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カタリアが王宮を去ってから、わずか二週間。
かつて優雅な音楽と香水の香りに満ちていた王立宮殿は、今や「怒号」と「請求書」の嵐にさらされていた。
「殿下! これを見てください! 近衛騎士団の三割が、給与未払いを理由に退職願を出してきましたぞ!」
財務卿が、涙目になりながらセドリック殿下の執務室に飛び込んできた。
セドリックは、山積みになった書類を前に、頭を抱えて唸っている。
「うるさい! 退職だと? 王家への忠誠心はどうした! そんな奴らは不敬罪で捕らえてしまえ!」
「捕らえるための憲兵も、食費が出ないと言ってストライキ中なんです! 大体、カタリア様が個人で補填していた『特別防衛基金』という名のポケットマネーが、彼女の絶縁と同時に全額引き揚げられたのが原因ですよ!」
「……な、なんだその基金は。初耳だぞ」
「殿下がリリア様に贈った宝石の代金を、彼女が裏でこっそり肩代わりしていた資金のことです!」
財務卿の叫びに、セドリックは顔を真っ青にさせた。
そこへ、ふわふわとしたドレスの裾を揺らしながら、リリア・ノースが部屋に入ってきた。
「セドリック様ぁ、お仕事中失礼しますぅ。あの、来月の私の誕生会なんですけどぉ……」
「お、おお、リリアか。誕生会がどうかしたのか?」
セドリックは、無理やり引きつった笑顔を作る。
「お城の庭園に、ダイヤモンドを散りばめた噴水を作ってほしいんですぅ。キラキラして、きっと素敵だと思うの!」
「だ、ダイヤモンドの噴水……? それは、その、少し予算的に……」
「ええっ? セドリック様、私のこと愛してないんですかぁ? カタリア様だったら『予算がぁ、効率がぁ』って意地悪言ったでしょうけど、セドリック様なら叶えてくれるって信じてたのにぃ!」
リリアが瞳を潤ませて上目遣いで見つめる。
その破壊力に、セドリックの脳内にある数少ない理性が霧散した。
「わ、分かった! リリアがそう言うなら、何とかしよう!」
「殿下!? 正気ですか!? 今の王室にはダイヤモンドどころか、噴水の水代も怪しいんですよ!」
財務卿が絶叫するが、セドリックは耳を貸さない。
「……おい、財務卿。宝物庫にある『初代国王の聖剣』を質に入れろ。あれなら街の金貸しも高く買うだろう」
「せ、聖剣を質に!? 国宝ですよ!? 国の誉れをダイヤモンドの噴水に変えるおつもりですか!?」
「うるさい、今はリリアの笑顔の方が重要だ! それと、カタリアの実家のアステリア公爵家にも追加の献金を要求しろ。あそこはまだ金があるはずだ!」
「……アステリア公爵家からは、今朝『娘との絶縁に伴い、王家への一切の資金援助を停止する』という公文書が届いております」
「な……に……?」
セドリックのペンが、カランと床に落ちた。
彼はようやく、カタリアが去り際に言った「来月の給与支払いは滞る」という言葉が、呪いではなく「正確な予測」であったことに気づき始めた。
「そんな……、あいつ一人がいなくなっただけで、なぜこんなことに……。王家の権威はどうなったんだ!」
「権威ではパンは買えませんと、カタリア様も仰っておりましたな……。ああ、誰か、あの方を連れ戻してきてくれ……!」
財務卿は床に崩れ落ち、嗚咽を漏らした。
一方、リリアは自分の要求が通ったと思い、鏡の前で新しいドレスの相談を始めている。
「ふふっ、ダイヤモンドの噴水の前でダンスをするの。楽しみだわぁ!」
王宮の金庫が底を突き、国宝が次々と消えていく。
そのカウントダウンの音は、浮かれた二人にはまだ聞こえていなかった。
かつて優雅な音楽と香水の香りに満ちていた王立宮殿は、今や「怒号」と「請求書」の嵐にさらされていた。
「殿下! これを見てください! 近衛騎士団の三割が、給与未払いを理由に退職願を出してきましたぞ!」
財務卿が、涙目になりながらセドリック殿下の執務室に飛び込んできた。
セドリックは、山積みになった書類を前に、頭を抱えて唸っている。
「うるさい! 退職だと? 王家への忠誠心はどうした! そんな奴らは不敬罪で捕らえてしまえ!」
「捕らえるための憲兵も、食費が出ないと言ってストライキ中なんです! 大体、カタリア様が個人で補填していた『特別防衛基金』という名のポケットマネーが、彼女の絶縁と同時に全額引き揚げられたのが原因ですよ!」
「……な、なんだその基金は。初耳だぞ」
「殿下がリリア様に贈った宝石の代金を、彼女が裏でこっそり肩代わりしていた資金のことです!」
財務卿の叫びに、セドリックは顔を真っ青にさせた。
そこへ、ふわふわとしたドレスの裾を揺らしながら、リリア・ノースが部屋に入ってきた。
「セドリック様ぁ、お仕事中失礼しますぅ。あの、来月の私の誕生会なんですけどぉ……」
「お、おお、リリアか。誕生会がどうかしたのか?」
セドリックは、無理やり引きつった笑顔を作る。
「お城の庭園に、ダイヤモンドを散りばめた噴水を作ってほしいんですぅ。キラキラして、きっと素敵だと思うの!」
「だ、ダイヤモンドの噴水……? それは、その、少し予算的に……」
「ええっ? セドリック様、私のこと愛してないんですかぁ? カタリア様だったら『予算がぁ、効率がぁ』って意地悪言ったでしょうけど、セドリック様なら叶えてくれるって信じてたのにぃ!」
リリアが瞳を潤ませて上目遣いで見つめる。
その破壊力に、セドリックの脳内にある数少ない理性が霧散した。
「わ、分かった! リリアがそう言うなら、何とかしよう!」
「殿下!? 正気ですか!? 今の王室にはダイヤモンドどころか、噴水の水代も怪しいんですよ!」
財務卿が絶叫するが、セドリックは耳を貸さない。
「……おい、財務卿。宝物庫にある『初代国王の聖剣』を質に入れろ。あれなら街の金貸しも高く買うだろう」
「せ、聖剣を質に!? 国宝ですよ!? 国の誉れをダイヤモンドの噴水に変えるおつもりですか!?」
「うるさい、今はリリアの笑顔の方が重要だ! それと、カタリアの実家のアステリア公爵家にも追加の献金を要求しろ。あそこはまだ金があるはずだ!」
「……アステリア公爵家からは、今朝『娘との絶縁に伴い、王家への一切の資金援助を停止する』という公文書が届いております」
「な……に……?」
セドリックのペンが、カランと床に落ちた。
彼はようやく、カタリアが去り際に言った「来月の給与支払いは滞る」という言葉が、呪いではなく「正確な予測」であったことに気づき始めた。
「そんな……、あいつ一人がいなくなっただけで、なぜこんなことに……。王家の権威はどうなったんだ!」
「権威ではパンは買えませんと、カタリア様も仰っておりましたな……。ああ、誰か、あの方を連れ戻してきてくれ……!」
財務卿は床に崩れ落ち、嗚咽を漏らした。
一方、リリアは自分の要求が通ったと思い、鏡の前で新しいドレスの相談を始めている。
「ふふっ、ダイヤモンドの噴水の前でダンスをするの。楽しみだわぁ!」
王宮の金庫が底を突き、国宝が次々と消えていく。
そのカウントダウンの音は、浮かれた二人にはまだ聞こえていなかった。
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