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5.  アレクとなった俺、暗殺者に会う

―― 暗殺者 ――

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 アリシアが帰った後、アレク殿下の交友簿を見直した。なかに載っている名前で、俺が転生してから会ったことのない、顔を合わせる機会のなかった数人の記録を、何度も読み返した。
 このなかに、俺が会うことになる人物がいるかもしれない。

 アリアたちは、何かあったときのために、再生を依頼されるであろう人物の屋敷を、使い魔に見張らせて、あらかじめ交友の記録をとっていたらしい。
 再生時に、記憶の混乱が起こるのは、よくあることで、ニコライ殿下からの依頼もあり、アレク殿下を始めとして、ニコライ派の主要な人物の交友簿は、常に更新しながら保管している。
 同じようなことは、他の派閥や王家からも依頼されているらしいが、詳しいことは教えてもらえなかった。

 信用はされていると思うが、どうも口の軽い人間と思われているらしい。イリアとアリア以外、転生者であることがバレないよう、気を使っているので、彼女らふたりと話すときには、必要以上にリラックスして、べらべら喋ってしまう。
 たぶん、それで誤解されたんだろう。
 今後は、必要なことだけ喋るように――は難しいか。早めに会話を切り上げるコツを、誰でもいいから教えてほしい。

 エミリー嬢に会う日の前日。小春日和で、久しぶりに寒さを気にすることなく過ごせた日だった。
 庭で一緒に食事をしたあと、テレーズを帰して、片付けをしていたときだ。
 テーブルの上を拭いていると、ふいに背後に気配を感じた。
 振りむこうとすると、
「そのままにしていてください――」
 男の低い声が、耳の近くでした。

 俺は、無視して振り向いた。誰もいない……。
 また、背後に人の気配。
「そのままで――」
 さっきと同じ低い、くぐもった声が耳元でした。
 今度は、動きを止めて、じっと待った。
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