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第五章
影の中で 1
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「ハサミ女とそれなりにやり合えるなんて、ちょっと見ないうちに変わりましたねえ。先輩?」
煌津の赤くなった髪を撫で付けながら、静星乙羽が別人のような口調で言った。
「まあ、死にかかっていたから危ないところでしたけど。感謝してくれていいんですよ、先輩」
「静星、さん……君、何で」
幽霊が笑っているかのような微笑みを浮かべて、静星が煌津を見下ろす。
「乙羽ちゃん! 九宇時君を放して!」
「稲っち、静かにして。今、先輩と話している」
稲の悲痛な叫びを人差し指一本立てて、静星は制する。
「ていうか、せっかくハサミ女の復活までは教えた通りに出来たのに、一人も殺せてないじゃん。何? 『皆殺しにして』って。言葉通り皆殺しにしてこいよ。出来の悪い大学生だな」
「ひ、ひどい! 何でそんな事言うの!?」
涙声の稲に対して、静星はあくまでも呆れた様子だった。
「はいはい、悪かったよ。稲っちさあ、見込みはあるんだよ。ハサミ女はちゃんと復活させられたんだし、あとは一線を越えるだけじゃん。あんたを苦しめた奴らを軒並みぶっ殺してきてよ。そうすりゃ、この街は呪詛で穢れるんだから」
「だって、だって……ボクは頼んだのに……殺してって……でもハサミ女が」
「もうもうもうもう、稲っち」
静星は立ち上がって、髪くしゃくしゃにしたまま立ち竦んだ稲に近付き、その頭を撫でる。
「呪力が足りていないんだね。わたし、人に物を教えるとかした事ないからなー。こんなすげーめんどくさいものだとは……」
痛みを堪えながら、煌津は立ち上がる。
「静星さん、君は……一体、何者なんだ?」
静星乙羽はにやりと笑った。
「わたし? わたしはただのオカルトマニアだよ。いやまあ、ただのって事はないか」
稲の肩を自分のほうに寄せ、静星は目を剥いた。黒々とした靄が静星の体から溢れ出す。呪力だ。数々の怨嗟が入り混じるおぞましいほど強い呪力。
「我留羅……!」
その言葉を聞いた瞬間、静星は忌々しげに顔を歪めた。
「我留羅? わたしが? 目ん玉ちゃんと見えているんですか、先輩。わたしが悪霊どもの一種に見えます? ただ僅かに残った生前の精神性にすがりつくだけの化け物どもと同じに?」
黒い靄が髑髏を描く。フローリングの床を黒い筋のようなものが脈走る。
「わたしをよく見ろ、先輩。わたしは生きている。死霊でも悪霊でも我留羅でもない。生きているんだ。まあ、人間ではないけどね。でも生きているんだ。生き延びたんだ!」
天井を黒い靄が侵食し、破片が落ちてくる。
「わたしは我留羅じゃない。我留羅を使う側さ。無理矢理定義するなら……そう、呪術師といったところだろうね」
「呪術師……」
オーラの如く立ち昇る静星の呪力は、その勢力を増していくばかりだ。否が応でも、天羽々斬を握る手に力が籠る。
「わたしが何者か知りたいって? なら、たっぷり教えてやるよ。先輩」
煌津の赤くなった髪を撫で付けながら、静星乙羽が別人のような口調で言った。
「まあ、死にかかっていたから危ないところでしたけど。感謝してくれていいんですよ、先輩」
「静星、さん……君、何で」
幽霊が笑っているかのような微笑みを浮かべて、静星が煌津を見下ろす。
「乙羽ちゃん! 九宇時君を放して!」
「稲っち、静かにして。今、先輩と話している」
稲の悲痛な叫びを人差し指一本立てて、静星は制する。
「ていうか、せっかくハサミ女の復活までは教えた通りに出来たのに、一人も殺せてないじゃん。何? 『皆殺しにして』って。言葉通り皆殺しにしてこいよ。出来の悪い大学生だな」
「ひ、ひどい! 何でそんな事言うの!?」
涙声の稲に対して、静星はあくまでも呆れた様子だった。
「はいはい、悪かったよ。稲っちさあ、見込みはあるんだよ。ハサミ女はちゃんと復活させられたんだし、あとは一線を越えるだけじゃん。あんたを苦しめた奴らを軒並みぶっ殺してきてよ。そうすりゃ、この街は呪詛で穢れるんだから」
「だって、だって……ボクは頼んだのに……殺してって……でもハサミ女が」
「もうもうもうもう、稲っち」
静星は立ち上がって、髪くしゃくしゃにしたまま立ち竦んだ稲に近付き、その頭を撫でる。
「呪力が足りていないんだね。わたし、人に物を教えるとかした事ないからなー。こんなすげーめんどくさいものだとは……」
痛みを堪えながら、煌津は立ち上がる。
「静星さん、君は……一体、何者なんだ?」
静星乙羽はにやりと笑った。
「わたし? わたしはただのオカルトマニアだよ。いやまあ、ただのって事はないか」
稲の肩を自分のほうに寄せ、静星は目を剥いた。黒々とした靄が静星の体から溢れ出す。呪力だ。数々の怨嗟が入り混じるおぞましいほど強い呪力。
「我留羅……!」
その言葉を聞いた瞬間、静星は忌々しげに顔を歪めた。
「我留羅? わたしが? 目ん玉ちゃんと見えているんですか、先輩。わたしが悪霊どもの一種に見えます? ただ僅かに残った生前の精神性にすがりつくだけの化け物どもと同じに?」
黒い靄が髑髏を描く。フローリングの床を黒い筋のようなものが脈走る。
「わたしをよく見ろ、先輩。わたしは生きている。死霊でも悪霊でも我留羅でもない。生きているんだ。まあ、人間ではないけどね。でも生きているんだ。生き延びたんだ!」
天井を黒い靄が侵食し、破片が落ちてくる。
「わたしは我留羅じゃない。我留羅を使う側さ。無理矢理定義するなら……そう、呪術師といったところだろうね」
「呪術師……」
オーラの如く立ち昇る静星の呪力は、その勢力を増していくばかりだ。否が応でも、天羽々斬を握る手に力が籠る。
「わたしが何者か知りたいって? なら、たっぷり教えてやるよ。先輩」
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