私たちカード同好会ですっ!

あさままさA

文字の大きさ
3 / 6
⬛第一章「カード同好会の発足ともえの初大会!」

第三話「おっとり優しいお嬢様!? 白鷺ヒカリ!」

しおりを挟む
「なんかこの学校って変な人多いのかな……? まぁ、まだ二人しか会ってないのに判断するのは早計だけどさ」

 部室から一旦抜け、お手洗いに行っていたもえ。

 ハンカチで濡れた手を拭きながら廊下を歩き、ぶつぶつと呟きながらも部室に戻ろうとしていた道中――奇妙な人物を見つける。

 壁に設置された火災報知機をじっと見つめる女子生徒。

 ぼーっとした表情でひたすらに視線を送っている。
 もえが傍から見ていることにも気付いていないようだった。

 表情が思わず引き攣ってしまうもえ。

(この学校、ほんっっっっとに変な人ばっかりだなぁ! あんまり奇妙な知り合いを増やすのもタメにならないだろうし、ここは好奇心を抑えてスルーかな)

 最早、何かの前振りにしか聞こえない決心をするもえ。
 火災報知器を見つめる人物を無視して通り過ぎようとしていた。

 しかし、すれ違う瞬間――もえは目撃してしまう。
 その人物が火災報知機に人差し指を触れさせているのを。

 しかも、何故か顔を赤らめているし、吐息も荒く艶めいている。
 ――いや、そんな思考をしている暇はない。

(この人、ほんとに押しちゃう……!)

 結局、もえはその人物と関わることに。

「ちょ、ちょ、ちょっと! 何やってるんですかっ!」

 肩を掴んで、魔が差し掛けていた人物の身を火災報知器から遠ざける。

 すると我に返り体をビクつかせ、周囲をきょろきょろと伺うその人物。

 まず目を引くのは二つに分けゆったりと背中に流した白銀の髪。
 すらっと長い背丈、丸みに凹凸、全てが豊かな体躯。
 そして、優しそうな笑みが表情を彩る。

 もう先ほどのように顔は赤くないし、呼吸も乱れてないようだった。

「ありがとうございます。もう少しで火災報知機を鳴らしてしまうところでした。火事の時にしか押してはいけませんからね」
「分かってるなら気をつけてくださいよ」
「すみません。……でも、火事の時ではないからこそ押したくなるんですよね」

 頬に手を当て、上品な挙動でどうしようもない自分を語る人物。
 もえはすくに確信した。

(……あ、危ない人だ。駄目だと言われたらやりたくなる危ない人だ)

 そう結論付けると「それでは」と短く告げ、今度こそ謎の人物を置き去りに部室へと戻る。

 ……はずだった。

 しかし、その人物はもえを追うようについてくるのである。

(どうしてついてくるんだろう? ……まぁ、たまたま同じ方向に用事ってこともあるのかな)

 嫌な予感を払拭しようとするもえ。
 だが、大抵そういう予感は現実になると相場が決まっているもの。

 たまたま同じ方向に用事があるのではない。
 ――同じ場所に、用事があるのだ。

         ○

「初めまして、白鷺ヒカリです。葉月と同じ三年生で、一応カード同好会の副部長ということになってますので、どうぞよろしくお願いしますね」

 上品にお辞儀をする危険人物もとい――白鷺ヒカリ。
 そう、彼女もカード同好会のメンバーだったのだ。

「それにしても偶然だよねー。もえとヒカリが一緒に戻ってくるなんて。まだ面識はないはずでしょー?」
「まさか同じカード同好会のメンバーだとは……。あ、私は一年生の赤澤もえです」
「葉月が言っていた期待の新人さんですね。もえちゃんって呼んでいいですか?」
「あ、はい。私はヒカリさん、でいいですかね?」
「それで構いませんよ」

 もえとヒカリは握手を交わす。

「……それにしてもさっきは本当に助かりました」
「ん? ヒカリさん、何かあったの?」
「火災報知機を押そうとしていたところを止めてもらいまして……」
「あ、そうなんだ」

 あっさりとヒカリの言葉に納得を示したしずく。

(あれ? ヒカリさんが火災報知器やらかす常習犯で、だから珍しくないのか。それともしずくさんが常識外れな不思議ちゃんだから何とも思ってないのか……どっちなんだろ?)

 難しそうな表情を浮かべてもえに葉月は気を遣って口を開く。

「もう少しヒカリのことを紹介しておくと、まずカード同好会の中ではしずくと肩を並べるくらいの実力者。まぁ、強いねー」
「あら、葉月に褒められるなんて珍しいですね」
「でもヒカリさんは強いよ。葉月さんとは比べものにならないくらいに」
「何でヒカリを褒めてたのに結果として私が貶められてるのか……まぁ、いいやー。あとヒカリは実家が超お金持ちだよ。大企業トップの娘で、お嬢様ってやつだねー」
「ちょ、ちょっと。やめて下さいよ、葉月」
「へぇー、お嬢様! 凄いですね」

 もえは驚き混じりな相槌を打ちながら、

(やっぱりいいとこのお嬢様はどこかネジが外れてるものなのかな……。興味本位で火災報知器押して問題になっても、マネーパワーで何とかする的な?)

 失礼極まりない思考をするもえ。

 一方、葉月によるヒカリの紹介はさらに深い部分へと踏み込んでいく。

「ちなみにしずくほどじゃないけど、ヒカリも抜けてるんだよねー」
「え? そうでしょうか?」
「いつだったか、先生の『この問題分かる人?』に答え出てないのに挙手して、しかも当てられて怒られてたでしょー?」
「ヒカリさん、ちょっと変わってるもんね」

 しずくを除く三人は「お前が言うのか」と閉口して互いの顔を見る。

 しかし、しずくは自分が生んだ静寂に責任感は感じず淡々としていた。

 なので葉月から閑話休題の咳払い。

「他にも色々あったよー。名前だけ書いて白紙のプリント提出したりさー」
「確かにそう言われると抜けているのを否定できないかも知れませんね。今日も先生に呼び出され、怒られていたので遅れましたし……」
「ヒカリももしかしたら天然なのかもねー」

 葉月がからかい、ヒカリがちょっと困った表情で笑っている。
 そんな光景を眺め、もえは何だか腑に落ちない気持ちになっていた。

(もしも……もしも天然が二人もいるならこの同好会は、ヤバい)

 不思議ちゃんが倍いるだけでも、これからを思えば頭を抱える。
 ただ、白鷺ヒカリ天然説には素直に頷けないもえだった。

 何だかイメージにそぐわないヒカリの行動。
 真面目そうなのに怒られるようなことばかりしているらしい。

(……ん? 怒られそうなことばかりしている?)

 もえは不意に真実の尻尾を掴み、唾を飲む。

(あ――そうだ! 今聞かされたヒカリさんのエピソードはどれも破滅的。全て最終的に怒られることに繋がるし、正直言って意図してやらないと起きないようなことばかり……天然なんかじゃない!)

 わざとやっているとしか思えない。
 ……なら、何故わざとやるのか?

 その答えはヒカリと邂逅した瞬間に帰結した。

 荒い吐息と赤らめた顔。
 そして、叱られることに向かって行動しているようなエピソード。



(……あ、分かった。ヒカリさん、この人――無自覚なドMなんだ!)



 もえは確信した。
 ヒカリは――ドMなのだと!

 火災報知器の件も、叱られる光景を想像して興奮していたのだ。

(なるほど……………………とんっでもない部活に所属してしまった!)

 しかし、そんな性癖の人がカードゲームをやるとどうなるのか?

(負けて喜ぶ、みたいな歪んだ遊び方をするのかな? いや、さっき実力はあるって葉月さん言ってたしなぁ……)

 色々とヒカリという人間へ思考を巡らせているもえ。
 そんなもえを他所に葉月は手を打ち鳴らし、注目を集める。

「さて、四人集まったしそろそろ移動しよっかー」
「そうですね。いつまでもここで話してても仕方ないですし」
「そっか。今日、幽子はバイトなんだ」

 口々に葉月の言葉へ疑いを向けずに納得して立ち上がる。
 そんな光景にもえは混乱する。

「あれ? メンバーって全部で五人ですよね。あと一人待たなくていいんですか?」
「あと一人は別の場所にいて、ここには来ないよー」
「そうなんですか……でも、部活ってここでやるんじゃないんですか?」
「活動をここでする日もあるかと思いますが、部員が揃わない日は逆に揃えるべく移動するんです」

 葉月、ヒカリから説明されたことが整理できず混乱するもえ。

 ……おそらく「ユウコ」という人物のいる場所に行き、合流して五人で活動するのだろう。

 しかし、その人物は現在バイト中。

(仕事してるなら邪魔にならないのかな? ……っていうかユウコって聞いたことある名前。まぁ、そんなに珍しい名前ではないけど……どこかで?)

 もえは疑問符を浮かべる。
 しかし、それも行けば自ずと答えが出る。

「今からどこへ行くんですか?」
「もえはきっと初めて行くんだろうね」
「カードゲーマーにとって大事な場所ですよ」

 そして、葉月が得意げな表情を浮かべてもえに語る。

「カード同好会は今から第二の活動拠点といえる場所――カードショップに行くよー!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブチ切れ公爵令嬢

Ryo-k
恋愛
突然の婚約破棄宣言に、公爵令嬢アレクサンドラ・ベルナールは、画面の限界に達した。 「うっさいな!! 少し黙れ! アホ王子!」 ※完結まで執筆済み

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい

沢尻夏芽
恋愛
 自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。  それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。 『様子がおかしい』 ※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。  現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。  他サイトでも掲載中。

9時から5時まで悪役令嬢

西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」 婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。 ならば私は願い通りに動くのをやめよう。 学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで 昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。 さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。 どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。 卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ? なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか? 嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。 今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。 冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。 ☆別サイトにも掲載しています。 ※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。 これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...