悪役令嬢の新しい復讐!婚約破棄、感謝いたします! 

桃瀬ももな

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「……そうだ! あのアマが、我が国の国庫から金を盗み出したのだ! そうでなければ、これほどの赤字になるはずがないだろう!」
 
 王宮の執務室で、セドリックは狂ったように叫んだ。
 
 彼の目の前には、リリアが「重たくて首が凝る」と放り出した偽物の宝石(本物は既に売却済み)が転がっている。
 
「殿下、滅多なことを仰るものではありません! カタリア様はむしろ、ご自身の私財を投じておられました。盗むどころか、持ち出しだったのですよ!」
 
 唯一残っていた老騎士が諫めるが、追い詰められたセドリックの耳には届かない。
 
「黙れ! あいつが絶縁と同時に提出したあの『請求書』こそが、国家の資産を不当に奪い取ろうとする陰謀の証拠だ! これは……そうだ、国家反逆罪だ!」
 
 セドリックは震える手で、白紙の羊皮紙に殴り書きを始めた。
 
「カタリア・フォン・アステリアを国家反逆、および公金横領の罪で指名手配する! 隣国の大公に対し、直ちに身柄の引き渡しを要求しろ! 拒絶するなら、これは我が国に対する宣戦布告と見なす!」
 
「で、殿下! 正気ですか!? 今の大公領と戦って勝てるはずがありません! そもそも、我が国には兵士に支払う給料も、槍の一本を研ぐ砥石の代金もないのですよ!」
 
「うるさい! 指名手配犯として連れ戻せば、あいつの資産はすべて没収できる! そうすればリリアの像も純金に塗り直せるし、私のメンツも保てるのだ!」
 
 セドリックは、よだれを垂らしながら印章を押し当てた。
 
 法も倫理も、経済的な合理性すらも捨て去った、絶望的な暴挙。
 
 その報せが、ハンスを通じて大公領の私の元へ届くのに、半日もかからなかった。
 
「……。……。……。ぷっ。あはははは! ハンス、これ見てちょうだい! 『国家反逆罪』だって! 私が!」
 
 私は報告書を片手に、執務室で腹を抱えて笑った。
 
 あまりの馬鹿馬鹿しさに、涙が出てくる。
 
「お嬢様、笑い事ではありませんよ。公式な外交ルートを通じて、身柄の引き渡し要求が来ているのです。断れば、あちらは『宣戦布告』を辞さない構えだとか」
 
 ハンスが困ったように眉を下げていると、背後の扉が乱暴に開かれた。
 
 現れたのは、全身から氷点下の殺気を放つレオナード閣下だった。
 
「……カタリア。案ずるな。我が大公軍は既に国境へ向かわせた。あのような無能な王太子の世迷い言など、一兵たりとも通すつもりはない」
 
「あら閣下。落ち着いて。せっかくの美味しい珈琲が冷めてしまいますわ」
 
「落ち着いていられるか! 君を『犯罪者』呼ばわりしたのだぞ! この私が、最も信頼するパートナーを!」
 
 閣下は珍しく声を荒らげ、私の机を叩いた。
 
 私はそっと彼の手の上に自分の手を重ね、にっこりと微笑んだ。
 
「閣下。これはピンチではなく、絶好の『ビジネスチャンス』ですわ」
 
「……チャンスだと?」
 
「ええ。向こうが私を『国家反逆罪』という不当な罪状で指名手配した。これは国際法における『不当な身柄拘束の意図』および『名誉毀損』に当たります。……つまり、私が彼らに対して請求できる『精神的慰謝料』の額が、今この瞬間に十倍に跳ね上がったということですの」
 
 レオナード閣下は、呆然と私を見つめた。
 
「……君という女性は。こんな状況で、まだ利益計算をしているのか」
 
「当然ですわ。売られた喧嘩は、最も高い利息を付けて買い取って差し上げるのが私の主義。……閣下、兵を動かすのは少し待って。私を彼らに『引き渡す』ふりをして、そのまま王宮へ乗り込みましょう」
 
「正気か? 危険すぎる」
 
「いいえ、最も安全な投資ですわ。私が『被告』として法廷に立つ時、それはあの王国の『最後の日』になるのですから」
 
 私は手帳の新しいページに、血のように赤いインクで「最終債権回収計画」と書き込んだ。
 
 セドリック殿下。
 
 貴方が仕掛けたその拙い『強行手段』が、どれほど高くつくか。
 
 一粒の涙も、一ゴルドの負けも許さない私のコンサルティング、たっぷりとお見舞いして差し上げますわ。
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