【筋トレ中毒のシャブ屋】

Cozyもみっこ花子

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第1パケ 「シャブ屋がやって来た」

【筋トレ中毒のシャブ屋】

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第1パケ【筋トレ中毒のシャブ屋】


「シャブ屋がやって来た」




暴対法が施行されて以来、どこの店でも、決まってヤクザの来店と言えば、堅気より礼儀正しいのがお決まりだ。


銀行口座開設や保険加入はおろか、車のローンも組めない差別社会で生き抜く処世術として、必然身に付くからだ。



現代では金色に輝く襟の代紋や、袖からわずかに覗いた刺青はもちろん、欠損した小指をちらつかせただけでも脅迫罪になりかねない。だから、彼等は只管(ひたすら)腰を低くして大人しく努めるのだった。


今日来た客もそんな一人だった。 


ショートパンツにロンTと、随分若々しい風体でニコニコしながらも、どうも、その愛想笑いは板についておらず、つくり笑顔のままで口から吐き出す覚束無い敬語は、寧ろ刑務所に収監された懲役囚のそれと似通っていて不気味だった。


直感的にそれを感じとった私は、乗り付けた品川ナンバーの1000万円を越える国産超高級車を一瞥した後、彼の左の手のひらを確認してみた。

(やはり…)


もう、赤子の様に一日中握りしめたままの癖は、どんな時にも直らないようだった。 


(赤ちゃんみたいに臭いかもなぁ…)


そんなことを考えながらも、気付かないふりをして席に通した。


ロンTの奥に着込んだ黒のラッシュガードに包まれた彫り物の空想をしてみる。

(登り竜…。いや、この顔付きだと背中一面般若かもなぁ…)


うつ伏せになるや、私は彼に話しかけてみた。

「権堂さん、おたく、柔らかい物腰だけど、結構ワルでしょ?(笑)」


一瞬、わずかに体がピクリとしたが、その瞬間、彼は無意識か、左拳(こぶし)の緊張を解き、リラックスしたようだった。


やはり、指が2本半しかない。喫茶店でこの掌(てのひら)を出して「5杯!」と注文したところで、恐らく2杯しかコーヒーは届かないだろう。



「へへっ、わかりまんのか?」


「そりゃもう…」


そこからは、彼の所属する組織体、月に300万~1000万円ものシノギの話し、計12年4回の懲役と、4度の断指のこと。先月に国内で起きた史上最高量の覚醒剤押収劇の顛末裏話へと話題が弾んだ。


九州への運び屋が足らないらしい。


Cozyもみっこ太郎の生活水準はかなり厳しい。


「ごっ、権堂さん、その役目…」「いや…」



「なんだい?おまえさん、やってくれるんか? 礼は弾むぜ?」


その時、脳裏に、小太郎三人娘の顔が浮かんだ。 


「いっ、いや…。その役目は、長距離運転になるし腰痛の元ですなぁ~、は~はっはっは!」


そこからは彼の趣味だと言う筋トレに話題を変え、事なきを得たのである。



誘惑に駆られた危ない60分間だった。



第1パケ
「シャブ屋がやって来た」
おわり
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