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金ピカの馬車が学園の正面玄関に止まると、そこにいた生徒たちの視線が一斉に突き刺さった。
「見て……シュバルツ公爵令嬢よ。昨夜、婚約破棄されたばかりなのに、よく登校できたわね」
「国外追放されるって噂だったけれど、まだこの国にいたの?」
「あら、あの馬車を見て。あんな派手なものに乗って……きっと最後の手向けに殿下から恵んでもらったのよ」
ひそひそと交わされる容赦のない言葉。
本来なら、私はここで顔を伏せて逃げ出すべきシチュエーションなのだろう。
だが、今の私を支配しているのは悲しみではない。
隣に座る、この「元凶」に対するどす黒い感情だ。
「……殿下。いつまで私の手を握っていらっしゃるおつもり?」
「学園の階段を降りるまではね。君が足元を滑らせて、私の胸の中に飛び込んでくる確率が、計算上は〇・三パーセントほどあるんだ」
「そんな端数に期待しないでくださいまし。早く離してください、皆が見ていますわ」
私は極度の緊張で顔を引きつらせながら、殿下の手を振り払って馬車を降りた。
周囲からは「まあ、なんて不敬な!」「殿下に拒絶されたショックで正気を失っているんだわ!」という声が上がる。
違う。私は正気だ。正気だからこそ、この状況に耐えられない。
「ふむ……。やはり君は、この逆境の中でこそ美しく輝くね」
殿下も涼やかな顔で馬車を降り、私のすぐ後ろをぴったりと付いてくる。
「殿下……? 教室はあちらですわよ」
「いや、今日は君の安全を確保するために、私が一日中、君の護衛を務めることにしたんだ。講義も隣の席で受けるよ」
「……本気ですの?」
私は立ち止まり、精一杯の「睨み」を殿下にぶつけた。
実際には、視線が泳ぎそうになるのを必死に止めているだけなのだが。
「ああ、その目だ! 学園の朝日を浴びて、氷の刃のように研ぎ澄まされている! 生徒諸君、今の表情を見たかい!? これこそが我が国の至宝だ!」
殿下が突然、周囲の生徒たちに向かって大声で宣言した。
「え……?」
「殿下、今、何と……?」
困惑する生徒たち。無理もない。
婚約破棄したはずの相手を「至宝」と呼び、絶賛しているのだから。
「……あ、今の発言は私の心の声だったね。忘れてくれ」
殿下はコホンと咳払いをすると、急に冷徹な王子モードの仮面を被った。
「……カタリーナ。貴様のような悪女を一人にしておいては、また誰に害をなすかわからないからな。私が監視してやる。ありがたく思え」
「(……殿下、キャラがブレブレですわよ)」
私は小声で毒づいた。
だが、周囲の生徒たちは殿下の「監視」という言葉に納得したのか、「なるほど、流石は殿下だ」「悪女を野放しにしない、王者の鑑ね」と勝手に解釈を広げている。
教室に入っても、殿下は私の隣の席にどっしりと腰を下ろした。
休み時間になれば、普段なら私を揶揄いに来る令嬢たちも、殿下の放つ「私の推しに近づく奴は消す」という無言のプレッシャーに気圧されて近寄ってこない。
「……殿下。これでは監視どころか、ただの過保護ではありませんか?」
「何を言うんだ。私は君が教科書をめくる時の、指先の微かな震えまで見逃さずに監視しているよ。……ちなみに、今のページをめくる仕草、非常にエレガントだった。五ポイント加点だ」
「何のポイントですのよ……」
私はノートの端に「早く帰りたい」と書き殴った。
その様子を、教室内から憎々しげに見つめる視線があることにも気づかずに。
「見て……シュバルツ公爵令嬢よ。昨夜、婚約破棄されたばかりなのに、よく登校できたわね」
「国外追放されるって噂だったけれど、まだこの国にいたの?」
「あら、あの馬車を見て。あんな派手なものに乗って……きっと最後の手向けに殿下から恵んでもらったのよ」
ひそひそと交わされる容赦のない言葉。
本来なら、私はここで顔を伏せて逃げ出すべきシチュエーションなのだろう。
だが、今の私を支配しているのは悲しみではない。
隣に座る、この「元凶」に対するどす黒い感情だ。
「……殿下。いつまで私の手を握っていらっしゃるおつもり?」
「学園の階段を降りるまではね。君が足元を滑らせて、私の胸の中に飛び込んでくる確率が、計算上は〇・三パーセントほどあるんだ」
「そんな端数に期待しないでくださいまし。早く離してください、皆が見ていますわ」
私は極度の緊張で顔を引きつらせながら、殿下の手を振り払って馬車を降りた。
周囲からは「まあ、なんて不敬な!」「殿下に拒絶されたショックで正気を失っているんだわ!」という声が上がる。
違う。私は正気だ。正気だからこそ、この状況に耐えられない。
「ふむ……。やはり君は、この逆境の中でこそ美しく輝くね」
殿下も涼やかな顔で馬車を降り、私のすぐ後ろをぴったりと付いてくる。
「殿下……? 教室はあちらですわよ」
「いや、今日は君の安全を確保するために、私が一日中、君の護衛を務めることにしたんだ。講義も隣の席で受けるよ」
「……本気ですの?」
私は立ち止まり、精一杯の「睨み」を殿下にぶつけた。
実際には、視線が泳ぎそうになるのを必死に止めているだけなのだが。
「ああ、その目だ! 学園の朝日を浴びて、氷の刃のように研ぎ澄まされている! 生徒諸君、今の表情を見たかい!? これこそが我が国の至宝だ!」
殿下が突然、周囲の生徒たちに向かって大声で宣言した。
「え……?」
「殿下、今、何と……?」
困惑する生徒たち。無理もない。
婚約破棄したはずの相手を「至宝」と呼び、絶賛しているのだから。
「……あ、今の発言は私の心の声だったね。忘れてくれ」
殿下はコホンと咳払いをすると、急に冷徹な王子モードの仮面を被った。
「……カタリーナ。貴様のような悪女を一人にしておいては、また誰に害をなすかわからないからな。私が監視してやる。ありがたく思え」
「(……殿下、キャラがブレブレですわよ)」
私は小声で毒づいた。
だが、周囲の生徒たちは殿下の「監視」という言葉に納得したのか、「なるほど、流石は殿下だ」「悪女を野放しにしない、王者の鑑ね」と勝手に解釈を広げている。
教室に入っても、殿下は私の隣の席にどっしりと腰を下ろした。
休み時間になれば、普段なら私を揶揄いに来る令嬢たちも、殿下の放つ「私の推しに近づく奴は消す」という無言のプレッシャーに気圧されて近寄ってこない。
「……殿下。これでは監視どころか、ただの過保護ではありませんか?」
「何を言うんだ。私は君が教科書をめくる時の、指先の微かな震えまで見逃さずに監視しているよ。……ちなみに、今のページをめくる仕草、非常にエレガントだった。五ポイント加点だ」
「何のポイントですのよ……」
私はノートの端に「早く帰りたい」と書き殴った。
その様子を、教室内から憎々しげに見つめる視線があることにも気づかずに。
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