タケノコの里とキノコの山

たけ

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ニ章 

第五十九話 戦いの終わり

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「…………」

 目が覚めた

 寝ぼけた頭で思考を繰り返すがなかなか結論に辿り着かない

 体に何かをつけられているのはわかった

「…………」


 ただひたすらポタポタと音がする

 ポタポタ といえば、戦いで受けた傷はどうなったのだろうか

(戦い…?は!!)


「アデルは!!!!!」


 そう言って飛び起きた、そこは、古い病室だった

 すぐに横から声がとんでくる

「…ようやくお目覚めかい、レイ、お前が最後だ」 


「イアン…!?どうして!なんか前にも似たようなことがあった気がする…」


「まあ落ち着け、戦いは終わった。ヨツンヴァインは討伐し、アデルには逃げられた…そのあと、二グが増援を呼んでくれて、そのまますぐ帰りやがった。今はキノコ軍があの地区の復興作業にあたってる」



「…引き分けってとこか、…じゃあ、私も手伝いにいかないと」


「落ち着けって…ここはキノコ村じゃない。アポロ村だ、戦いに参加したハル カイム キク パアワ 私 お前は、アガレズがアポロ村のビョーイン…ここに運んでくれたんだ、私達を治すために…」


「…!」


 そこで気付く。腕につけれたいくつもの針 そこから流れる液体、後ろには心拍数を測る機械が備えられていた


「……状況を理解したなレイ、私達7人はアポロ村の調査をしにきた。その任務はまだ終わってない。幸いこの様子…アガレズも私達の種族を受け入れてくれたみたいだ、私達はここで療養かつ調査をするため、少しの間この村に滞在する」


「……なるほどね、アデル達と戦った場所…あんなになっちゃったけど、皆ちゃんと復興できるかな」


「……余計な心配を、4級5級なんてこき使ってきゃあいいのに」


「あはは…イアンらしい」

 そのとき、向こうのドアが開き見覚えのある顔ぶれが2人やってくる


「ハル!アガレズ!よかった!無事なんだね!」

「イアンから話は聞いたみたいだね、とにかくそういうことだ。存分にこの村を堪能してくれたまえ、…君達は、価値観の矯正が必要みたいだからね」

 そして間を置き、アガレズがまた話す


「そうだ、…ちゃんと教えてあげるよ

 “タケノコとキノコの歴史“」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 こうして、自由行動となった

 皆、それぞれの時間を過ごしている

 ハルと車椅子に乗ったレイは二人でアポロ村を回ることにした


 薄ら寒い太陽の下。二人は波のように乱れた砂利道を歩く

「……誰も、訓練とか…してないですね」


「あーー…確かに、ホントだ。よく気付いたね」


 風が吹くように、息をするように
 そこには何の変哲もない「生」が存在した

 普通の顔をして歩く者、壊れた家を直している集団。食料を売っている集団、

 アポロ族は戦闘能力が高い生物だ。それでも、

 そこに殺し合いの影など
 全くと言っていいほどなかった




「なんか……幸せそうだ」


「私もソレ、思った」

 なんだか妙に、ぼんやりとした空気がハルとレイを取り囲んだ



 ーーーそう言いつつ、話題を作るため周りに視線を凝らす

「………ありがとうございます。あなたがいなきゃ、勝てなかった」

 ハルはレイの車椅子を押しながら優しく呟く


「こっちのセリフだよ、君がいなきゃ、負けてた。腕は?」


「不思議なことに何ともない…です。あの力、本当に何なんでしょうか…」


「いつか暴走とか、やめてよ?」

 レイの冗談に軽く愛想笑いをする


「はは…暴走とか、流石にしないですよね…」



「ーー私びっくりした。君がそんな強い意志で戦えてるなんて」

「…………諦めらめざるおえない です。本当に、人が死にすぎて…見たくないんだ。こんなもの」


「そっか…ーーかっこいいよ、凄く」




「ーーえ?あ、う、あはは…」


 すこし、湿ったような声だった

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 場面は変わり、昼頃、酒場らしきところへアガレズと7人が集まる

 アガレズが集めたのだ

「さーーて、体調はどうだい?皆さん」


 かるく煽るアガレズにキクたちはキレる

「てめぇ……!動くことすらままならねぇよ…いちいちこんなとこに集めやがって…!」


「体中傷だらけだ。もし今から戦いでも起こったら何もできないからな」


「ふふ…アポロ族は再生能力が強いから、もう治ったけどね」


「黙れこいつ!」



 体中はボロボロだが、心は何とか元気にやっていた

 もちろん。シリアスな話はしたいのだ。しなければならないのだ。しかし出来なかった。

 そんなはなしをしていると、何が壊れそうだと、皆わかっていたから


「さて、今回の要件はーーーなんだと思う?」


「しらん」「死ね」「宴…的な?」「わからん」「…」「はは…」


 それに呆れながら、アガレズは目の前の黒い液体が入ったジョッキを飲み干す。わざとらしくジョッキを机に叩きつけ、言う


「要件は…タケノコ族とキノコ族の歴史さ」


 男は静かにそう言い、淡々と、話をすすめた



     
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