ファンタジー/ストーリー4

雪矢酢

文字の大きさ
18 / 27
第ニ章

二話 愛と宿命と…

しおりを挟む
ヘルゲートが一大作戦へ向け動き出す。
その時、オメガはフラットから衝撃の事実を聞かされる。
だが、オメガにも秘めたる真実があった。



「私の役目は大陸の管理、そしてもう一人、エンデから大陸を監視する役目で遣わされた者がいるんだ」


「………機関のオール最高司令か」


「そうだ」


復興機関の目的は大陸を監視すべきことだった。
そしてドラゴンマスターは大陸を管理する者。
つまりエンデ国はこの大陸全土を掌握しており、事実、世界はエンデの手のひらにいるということになる。



「…何故この話を?」


「エンデはもう終わりだからだ……」


「終わり?」


「ダルガ教四天王の一部はエンデの力を持つ私ですら苦戦する強者だった」


「うむ」


「エンデは確かに多くの生物たちを導いた。だが悪魔襲来の危機を人は共存という形にて答えを出し、そして見事に乗り越えた。生物たちは良くも悪くも自分たちで選択して歴史をつくっていくべきなのだ。命の芽吹き、生命力、それを失ったエンデは滅ぶほかないだろう」


「うむ、興味深い話だが……」


オメガはフラットの手に触れる。


「あ…」


「不安なのだな…」


「オールが倒れ私は力を失った。そんな状況でよくわからん邪神なる存在が降臨し、暴徒化した信者が大陸に一斉攻撃を仕掛けたら……この大陸は……消滅してしまうんだ」


「消滅……何故だ?」


「管理と監視が失敗したとエンデに知れると大陸に脅威が発生したと認識される。そしてエンデは平和を保とうと脅威への攻撃を開始するんだ……そうなれば今度こそ世界は終わる…ミサイルが大陸全土に発射され文明は跡形もなく消滅する…これが世界終焉のシナリオなんだ」


声が震えるフラット。
彼女はカイト国への爆撃も知っている。


「大丈夫だフラット殿」


「ダルガ教の戦力は侮れない、残る敵はエターナルやフェイト以上の強者かもしれない。レフトーラやアレサ以上の者が存在していたら……」


震えて取り乱すフラットをオメガは優しく抱きしめる。


「えっ」


「落ち着くんだフラット。我々はダルガ教には負けない。大陸は今、ひとつにまとまりつつある。大丈夫だ。教団を倒しエンデ国へ行こう」


不器用ながらも必死に落ち着かせようとするオメガ。
その優しさに触れるフラット。
感じたことのないあたたかい気持ちに身をゆだねる。


「もしエンデが世界を再び滅ぼす選択をしたなら……」


「エンデを…滅ぼすの?」


「今その決断をする時ではない、レフトやガイア、各国の意見を聞くべきだろう。それにエンデに住まう者とも話すべきだろう」



「私は…あなたと共に……エンデと戦うことになっても…一緒に…」


フラットは繋いでいるオメガの手を強く握り返した。


「一緒だ、一緒だよフラット」


愛を確認する二人。
その様子をアレサとマーガレットは見逃さなかった。


「…エンデとかミサイルとか……あげくには世界の終焉だ?」


「ふふ、大陸にミサイルが降り注ぐなんて…ゾクゾクしますわ」


「気に入らないけど……今はダルガ教が優先でしょう」


「フラット様の話だとエンデ国はまるで神の国みたいですわね、ふふ」


「その神様の使いフラットがオメガとくっつくとはねえ…なんかお互いたどたどしいというか…」


「ふふ、奥様、二人はまるで機械仕掛けのアダムとイブみたいですわ」


「…ならさっさとリンゴを食べなさいよ…」 


「ふふ」




その頃、何も知らないレフトは復興機関支部を訪れていた。



「あれレフト?お前パレスに行かなくていいのか」


ガルシアは相変わらず門番というか…入り口にいた。
状態がわからないレフトは戸惑っている。


「ガイって学者みたいな人が老人とパレスに向かっていたね」


「老人?」


「うふふ、その方はゼノンブール大老ですね」


バイオが奥から出てくる。
体調は無事回復したようである。


「ゼノンブールって…以前ヘルゲートの参謀だった賢者のことですか?」


…そうだ、ガルシアの言葉で思い出したわ。
ゼノンブール、実力はわからないけどかなりの知恵者で、ガイアの前任者に愛想をつかせて去ったあの老人だわ。


「姿を消してから、ひっそりと亡くなったかと思いましたが…うふふ」


「……しかしあの頑固じいさんを一体誰が説得したのでしょうかね…」


「うふふ、目の前にいますよ、その方は」


「えっ」


周囲を見渡すガルシア。
レフトはヘルゲートを爆撃や奇襲から守った。
強大な力で街を破壊する機械竜を倒したその姿は、苦しむ市民や兵士たちからみたら救世主そのものであった。
バイオは理解していた。
レフトの行動がこの謎の老人を動かしたことを。


「うふふ、そんなことよりもレフトーラ様」


「はい?」


「ダルガ教から、レフトーラ様とテラーを引き渡せとの要求がありましたが…うふふ、ご存知でしたか?」


「そ、そうなのですか…はじめて聞いたよ…」


「あらまぁ、今その件でミミズクさんがダークパレスでの話し合いに参加しております。奥様の姿がないところをみると……うふふ」


「す、凄い話し合いですね、当事者が不在とは…」


むちゃくちゃな話し合いに困惑するガルシア。
 

「レフト、お前大変だな…こっちにいた頃のほうがのびのびできただろう」


「うふふ、ガルシアさん、幸せとは人それぞれですからね」


「…」


「引き渡しは…罠っぽいですね…」


…またかよこの教団、餌をまいて獲物を釣るのがよほど好きなんだね…。


「だろうな」


「うふふ、清々しいくらいの罠ですわね」


二人はレフトの質問に即答する。


「パレスではどうせ罠だろうが突っ込むとか言ってるんでしょう」


「うふふ、レフトーラ様とてその方が楽かと?」


「まあ、そうですが…」


「…お前、機関を辞めてから性格が変わっただろ…」


「うふふ、ガルシアさん、レフトーラ様は結婚されましたからね。素敵な奥様と幸せいっぱいなのでしょう」


「結婚ですか…自分には無縁です」


「ガルシア、いつ出会いがあるかわからないよ。その時がきたら応援するからね」


「うふふ、ガルシアさんが結婚したら新婚旅行の申請をミミズクさんにしておきますわ」


「…」


そんな話をしている三人の前に、なんと鳥人アローが飛んでやって来る。
ガルシアは襲撃とみて身構える。


「バイオ様はお下がり下さい。ここはレフトと自分が…」


「うふふ、ガルシアさん大丈夫。あの鳥に戦意は無さそうですよ」


「早まるな、あれは使者だよ」


バサバサと羽ばたかせ着地したアローは膝をつき話を始めた。


「復興機関の方々突然の訪問失礼。私はアローと申します」


「うふふ、ずいぶんと礼儀正しい方ですね」


「アロー殿、私はガルシア、こちらはバイオ様、そしてレフトーラ。何用か」


二人の前に出てアローの対応をするガルシア。


「ガルシア殿恐れ入る。ダークパレスでの話し合いの結果、明後日にレフトーラ殿とテラーをダルガ教に引き合わせ、この教団を一網打尽にするとのことが決定しました」


「うふふ」


「あら…」


「一網打尽って…」


「後方にはゼノンブール様、レフトーラ殿の妻、アレサ殿、そしてマーガレット様が待機、気をみて総攻撃を仕掛けるとのことです」


スラスラと文章を読み上げるアロー。


「アレサって……おいレフト、大丈夫なのか?」


「…決定事項なら…仕方ないよね」


「うふふ」


「復興機関にはダークパレスの警備をお願いしたいとの要請がありました。ミミズク様はここにいるバイオ様の許可を、とのことで…」


「うふふ、許可しましょう。ミミズクさんはこちらに戻ってもらい、私とガルシアさんで引き受けましょう」


「えっ…バイオ様自らですか?」


「返答ありがとうございました。それではこれにて」


羽ばたこうとするアロー。


「ガルシアさん、中にいるケージさんへしばらく外すと伝えダークパレスに来て下さい。私はアローさんと一足先に行きますので」


「はっ」


ガルシアは内部に入り指示通り動き始めた。
アローは困惑しているが浮上しパレスへ向けて飛び去った。


「あの鳥はなかなか使えそうだわ、うふふ」


「引き抜きですか。相変わらずですねバイオさん」


「うふふ、レフトーラ様、お手伝いできず申し訳ないですが…こちらもちょっと気になることが…」


「はい、きっと教団はパレスにも何かを仕掛けてきます。パレスにはニナとオメガもいますが共に戦闘不能です」


「うふふ、お任せ下さい。それではまた三人でお話しましょうね」


そう言うと、バイオは魔力で浮上し、ものすごいスピードでアローを追った。


「さて、明後日だっけか…ならもうちょい街をみて回るかな」



次回へ続く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...