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Oh, that's it
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街が雨に沈んで嵐と入れ代わった露包むの未言巫女は、灯理を驚かせようとその背後に現れた。
しかしノートパソコンに向かう灯理は、窓を叩く激しい雨が普音になってリビングに染み込んでいるせいか、露包むの気配に全く気付いていない。
これは絶好の機会だと露包むの未言巫女は微笑み、音も立てずに灯理の耳にしっとりと濡れた唇を寄せる。
そして、ふっ、と灯理の耳に細息を吹き入れた。
「ひぃっっぐ!?」
いきなり暖かな吐息を耳に挿し込まれた灯理は、飛び跳ねて椅子から転げ落ちてしまった。
その見るからに滑稽な姿に、悪戯の成功した露包むは、それはもう満足そうに笑みで口の端を持ち上げ目を細める。
「な、だ、って、露包む? お前か!」
「ええ。ただいま」
動揺する灯理とは裏腹に、露包むはまるで何もしなかったかのように穏やかに帰宅を告げた。
全くもって今更な挨拶に、灯理は不満をありありと顔に浮かべる。
「入ってきた瞬間にそれを言えよ」
「ふふ」
灯理の愚痴を露包むは笑って受け流した。年長者の余裕で、少しも動じる様子はない。
言っても意味がないのは灯理もこれまでの対応で分かっているので、疲れた溜め息で気持ちを切り替えて、倒した椅子を元に戻す。
「あー。嵐、バレたりしてないよな?」
「私と入れ替わる直前に、人のいない教室に入れてたわ。もう、問題があればこちらから言うから、毎回それを訊くのは止めてくれる?」
心配性の灯理に毎度同じことを確認されるのに、人とは違う精神性を持つ露包むであっても流石に辟易としていて、やんわりと窘めた。
灯理も自分が出過ぎているのが分かっているから、バツが悪そうに頭を掻く。
「むしろ、お昼で彼氏と一緒にいる時に、うっかり灯理のことを話しそうになっていたのが、今日一番危なかった瞬間かしらね」
「あのバカ娘、勘弁してくれよ……」
頤に指を当てて嵐の行動を思い返す露包むは、それだけで見惚れそうになるくらいに美しかったが、頭を抱えてテーブルに突っ伏した灯理の視界には入っていなかった。
灯理は一拍置いた後に、ふと気付いて露包むに顔を向ける。
「ん? なんで入れ替わってない昼間のことなんか知ってんだ?」
「あぁ。嵐がよく歌うから、私の言霊も大分余裕があるからね。私からは嵐の見てるものを覗けるわ」
「……それ、嵐の方は?」
「嵐にはまだそこまでは望めないでしょうね」
聞けば聞く程に、常識を無視しているな、と灯理は思った。
まぁ、そもそもとして、未言という言葉が魂をもって存在しているというのが、いかにも妖怪じみて常識外れなのだから今更に過ぎる。
「それで、灯理は夕食も作らずに何を悩んでいるの? 私、今日も食事を楽しみにしていたのよ?」
「お前、食わなくても全然平気だよな?」
「栄養としては必要なくても、灯理の料理は美味しいから幸せになれるわ」
「……何気にお前も嵐に影響を受けてないか?」
灯理は食い意地を見せる露包むに呆れつつも、キッチンのコンロを指差した。
「昼に作ったスープが余ってるぞ」
「手抜きね。まぁ、いいけれど」
露包むはさらりと銀の髪を崩して、キッチンに足を運んだ。しっとりと湿気を孕んだ浴衣の、人とは違う気配を纏った未言巫女が、慣れた手つきでコンロの火をかけるのは、なんとも情緒のない光景だ。
「それで、さっきの質問に答えてもらっていないけれど。なにをそんなに根を詰めて悩んでいるの?」
露包むは言葉だけを追えば灯理のことを気にしているふうだが、食器棚からスープカップを取り出している行動を加味すると、どうにも片手間な雑談に思えてしまう。
それでも灯理は行き詰っているのも確かなので、気分転換と頭の中の整理に都合がいいと返答する。
「仕事で英語のメールが来たんだけど、玲さんもところどころ読めなくて、俺もそんなに英語得意じゃないし、辞書引いてもネットで単語調べても中身がわかんねーんだよ」
玲のデザイン事務所は、国内だけでなく、国外からも依頼が来る。その件数はけして多くはなく、年に数件だけれども、玲も灯理も英語を然程得意としていないので、こうして手間取ることケースが多い。
逆に英語ができる人員がいれば、さらに国外や日本在住の外国人からの案件が増えて仕事が潤うのが期待できるので、玲も真剣に悩んでいる問題でもある。
温めたスープを舌で転がして、ほんのりとご満悦な露包むは、灯理の背後に戻ってきて背中越しにノートパソコンのモニタを覗いた。
「ふぅん? 嵐に読ませてみればいいじゃない?」
「嵐に? あ、そういや、嵐って英語が専門なのか? でも大学入ったばっかだろ?」
嵐に余計な負担をかけるんじゃないかと、灯理は露包むの提案に素直に頷けなかった。
「でも、あの子、今日帰ってきた中間テストでも英語の訳で満点取っていたわよ」
「……え、まじで」
灯理は高卒で大学の勉強がどんなものか全く知らないが、だからこそ自分には想像も出来ない難しさに違いないと勝手に考えている。高校のテストだって満点を取るのは成績トップの十人にもいるかいないだから、大学のテストで満点を取るだなんて、それこそ教授とか専門家とかに匹敵するんじゃないのかと、目を丸くした。
「嵐……本当に勉強できるんだな……」
「ねぇ。方向音痴で天然で隙が多すぎるけど、割と勉強はできるみたいよ」
二人してこの言い草であるけれど、普段の幼い言動とポンコツっぷりが激しい嵐の姿を考えると妥当な評価なのかもしれない。
「ランタン、こっちに持ってくるわ。うまく角度をいじれば、嵐にも文面見せられるでしょう」
「いや、でも、嵐に見てもらえても、こっちに嵐の声が聞こえないんだから、明日とかでいいんじゃないか?」
家に持ち帰るくらいに困っている案件ではあっても、灯理は嵐への気遣いが先に口をついて出る。
「平気よ。携帯電話も一緒に向こうに行っているの。いつも、彼氏と連絡取ってばかりいるわよ」
「ケータイあん中持っていけるのかよ!?」
嵐と露包むの入れ代わりの仕組みについて余り深くは知らなかった灯理は、今明らかにされる事実に衝撃を受けていた。てっきり、何もないランタンの中で一人寂しく退屈を持て余しているとばかり思っていたのだ。
ランタンから外が見えるのは知っていたので、それなら嵐の部屋からリビングに持って来てやった方がいいだろうか、いやでも嵐の部屋に勝手に入らないと約束しているのにそんなことは出来ない、と最近は悶々と悩んでいたのに、大して意味がなかったと思い知って、灯理は自分の馬鹿らしさに項垂れる。
「嵐に触れているものなら、私が入れるかどうか決められるわよ。そうじゃなかったら、あの子の服とか荷物がその場に放置されて裸でいることになるじゃない」
ちなみにそれを応用すれば服を交換して入れ代わることもできるけれども、お互いの体型と服装がかみ合っていなくてどうしても不格好になるから本当に必要なタイミング以外ではする気はないのだと、露包むは付け加える。
意外と融通の利く都合のいい仕組みなのだと理解して、灯理は安堵するやら納得いかないやら、釈然とはしなかった。
ともかくとして、灯理は嵐にケータイでメッセージを送って状況を伝えた。
嵐からはすぐに了承の返事が来た。
露包むがランタンを抱えて、ガラス越しに、小さくなった嵐が灯理のパソコンに目を走らせる。
一分も経たずに、嵐は灯理のケータイに電話を入れた。
『あかりさん、きこえるー?』
嵐の声は、いつも通りに繋がってくれた。
「ああ、聞こえてる。わかるか?」
『うん。メールくれた人、すっごい喜んでるよ。普通にお礼みたいだよ、全部』
どこがそんなに大変な内容なの、と嵐はちっとも灯理が深刻になる理由が分からなくて、首を傾げていた。
それに対して、灯理もお礼の文面しかないと言う嵐に疑問しか抱けない。
「え、待って。これクレームじゃないのか? 信じられない、とか、なに考えているかわからない、とか書いてあるよな?」
『あー』
灯理や玲は調べて出て来た英単語や常套句の中に、不穏な意味を見付けて急いで解読しないとならない案件だと焦っていたのだが、それを伝えると嵐は未声を間延びさせる。灯理が何を分かっていなかったのかを理解して、それで声が先に出たのだ。
『あのね、このメールくれた人、感極まってすっごい文面がはちゃめちゃになってるし、スラングも多いの。あかりさんが言ってるとこの文を訳すと、こんなに素晴らしいデザインは信じられない! こんな発想は私にはなかった! どうすればこんなアイデアが出て来るんだ、その思考が私にはわからないよ! オーマイゴッド! って感じだよ』
アメリカ人っぽさを出そうとしたのか、嵐が大仰な口調と声量で訳した文章を聞いて、灯理は唖然とするしかできなかった。
こちらの仕事に問題がなかったばかりか、賞讃の言葉だけが連ねられていると分かって胸を撫で下ろしてもいい場面だけれども、逆にだからこそ深刻に悩んで頭を痛めていたのが徒労でしかなかったと突き付けられて、喜べばいいのか嘆けばいいのか、それすらも分からなかった。
「な、なぁ、嵐、玲さんにも伝えないといけないから、それメールで打って送ってくれないか?」
『はーい。すぐできますよー』
半日以上、解決できなくて夕食も作らずに悪戦苦闘していたものを、すぐ出来ると明るく言われて、灯理は自分の不甲斐なさにちょっと泣きたくなった。
「ね、意外と嵐って勉強できるでしょ?」
ちょっと誇らしげに言う露包むの未言巫女の言葉も、今の灯理には追い打ちとしか受け止められなかった。
しかしノートパソコンに向かう灯理は、窓を叩く激しい雨が普音になってリビングに染み込んでいるせいか、露包むの気配に全く気付いていない。
これは絶好の機会だと露包むの未言巫女は微笑み、音も立てずに灯理の耳にしっとりと濡れた唇を寄せる。
そして、ふっ、と灯理の耳に細息を吹き入れた。
「ひぃっっぐ!?」
いきなり暖かな吐息を耳に挿し込まれた灯理は、飛び跳ねて椅子から転げ落ちてしまった。
その見るからに滑稽な姿に、悪戯の成功した露包むは、それはもう満足そうに笑みで口の端を持ち上げ目を細める。
「な、だ、って、露包む? お前か!」
「ええ。ただいま」
動揺する灯理とは裏腹に、露包むはまるで何もしなかったかのように穏やかに帰宅を告げた。
全くもって今更な挨拶に、灯理は不満をありありと顔に浮かべる。
「入ってきた瞬間にそれを言えよ」
「ふふ」
灯理の愚痴を露包むは笑って受け流した。年長者の余裕で、少しも動じる様子はない。
言っても意味がないのは灯理もこれまでの対応で分かっているので、疲れた溜め息で気持ちを切り替えて、倒した椅子を元に戻す。
「あー。嵐、バレたりしてないよな?」
「私と入れ替わる直前に、人のいない教室に入れてたわ。もう、問題があればこちらから言うから、毎回それを訊くのは止めてくれる?」
心配性の灯理に毎度同じことを確認されるのに、人とは違う精神性を持つ露包むであっても流石に辟易としていて、やんわりと窘めた。
灯理も自分が出過ぎているのが分かっているから、バツが悪そうに頭を掻く。
「むしろ、お昼で彼氏と一緒にいる時に、うっかり灯理のことを話しそうになっていたのが、今日一番危なかった瞬間かしらね」
「あのバカ娘、勘弁してくれよ……」
頤に指を当てて嵐の行動を思い返す露包むは、それだけで見惚れそうになるくらいに美しかったが、頭を抱えてテーブルに突っ伏した灯理の視界には入っていなかった。
灯理は一拍置いた後に、ふと気付いて露包むに顔を向ける。
「ん? なんで入れ替わってない昼間のことなんか知ってんだ?」
「あぁ。嵐がよく歌うから、私の言霊も大分余裕があるからね。私からは嵐の見てるものを覗けるわ」
「……それ、嵐の方は?」
「嵐にはまだそこまでは望めないでしょうね」
聞けば聞く程に、常識を無視しているな、と灯理は思った。
まぁ、そもそもとして、未言という言葉が魂をもって存在しているというのが、いかにも妖怪じみて常識外れなのだから今更に過ぎる。
「それで、灯理は夕食も作らずに何を悩んでいるの? 私、今日も食事を楽しみにしていたのよ?」
「お前、食わなくても全然平気だよな?」
「栄養としては必要なくても、灯理の料理は美味しいから幸せになれるわ」
「……何気にお前も嵐に影響を受けてないか?」
灯理は食い意地を見せる露包むに呆れつつも、キッチンのコンロを指差した。
「昼に作ったスープが余ってるぞ」
「手抜きね。まぁ、いいけれど」
露包むはさらりと銀の髪を崩して、キッチンに足を運んだ。しっとりと湿気を孕んだ浴衣の、人とは違う気配を纏った未言巫女が、慣れた手つきでコンロの火をかけるのは、なんとも情緒のない光景だ。
「それで、さっきの質問に答えてもらっていないけれど。なにをそんなに根を詰めて悩んでいるの?」
露包むは言葉だけを追えば灯理のことを気にしているふうだが、食器棚からスープカップを取り出している行動を加味すると、どうにも片手間な雑談に思えてしまう。
それでも灯理は行き詰っているのも確かなので、気分転換と頭の中の整理に都合がいいと返答する。
「仕事で英語のメールが来たんだけど、玲さんもところどころ読めなくて、俺もそんなに英語得意じゃないし、辞書引いてもネットで単語調べても中身がわかんねーんだよ」
玲のデザイン事務所は、国内だけでなく、国外からも依頼が来る。その件数はけして多くはなく、年に数件だけれども、玲も灯理も英語を然程得意としていないので、こうして手間取ることケースが多い。
逆に英語ができる人員がいれば、さらに国外や日本在住の外国人からの案件が増えて仕事が潤うのが期待できるので、玲も真剣に悩んでいる問題でもある。
温めたスープを舌で転がして、ほんのりとご満悦な露包むは、灯理の背後に戻ってきて背中越しにノートパソコンのモニタを覗いた。
「ふぅん? 嵐に読ませてみればいいじゃない?」
「嵐に? あ、そういや、嵐って英語が専門なのか? でも大学入ったばっかだろ?」
嵐に余計な負担をかけるんじゃないかと、灯理は露包むの提案に素直に頷けなかった。
「でも、あの子、今日帰ってきた中間テストでも英語の訳で満点取っていたわよ」
「……え、まじで」
灯理は高卒で大学の勉強がどんなものか全く知らないが、だからこそ自分には想像も出来ない難しさに違いないと勝手に考えている。高校のテストだって満点を取るのは成績トップの十人にもいるかいないだから、大学のテストで満点を取るだなんて、それこそ教授とか専門家とかに匹敵するんじゃないのかと、目を丸くした。
「嵐……本当に勉強できるんだな……」
「ねぇ。方向音痴で天然で隙が多すぎるけど、割と勉強はできるみたいよ」
二人してこの言い草であるけれど、普段の幼い言動とポンコツっぷりが激しい嵐の姿を考えると妥当な評価なのかもしれない。
「ランタン、こっちに持ってくるわ。うまく角度をいじれば、嵐にも文面見せられるでしょう」
「いや、でも、嵐に見てもらえても、こっちに嵐の声が聞こえないんだから、明日とかでいいんじゃないか?」
家に持ち帰るくらいに困っている案件ではあっても、灯理は嵐への気遣いが先に口をついて出る。
「平気よ。携帯電話も一緒に向こうに行っているの。いつも、彼氏と連絡取ってばかりいるわよ」
「ケータイあん中持っていけるのかよ!?」
嵐と露包むの入れ代わりの仕組みについて余り深くは知らなかった灯理は、今明らかにされる事実に衝撃を受けていた。てっきり、何もないランタンの中で一人寂しく退屈を持て余しているとばかり思っていたのだ。
ランタンから外が見えるのは知っていたので、それなら嵐の部屋からリビングに持って来てやった方がいいだろうか、いやでも嵐の部屋に勝手に入らないと約束しているのにそんなことは出来ない、と最近は悶々と悩んでいたのに、大して意味がなかったと思い知って、灯理は自分の馬鹿らしさに項垂れる。
「嵐に触れているものなら、私が入れるかどうか決められるわよ。そうじゃなかったら、あの子の服とか荷物がその場に放置されて裸でいることになるじゃない」
ちなみにそれを応用すれば服を交換して入れ代わることもできるけれども、お互いの体型と服装がかみ合っていなくてどうしても不格好になるから本当に必要なタイミング以外ではする気はないのだと、露包むは付け加える。
意外と融通の利く都合のいい仕組みなのだと理解して、灯理は安堵するやら納得いかないやら、釈然とはしなかった。
ともかくとして、灯理は嵐にケータイでメッセージを送って状況を伝えた。
嵐からはすぐに了承の返事が来た。
露包むがランタンを抱えて、ガラス越しに、小さくなった嵐が灯理のパソコンに目を走らせる。
一分も経たずに、嵐は灯理のケータイに電話を入れた。
『あかりさん、きこえるー?』
嵐の声は、いつも通りに繋がってくれた。
「ああ、聞こえてる。わかるか?」
『うん。メールくれた人、すっごい喜んでるよ。普通にお礼みたいだよ、全部』
どこがそんなに大変な内容なの、と嵐はちっとも灯理が深刻になる理由が分からなくて、首を傾げていた。
それに対して、灯理もお礼の文面しかないと言う嵐に疑問しか抱けない。
「え、待って。これクレームじゃないのか? 信じられない、とか、なに考えているかわからない、とか書いてあるよな?」
『あー』
灯理や玲は調べて出て来た英単語や常套句の中に、不穏な意味を見付けて急いで解読しないとならない案件だと焦っていたのだが、それを伝えると嵐は未声を間延びさせる。灯理が何を分かっていなかったのかを理解して、それで声が先に出たのだ。
『あのね、このメールくれた人、感極まってすっごい文面がはちゃめちゃになってるし、スラングも多いの。あかりさんが言ってるとこの文を訳すと、こんなに素晴らしいデザインは信じられない! こんな発想は私にはなかった! どうすればこんなアイデアが出て来るんだ、その思考が私にはわからないよ! オーマイゴッド! って感じだよ』
アメリカ人っぽさを出そうとしたのか、嵐が大仰な口調と声量で訳した文章を聞いて、灯理は唖然とするしかできなかった。
こちらの仕事に問題がなかったばかりか、賞讃の言葉だけが連ねられていると分かって胸を撫で下ろしてもいい場面だけれども、逆にだからこそ深刻に悩んで頭を痛めていたのが徒労でしかなかったと突き付けられて、喜べばいいのか嘆けばいいのか、それすらも分からなかった。
「な、なぁ、嵐、玲さんにも伝えないといけないから、それメールで打って送ってくれないか?」
『はーい。すぐできますよー』
半日以上、解決できなくて夕食も作らずに悪戦苦闘していたものを、すぐ出来ると明るく言われて、灯理は自分の不甲斐なさにちょっと泣きたくなった。
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