ようこそ摩訶不思議堂へ シリーズ

新雪小太郎

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ようこそ摩訶不思議堂へ 番外 店主の独り言

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🌙摩訶不思議堂 ―― 独白
……よう来たな。
誰に言うてるわけでもない。
せやけど、ここに来る人は、
だいたい同じ顔しとる。
迷子の顔や。
わたしは、待っとるだけや。
呼ばん。
探しにも行かん。
せやけど――
ほんまに必要な人だけは、
ちゃんと辿り着く。
摩訶不思議堂ゆう名前も、
たいそうなもんやない。
「摩訶」いうのはな、
大きい、深い、計られへん、ちゅう意味や。
せやからここは、
奇跡の店やのうて、
人の心の奥行きを量る場所や。
よう勘違いされるけどな、
わたしは何も与えてへん。
勇気も、声も、やり直しも、
全部、もともと
その人の中にあったもんや。
ただ、
落としてしもてただけや。
人生ゆうのは不思議やで。
拾わんでも生きていける。
せやけど、
拾い直した人の歩き方は、
ちょっとだけ、優しなる。
子どもは、
よう落とす。
せやから、よう拾える。
大人は、
落としたことに気づかんふりをする。
せやから、重たなる。
老人はな、
最後に気づく。
「ほんまに大事なもんは、
 最初から軽かった」って。
せやから最後は、
全部、置いていってもらう。
名前も、
後悔も、
肩書きも。
空っぽになった人ほど、
次は、よう泣く。
あの泣き声がな、
わたしはいちばん好きや。
始まりの音やさかい。
……もう行き。
また迷ったら、
看板は出る。
出えへんかったら、
それは――
ちゃんと歩いとる証拠や。
ほなな。
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