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第2パケ 「シャブ屋ケンちゃんの誘惑」
【筋トレ中毒のシャブ屋】
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第2パケ【筋トレ中毒のシャブ屋】
暴対法が施行されて以来、どこの店でも、決まってヤクザの来店と言えば、堅気より礼儀正しいのがお決まりだ。
銀行口座開設や保険加入はおろか、車のローンも組めない差別社会で生き抜く処世術として、必然身に付いたからだ・・・
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「シャブ屋ケンちゃんの誘惑」
すっかり当店が気に入ったシャブ屋のケンちゃん(権堂堅)は、あれ以来毎週の様に身体を解しに来る様になっていた。
「ケンちゃん、今日もデリバリーでっか?」
私の関西弁を真似して茶化した問いかけにも陽気に応じる。
「そうでんな。今日は北陸の港に荷揚げされたブツを北朝鮮の売人から受け取って、あっちゃこっちゃに配り終えたとこですわ」
関西弁を喋ったかと思えば、時に広島訛りになり、車は品川ナンバーで、活動拠点は岐阜の様である。
「ワシなぁ、北は網走から、南は広島まであちこちの寄せ場(刑務所)に言ってますやろ?せやから各地の方言がミックスになっとりまんのや。関西弁が性には合うけど、関西人からしたらおかしいんとちゃいます?」
「そうなんですか。ところで権堂さん。もしこれから10億くらい稼いだら、海外にでも高飛びしてのんびりするんですか?」
「海外ねぇ~。そうでんなぁ、まぁ、治安が良いならいいけどなぁ~」
(おっ、おい!あんたの口から治安かい!)
「確かに日本は治安が良いですからね。まぁシャブ屋が居なくなれば、治安が更によくなるんとちゃいます?(笑)」
「キビシ~!(笑) それにワシ、飛行機怖くてよう乗らんのですわ。もしも、あのイスラム国? あんなん居たら怖いですやん! 震え上がりますわ!」
(シャブ何キロも抱えて東奔西走する方が怖いやろ…)
「しかし、毎日毎日パクらないかと神経ピリピリちゃいます?よく持ちますね?現実逃避にツメタイ(覚醒剤を体内に入れると冷たい意味からの隠語)のを身体に入れとりますんか?」
「いや、ワシは売(バイ)のプロでっからな。身体には入れまへん。情報はなぁ、県警抱いとりまんのや。世の中金ですわ。小太郎はんも接客しとりゃあ、人間の弱さや欲深さ、色々わかりますやろ? 同じ人間ですやん。叩けばホコリが出る(1つくらい後ろめたい悪さがある)んわ、警察官も裁判官も同じですわ。ロリコンか不倫かゲイか女装趣味か知らんけど、弱み握って、わずかな小遣い与えてみなはれ、あいつら犬と同じですわ」
確かに自分自身、10歳で警察の世話になって以来、殺人を除くあらゆる犯罪を犯し、多くの司法に関わる人間達と接して来たが、実際に、その警察官や保護司の犯罪を目の当たりにして来た。
ましてや、海外の警察ともなれば、それは酷いものだろう。
「そうですか…。まぁ確かに数十年前までは、売春も覚醒剤も国家公認でしたからねぇ。何が何やらわかりませんね…」
「ほんまでっせ。年間に公安委員会にパクられる警察官が何百人いるか知ってまっか? あんなん氷山の一角で、闇から闇へと、その何倍も有耶無耶されてんちゃいまっか? 小太郎はん。あんた、いつでも例のアレ、やる気になったらゆうておくんなはれや。精神科の医師か何か抱き込んで、うまいことやったら、誰もこんな場末の慰安所が密売所とは思いまへんやろ?」
脳裡に去来した、当店の顧問精神分析医トミーのことを忘れようと、無闇にかぶりを振る私を、ギラギラした目で見つめる権藤の眼差しは、獲物を狙う様に鋭いものだった。
「あっ、せやせや、回数券?それいただきますわ。3万3千円でしたな?」
そう言うと床に置いていた紙袋の中から無造作に100万円の束を3つと30万円を掴みカウンターの上に乗せた。
「こんで10冊分でんな?ワシが来んくなった時は、わかりやすぅ~パクられた時でんな。懲役長ぅなったら、どっかの孤児院にでも寄付してくれたらええですわ。もちろんこの金は申告不要でっせ(笑)」
孤児だった彼は、ギラギラした目付きのままで陽気にそう語ると、次回はスクワットのやり方を教えてくれと言い残し帰って行った。
「やった! 懲役ボケかシャブボケか知らんけど、権藤、小卒の俺より算数アホやん! 10冊分を100冊分と間違えてからに!まる儲けや!!」
俺は33万円を除いた297万円を急いでズボンのボケットに隠すと、施術ベットの周りをスキップして回った。
その金がシャブの売上げだと言う事実をすっかり忘れた俺は、「今日なら懸垂が200回は出来そうだぞ~!」と舞い上がっていた。
ケンちゃんの巧みな罠の触手が俺に伸びてきているのだと気付かぬまま…
第2パケ
「シャブ屋ケンちゃんの誘惑」
おわり
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