落ちこぼれ天使の成長記

九条 奏

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テンと人

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一人の少年は声に導かれ、月明かりだけの暗い森を腰に付けた輝石を灯して歩いている。

近くの街ではいつになく騒がしい夜のようだ

近くの森に出た魔物がこの街に迫っているのでそれに備えて守りを固める為に兵を駆り出し

ギルドでは討伐の為に人を集めており

ギルドの中でも実力のある双子の姉妹は先発して魔物のもとへ向かっていた

双子の姉妹は名をユキとナツの言い

まだ成人してまもないがその実力は広く知れており

ユキは冷静沈着でナツは愛想が良く活発

姉妹はその容姿からも人気が高かった。



ユキとナツはナツの炎の魔法で道を照らしながら魔物の情報があった森の中に来ていた

二人には多少の慣れもあり臆せずに進んでいた

「ユキ姉このへんのはずなのにいないよ」

「おかしいわね、来る途中にこっちの方向から鳴き声もしてたのに

 ナツちゃんと警戒していくわよ」

「はーい」



少しずつ進んで行くと大きな影が見えた

ナツは明かりを消しユキは氷の剣を出して臨戦態勢をとる



静かに近ずいて翼の近くまできた

「動かないね」

こそっとナツが言うと魔法で小さく照らす

黒色の翼と翼膜の模様から目的の魔物である黒馬という事は分かったが

それにしても動かない、頭の方に静かにまわる事にした。

「寝ちゃってるよ」

「ええ、ここを見て打撲痕があるわ」

「えー私たちより先に誰かが倒しちゃったってこと?

 それか魔物同士の争いかなぁ」

「誰かが倒したんだと思うわ、

 特にあらそった形跡も無く

 だいたい見た感じ傷もこれだけ

 私より強いわね」

「ユキ姉より強い人なんているのかな?」

「いるわよ」

「でも二人でならへーきだよ」

「それもそうね、これをやった人を調べないと」

「うん、でもその前にとどめを刺さないとだよね」

「悪いけどそうさせてもらいましょう」

ユキが氷の剣を黒馬の喉元に突き立てると

あらぬ方向から冷たい夜風が吹いてユキは剣を

風の吹く方に向けて構えをとった

ナツも同様に構える、二人に緊張が張り詰めていく

ほんのりと灯る輝石の光がゆっくりと近ずいて来る

少しずつ白い人影がぼんやりと見えてきた

「とまりなさい」

ユキがそう言うとナツは炎で照らす

そこには少し眩しそうにして止まっている白い服に白い羽織を着て

腰には刀と輝石を付けた

月の様な瞳の少年が立っていた

「あなたは何者?」

「旅人だよ」

「もっとましな嘘つきなよ」

「あなたの格好は旅人とは言い難いわ

 旅人なら荷物はどうしたの?」

ユキが険しい顔で問い詰める

「盗まれた」

テンは適当に答えた

「君あやしいー」

ユキは顔をしかめたナツの言う通り怪しい

だが敵意は感じられないのだ

「信用出来ないわ

 旅人がどうしてさっきは私たちを威嚇するようなまねをしたの?」

「威嚇したつもりはない

 その黒馬を殺さないで欲しいかったんだ」

「なんで殺さないで欲しいの」

「その黒馬は襲い掛かってきたから気絶させたが

 身籠っているようなんだ、だから見逃してやってほしい」

ナツは黒馬の方に行き腹を照らすと

確かにお腹が張っている

「本当に妊娠してるみたい

 どうするユキ姉」

ここで逃がすべきではないが二人は兵士ではない

依頼がこなせなくとも罰せられる事もない

「分かったわ、殺さない

 けどここに居させて置くことは出来ないわ

 街に被害をだす可能性があるし

 少し経てばギルドの人や軍も来る」

「とくに兵士の人たちは絶対に逃がしてはくれないよ」

「いち早くここから移動してもらう必要がある

 これはあなたにやってもらうわ」

「承知した」

「君の名前は?

 私はナツでこっちはユキ姉」

「僕はテン」
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