エッセイ タロウは凄いな

新雪小太郎

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太郎はすごいな その二

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太郎は、だいたい説明が下手だ。
本人も、まわりも。
岡本太郎の言葉は強すぎて、意味を理解する前に胸に当たる。
「分かるか?」と聞かれている気がするけれど、実際は
「分からなくていい」と言われている。

杉本太郎もそうだ。
海と空の境目を見せられて、
「これは何だ」と聞かれても、答えはない。
ただ、見ている自分の時間だけが、じわっと浮かび上がる。
太郎という名前は、どうも理解される側に立たない。

山本太郎が街頭で叫ぶと、
内容より先に「うるさい」と言われる。
でも、うるさいということは、
聞こえているということだ。
静かで、上品で、分かりやすい言葉だけが
正しいわけじゃない。


太郎は、雑音になる役目を引き受ける。

麻生太郎は逆だ。

静かにしていても、なぜか音がする。
何も言わなくても、権力の重さがきしむ。
それもまた、太郎の宿命みたいなものだ。


ウルトラマンタロウは、何度も負ける。

初代ウルトラマンみたいに完璧じゃない。

セブンみたいにクールでもない。
タロウは、感情が先に出る。



倒されて、
助けられて、
それでもまた前に出る。

子どもの頃、
「また負けとるやん」と思いながら見ていた。
でも、気づいたら最後まで見ていた。

たぶん人は、
勝つヒーローより、
何度も立ち上がるヒーローを覚えている。

太郎は、時代の先頭に立たされる。


本人が望まなくても。
長男だから。
名付けられたから。
役目が来てしまったから。
太郎は、選ばれたというより、
押し出された存在だ。

分からん、という感覚は、
実は正直やと思う。

分かる、納得する、整理できる、
そういう言葉は、だいたい後からくっつく。


太郎は、
分からんまま、立たされる。
分からんまま、殴られる。
分からんまま、名前だけ残る。
それでも、
気づいたら時代の節目に
必ず太郎がいる。

英雄でもなく、
悪役でもなく、
説明役でもなく。
ただ、そこにいる。

太郎はすごい、というより、
太郎は残る。

理由は、たぶん、
誰にも分からない。
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