタ!」
「「ひぇ…!」」
そこへ、マニーが怖い顔でノシノシ歩いてきた。
サリイシュは揃って肩をすぼめたものだ。なにせ今回の勝手な出陣と、没収された武器をこっそり持ち出した事がバレたので、この後こっぴどく叱られると思ったのだろう。
しかし、
「…2人がいなかったら、俺たちはどうなっていたか分からなかった。ジョナサンも無事で、ホッとしている。助けてくれて、ありがとう」
なんと、マニーから感謝の意を述べられたのだ。
2人は驚きの表情で、すぐに踵を返したマニーの背姿を見つめる。やがて緊張が解れると、2人は安堵の涙と同時に、お互いを抱擁したのであった。
『こっちは問題ないよ。空から敵が来ているような様子もないし、小人達もいつも通り♪』
王宮近辺の様子は、アゲハがもつソーラー式のガラケー越し、ヒナから近況を伝えられた。
アゲハは僅かに安堵している様子。最後に「ありがとう」といって、ガラケーを閉じたのであった。
今、アゲハの手にはチアノーゼが最期まで離さなかった、あのチャームが握られている。
彼女は呟いた。
「解放は、夜に行おう」
――――――――――
「それじゃあ、いくよ…?」
「スゥー」
夜。住宅地の一角にあるボスコ―花畑。
依然、杭と柵で守られているその林の近くにて、サリイシュが夕飯上がりにさっそく、クリスタル解放のまじないをかけ始めた。
僕たち全員、その様子を静かに見守る。
アゲハの手の平の上に乗せたチャームが、どんどん眩しくなってきた。
最初は仄かな光源だったものが、次第に力強く、そして冷気を放ち…
ドーン!!
クリスタルから、一筋の大きな光が、空高く発射された。
流石に魔王級の魂となると、その反動も大きいのか、アゲハも自分の身を支えるのに精一杯だ。
そして光が弧を描くように花畑へ落下すると、それはやがてスライム状に人の姿を形作り、最後は実体化していった。
先代魔王3きょうだい「CMY」の二番手、Cにあたる氷属性の美青年。
シアンが解放された瞬間であった。
「シアン!」
「シアン! やっと外に出れたね~」
と、僕達はシアンの元へ駆けつけ、前のめりで励ます。
少しやさぐれた、白いエルフの姿。いつもの変わらない彼で安心した。
「…あぁ。ずっと暗い世界しか見れなくて、こっちは待ちくたびれたんだ。まったくだぜ」
うん。最後の口癖も、いつものシアンだな。
ぶっきらぼうで、最初はとっつきにくい印象があるかもしれないけど、実は不器用なだけで人情に溢れている男。この度、漸くそんな2人目の先代魔王を救ったのだ。
だけど今回、ここまでの道のりが、すごく長かった気がする。
彼の能力を悪用してきたチアノーゼが、想像以上に強かったからだろう。最初は交渉に失敗し、一時はマジで死を覚悟したくらいだけど、結果的にメンバー誰一人欠ける事なく解放できたのだ。
さすがにコロニーの住民も、今回の件で僕達を見直してくれるといいな。
しかし、先代魔王No.2の戦闘力でこれかぁ。
現時点であのバカ強いレベルなんだ。これよりもっと上のマゼンタなんて、悪用しているボスがいたら一体、どれだけヤバいんだろう? 想像しただけでゾッとする。
――――――――――
「マーモ… あー、ドラデム・シュラークの事か。あの幽霊はなぁ」
と、シアンは呟き、ジト目でトマトジュースを頂く。
解放による歓迎のあと、場所は王宮の和室へと移された。
これから、国家機密レベルの情報を彼から聞き出すためだ。
しつこい様だが、彼はあのチアノーゼにクリスタルを握られていた男である。
つまり、あのフェデュートの中枢にかなり近い立場の様子を、長いこと見てきた可能性があるのだ。
現時点で13人も解放した今、さすがに全員は狭い和室に入れないので、ここは女王アゲハ、近衛騎士マニー、そして僕の3人だけで聞いていくことに。
「やつは恐らく、1つの個体が世に蔓延る憎悪と怨念を溜め込み、暴徒と化した悪霊だ。部下共を視覚的に操るため、表向きは白い仮面と手袋、そして黒い外套《がいとう》を身に着けている。中身は、魔力のない奴からみれば『空っぽ』。物理じゃまず倒せねぇ相手だろうな」
「やっぱりな。そいつが、マゼンタのチャームを握っているという可能性は?」
「いや、それはない」
「え?」
衝撃の事実であった。てことは、マゼンタ関連のボス戦はないってこと?
シアンの説明は続いた。
「チアノーゼが幹部に就任した日に、マーモの側近の1人が、マゼンタのチャームを大層なお盆に乗せていたんだよ。その時に、マーモがこんな事を言っていたのを覚えている。
『そいつは産業用に回せ。都市鉱山の永久機関を完成させるのだ』とな。その後はどこかに持ち去られて以来、チャームを見かけてないけど」
「!?」
なに、その恐ろしい内容は。
つまり、マゼンタは組織幹部の“武器”として、出回っていないってこと?
彼女がもつ鉄くずや鉱石を大量に生み出す力を、組織が強引に引き抜き、自分達の文明の一部に使うという意味でいっているのか!? それは!
僕は恐る恐る質問した。
「まさか、空中都市フェブシティが作られたのって…」
「それも違うな。だって、その頃にはもう今のフェブシティは完成しているんだぜ? 多分だけど、ここアガーレールで採掘できる資源が枯渇したか何かで、代わりにマゼンタの魔法で、無理やりでも資源を作り出してもらうという魂胆だろう」
「クソ野郎じゃないか! なんて卑劣な事を考えるんだフェデュートは! じゃあ、マゼンタは今もそのエネルギーを、組織の手で引き抜かれているんじゃ…」
「あぁ。可能性は高いな。日々、奴らの軍事力は上がってきているから」
最悪だ。これにはアゲハとマニーも首を横に振る始末。
つまりそれって――。
(つづく)
暗黒城を覆う氷柱とイバラは、チアノーゼの死と同時にフェードアウトしていった。
禍々しい景観をもったオブジェクトが消えた事で、露わになった城は、屋根と壁の一部が損傷。全壊とまではいかないが、ミサイルでも撃たれたのかというほどの傷跡を残した。
騒ぎが収まった事で、現場には少しずつ、付近の住民が見物にきた。
僕達から任務成功の吉報をきき、パトロールの序でにマイキやキャミもかけつけ、現場にはバリゲード。そして地下の冷暗所に集められていた遺体の収集を急ぐ。
当然、氷の魔法は解けているので遺体も全て露わになったわけだが、中にはコロニーから行方不明だった人の姿もあり、悲願の対面で涙する遺族も。
「うぅ… やっと、やっと会えた… ごめんね、怖い思いをさせて… うぅぅ!」
遺族は、今日までの間ずっと、どんな思いで過ごしてきたのだろう?
遺体が生前どの様な生涯を歩んできたのか、分からないけど、いずれにせよ心が痛む光景だ。
一連の失踪事件は、これらが証拠として見つかったことでチアノーゼが主犯だと断定。
こうしてまた一つ、国が平和を取り戻したのであった。
「サリバ、ケガはない!?」
「うん、大丈夫だよ。イシュタの方こそ大丈夫なの?」
「うん。あ、ジョナサンあまり無理しないで…!」
と、現場付近ではサリイシュが合流がてらお互いの無事に安堵し、イシュタの肩に担がれているジョンの体調も気遣う。
ジョンは前回の傷が開いたのだろう、今も痛そうにしているが、命に別状はない。やっと一段落したのだから、今度こそ無理せず休んでほしいものである。
「サリバ! イシュタ!」
「「ひぇ…!」」
そこへ、マニーが怖い顔でノシノシ歩いてきた。
サリイシュは揃って肩をすぼめたものだ。なにせ今回の勝手な出陣と、没収された武器をこっそり持ち出した事がバレたので、この後こっぴどく叱られると思ったのだろう。
しかし、
「…2人がいなかったら、俺たちはどうなっていたか分からなかった。ジョナサンも無事で、ホッとしている。助けてくれて、ありがとう」
なんと、マニーから感謝の意を述べられたのだ。
2人は驚きの表情で、すぐに踵を返したマニーの背姿を見つめる。やがて緊張が解れると、2人は安堵の涙と同時に、お互いを抱擁したのであった。
『こっちは問題ないよ。空から敵が来ているような様子もないし、小人達もいつも通り♪』
王宮近辺の様子は、アゲハがもつソーラー式のガラケー越し、ヒナから近況を伝えられた。
アゲハは僅かに安堵している様子。最後に「ありがとう」といって、ガラケーを閉じたのであった。
今、アゲハの手にはチアノーゼが最期まで離さなかった、あのチャームが握られている。
彼女は呟いた。
「解放は、夜に行おう」
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「それじゃあ、いくよ…?」
「スゥー」
夜。住宅地の一角にあるボスコ―花畑。
依然、杭と柵で守られているその林の近くにて、サリイシュが夕飯上がりにさっそく、クリスタル解放のまじないをかけ始めた。
僕たち全員、その様子を静かに見守る。
アゲハの手の平の上に乗せたチャームが、どんどん眩しくなってきた。
最初は仄かな光源だったものが、次第に力強く、そして冷気を放ち…
ドーン!!
クリスタルから、一筋の大きな光が、空高く発射された。
流石に魔王級の魂となると、その反動も大きいのか、アゲハも自分の身を支えるのに精一杯だ。
そして光が弧を描くように花畑へ落下すると、それはやがてスライム状に人の姿を形作り、最後は実体化していった。
先代魔王3きょうだい「CMY」の二番手、Cにあたる氷属性の美青年。
シアンが解放された瞬間であった。
「シアン!」
「シアン! やっと外に出れたね~」
と、僕達はシアンの元へ駆けつけ、前のめりで励ます。
少しやさぐれた、白いエルフの姿。いつもの変わらない彼で安心した。
「…あぁ。ずっと暗い世界しか見れなくて、こっちは待ちくたびれたんだ。まったくだぜ」
うん。最後の口癖も、いつものシアンだな。
ぶっきらぼうで、最初はとっつきにくい印象があるかもしれないけど、実は不器用なだけで人情に溢れている男。この度、漸くそんな2人目の先代魔王を救ったのだ。
だけど今回、ここまでの道のりが、すごく長かった気がする。
彼の能力を悪用してきたチアノーゼが、想像以上に強かったからだろう。最初は交渉に失敗し、一時はマジで死を覚悟したくらいだけど、結果的にメンバー誰一人欠ける事なく解放できたのだ。
さすがにコロニーの住民も、今回の件で僕達を見直してくれるといいな。
しかし、先代魔王No.2の戦闘力でこれかぁ。
現時点であのバカ強いレベルなんだ。これよりもっと上のマゼンタなんて、悪用しているボスがいたら一体、どれだけヤバいんだろう? 想像しただけでゾッとする。
――――――――――
「マーモ… あー、ドラデム・シュラークの事か。あの幽霊はなぁ」
と、シアンは呟き、ジト目でトマトジュースを頂く。
解放による歓迎のあと、場所は王宮の和室へと移された。
これから、国家機密レベルの情報を彼から聞き出すためだ。
しつこい様だが、彼はあのチアノーゼにクリスタルを握られていた男である。
つまり、あのフェデュートの中枢にかなり近い立場の様子を、長いこと見てきた可能性があるのだ。
現時点で13人も解放した今、さすがに全員は狭い和室に入れないので、ここは女王アゲハ、近衛騎士マニー、そして僕の3人だけで聞いていくことに。
「やつは恐らく、1つの個体が世に蔓延る憎悪と怨念を溜め込み、暴徒と化した悪霊だ。部下共を視覚的に操るため、表向きは白い仮面と手袋、そして黒い外套《がいとう》を身に着けている。中身は、魔力のない奴からみれば『空っぽ』。物理じゃまず倒せねぇ相手だろうな」
「やっぱりな。そいつが、マゼンタのチャームを握っているという可能性は?」
「いや、それはない」
「え?」
衝撃の事実であった。てことは、マゼンタ関連のボス戦はないってこと?
シアンの説明は続いた。
「チアノーゼが幹部に就任した日に、マーモの側近の1人が、マゼンタのチャームを大層なお盆に乗せていたんだよ。その時に、マーモがこんな事を言っていたのを覚えている。
『そいつは産業用に回せ。都市鉱山の永久機関を完成させるのだ』とな。その後はどこかに持ち去られて以来、チャームを見かけてないけど」
「!?」
なに、その恐ろしい内容は。
つまり、マゼンタは組織幹部の“武器”として、出回っていないってこと?
彼女がもつ鉄くずや鉱石を大量に生み出す力を、組織が強引に引き抜き、自分達の文明の一部に使うという意味でいっているのか!? それは!
僕は恐る恐る質問した。
「まさか、空中都市フェブシティが作られたのって…」
「それも違うな。だって、その頃にはもう今のフェブシティは完成しているんだぜ? 多分だけど、ここアガーレールで採掘できる資源が枯渇したか何かで、代わりにマゼンタの魔法で、無理やりでも資源を作り出してもらうという魂胆だろう」
「クソ野郎じゃないか! なんて卑劣な事を考えるんだフェデュートは! じゃあ、マゼンタは今もそのエネルギーを、組織の手で引き抜かれているんじゃ…」
「あぁ。可能性は高いな。日々、奴らの軍事力は上がってきているから」
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