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第二話
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老子小太郎は、ギターを膝にのせたまま、弾くのをやめた。
音が消えると、逆に人の気配が濃うなる。
橋の下には、呼吸の音と、遠くで崩れ続ける街のうなりだけが残った。
「……昔な」
小太郎は、誰に向けるでもなく、語りはじめた。
聞く耳があるかどうかは、どうでもよかった。
「この街にはな、川があった。
子どもが石を投げて、橋の上で恋をして、
年寄りが夕方になると、必ず同じ場所で空を見とった」
誰かが鼻で笑う。
せやけど、小太郎は気にせえへん。
「川はな、どこへも行かん。
流れてるようで、ずっと同じ場所におる。
変わるのは、川を見る人間のほうや」
小太郎は弦を、軽く一度だけ鳴らした。
音は言葉の続きみたいに、空気に溶ける。
「ここに集まっとるあんたらも、
行き場がないんやなくて、
戻る場所を思い出せんだけかもしれへん」
橋の影で、誰かが顔を上げた。
またひとり、またひとり。
目の奥に、埃まみれの記憶が揺れはじめる。
「わしは老子小太郎や。
預言者でも、救世主でもない。
ただの語り部や」
少し間を置いて、続ける。
「せやけどな、話には力がある。
腹を満たすことはできん。
家も建てられん。
それでも――
生き延びる理由くらいは、渡せる」
風が吹き抜け、崩れた橋の隙間から、細い光が差し込む。
灰色の街に、ほんの一筋、色が入る。
老子小太郎はギターを抱え直し、静かに言う。
「さあ、次は誰の話や?」
この街はまだ廃墟や。
せやけど今、ここには
語り継がれる場所が生まれた。
音が消えると、逆に人の気配が濃うなる。
橋の下には、呼吸の音と、遠くで崩れ続ける街のうなりだけが残った。
「……昔な」
小太郎は、誰に向けるでもなく、語りはじめた。
聞く耳があるかどうかは、どうでもよかった。
「この街にはな、川があった。
子どもが石を投げて、橋の上で恋をして、
年寄りが夕方になると、必ず同じ場所で空を見とった」
誰かが鼻で笑う。
せやけど、小太郎は気にせえへん。
「川はな、どこへも行かん。
流れてるようで、ずっと同じ場所におる。
変わるのは、川を見る人間のほうや」
小太郎は弦を、軽く一度だけ鳴らした。
音は言葉の続きみたいに、空気に溶ける。
「ここに集まっとるあんたらも、
行き場がないんやなくて、
戻る場所を思い出せんだけかもしれへん」
橋の影で、誰かが顔を上げた。
またひとり、またひとり。
目の奥に、埃まみれの記憶が揺れはじめる。
「わしは老子小太郎や。
預言者でも、救世主でもない。
ただの語り部や」
少し間を置いて、続ける。
「せやけどな、話には力がある。
腹を満たすことはできん。
家も建てられん。
それでも――
生き延びる理由くらいは、渡せる」
風が吹き抜け、崩れた橋の隙間から、細い光が差し込む。
灰色の街に、ほんの一筋、色が入る。
老子小太郎はギターを抱え直し、静かに言う。
「さあ、次は誰の話や?」
この街はまだ廃墟や。
せやけど今、ここには
語り継がれる場所が生まれた。
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