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6. アレクとなった俺、伯爵令嬢に会う
―― エミリー嬢と俺 5 ――
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話を聞いたアリアたちも、頭を抱えた。暗殺者に関しては、暗殺者ギルドに聞くしかないが、アリアにもイリアにも、すぐに動いてもらえる知り合いはいなかった。
アリアたちが若いときには、知り合いがいた。アリアたちが魔法使いとして宮廷内で認められるまで、同郷のよしみで、格安の依頼料で、護衛をしてくれた暗殺者がいた(暗殺者を防ぐには、暗殺の手口にくわしい同じ暗殺者に護衛を頼むのが一番だった)。冒険者が、魔物や魔獣を退治する以外に、副業として旅行者の護衛を引き受けることがあるのと同じく、暗殺者も副業として護衛を引き受けることがあるのだった。
とりあえず、使い魔を派遣して、エミリーたちを見張らせた。何かあったら、すぐ、アリアかイリアに報告が来るはずだ。
「姉者、報告があってからじゃあ、間に合わん」
イリアが苦渋の声を漏らした。
「わかっている」
アリアも、しゃがれた声で答えた。
暗殺者ギルドに行ってみるしかない。莫大な金が必要だけれど、別の暗殺者に護衛を頼むしかない。
アリアたちだけでは、断られるかもしれない。偽物でも、王族がついているのと、そうでないのとでは、影響力が違う。
俺は、アリアからの頼みをふたつ返事で引き受けた。彼女たちと一緒に、暗殺者ギルドを訪ねることになった。
★
「思い切ったことを、やったのね」
ソフィア王女が、エミリーに、あきれた顔で、声をかけた。
「アレク殿下の動揺を誘うには、これしかなかったのです」
エミリーは、思いつめた表情で話す。
「レンゲルに、荷物持ちとして連れていった者が、たまたま火葬場の画像をみて、すれちがった馬車から顔を出して、こちらをみていた人物に似ているといっていたのです」
「そのときは、その者に証言させるつもりだったのですが……あの、ずるがしこいアレク殿下のことです。平民の者に証言させても、平民だから信用できない、とか、うまい言い逃れをされるかもしれません」
「それで、ヘンダーソンに頼んだのね」
「はい。良い方を紹介していただきました。実際に自警騎士団におられた方なら、アレク殿下に見破られることはないと思ったので……」
「それで、アレクの反応はどうだったの?」
「明らかな動揺がみられました。ヘンダーソンも、アレク殿下が嘘をついているのは間違いないと……。騎士団で犯罪者を取り締まった経験から、明言していました」
ソフィア王女は、眉をよせて、薄茶色の眼をみひらいた。
「めずらしいわね。アレクがそんな態度をみせるなんて……。何があっても動じた様子をみせない、感情を持たない冷徹な人間だと思ってたわ。……さすがに、伯爵家の者の生死にかかわっているとなると、バレれば極刑はまぬがれないし、あなたのような若い女性に追い込まれるとは思ってもいなかったんでしょうね」
「今回のことで、アレク殿下が兄の死にかかわっていることに、確信が持てました。いま、レンゲルで兄上の側につかえていた者たちや、アレク殿下の目撃者を探しています」
「もう始末されて、みつからないかもしれないわよ」
「わかっています。アレク殿下を追いつめる手段を、別に考えております」
エミリーは、これからやろうとしていることを、王女に話し、暇を告げた。
「何度もいうけれど、くれぐれも気をつけて!」
「……わかっております」
エミリーは、ソフィア王女の部屋をあとにした。
エミリーが部屋をでたあと、ソフィアは、補佐官を呼び、エミリーに隠れて護衛にあたることができる者を、もうひとりつけるよう指示を出した。
アレクセイと対抗するなら、用心して、しすぎることはない。
エミリーは、ひどく危険な立場に身を置いている。もう引き返すことはできないのだ。
★
アリアたちが若いときには、知り合いがいた。アリアたちが魔法使いとして宮廷内で認められるまで、同郷のよしみで、格安の依頼料で、護衛をしてくれた暗殺者がいた(暗殺者を防ぐには、暗殺の手口にくわしい同じ暗殺者に護衛を頼むのが一番だった)。冒険者が、魔物や魔獣を退治する以外に、副業として旅行者の護衛を引き受けることがあるのと同じく、暗殺者も副業として護衛を引き受けることがあるのだった。
とりあえず、使い魔を派遣して、エミリーたちを見張らせた。何かあったら、すぐ、アリアかイリアに報告が来るはずだ。
「姉者、報告があってからじゃあ、間に合わん」
イリアが苦渋の声を漏らした。
「わかっている」
アリアも、しゃがれた声で答えた。
暗殺者ギルドに行ってみるしかない。莫大な金が必要だけれど、別の暗殺者に護衛を頼むしかない。
アリアたちだけでは、断られるかもしれない。偽物でも、王族がついているのと、そうでないのとでは、影響力が違う。
俺は、アリアからの頼みをふたつ返事で引き受けた。彼女たちと一緒に、暗殺者ギルドを訪ねることになった。
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「思い切ったことを、やったのね」
ソフィア王女が、エミリーに、あきれた顔で、声をかけた。
「アレク殿下の動揺を誘うには、これしかなかったのです」
エミリーは、思いつめた表情で話す。
「レンゲルに、荷物持ちとして連れていった者が、たまたま火葬場の画像をみて、すれちがった馬車から顔を出して、こちらをみていた人物に似ているといっていたのです」
「そのときは、その者に証言させるつもりだったのですが……あの、ずるがしこいアレク殿下のことです。平民の者に証言させても、平民だから信用できない、とか、うまい言い逃れをされるかもしれません」
「それで、ヘンダーソンに頼んだのね」
「はい。良い方を紹介していただきました。実際に自警騎士団におられた方なら、アレク殿下に見破られることはないと思ったので……」
「それで、アレクの反応はどうだったの?」
「明らかな動揺がみられました。ヘンダーソンも、アレク殿下が嘘をついているのは間違いないと……。騎士団で犯罪者を取り締まった経験から、明言していました」
ソフィア王女は、眉をよせて、薄茶色の眼をみひらいた。
「めずらしいわね。アレクがそんな態度をみせるなんて……。何があっても動じた様子をみせない、感情を持たない冷徹な人間だと思ってたわ。……さすがに、伯爵家の者の生死にかかわっているとなると、バレれば極刑はまぬがれないし、あなたのような若い女性に追い込まれるとは思ってもいなかったんでしょうね」
「今回のことで、アレク殿下が兄の死にかかわっていることに、確信が持てました。いま、レンゲルで兄上の側につかえていた者たちや、アレク殿下の目撃者を探しています」
「もう始末されて、みつからないかもしれないわよ」
「わかっています。アレク殿下を追いつめる手段を、別に考えております」
エミリーは、これからやろうとしていることを、王女に話し、暇を告げた。
「何度もいうけれど、くれぐれも気をつけて!」
「……わかっております」
エミリーは、ソフィア王女の部屋をあとにした。
エミリーが部屋をでたあと、ソフィアは、補佐官を呼び、エミリーに隠れて護衛にあたることができる者を、もうひとりつけるよう指示を出した。
アレクセイと対抗するなら、用心して、しすぎることはない。
エミリーは、ひどく危険な立場に身を置いている。もう引き返すことはできないのだ。
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