俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第三章

再び

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  ふと目が覚めると、ぼんやりと天井が見えた。
「俺の部屋じゃない…。」
でも、見覚えがある。
(あぁ…昨日教会に戻って寝落ちしたのか…しかもログアウトしないまま)

ヴェルト六日目。

(昨日は色々ありすぎた…これから俺はどうすれば…)
体をゆっくりと起こす。外は雨が降っていた。
(ヴェルトにも雨は降るんだな…そうだ、傘とか売っているのかな)
とりあえず何かしたかった。エアホーレンの人混みに入っていればオルクスみたいにレーツェルも見つかるんじゃないかと思った。
(…今は、もうレーツェルじゃないのか)
「シュティレ。」
誰もいない空間に話しかける。もちろん返事などない。
重い体を引きずるようにしてベッドから出る。ソファーは側に置いたままになっていた。ソファーに倒れこむ。
「テレポート。エアホーレンに。」

【テレポート・エアホーレン   実行します】

フライハイトが担当のはずなのに、エアホーレンかエアモルデンに居る時間が長い気がする。
空色の傘を買う。差すと、空色の影が俺を包んだ。暗い気持ちがより一層強くなる。
「止めて下さい。」
「いいからこっちへ来い、大人しくしていれば危害は加えない。」
何やら不穏な会話が聞こえる。
声がした方を見ると、以前俺とユスティーツが助けた女性が居た。
周りには何人かの男達が女性を見下ろしていた。しかし、男達はただの人間ではなく、どうやら獣人のようだった。
(違う種族…エアホーレンで何回かは見かけたけど、あんなに集まってるのは初めて見たな。)
「…あの、何をしているんですか?」
思いきって声をかける。ヨシュカならば、この後起こるであろう騒動を片付けなくてはいけないのだから、防止した方が良いだろう。
「あ…あなたはこの間の…。」
どうやら向こうも覚えていたようだ。獣人達が俺を見る。人とは違うその迫力に、少し後退りしそうになる。が、ぐっと堪えた。
「誰だお前。お前も守護者トゥテラリィの一員か?」
「トゥテラリィ?…って何ですか?」
(守護者のルビになってたけど…守護者って…創造主の守護者か?)
獣人達がざわつく。
「しらばっくれるな!」
「知らないなら何でこいつを助けるんだ!!」
「この人は無関係です!」
女性の声に辺りはしんと静まり返った。
「私は以前も、この人に助けられました。この人はただの、いい人なんです!」
「…信用できないな。一応お前も来い。」
獣人が俺の腕を掴んだ。予想以上の力で引っ張られる。
「止めてください、手を離してください。」
自分でも驚くほど落ち着いていた。シュティレのこと以外はどうでも良かった。
「…ったく、煩いな!!大人しくしろ!!」
獣人が突如怒鳴り、俺を拳で殴った。リアルな振動が頬に伝わり、熱を帯びるのが分かる。女性は小さく悲鳴をあげた。
予測していなかったので、力の向きに体がよろめく。
(どうして攻撃できるんだ?ここはエアモルデンじゃないのに…)
「気をつけて!今はエアモルデンみたいに、相手に攻撃できるようになっているの!」
女性の言葉によくよく確認してみると、いつの間にかhpが表示されていたことに気がつく。
(…てことは、俺にも攻撃できるってことか。面倒くさい…もう終わらせよう)
「メッサー発動。」

【メッサー発動】

【プファラーメッサー・『ゲナウ』】

獣人達はとっさに身構えたが、時すでに遅し。
眩しさに閉じていた目を開けると、その場にいた全員が倒れていた。身動き一つしない。
(あ…あの女性は!?)
大事なことを思い出して見回すが、姿がない。
「隊長!!お怪我は!?」
「問題ないわ、お迎えご苦労様。」
「あれほど外出を控えるよう申しましたのに…。」
「私は自分でやりたいの、あなた達にばかり任せていられないわ。」
デシャヴのようではあるが、声の方を向く。
そこには、先ほどの女性と何人かの男達がこちらを見ていた。
「あら、助けて頂いてありがとうございます。…こちらが、獣人共を倒したシャルさんよ。」
女性は俺に微笑んだ。
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