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4.離岸流という名の残酷なうねり
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わたしたちの関係も、遠からず引き裂かれるだろう。
そして離岸流という名の残酷なうねりが、罪を犯した者を遠くまで追いやろうとしているのだ。
待って――。いま思いついた。現場に立ち、じかに肌で感じることにより、直感がはたらいたのかもしれない。
もしかしたら小雪は、道中気持ちをひるがえし、あえて書状を届けまいと、みずから死を選んだのではないか?
愛する人を戦で失うぐらいなら、いっそ自身が犠牲となり、出陣を伝えないことで三四郎の命がつながると考えたのでは? 心優しい小雪ならそう考えたことだってあり得た。
間宮さんにとって、わたしはどういうポジションにいるのだろうか。
間宮さんには大学時代から十九年つれそった奥さんがいた。反抗期ながら優弥くんというバスケットのうまい自慢の息子もいた。
かたや、わたしごときは、どれほど重要なウエイトとして占めているのだろうか。
彼の家庭をこわすのは傲慢な発想だ。とても臆病者にはできない。
だけど、この愛を貫きたいと思うのも自己保存本能のなせる業だけではないはず。わたしだって小雪同様、走り抜けたい。
それとも、潔く身を引くべきなのだろうか?
こんなに想っているのに、肝心の間宮さんの気持ちを推し量ることができない。
わたしもまた、間宮さんの人生を守るために、大波にさらわれるのをあえて選ぶべきなのか?
女同士の醜い争いになるぐらいなら、いっそのこと滅びの道を選ぶのも華かもしれない。それもひとつの愛の形ではなかろうか。
彼のなかでいつまでも美しく若いまま刻印されるなら、そんな美意識のまま立ち去るのもありかもしれない。
女なら、老いさらばえ、しわくちゃになって、モズの早贄にされたカエルみたいに干からびた姿を好きな男にさらしたくはない。
左手に象島を見ながらすぎ、中ノ島に近づいた。あいにくと中ノ島まではトンボロは続いていないが、水かさはたかだか知れているので、なんとか歩いて渡れそうだ。
それよりも間宮さんはどこへ行ったのかしら?
え?
待って。あれはなに?
中ノ島は標高五〇メートル前後ながら、山頂付近におぼろげな灯りが見えた。あれは民家の灯りではないか。そんなはずはない。三四郎島の三島はれっきとした無人島のはずだ。人が住むには適していない。
まさか間宮さんが超人的な身体能力と速さをもってして、あそこまで駆けあがったというのか。
そのとき、ほぼ同時に、左右の沖合から白い波頭が低い塀みたいに押し寄せるのが見えた。
ごうごうと水音を立て、黒い海水が逆巻きながら向かってきた。
わたしは逃げることもできず、その場にふんばるしかない。
一波はどうにか足もとをぬらすだけで済んだ。矢継ぎ早、沖の方で新たな第二波が生まれ、近づきつつあった。いつまでこらえることができるか、心もとない……。
やはり満潮がきたので、さっきの年老いたカップルは引きあげていったのだ。
このままではほんとうに小雪の二の舞になってしまう。
中ノ島の山頂の灯り目指して渡るべきか否か、迷った。
それとも間宮さんから身を引くために、いっそ波に飲みこまれるべきではないか。美しくも、独りよがりでエゴイスティックな自己犠牲――。
身悶えるようにためらった。さっきまで彼のぬくもりとつながっていたのに――死にたくなんかあるものか!
生きたい。ほかのすべてを失ってもかまわない。どんなに後ろ指さされようとも、間宮さんだけはなくしたくはない。
間宮さんだけが彩りをあたえてくれた、空気の淀んだ霊廟に吹き抜けてきた風。
死んだも同然だったドライフラワーみたいなミイラのわたしに息吹を注ぎこんでくれ、命を宿してくれた。
間宮さんこそ一条の光。
絶望のマリアナ海溝に沈没したままだったわたしを引き揚げしてくれた救いの船。
またしても、さっきよりも大きな第二波が襲いかかってきた。これも左右から挟みうちの恰好で。死の怒涛はむきだしの膝小僧まで削りあげ、波しぶきで洗顔され、おかげでわたしは我に返った。
どうやらグズクズしていられないようだ。
いつまでも内省の湿地帯にはまりこんでいれば、いずれ海の藻屑と消えるだろう。
いまこそ決めなければならない。
――と、そのとき、若い男性の声を聞いた。
頭上から、おーい、おーいと呼ぶ声。あいにく間宮さんのそれではない。
中ノ島の山頂に灯りを見た。まぎれもない。急な斜面の、踊り場になった猫の額ほどの平地に、粗末ながら庵が結んであった。庵のそばで篝火を炊き、かたわらで誰かが必死に手をふっているのだ。
わたしは髪から耳をだし、手をパラボラアンテナの皿のようにそえた。――たしかに聞こえた。
「小雪! 小雪ーーーッ!」と、人影がこちらに向けて叫んでいた。声のかぎり叫び、なかば裏声になっていた。「拙者は二度とおまえを失いとうない。小雪、こっちだ、はやく逃げろ! 走れい、小雪!」
眼を細め、つぶさに見た。ありし日の三四郎の姿を。
まちがいない。無精ひげがはえて憔悴し、みすぼらしい襤褸をまとってはいたが、まぎれもない伝説の三四郎その人が時空をこえて佇んでいた。死にもの狂いの形相で声をあらげて叫び、折れよとばかりに車のワイパーよろしく手をふっている。
なぜあの人はこの時代に現出したのだろうか。
生と死が交錯するとき、そんな奇蹟がおこるものなのか。それとも愛する人を死なせた悔恨のために、いつまでも現世にしがみついているというのか――。
是非もない。あの庵めがけて登るべきではないか。
いや、小雪は三四郎を生かすために、あえて死を選んだのだとすれば――。
間宮さんには守るべきものがほかにあった。わたしだけを見つめてくれるとはかぎらないし、守るべきものを捨て、破壊してしまうことは本意ではない。不幸になる人たちがあってはいけない。
ことをまるくおさめるには、やっぱり身を引くことこそ最善の選択ではないか。
わたしは混乱している。わたしは恵茉なのか、それとも小雪なのか。
それともわたしは――。わたしはあの人と――。
「小雪ーーーッ!」と、島の人影は半身を折りながら声をからして叫んだ。「こっちだ。ここへあがってこい。真下の磯から左にまわりこめ! 道がある! たのむ、こっちへまいれ! 小雪、おまえを死なせたくない! おまえがいない人生なぞ耐えきれぬ!」
心ここにあらずの心境で、トンボロがとぎれた磯へ踏みだした。ふくらはぎまで没するほどの深さだ。
わたしは小雪なのだろうか? 書状を抱えたあの日の純真な十六の乙女。三四郎が勘ちがいするのも無理はない。
わたしは両手でメガホンをつくり、
「いますぐ行くから! 今度こそ離さないで!」と、叫んだ。
そうだ。間宮さんをあきらめ、わたしは三四郎と結ばれるのだ。それもいいと思った。わたしは愛に生き、愛に殉死するのもいとわない女、小雪として生きるのだ。誰も傷つけず、そしてみんなの思いが報われる――。
みんな? 間宮さんは? それで納得してくれるだろうか?
「はやくせい、小雪! 大波が連続でくるのだ!……待ち侘びたぞ! よくぞ闇のなかをまいった!」
「もう暗闇を渡るのはこりごり」と、わたしはつぶやき、中ノ島に向けてザブザブと水のなかをかきわけて進んだ。それを邪魔するかのように、獰猛な第三派がぶつかってきた。おそるべき水圧でもっていかれそうになったが、なんとか踏みとどまった。わたしの下半身をまきこみ、体温を奪っていった。
「がんばれ小雪、岸はすぐそこだ。もう離さぬぞ! 二度も死なせはしない! 永遠にいっしょだ!」
「……待ってて、かならず行くから」と、わたしは命を削るような寒さにふるえながら叫んだ。歯の根があわないほどの冷たさ。このふるえは彼でないと温められない。
――彼? どちらの彼?
そのときだった。
「こらッ! 恵茉、そっちへ行くんじゃない。なに考えてる、向こうに中州はないぞ!」と、わたしの背後で鋭い声がした。
反射的にふり向いた。
左の方角に、ライトアップされた堂ヶ島温泉ホテルの皓々たる灯りが見えた。
いま、ひと風呂浴びてホテルでくつろいでいる客たちは、まさかこの時間に、わたしたちが命がけの遠征にきているとは夢にも思うまい。暗闇が広がり、断続的に上げ潮の波が中州を閉ざそうと襲いくる時間だった。
「見な、僕はここだ」と、右側のアングルになった象島の根もとで、パッと別の灯りがともった。暗闇のなか、小さな燈明が爆ぜた。リアルな希望の光だった。「なに独り言を言ってんだよ、恵茉。こっちだ」と、間宮さんがいたずらっぽく言った。火をつけた手持ち花火から、パチパチと色とりどりの閃光がホウセンカの種のようにはじけ、香ばしい煙とともに間宮さんの姿を浮かびあがらせた。あざやかな笑顔が隈取られた。「君がちゃんとまっすぐ歩いてこられるか、陰で見てたが、なかなか怪しいな。やっぱり僕が見ていないと、あさっての方向に向かっちゃいそうだ」
「間宮さん」
「恵茉。しっかり歩け。君はひとりじゃ生きられない。誰かがついててやらないと。まったく世話が焼けるな。気になって放っておけない」
「間宮さん」
「小雪! 小雪ーッ! もどれ、小雪ーーーッ!」と、悲鳴に近い哀れな声がこだまし、風に流され、うつろに反響した。
「小雪は大波に奪われたかもしれないが」と、間宮さんは中ノ島をふり返りながら言った。「恵茉、君だけは奪われやしない。大丈夫、僕が防波堤になってやるから」
と言い、わたしを抱きしめてくれた。
了
そして離岸流という名の残酷なうねりが、罪を犯した者を遠くまで追いやろうとしているのだ。
待って――。いま思いついた。現場に立ち、じかに肌で感じることにより、直感がはたらいたのかもしれない。
もしかしたら小雪は、道中気持ちをひるがえし、あえて書状を届けまいと、みずから死を選んだのではないか?
愛する人を戦で失うぐらいなら、いっそ自身が犠牲となり、出陣を伝えないことで三四郎の命がつながると考えたのでは? 心優しい小雪ならそう考えたことだってあり得た。
間宮さんにとって、わたしはどういうポジションにいるのだろうか。
間宮さんには大学時代から十九年つれそった奥さんがいた。反抗期ながら優弥くんというバスケットのうまい自慢の息子もいた。
かたや、わたしごときは、どれほど重要なウエイトとして占めているのだろうか。
彼の家庭をこわすのは傲慢な発想だ。とても臆病者にはできない。
だけど、この愛を貫きたいと思うのも自己保存本能のなせる業だけではないはず。わたしだって小雪同様、走り抜けたい。
それとも、潔く身を引くべきなのだろうか?
こんなに想っているのに、肝心の間宮さんの気持ちを推し量ることができない。
わたしもまた、間宮さんの人生を守るために、大波にさらわれるのをあえて選ぶべきなのか?
女同士の醜い争いになるぐらいなら、いっそのこと滅びの道を選ぶのも華かもしれない。それもひとつの愛の形ではなかろうか。
彼のなかでいつまでも美しく若いまま刻印されるなら、そんな美意識のまま立ち去るのもありかもしれない。
女なら、老いさらばえ、しわくちゃになって、モズの早贄にされたカエルみたいに干からびた姿を好きな男にさらしたくはない。
左手に象島を見ながらすぎ、中ノ島に近づいた。あいにくと中ノ島まではトンボロは続いていないが、水かさはたかだか知れているので、なんとか歩いて渡れそうだ。
それよりも間宮さんはどこへ行ったのかしら?
え?
待って。あれはなに?
中ノ島は標高五〇メートル前後ながら、山頂付近におぼろげな灯りが見えた。あれは民家の灯りではないか。そんなはずはない。三四郎島の三島はれっきとした無人島のはずだ。人が住むには適していない。
まさか間宮さんが超人的な身体能力と速さをもってして、あそこまで駆けあがったというのか。
そのとき、ほぼ同時に、左右の沖合から白い波頭が低い塀みたいに押し寄せるのが見えた。
ごうごうと水音を立て、黒い海水が逆巻きながら向かってきた。
わたしは逃げることもできず、その場にふんばるしかない。
一波はどうにか足もとをぬらすだけで済んだ。矢継ぎ早、沖の方で新たな第二波が生まれ、近づきつつあった。いつまでこらえることができるか、心もとない……。
やはり満潮がきたので、さっきの年老いたカップルは引きあげていったのだ。
このままではほんとうに小雪の二の舞になってしまう。
中ノ島の山頂の灯り目指して渡るべきか否か、迷った。
それとも間宮さんから身を引くために、いっそ波に飲みこまれるべきではないか。美しくも、独りよがりでエゴイスティックな自己犠牲――。
身悶えるようにためらった。さっきまで彼のぬくもりとつながっていたのに――死にたくなんかあるものか!
生きたい。ほかのすべてを失ってもかまわない。どんなに後ろ指さされようとも、間宮さんだけはなくしたくはない。
間宮さんだけが彩りをあたえてくれた、空気の淀んだ霊廟に吹き抜けてきた風。
死んだも同然だったドライフラワーみたいなミイラのわたしに息吹を注ぎこんでくれ、命を宿してくれた。
間宮さんこそ一条の光。
絶望のマリアナ海溝に沈没したままだったわたしを引き揚げしてくれた救いの船。
またしても、さっきよりも大きな第二波が襲いかかってきた。これも左右から挟みうちの恰好で。死の怒涛はむきだしの膝小僧まで削りあげ、波しぶきで洗顔され、おかげでわたしは我に返った。
どうやらグズクズしていられないようだ。
いつまでも内省の湿地帯にはまりこんでいれば、いずれ海の藻屑と消えるだろう。
いまこそ決めなければならない。
――と、そのとき、若い男性の声を聞いた。
頭上から、おーい、おーいと呼ぶ声。あいにく間宮さんのそれではない。
中ノ島の山頂に灯りを見た。まぎれもない。急な斜面の、踊り場になった猫の額ほどの平地に、粗末ながら庵が結んであった。庵のそばで篝火を炊き、かたわらで誰かが必死に手をふっているのだ。
わたしは髪から耳をだし、手をパラボラアンテナの皿のようにそえた。――たしかに聞こえた。
「小雪! 小雪ーーーッ!」と、人影がこちらに向けて叫んでいた。声のかぎり叫び、なかば裏声になっていた。「拙者は二度とおまえを失いとうない。小雪、こっちだ、はやく逃げろ! 走れい、小雪!」
眼を細め、つぶさに見た。ありし日の三四郎の姿を。
まちがいない。無精ひげがはえて憔悴し、みすぼらしい襤褸をまとってはいたが、まぎれもない伝説の三四郎その人が時空をこえて佇んでいた。死にもの狂いの形相で声をあらげて叫び、折れよとばかりに車のワイパーよろしく手をふっている。
なぜあの人はこの時代に現出したのだろうか。
生と死が交錯するとき、そんな奇蹟がおこるものなのか。それとも愛する人を死なせた悔恨のために、いつまでも現世にしがみついているというのか――。
是非もない。あの庵めがけて登るべきではないか。
いや、小雪は三四郎を生かすために、あえて死を選んだのだとすれば――。
間宮さんには守るべきものがほかにあった。わたしだけを見つめてくれるとはかぎらないし、守るべきものを捨て、破壊してしまうことは本意ではない。不幸になる人たちがあってはいけない。
ことをまるくおさめるには、やっぱり身を引くことこそ最善の選択ではないか。
わたしは混乱している。わたしは恵茉なのか、それとも小雪なのか。
それともわたしは――。わたしはあの人と――。
「小雪ーーーッ!」と、島の人影は半身を折りながら声をからして叫んだ。「こっちだ。ここへあがってこい。真下の磯から左にまわりこめ! 道がある! たのむ、こっちへまいれ! 小雪、おまえを死なせたくない! おまえがいない人生なぞ耐えきれぬ!」
心ここにあらずの心境で、トンボロがとぎれた磯へ踏みだした。ふくらはぎまで没するほどの深さだ。
わたしは小雪なのだろうか? 書状を抱えたあの日の純真な十六の乙女。三四郎が勘ちがいするのも無理はない。
わたしは両手でメガホンをつくり、
「いますぐ行くから! 今度こそ離さないで!」と、叫んだ。
そうだ。間宮さんをあきらめ、わたしは三四郎と結ばれるのだ。それもいいと思った。わたしは愛に生き、愛に殉死するのもいとわない女、小雪として生きるのだ。誰も傷つけず、そしてみんなの思いが報われる――。
みんな? 間宮さんは? それで納得してくれるだろうか?
「はやくせい、小雪! 大波が連続でくるのだ!……待ち侘びたぞ! よくぞ闇のなかをまいった!」
「もう暗闇を渡るのはこりごり」と、わたしはつぶやき、中ノ島に向けてザブザブと水のなかをかきわけて進んだ。それを邪魔するかのように、獰猛な第三派がぶつかってきた。おそるべき水圧でもっていかれそうになったが、なんとか踏みとどまった。わたしの下半身をまきこみ、体温を奪っていった。
「がんばれ小雪、岸はすぐそこだ。もう離さぬぞ! 二度も死なせはしない! 永遠にいっしょだ!」
「……待ってて、かならず行くから」と、わたしは命を削るような寒さにふるえながら叫んだ。歯の根があわないほどの冷たさ。このふるえは彼でないと温められない。
――彼? どちらの彼?
そのときだった。
「こらッ! 恵茉、そっちへ行くんじゃない。なに考えてる、向こうに中州はないぞ!」と、わたしの背後で鋭い声がした。
反射的にふり向いた。
左の方角に、ライトアップされた堂ヶ島温泉ホテルの皓々たる灯りが見えた。
いま、ひと風呂浴びてホテルでくつろいでいる客たちは、まさかこの時間に、わたしたちが命がけの遠征にきているとは夢にも思うまい。暗闇が広がり、断続的に上げ潮の波が中州を閉ざそうと襲いくる時間だった。
「見な、僕はここだ」と、右側のアングルになった象島の根もとで、パッと別の灯りがともった。暗闇のなか、小さな燈明が爆ぜた。リアルな希望の光だった。「なに独り言を言ってんだよ、恵茉。こっちだ」と、間宮さんがいたずらっぽく言った。火をつけた手持ち花火から、パチパチと色とりどりの閃光がホウセンカの種のようにはじけ、香ばしい煙とともに間宮さんの姿を浮かびあがらせた。あざやかな笑顔が隈取られた。「君がちゃんとまっすぐ歩いてこられるか、陰で見てたが、なかなか怪しいな。やっぱり僕が見ていないと、あさっての方向に向かっちゃいそうだ」
「間宮さん」
「恵茉。しっかり歩け。君はひとりじゃ生きられない。誰かがついててやらないと。まったく世話が焼けるな。気になって放っておけない」
「間宮さん」
「小雪! 小雪ーッ! もどれ、小雪ーーーッ!」と、悲鳴に近い哀れな声がこだまし、風に流され、うつろに反響した。
「小雪は大波に奪われたかもしれないが」と、間宮さんは中ノ島をふり返りながら言った。「恵茉、君だけは奪われやしない。大丈夫、僕が防波堤になってやるから」
と言い、わたしを抱きしめてくれた。
了
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