やかんの麦茶 黄金伝説物語

新雪小太郎

文字の大きさ
1 / 7

やかんの麦茶 黄金伝説物語

しおりを挟む
『やかんの黄金伝説』
小太郎(こたろう)は30代の普通のサラリーマン。夏は冷やした麦茶、冬はあったかい麦茶と、どの季節も麦茶を愛する男や。
ある日、オフィスで後輩がスポーツドリンクを片手に言うた。
「先輩、麦茶っすか? 今どき渋いっすね~」
「渋い?アホ言え。麦茶は昭和のロマンやぞ」
小太郎は懐かしそうに目ぇ細めて、遠い中学時代を思い出す。
あの頃、部活の最中に水飲んだら「サボり」やと怒鳴られた時代やった。
【中学時代】
先輩の叫び
「おい、小太郎!水?何やオマエ、部活なめとんか!根性で汗引かせろ!」
「先輩、もうフラフラっす……」
その時や。伝説の**「黄金のやかん」**が登場したんは。
先輩がズシッと重そうにやかんを持ち上げ、ニヤリと笑う。
「ほな、根性入れたるわ!」
ザバーッ!!!
「冷たっ!ちょ、頭からかけんでも…」
頭から麦茶の残りかけをぶっかけられ、気絶寸前の小太郎は気づいた。
「これ、麦茶やんけ!……あったかい!」
【現代】
小太郎はデスクで微笑む。
「黄金のやかん」には、ほんまに麦茶が入っとったんや。先輩らがこっそり給湯室で作っとったんやて。
水を飲むことすら許されん地獄のしごきやったが、あのぬる~い麦茶が、小太郎の命綱やったんや。
「今思えば、昭和の根性論もええ思い出やな」
後輩が笑いながら言うた。
「昭和って、やばくないっすか?」
「アホか。なんでもかんでも便利になった現代やけどな、心までカラカラになったらあかんねん」
小太郎はコンビニで買うた麦茶のボトルを冷蔵庫に戻し、こうつぶやいた。
「麦茶はな、心にしみるんや」
その日の夜、部屋の隅に置いてあるやかんを見つめた。
「あの黄金のやかん、まだ家にあったんかい……」
【やかんと麦茶の奇跡】
次の日、なんと小太郎の部屋からやかんが**「ガタッ!」**と音を立てて動き出す。
「うわっ!やかんが生きとる!」
やかんがしゃべった。
「小太郎、オマエの根性、忘れたんちゃうか?」
「……なんで関西弁やねん」
「ワシ、部活でオマエを救ったやかんやで?心の中の麦茶、沸かし直せや!」
小太郎は驚きつつ、麦茶をやかんで沸かし直した。
ふと一口すすって、ハッとする。
「この味……部活帰りの、ぬるい麦茶や!」
やかんが満足げに笑う。
「せや、小太郎。時代は変わっても、麦茶と根性は変わらんのや!」
【エピローグ】
次の夏、会社のレクリエーションで後輩たちにやかんで麦茶を配る小太郎の姿があった。
「先輩、なんすか、そのデカいやかん!」
「これが伝説の黄金や。お前らも根性入れて麦茶飲め!」
「根性いらんし、普通にボトルでええっすわ!」
小太郎は爆笑しながら言うた。
「アホ!これは浪漫や!」
麦茶を片手に、やかんは今日も小太郎とともにある――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

処理中です...