タケノコの里とキノコの山

たけ

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ニ章 

第三十六話 食料

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ジリジリと、距離が詰まってゆく。

今ここで、激しいぶつかり合いが起こるのだ。
それを拒絶するかの如く、レイが質問を投げる


「…聴きたいことがある。なんで、私達を殺し尽くさない?なんで、生き残らせる」


「…ほう、貴方は…牛を飼った瞬間に殺して肉にするのですか?」

「…は?」

「否…愛情を込め育て上げ、繁殖し、そしてその時がくれば、儚く散らせる。そうするでしょう?」


「………………言ってることの意味がわからない」


アデルがその言葉を待っていたかのように
二チリと喋る


その言葉は、衝撃という表現を遥かに超えていた



「ーーー貴方方は、"食料"です。
不死鳥様は、人間の魂を求めている
死んだ人間から魂を吸収して強くなる」



「…は?」


食料



そう、食料だったのだ。


だから、生きてきたのか、
だから、生き残らされてきたのか


「不死鳥様に命を って、そういうことかよ…」


「ええ私はここに来てから4名の命をいだきました。それも、しっかりと不死鳥様に届いているでしょう。」


「………糞が」


レイはやけに落ち着いていた。タケノコ軍がキノコ族を殺しに来る理由を初めて知った。


根本的な事は教えてくれそうになかった。何が目的で魂を吸収しているのかとか、そもそも不死鳥とは何者なのか、とか


衝撃的な内容が急に頭に入ったからこそ、脳の衝撃を和らげるために落ち着いたのである


「……なんで、そんなこと教えてくれるんだ
今までは…会話すら応じなかったのに」

「言ったところで、何も対策らしいことは思い付かないでしょう?いままで通りの関係になるのみ。……それに、ここにいるいくつかの人間は、殺すので、ね」


その瞬間 アデルは風になる



「ッ!」

ハルが驚愕し、思わず声を上げる。速い
なんという速さ



全員が風となったアデルを目で追う。それが行き着く先は…一番近くで足を震わせていた、キノコ軍5級だった

「ひぃいいいいいあああああああああ…

ぎゃっ」 


「!!!!」


アデルの振った剣の残像は、もはや美しいといえるほどに空を舞う、そして……5級のキノコ軍の首に直撃した


「ああああ…っあっっ…あっ……あっ……」




彼の首はもはや首とは程遠く見え隠れした骨すらも血が纏わりつく。血 血 血

「……っなんで…!」

涙目のハルがそうこぼす。
今の苦い瞬間を最後に、レイが隣にいるハルですら足を震わせ、
周りにいるキノコ軍5級 4級とともに戦意を喪失しかけていた。



「はっ、はっ、はっ、ぎぃぃぃぃぃいいあ………っ」


この言葉を最後に、静かに、そして重々しく、その場に倒れ込む


彼の最後の言葉は、この痛々しい悲鳴だった。


「………アデル」


あえて首を全て両断しなかった。痛みを、体中に響き渡る激痛を感じて死んでもらうため…


あまりにも酷い絵面に
怒号を発したレイが飛び掛かる


「お前ええええ!!!」






「この方はどこまで行っても足が震えていた。私が今こうしなくとも、別の日に転びでもして死んでいたでしょう。ならば、今死んでも構わない」


アデルという男はどこまでも冷徹で、残虐で
ーーーゴミクズだった


「ふっっっざけんなぁぁ!!」


レイを先頭に数々のキノコ軍たちが
足を震わせながら斬りかかる。

キノコ軍増援を呼ぶにしても、
この5地区はキノコ軍の中でも
人口が少ない地域である。到着まで時間がかかる。


今ここにいるレイとハル含め20人弱。それが現状


正直な所、レイ以外の今ここにいるキノコ軍だけではアデルに勝つなど到底不可能だ。しかし、今は一級のレイがいる。


(みんなレイさんの存在があるからうしろからでもアデルに立ち向かおうとしてくれるんだよな…でも…)



そう、レイはいま肋の骨を負傷しているのだ。本人は冷静に振る舞うが、骨を損傷して元気であるはずがない


そう考えれば…

相手は何年にも渡り戦争の前線に立ち、キノコ族を葬ってきた殺戮の王


ーーー今の戦力で勝つことは、確実に不可能だった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




その頃、アポロ村にて

ホテルを出、村の中心、工事されている場所、あの工場
わからない…地名がわからない、


キクは疾走していた

もちろんヨツンヴァイン討伐作戦決行まで自堕落な日々を送るつもりではない。鍛錬は積むつもりだ

しかし、ハルとレイが早速業務をこなしているので自分も何か情報を得ようかとでも思ったのだ


アガレズと出会い、真っ先に聞きたい質問が1つあった




「やっとみつけた…おいおめぇ」


「…ん?キクか。何だい?」


ここはアポロ村の商業施設らしきもの。 
魚臭いにおいが立ち込め、恐らく野菜、恐らく肉類

見回してみると


「お前はキノコ族の色んな事を知ってるんだろ?」


「ああ…それがなんだい?」


「タケノコ村に…キノコ族を見なかったか?」

「……はい?ごめんちょっと…何を言ってるんだか…」



「そのまんまの意味。例えばタケノコ軍の本部にキノコ族の女が出入りしてたとか」



「ふむ…すまないが、キノコ村は望遠鏡などで容易に目視できるが、タケノコ村は地形的な問題でね。見たことはないんだ」


「そうか…じゃあ、キノコ村からキノコ族の女が連れ去られた…みたいなの話は聞いたことあるか?」


「ない。」


「……そう…か」


ここでアガレズがぐいっと顔を寄せる 

「……もしかして、"カノジョ"ってやつ?」


「…はぁ?ちげぇよ…んなわけ…」


アガレズがキクの肩に手を置き説得するように話す




「いやいや…、質問に答えた対価として、こちらに報酬がほしいな。」




「答えてねえだろ!?」


「気になるなぁ…君みたいな性格の人間にそういうあるというギャップ、気になるなぁ…俺はね、人間の新たな一面を見るのが面白くて好きなんだよ…
それはその人間がどういう部分かを深く知ることが出来るから、今後の付き合い方にも変化ができる。
過酷な環境を生き抜く小さなテクニックだよ……」


「饒舌だな…気持ち悪い…」


「わかった…じゃあ、10秒以内に答えなければ肩を折る」

アガレズは笑顔で言う。


キクは彼の用意周到さに鳥肌を立てる
そういうことか、この会話の流れを想定して
キクの肩に手をおいたのだ


「なっ!!!ハァ!?!?」


「10...9..」


こういう面で、彼に勝つことは出来ないと悟った


「わかった!わかったよ……!


ーーー昔に、なんか怪我して、入院してるやつがいたんだ。俺はそいつと仲良くなってた

…でも、戦争の時に死んで、失踪したんだ死体が見つからなかった。多分、タケノコ軍にさらわれた。理由は全くわからない」


「なるほど…奇妙だ。それで、君達は…つきあっていたのかい?」


「聞くのそっちかよ…ない」


「すきだった?」

「別に」

「………実につまらない………」


アガレズがで肩から手を離す

その目はジト目で、こちらを睨んでいた

「……まぁいいや、ホテルに帰る、じゃあな」


「待って君」


「あぁ?!なんだよ…」


「……少し来ないかい?君のその荒く、手段を選ばない性格、有効活用できそうだ」

「はぁ……行かなかったらめんどくさい事になりそうだな…」


「くく…それでいいんだよ。全く」


そうして、アガレズがニヤリと笑った。



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