空想小説『ふたがみ山の怪』

新雪小太郎

文字の大きさ
2 / 5

二上山の怪 続編

しおりを挟む
山を下りる二人
シェリーが後ろを振り返り、再び仏舎利塔を見つめる。
「なあ、小太郎…ほんまに終わったんけ?」
「終わったやろ。だって、あの白い影、消えたがや。」
小太郎は自分に言い聞かせるように答えるが、心のどこかで拭いきれない違和感があった。
山を下りる道は、来た時よりも暗く、不気味なほど静かだ。二人の足音だけが、カサカサと落ち葉を踏む音を響かせる。
「……なんや、これ。」
小太郎は立ち止まった。目の前の登山道が、いつの間にか左右に二手に分かれている。
「おかしいやろ。登ってきた時、こんな道あったか?」
「ううん…記憶にないわ。」
二人は顔を見合わせた。風が吹き抜け、木々がざわざわと揺れる音が耳にまとわりつく。
「右行くか、左行くか……。」
「こういう時、変に考えん方がいいんちゃう?どっちか適当に決めよ。」
小太郎は深呼吸し、右の道に足を踏み入れた。シェリーも後に続く。だが、進むたびに風は冷たくなり、辺りには薄い霧が漂い始めた。
道の先に待つもの
霧が次第に濃くなり、視界が遮られた。小太郎は前を進みながら、シェリーの手をしっかりと握る。
「これ、ほんまに帰り道なんけ?」
「わからん。でも、引き返してもしゃあない。」
すると、霧の向こうにぼんやりと光が見えた。
「誰かおるんか?」
小太郎が声を上げると、返事はない。ただ、光がゆっくりとこちらに近づいてくる。
やがて光が近づくと、それは古びた提灯を手にした一人の老人だった。
「……また、お前か。」
シェリーが小声でつぶやいた。
そう、それは先ほど仏舎利塔で見た白装束の老人だった。だが、今度の老人は目に生気があり、不気味なほどハッキリとした声で語り始めた。
「戻る道はないぞ…。」
「なんやと?」
「鐘を鳴らした時、お前たちは“境”を越えたんじゃ。今さら逃れられるものか。」
老人がそう言った瞬間、地面が再び揺れ、霧の中から無数の手が這い出してきた。
小太郎とシェリー、反撃!
「うわっ!なんやこれ!」
白い手が二人の足に絡みつこうとする。小太郎は反射的に立ち上がり、身構えた。
「シェリー、後ろ下がれ!」
小太郎は深い呼吸を一つし、腰に下げていた木刀を抜いた。小太郎は古武道の使い手。祖父から教え込まれた型が自然と体に染みついている。
「うぉりゃああ!」
木刀を振り下ろし、這い上がってくる手を次々に打ち払う。
シェリーも立ち上がり、空手の構えを取った。
「小太郎、あんた一人でやらせるかいな!」
シェリーは前に出ると、迫り来る白い手に正確な突きを放つ。
「上段づき!中段づき!下段っ!」
続けざまに突きを決め、最後は「まわし蹴り!」と鋭い蹴りが白い影を吹き飛ばした。
「シェリー、かっこええなぁ。」
「いまさら褒めんといて!」
真相の扉
老人は不気味な笑みを浮かべ、提灯を高く掲げた。すると、霧の奥に巨大な門が現れる。
「真相を知りたければ、そこへ行け。」
「真相…?」
「鐘の音が開いた扉じゃ。そこには、過去の因縁が眠っとる。」
二人は門をじっと見つめる。引き返す道はすでにない。小太郎とシェリーは静かにうなずき合い、門の中へと足を踏み入れた――。
次回へ続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!

夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」 婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。 それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。 死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。 ​……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。 ​「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」 そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……? ​「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」 ​不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。 死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

incurably

優未
恋愛
幼い頃のちょっとした事故が原因で婚約を結んだマークとエリナ。ほとんど目立たない傷で責任を取ってもらうのは申し訳ない。何とか穏便に婚約解消を目指すエリナに対してマークは……。

処理中です...