タケノコの里とキノコの山

たけ

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ニ章 

第三十七話 いざしゅつじん

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キノコ村、タケノコ村の規模はまあ大体進○の巨人の壁内と同じくらいの広さをイメージしています。1から5地区まで区分されていて、数字が小さいほど人口がおおくキノコ軍の本部も1地区に配置されます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









連れてこられた場所は人気の少ない丘だった。

小さな丘に色とりどりの花が咲き
小さな視界の中に美しい世界が映し出される


「辛気臭いこの村にしては、綺麗な景色じゃねぇか、ここはあれか?俺たちでいう公園か?」


「そんなところなのかな?まあ…」


キクはアガレズを見つめる

人間の形をベースとしドス黒い体がアポロ族の特徴だが
この男はどこか透明感のある空気を流し出している





「念の為に聞いておきたいな、俺で何をするつもりだ?」


「戦闘訓練かな、きみがどんな戦いをするのか知りたい」


「…は?はっきり言えよ」


透明な男はやはり発言も透明である

「はっきり、か……
まあ言ってしまえば、俺は君の戦いに関心を持っているんだ。君のタケノコ族への憎しみは他のキノコ族より常軌を逸脱した大きさなんだよ」


「お、おう、そうかよ……」


「俺が"有効活用"するのは君のそのネガティブな感情。ネガティブな人間は冷酷な行動が比較的簡単に出来る。君はそれを上手く使えてない、だから、使い方を教える」


「おう…」

そして、アガレズから淡々と言葉が紡がれてゆく


「まず、君は自分のエゴを突き通せ、タケノコ族を許すな。それがたとえ仲間だったとしても、
情に振り回されるな。常に警戒しろ」


「はぁ…?」

「もし俺の命を使わなくては行けない時、遠慮なく使えるのは君だけだ。君以外のキノコ族はそれなりに警戒心が溶けている。未だに溶けてないのは君だけ」


「何が言いたい?おめぇ、死ぬのか?」


「例えを上げただけだが…?想像力の足りない人だね君は
…………もしこの例えが本当になった時、俺を"使"ってくれ。うまく使うことを期待するよ」


含みのある言い方でそう言った彼の透明な声は、
豪華な花より出る自然の音を一直線に通過し
キクの耳へ直進した



「……何が言いたいかはしらないが、俺はお前の事を仲間ともなんと思ってない。殺せるなら、今から殺してやっても構わねぇ」


「そうか……それでいいんだ。君、気に入った」


「……はぁ。お前といると調子狂うぜ…カイムたちと会って訓練でもする」


「わかった、また」

キクが来た道を振り返らず戻る。アガレズは静かにキクを見つめた


「……」


キクが完全に見えなくなった後、アガレズは
重い顔つきで胸ポケットから何かを取り出す


それは注射器 だった


「あと、6本か」

そう独り言を言い残しここから去る。

自然の音だけが、そこに残っていた

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あれから30分後

アポロ村 正門にて


「みん………っな…」


「おいおいおいおい!!どうしたんだよ!!」


ここはアポロ村。恐らく全力疾走したのだろう。
息切れがひどい、そして、服についた血


ーーキノコ村で生存報告に行っていた、レイだった


「行く途中でヨツンヴァインとやらに会ったのか!?ハルは!?!?もしかして、キノコ村に何かあったのか!!」


パアワがまくしたてる。焦りがレイにも伝わってきた


周りを通行するアポロ族は腫れ物を扱うようにその場を通行する



「はぁ…はぁっ……ヨツンヴァインには会ってない…ハルは…きっと大丈夫……………。アデルが……来て……」


「な!!………すぐ皆をよんでくる!!」

ーーーーーーーーーー

アポロ村にいたキノコ族、そしてアガレズが集まる

そしてレイが事の顛末を話した



「……マジかよ…」


「……………なるほど、私達の行動が知られていて、アデル単体が責めてきた。そして、ハル達を残しレイが私達に援軍を呼び込み、今に至るってわけだ」

イアンが冷静に話を整理する雰囲気は落ち着いていても、喋る速さは冷静とは程遠い。
彼女なりには焦っていた。


「うん、アデルが!
過疎地区に攻めてきたから被害は少ないけど、
このままじゃたくさんキノコ族が死ぬ!ハルが!!……っ死ぬッ!」


あまりにレイがまくしたてるものだから
パアワも早急に行動を移す



「わかった。すぐ行こう、皆いいな、ヨツンヴァインと戦う前に、アデルを何とかするぞ、今から全力疾走だ!」



「ほ~ぉ。大変だねぇ…」


キクが口を挟む


「……っ!てめぇこねぇのかよ」

「タケノコ族の前へ俺がいく利点がない。
なぜ俺が行くと思っている?利点を教えてくれ」


「………てめぇ行く流れだろ今は、戦力が足りねぇって聞いたろ…!4級5級だけでアデルを何とかできるかよ!!!ハルだって!アデルんとこに居る! 」


「お…おいキク、アガレズが正しい、俺達とアポロ族はそういう協力関係じゃない、確かにアガレズが居たらうれしいけども…ここはキノコ族の問題だ」

そうカイムがなだめる。そう、いまのアガレズに、キノコ族を命をかけて救う義理など
一切ないのだ


「カイムの言うとおりだ。そもそも論点ずらしはやめてもらえるかい?行く利点を知りたいんだ……情で命を掛けられると思っている。君は本当に愚かだ。君等の種族の命など俺は…」




「ーーーヨツンヴァインを、倒せない」


「………ん?」


空気が静まる。


「………言ったよな、お前の命を上手く使えって」


「…………ほお?」


「俺達でアデルんとこに行くと、誰かが死ぬかもしれない。死んだらヨツンヴァインを倒す戦力が減り、負けるかもしれない。そうなればこの村はヨツンヴァインとやらが生き残り続ける
………それでいいのか?」


「………なるほど、一本取られたねぇ…」


「以上の事から、お前が俺達のところに行くことは、間接的にヨツンヴァインとかいう奴への勝率を上げられる」


「……………ふむ」


いつものすべてを知り尽くしているかのような アガレズは存在しない。


……あるのは、キクに完全に一本取られてしまった
マジシャンの種がバレたかのような…そんなアガレズ

「……キクお前、そんな知的なキャラか?」


「うるせぇカイム…で、どうだ?来るよな?」


「…………良いだろう、まあ、俺が不在でもアポロ村はそう簡単に滅びないか、」


「決まりだな」


「……くく、キク…やはり君は…」


ニヤリと笑うアガレズ。そして

「…よし、行くぞ!全力疾走!」

パアワの叫び声と共にキノコ村に向け、一斉に走り出す。




「…………はっ」




そのとき、誰かが静かにニヤリと笑った。
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