私たちカード同好会ですっ!

あさままさA

文字の大きさ
6 / 6
⬛第一章「カード同好会の発足ともえの初大会!」

第六話「安く、扱いやすくて、最強!? 速攻デッキ!」

しおりを挟む
「なんかお財布的に手が出しやすくて、でも最強! みたいな都合のいいのないもんですかねぇ。……まぁ、そんなのあったら苦労しないですよね」

 カード同好会の面々が愛用するデッキは参考にはできなかったため、どうしたものかと悩んでいたもえは不意にそんなことを呟く。

 ……まぁ、カードの知識がないもえが悩んだところで答えはでないのだが。

 もえを除いた四人も他のカードゲームを始める人間のサポートをしたことがないので、困り果てていた。

 ショップに来る人間のほとんどはすでにカードを始めている。皆どこからかカードゲームに興味を持って始めているものなのだ。

 だからどうしたものかと悩んでいるのはもえだけではなかったのだが――彼女の独り言にしずくが反応する。

「そっか、このメンバーの中で誰も使ってなかったから全く気付かなった……。あるよ。手が出しやすくて、でも最強なデッキ」
「え、本当ですか? そんな都合がいいデッキが?」
「うん。ちょっと待ってて」

 しずくはそう言ってポケットからスマホを取り出すと、どこかしらへと連絡を取るべく文字を打ち始める。

 そんなしずくの様子にピンときていないのは幽子と葉月。

 ヒカリだけは少しの間を持って、しずくのやろうとしていることが分かったのか「なるほど」と呟いた。

 そして、数分が経過――返事を受けたしずくはスマホの画面を皆に見えるように傾ける。

「これなら自信を持ってオススメできる。デッキレシピをもらったよ」

 皆の視線が注がれるスマホの画面にはしずくと誰かの会話履歴。

 デッキレシピを求めたしずくに対して、カードの枚数を羅列した返信が行われていた。

「デッキレシピ……あぁ、そういう意味ですか。料理のレシピみたいに、デッキをつくるための枚数を記したものってことですね」
「そうだよー。こういう風に文字で書く場合もあれば、実際のカードを並べて写真撮影することもあるんだよねー」
「SNSとかだと優勝したデッキのレシピを公開することで誰かに見てもらってプレイヤーとして有名になることもあるね」
「そういうところでカードゲーマーが繋がることもあるんですね」
「寧ろ、ネットで繋がる方が多いんじゃないー? ネットで知ってる人と大会で初めて会った、なんてこともあるからねー」
「俗に言う『リアルでは初めまして』ですか……」

 対人ゲームだけあって、人との繋がりも目まぐるしい印象を受けるもえ。

(インドアだから結構内向的な趣味かなってイメージもあったけど、寧ろ真逆かも。誰かと遊ぶんだから、コミュ力も必要なのかな)

 そういう意味で話しやすく、気さくな葉月はカードゲーム向きなのだろう。

「幽子ちゃん、このレシピのカードって在庫ありそうですか?」
「……えーっと、見てる感じ……どのカードも在庫はありそう、です」
「在庫があるなら組むのは問題なさそうだね。でもしずくさん、扱いやすいって言ってましたけど、これってどんなデッキなんですか?」
「速攻デッキだよ。アグロとかウィニーって呼び名もあるけど、とりあえず速攻って言っておけば通じる」
「はぁ。速攻デッキ、ですか……」

 もえはしずくの言葉を復唱して思案顔を浮かべる。
 そんな様子に四人の視線が集まる。

「つまり速いってことですよね。私、そんなに素早くプレイできるかな」

 もえの言葉に四人はきょとんとして瞬間、一斉に破顔する。

「あははー! 何もプレイを素早くすることが速攻じゃないよー。っていうか、そういう勘違いってしずくのお株だと思うけどねー」
「決着までのターン数が少ないから速いのであって、ゆっくりプレイして問題ないんですよ」
「……もえちゃん、意外と……しっかりしているようで、そういうことも言うんだ、ね」

 自分の勘違いを笑われてもえは顔が紅潮、熱を持ち始めるのを感じる。

 そのまま視線をしずくに滑らせると相変わらずのポーカーフェイス。しずくのお株だと言われていることも気にしていない風で淡々としている。

(すごいなぁ……、しずくさんって毎回こんな赤っ恥をものともしてないんだ)

 くすくすと笑うヒカリと幽子はすぐに大人しくなったものの、葉月は笑いの沸点が低いのかしばらくげらげらと笑い続け、沈静化を待つことに。

 そして、閑話休題。

「それにしても、速攻デッキっていうのはそんなに強くて財布に優しいんですか?」
「まぁ、格安で強いデッキの代名詞だねー。確かにしずくが言うとおり、誰も使ってないから気付かなかったよー」
「序盤からガンガンと攻撃していくデッキでして。最初の数ターンを中盤以降動くための準備に使ってしまうようなデッキは、速攻デッキの猛攻を捌ききれずにあっさりやられてしまいます」
「早い段階から猛攻をしかけて相手をパニックにさせる感じですか?」
「そういうイメージでいいと思うよ。質より量で攻めて、速さをアドバンテージとして戦う超攻撃的なデッキだからね」

 もえの中で速攻デッキのおおまかなイメージが具現し始めた。

 小難しいこと抜きで最初からフルスロットルで殴っていく。攻撃が最大の防御という感じもあるかも知れない。

 随分と前向きなデッキで……何というか、アニメの主人公が使っていたデッキもそんな感じだったんじゃないかと思わせる。

 決して守りに入らず、前に進む。

(……うん、なんかいいかも知れない。最初からテクニカルなんて考えてないし……私が最初に手にするデッキはこれなのかも!)

 となると気になるのは速攻デッキ、もう一つのメリットである。

「で、この速攻デッキが財布に優しい理由とは?」
「……このデッキに入ってるカードは……レアリティが総じて低い、の。……序盤から使えるカードには……低いレアリティがつくことが、多い。……後半を見据えた、ヒカリさんのデッキ……が高いのと対照的だ、ね」
「質より量だからねー。突貫工事のおかげでコストがかからないって感じじゃないー?」
「そうなんですね……。そっか安くて強いデッキがあるなら、あとは私がどうするかってだけですね」

 もえはカードゲームを始めるための一歩を踏み出そうとして考える。

 カード同好会への入部はちょっと懐疑的だった今日。葉月に少し勇気づけられて、しずくという頼れるけど不思議な先輩に会い、ヒカリという危ういドMを知り、自分の好きなことには一生懸命な幽子と友達になった。

 そのことを踏まえ、もえは葉月の言葉を思い出す。

『不安かもしれないけど、大丈夫だよ。カードゲームって絶対に一人ではできないんだよ。だから必ず誰かと競ったり、支えられたりもする。一人じゃないってだけで、大抵は何とかなったりするもんなんだよ』

 この四人と一緒なら――何とかなるのかも知れない。

 楽しめるかも知れない。
 今度こそ、ずっと続く趣味になるかも知れない!

 そう思って、もえは決心する。

「よしっ! 私、このデッキを組んでカードゲームを始めます! カード同好会のメンバーになるんですから……やっぱり私も自分のデッキが欲しいです!」

 ぐっと握った拳を携えて、もえの語った言葉。
 一同は微笑みを湛えて迎える。

「いいねー! やっぱり自分のデッキを持ってこそのカードゲーマーだからねー」
「もえがこのデッキを使ってくれたら私も嬉しいよ」
「分からないことがあったら何でも聞いてくださいね!」
「……じゃあ早速、必要なカードの在庫……見てこよ、っか?」
「ありがとう、幽子ちゃん。お願いするね!」

 幽子はデッキレシピの中からショーケースに入っているものを確認して、値段と在庫の数を見に向かった。

 とはいえ、速攻デッキに入っているカードのほとんどはショーケースに並ぶほどの値段がつかない安いカードだ。

 そういったカードに関してショップでは、ストレージと呼ばれる箱にまとめられて、客が自ら欲しいもの探して購入できるようになっている。

 値段も一律で三十円だ。

 なので、探す作業はカード同好会で初めての活動となるかも知れない。

 新しいことを始めるのに胸が高鳴るのを感じるもえ。これからカード同好会でプレイしていく上で、あの時のような――そう、葉月と戦って逆転した時のような高揚感をまた得られたら。そんな風に思うのだ。

 一方、ワクワクしているもえを他所に、葉月が二人へ速攻デッキに関してのちょっとした疑問を口にしていた。

「しずく、速攻デッキだけどさー……」
「ん? どうしたの?」
「確かに強いし、財布にも優しいけど……最強って表現は正しくなくないー? 対策できないわけじゃないし、弱点もあるといえばあるよねー?」
「まぁ、そうなんだけどね。でも、私の中で最強のデッキってアレなんだよ」
「そうなの?」

 不思議そうな表情を浮かべる葉月。
 するとヒカリは「大丈夫ですよ」と言って、会話に入る。

「しずくちゃんがそのレシピを誰からもらったのか分かるからこそ思いますけど、きっと大丈夫。もえちゃんなら、って思ったんですよね?」
「うん、なんかもえを重ねて見ちゃってたのかもね」
「そうですか……もえちゃん、楽しんでくれるといいですよね」
「うん、そうだね」

 ヒカリとしずくは互いに理解し合いうっすらと笑み、葉月だけが不思議そうな表情をしていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ブチ切れ公爵令嬢

Ryo-k
恋愛
突然の婚約破棄宣言に、公爵令嬢アレクサンドラ・ベルナールは、画面の限界に達した。 「うっさいな!! 少し黙れ! アホ王子!」 ※完結まで執筆済み

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい

沢尻夏芽
恋愛
 自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。  それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。 『様子がおかしい』 ※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。  現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。  他サイトでも掲載中。

9時から5時まで悪役令嬢

西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」 婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。 ならば私は願い通りに動くのをやめよう。 学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで 昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。 さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。 どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。 卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ? なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか? 嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。 今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。 冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。 ☆別サイトにも掲載しています。 ※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。 これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...