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第ニ章
番外編 禍福倚伏
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魔法
魔法を使うには電波のように見えない空気中をただよう魔力を器と呼ばれるモノに取り込む。そして蓄積したそれを用途に応じて具現化、放出する。
便利ではあるのだが、この大陸ではいまいち普及していない。
その理由は「器」が脆くて魔力を蓄積することが困難であること、それと魔力の具現化する方法ががこれまた困難であるからだ。
そして、魔法は魔力に適応した者しか使えない。
これらのことから魔法は地味で、いずれ忘れ去られるモノ、と考えられている。
悪魔の放つ瘴気が魔力と密接な関係にある。
人が瘴気を取り込むと心と身体は拒否反応を起こす。
この反応を抑制するのが魔力であり、心体を無事に安定させることができれば魔力を扱うことが可能になる。
優れた魔法使いとは耐久力のある器を持ち、魔力を強力かつ利便性あるものへの具現化が可能な者たちのことである。
この仕組みをヘルゲートのある研究者が発見し瘴気を発する装置を発明した。
その装置は孤児の集まる施設に持ち込まれ魔法使い養成所なるものがつくられた。
これは悲劇によって破滅してしまったある姉妹の物語である。
「お姉ちゃん、すごい」
「ふぅ…耳飾りの器は十分な耐久があるわね」
双子の姉妹はその施設で有名だった。
姉ユカは無事に「儀式」と呼ばれる魔力の開花を成功させ、器として特殊な耳飾りを得た。
妹のカナはまだ魔法が使えないが優れた剣術による戦闘力がある。
カナの儀式が迫る。
だが、彼女は魔法への戸惑いがあった。
姉のように私も魔法を使えるのか…。
ユカは控えめでおとなしく冷静、感情を表に出すことは少ない。勤勉でどんなことも無難にこなす彼女の姿は万能であり施設の人が注目している。
人気者の姉ユカだが、カナはそんな姉に尊敬と嫉妬があったのだった。
「いつも比べられる、私は私だよ、みんな分かっていない」
「お姉ちゃんはすごい、けど……私だって…私も…」
お互いに本音が言えない関係はいつかどこかでトラブルになる。
我慢や気を遣うことには限界があるからだ。
二人にほんの少しだけ言葉にする勇気があれば…。
負の感情はどんどん心に蓄積されていくが、それでも相手のこと信じる心があれば、この姉妹はきっとこの負を払えただろう。
姉妹は施設の食堂で休んでいる。
ここには彼女らの他にも優秀な魔法使いは存在していた。だが、その者たちは施設関係者に突然呼ばれると、その後ここには戻らなかった
「なんかドキドキしてきたわ…」
「大丈夫よ、あなたならきっと私以上の魔法使いになれる」
「ねえお姉ちゃん…それ本気で言ってるの?」
「ええ、もちろんよ。周りは私のことをあれこれ言うけど、それは努力している結果にすぎないわ」
「努力の…結果…」
「あなたは才能というか…私にはないセンスというものがあるわ。魔力が開花すればそれはより磨かれるし、もし適応できなくても剣術など優れた才能を伸ばせばいいと思うわ」
姉は妹のことを理解していなかった。
カナは戦闘センスがあり、実際に戦いは妹のほうが優れていた。
ユカはそれに気づき、日々努力を続け戦闘以外の生き残る道を模索していたのだ。
姉の頭にあるのは戦いのみ。
妹のカナは潜在能力が凄まじくて、魔法を習得したら自分は追い抜かれてしまう…。
ユカは表にこそ出さないが内心は不安だった。
妹も姉の真意が分からなかった。
優れた戦闘センスをもつカナだが、本人は戦いに興味がなかった。
彼女の想いはただ一つ。
お姉ちゃんと一緒にいたい。
お姉ちゃんと一緒に遊びたい。
カナは姉にはない「愛情」にとても敏感だった。
ただお姉ちゃんから愛を感じたかったのだ。
「ねえ、ここで私たちの人生は終わってしまうのかしら?」
「ん、いきなりどうしたの?」
「魔法使いになったお姉ちゃんは…そのうち、いなくなってしまうの?」
「…」
「私は…お姉ちゃんと一緒に外の世界がみてみたい…」
二人が話をしていると、その隣に中年男性と姉妹より少し年上の男が椅子に座る。
「外の世界は残酷だぞ、君らにはちとつらいと思うわい」
「えっ」
「あなたは誰?」
中年は整った服装だがそれが胡散臭い。
「俺はゼノンブール、そんでこっちがイノセンス、国専属の魔法使いだ」
イノセンスは一礼し二人を見つめる。
「国の専属魔法使い?」
ユカは国専属魔法使いに興味があるようだが、カナは違った。
「お姉ちゃん、この人たちはストロンガの手先だわ、話を聞いちゃダメだよ。私たちをどこかに連れていくつもりなんだわ」
「おうおう、妹ちゃんは鋭いねえ。なかなかいい線いってるが…」
「参謀、妹のほうは明日、儀式を受けるようですが…」
「…まあ……がんばるんだな」
「あんたに言われなくても…」
するとカナは突如席を立ち部屋へ戻る。
ユカも追いかけるが、イノセンスが彼女を引き止める。
「えっと…イノセンスさん?」
「君は妹のことを信じていますか?」
「え、信じて?」
「カナさんはおそらく魔法不適合者です。明日の儀式は中止したほうがいい」
「妹が…不適合?」
ゆっくりゼノンブールはユカに近づく。
「君たちの噂は施設長から聞いているよ。そんなお二人に、ちと頼みがあってね」
「他の方へどうぞ…危険なことはしたくない…」
ゼノンブールの話は聞かずユカはイノセンスに答える。
「妹のことを考えているか?」
去ろうとするユカを強引に静止させるイノセンス。
「やめて下さい…これ以上は…怪我をしますよ」
ユカは微弱だが魔力を解放しイノセンスを睨む。
「ふ、わりと怒りっぽいですね、ユカさん」
イノセンスはユカの魔力を消すように同じく魔力を解放。
「おい、やめろ」
ゼノンブールが二人を止める。
まさに一触即発だった。
手をふりはらいユカは無言でその場を去る。
三人の死角からはカナがイノセンスを狙っていたのだ。
ゼノンブールはそれに気づいて二人を止めた。
「まったく。姉は噂に聞くほどの人物ではないな…ヒヤヒヤしたわ」
「参謀、彼女は必死なのです。この施設で生きるのに必死で、生き残るために魔力を得たのでしょう」
「なんだお前、あいつをかばうとは……まさか惚れたのか?」
「どうでしょう、ただこんな気持ちは初めてです。おそらく彼女も……」
ユカはイノセンスの言葉通り、心が揺れ動いていた。
明日は妹カナの儀式だ。
言葉をかけてあげたい、不安を聞いてあげたい。
だが、彼女は感じたことがない気持ちに戸惑っていた。
儀式は悪魔の瘴気を人工的に発生させる瘴源石に触れて始まる。
すぐに拒否反応があらわれるのでそこからは己との戦いだ。
不適合とされた者へは麻酔注射され精神安定薬にて治療される。
「…ふう」
控え室にて深呼吸するカナ。
「カナ…」
「じゃあいくねお姉ちゃん」
「私は…あなたのことを…」
昨夜は会話をしていない姉妹。
何かを伝えるつもりだったユカだったがカナは笑顔で口を開く。
「ふふ、無事終わらせたら、たくさん話そう。私はお姉ちゃんを信じているわ」
「…信じ…」
信じている。
その言葉はユカには重く、妹が儀式の部屋に入るのをただ眺めることしかできなかった。
「ユカ、いくぞ」
放心状態の彼女に声をかける者がいた。
イノセンスだ。
「私は……カナのことを……」
彼をみたユカは、何かの糸が切れたように突如泣き崩れた。
そんな彼女を抱きしめるイノセンス。
「大丈夫、君は変われる。カナと私がきっとあなたを解き放ってみせる」
イノセンスはユカを抱え、部屋を後にする。
「カナガーデン、それでは目の前にある石に手を触れて下さい。精神や身体が限界と判断した場合は腕にあるボタンを押して下さい。また異常事態はこちらが対応するのでご理解を…ではどうぞ」
「はい…」
アナウンスが終わりカナは石に手を触れた。
「…これは…」
ベンチに座るユカとイノセンス。
落ち着いたユカはひと呼吸し話をする。
「私は…自分のことばかり考えていたのね」
「そのようだが、別にそれは悪いことじゃない」
「うふふ」
「なんだ?どうした?」
「魔法や戦闘、さらには深層心理だのと、あれこれ勉強しているけど…満たされることはなかった…」
「勤勉なのは素晴らしいことだ」
「うふふ、肯定してくれるのね、嬉しいわ」
穏やかな雰囲気の二人だが、突如施設内に緊急事態を告げるサイレンが響く。
「これは」
「くっ…恐れていたことが…」
すると施設の壁が爆発。
爆風で二人は吹き飛ぶが、イノセンスは機敏な反応にてユカをかばう。
天井が崩落し二人は瓦礫の下敷きになってしまう。
「おい、ユカ、しっかりしろ…」
ユカはショックで気絶。
イノセンスは薄れゆく意識のなか、必死に彼女をかばい瓦礫の重さに耐えている。
「…あれは…」
うっすらと遠方に魔力を解放した人が見える。
カナは不適合者であった。
瘴気は心臓の動きを停止させ、おぞましい魔力を身体に取り込んだ彼女はそれを動力とし魔力暴走状態となった。
施設の関係者は館を閉鎖し緊急信号を国の中枢部ダークパレスへ発信。
施設の魔法使いたちがカナを止めようと戦うが強固な防壁を突破できず、圧倒的ともいえる破壊魔法にて次々と倒れていった。
魔法使い養成施設の事故報告を受けたストロンガの対応は迅速だった。
イノセンスから事前に施設で事故が起こるとの警告を受けていたからである。すぐに鎮圧する兵士や魔法使いが派遣された。
「おいおい、イノセンスさん、大丈夫か」
軽快な話し方で兵士らしからぬこの男。
数名を呼び瓦礫に潰れそうだったユカとイノセンスは救出された。
「すまないガイア、この暴走は…」
「ああ、あんたの言う通りだぜ。ストロンガはかなり焦っているようだぜ」
「そんなことはどうでもいい、して本体は?」
このストロンガ。
彼はガイアが仕切る前のヘルゲート統治者である。
「ねえ、本体って…もしやこの騒動は…」
気がついたユカが二人に問う。
「そうだ、妹のカナ。彼女の魔力暴走だ。そしてそれをこれから止める」
イノセンスはユカの眼をみて話す。
「ウソ…ウソよ…なぜ…」
「つらいが決断せねばならない。人工心臓か破呪か。このどちらかしか妹を救うことはできない」
「ちっ……人工心臓は悲惨だ、だが破呪の成功率は低い…どっちもつらいぜ…」
「人工心臓と破呪?」
イノセンスはユカに自分の腕輪を外し渡す。
「これをつければ君にも合成魔法を唱えることができる。妹を救うには君の力が必要なんだ…」
「合成魔法?」
「詳しく説明している時間はない…」
するとカナは施設の壁をぶち抜き三人の前に姿を現す。
「ああ……カナ…」
そのおぞましい姿に震えるユカ。
瞳は赤く染まり黒く禍々しい魔力を纏う。
ガイアは二人を守るように二本の剣を抜刀する。
「時間は稼ぐ……二人で決めろ」
するとガイアはカナにむかっていき戦闘が始まった。
彼は剣を十字に構えカナの防壁を無力化、近接戦を誘う。
彼女は防壁が消えても動揺することなく剣を召喚、ガイアと撃ち合う。
「…イイ腕だな、気に入ったぜカナガーデン」
「…」
イノセンスは眼を閉じ念じる。
すると二人を中心に魔法陣が展開。
「彼女は妹で家族だ、つらいだろうが決めてくれ」
「人工的な心臓は再生の代償として…記憶を失う?」
「そうだ、だがこの方法は確実に成功する。一方の破呪は、正直二人の精神状態では難しい……が、妹は君を信じているはず……それならきっと…」
…確実に成功する……それに記憶を失えばカナは……妹としての苦悩から解放されるのでは?
私という呪縛から解き放ってあげられるのでは……。
迫る選択にユカはイノセンスの言葉が頭に入らなかった。
確実に成功、その救いともいえるワードが切羽詰まった彼女の思考力を奪った。
「ユカ、私はカナを信じる」
「えっ…」
「人工心臓は確実だがカナは君のことを誰よりも信じている。そんな彼女の記憶を」
「私はカナに生きてほしい、たとえどんな状態になろうが、生きてさえいれば…」
イノセンスの言葉を否定するように声をあげるユカ。
…カナは私を妬んでいる…。
暴走させたのはきっと私なのよ……。
不安定な精神で破呪が成功するわけがないわ。
「おい、ユカ、大丈夫か」
「イノセンス、私は心臓をつくる、カナには生きて、生きてほしいの、そして世界をみてほしい」
「…」
うつむくイノセンスは魔法陣を発動させ、容易く人工物をつくった。
ガイアはそれを確認すると二人のもとへカナを誘導する。
「…これで暴走は終わる」
「わかったわ」
ユカの決断に納得できないイノセンスだったが、これは姉妹の問題。
ユカはこれでカナを救えると信じている。
それが彼にとってはつらかった。
「カナ……さあ世界を…あなたは自由よ…」
ユカは魔力を解放し彼女の胸にそれをむける。
だが、カナはその様子に突如反応、それを掴むと無表情のまま破壊してしまう。
「カナっ! なぜ、どうしてっ」
怒鳴るユカ。
カナはゆっくりと右腕をユカへむけた。
「危ないっ」
ユカをかばうイノセンス。
真下から発生した黒い物体が彼女を襲うが間一髪ユカは救われた。
「イノセンス、何これ…」
「今のは闇の魔法、暗黒だ……このまま暴走が続けばヘルゲートが滅んでしまう……なんとかせねば…」
「…カナ…」
「イノセンス……限界だ……お前、分かっているだろ…」
ガイアは剣を構えるがその彼をなだめユカはカナへとむかっていく。
「お、おい、…」
鋭い眼光の彼女に気負するガイア。
「イノセンス、私はあなたのことが…」
「待てユカ、まさか君は……」
ユカの接近にカナは暗黒を放つが彼女はそれをひらりと躱す。
ユカの表情が変わり、焦ったイノセンスは彼女を止めようとする。だが荒れ狂う暗黒によって二人へ接近することができない。
「ごめんねカナ、お姉ちゃんはあなたを信じることができなかった……ごめんなさい……だから……だからせめて…」
ユカはカナの腕を掴む。
するとカナの魔力はあっけなく飛散する。
「やめろーーーっ」
「……バカだ…ユカガーデン……お前は…本当に…」
叫ぶイノセンス。
剣を捨て立ち尽くすガイア。
カナはユカに身をゆだねその瞳からは涙が流れる。
「うふふ、もう大丈夫よカナ、ほらこの花、あなた好きでしょう?」
ユカは花のブローチをカナに渡す。
そして自分の心臓を魔力で取り出し妹の胸にあてた。
「うっ…」
カナは心臓が機能し血色が戻った。
ユカは魔力が消滅し激しく吐血、そしてゆっくりと倒れた。
「…なんて…こった…こりゃ」
言葉にならぬ言葉を放つガイア。
イノセンスはユカを抱え回復魔法を放つ。
「ユカ……なんということを……なんてことをしたんだ、君は人として失格すぎる」
言葉は否定的だがイノセンスは涙が止まらない。
「うふふ、あなたに抱かれてなら…本望よ…それに妹は助かる…」
彼の流れる涙をふくユカ。
「ユカ…君が犠牲になっても妹の記憶は戻らない…戻らないんだぞ」
「わかっているわ……でもね、これでいいの、カナはここで生まれ変わった…そういうことに…」
「バカなことを………本当に君は……君は自分のことしか考えていない…妹が望んだ世界は……君と一緒に生きる世界だ…君がいない世界は……」
「うふふ…あなたにはもっと早く……」
ユカは出血がひどく様態が悪化。
もう助からない。
手が震えるイノセンス。
「お迎えが…来たようね…」
「…」
「私は…あなたを…好きになってしまったのかしらね…うふふ」
「ガイア……ユカを病院に。そして皆には…後を頼むと…」
イノセンスは笑顔でユカを見つめる。
「おいおいおーーーいっ、お前らもうやめろ、やめるんだ、もうやめてくれ、こんなことはやめろ」
ガイアが叫ぶ。
「あなた…私を愛して……」
「ユカ……君も生きるんだ、信じることを忘れないで…生きて…」
イノセンスはユカと同じく自分の心臓を彼女へと……。
この事件はユカガーデンとカナガーデン、さらにはガイアの運命をも変えた大事件であった。
その被害は凄まじくストロンガが失脚するきっかけともなった。
妹のカナは魔力不適合者であったがやや強引に適合。
ユカの心臓が器として機能し、常人にはない絶大な魔力を得た。この能力のおかげで最強魔法とされる闇の魔法、暗黒を習得できたのだ。
カナは全ての記憶を喪失したがリハビリにより人間味を取り戻しゼノンブールの側近として保護された。
最後にユカから貰った花のブローチを気に入り、それにちなんで名を変えた、その花はユカも好きだったマーガレット。
ゼノンブールからガイアへと、ヘルゲートのためその力を捧げている。面倒見がよいため兵士からの信頼は厚い。
一方のユカはイノセンスの心臓にて生存するが出血多量により輸血が必要であった。イノセンスが倒れたことに何かの陰謀を感じたストロンガはユカが治療入院している研究所へ密使を放ち輸血する血液に猛毒を混入させる。生きることに執着する彼女はこの毒入りの血液を克服し己の力とした。これを恐れたストロンガによりユカはバイオと呼ばれるようになった。彼の失脚後、バイオは医者となり一部の記憶を取り戻すことに成功する。
医療の世界は彼女にとっては狭く、短期間にて医学を極めると別の道を模索した。彼女を煙たがる連中により復興機関にて医療支援を任される。するとこれが彼女の転機であり天職であった。
ガーデン姉妹はヘルゲートが浄化されるきっかけをつくり、レフトたちと同様にこの国への影響力は絶大である。
もし二人が記憶を完全に取り戻したら運命はまた大きく変わるだろう。
似て非なるもの。
白きバイオガーデン。
黒きマーガレットガーデン。
この二人に幸あらんこと…。
挿し絵について
イラストAC illustB様
魔法を使うには電波のように見えない空気中をただよう魔力を器と呼ばれるモノに取り込む。そして蓄積したそれを用途に応じて具現化、放出する。
便利ではあるのだが、この大陸ではいまいち普及していない。
その理由は「器」が脆くて魔力を蓄積することが困難であること、それと魔力の具現化する方法ががこれまた困難であるからだ。
そして、魔法は魔力に適応した者しか使えない。
これらのことから魔法は地味で、いずれ忘れ去られるモノ、と考えられている。
悪魔の放つ瘴気が魔力と密接な関係にある。
人が瘴気を取り込むと心と身体は拒否反応を起こす。
この反応を抑制するのが魔力であり、心体を無事に安定させることができれば魔力を扱うことが可能になる。
優れた魔法使いとは耐久力のある器を持ち、魔力を強力かつ利便性あるものへの具現化が可能な者たちのことである。
この仕組みをヘルゲートのある研究者が発見し瘴気を発する装置を発明した。
その装置は孤児の集まる施設に持ち込まれ魔法使い養成所なるものがつくられた。
これは悲劇によって破滅してしまったある姉妹の物語である。
「お姉ちゃん、すごい」
「ふぅ…耳飾りの器は十分な耐久があるわね」
双子の姉妹はその施設で有名だった。
姉ユカは無事に「儀式」と呼ばれる魔力の開花を成功させ、器として特殊な耳飾りを得た。
妹のカナはまだ魔法が使えないが優れた剣術による戦闘力がある。
カナの儀式が迫る。
だが、彼女は魔法への戸惑いがあった。
姉のように私も魔法を使えるのか…。
ユカは控えめでおとなしく冷静、感情を表に出すことは少ない。勤勉でどんなことも無難にこなす彼女の姿は万能であり施設の人が注目している。
人気者の姉ユカだが、カナはそんな姉に尊敬と嫉妬があったのだった。
「いつも比べられる、私は私だよ、みんな分かっていない」
「お姉ちゃんはすごい、けど……私だって…私も…」
お互いに本音が言えない関係はいつかどこかでトラブルになる。
我慢や気を遣うことには限界があるからだ。
二人にほんの少しだけ言葉にする勇気があれば…。
負の感情はどんどん心に蓄積されていくが、それでも相手のこと信じる心があれば、この姉妹はきっとこの負を払えただろう。
姉妹は施設の食堂で休んでいる。
ここには彼女らの他にも優秀な魔法使いは存在していた。だが、その者たちは施設関係者に突然呼ばれると、その後ここには戻らなかった
「なんかドキドキしてきたわ…」
「大丈夫よ、あなたならきっと私以上の魔法使いになれる」
「ねえお姉ちゃん…それ本気で言ってるの?」
「ええ、もちろんよ。周りは私のことをあれこれ言うけど、それは努力している結果にすぎないわ」
「努力の…結果…」
「あなたは才能というか…私にはないセンスというものがあるわ。魔力が開花すればそれはより磨かれるし、もし適応できなくても剣術など優れた才能を伸ばせばいいと思うわ」
姉は妹のことを理解していなかった。
カナは戦闘センスがあり、実際に戦いは妹のほうが優れていた。
ユカはそれに気づき、日々努力を続け戦闘以外の生き残る道を模索していたのだ。
姉の頭にあるのは戦いのみ。
妹のカナは潜在能力が凄まじくて、魔法を習得したら自分は追い抜かれてしまう…。
ユカは表にこそ出さないが内心は不安だった。
妹も姉の真意が分からなかった。
優れた戦闘センスをもつカナだが、本人は戦いに興味がなかった。
彼女の想いはただ一つ。
お姉ちゃんと一緒にいたい。
お姉ちゃんと一緒に遊びたい。
カナは姉にはない「愛情」にとても敏感だった。
ただお姉ちゃんから愛を感じたかったのだ。
「ねえ、ここで私たちの人生は終わってしまうのかしら?」
「ん、いきなりどうしたの?」
「魔法使いになったお姉ちゃんは…そのうち、いなくなってしまうの?」
「…」
「私は…お姉ちゃんと一緒に外の世界がみてみたい…」
二人が話をしていると、その隣に中年男性と姉妹より少し年上の男が椅子に座る。
「外の世界は残酷だぞ、君らにはちとつらいと思うわい」
「えっ」
「あなたは誰?」
中年は整った服装だがそれが胡散臭い。
「俺はゼノンブール、そんでこっちがイノセンス、国専属の魔法使いだ」
イノセンスは一礼し二人を見つめる。
「国の専属魔法使い?」
ユカは国専属魔法使いに興味があるようだが、カナは違った。
「お姉ちゃん、この人たちはストロンガの手先だわ、話を聞いちゃダメだよ。私たちをどこかに連れていくつもりなんだわ」
「おうおう、妹ちゃんは鋭いねえ。なかなかいい線いってるが…」
「参謀、妹のほうは明日、儀式を受けるようですが…」
「…まあ……がんばるんだな」
「あんたに言われなくても…」
するとカナは突如席を立ち部屋へ戻る。
ユカも追いかけるが、イノセンスが彼女を引き止める。
「えっと…イノセンスさん?」
「君は妹のことを信じていますか?」
「え、信じて?」
「カナさんはおそらく魔法不適合者です。明日の儀式は中止したほうがいい」
「妹が…不適合?」
ゆっくりゼノンブールはユカに近づく。
「君たちの噂は施設長から聞いているよ。そんなお二人に、ちと頼みがあってね」
「他の方へどうぞ…危険なことはしたくない…」
ゼノンブールの話は聞かずユカはイノセンスに答える。
「妹のことを考えているか?」
去ろうとするユカを強引に静止させるイノセンス。
「やめて下さい…これ以上は…怪我をしますよ」
ユカは微弱だが魔力を解放しイノセンスを睨む。
「ふ、わりと怒りっぽいですね、ユカさん」
イノセンスはユカの魔力を消すように同じく魔力を解放。
「おい、やめろ」
ゼノンブールが二人を止める。
まさに一触即発だった。
手をふりはらいユカは無言でその場を去る。
三人の死角からはカナがイノセンスを狙っていたのだ。
ゼノンブールはそれに気づいて二人を止めた。
「まったく。姉は噂に聞くほどの人物ではないな…ヒヤヒヤしたわ」
「参謀、彼女は必死なのです。この施設で生きるのに必死で、生き残るために魔力を得たのでしょう」
「なんだお前、あいつをかばうとは……まさか惚れたのか?」
「どうでしょう、ただこんな気持ちは初めてです。おそらく彼女も……」
ユカはイノセンスの言葉通り、心が揺れ動いていた。
明日は妹カナの儀式だ。
言葉をかけてあげたい、不安を聞いてあげたい。
だが、彼女は感じたことがない気持ちに戸惑っていた。
儀式は悪魔の瘴気を人工的に発生させる瘴源石に触れて始まる。
すぐに拒否反応があらわれるのでそこからは己との戦いだ。
不適合とされた者へは麻酔注射され精神安定薬にて治療される。
「…ふう」
控え室にて深呼吸するカナ。
「カナ…」
「じゃあいくねお姉ちゃん」
「私は…あなたのことを…」
昨夜は会話をしていない姉妹。
何かを伝えるつもりだったユカだったがカナは笑顔で口を開く。
「ふふ、無事終わらせたら、たくさん話そう。私はお姉ちゃんを信じているわ」
「…信じ…」
信じている。
その言葉はユカには重く、妹が儀式の部屋に入るのをただ眺めることしかできなかった。
「ユカ、いくぞ」
放心状態の彼女に声をかける者がいた。
イノセンスだ。
「私は……カナのことを……」
彼をみたユカは、何かの糸が切れたように突如泣き崩れた。
そんな彼女を抱きしめるイノセンス。
「大丈夫、君は変われる。カナと私がきっとあなたを解き放ってみせる」
イノセンスはユカを抱え、部屋を後にする。
「カナガーデン、それでは目の前にある石に手を触れて下さい。精神や身体が限界と判断した場合は腕にあるボタンを押して下さい。また異常事態はこちらが対応するのでご理解を…ではどうぞ」
「はい…」
アナウンスが終わりカナは石に手を触れた。
「…これは…」
ベンチに座るユカとイノセンス。
落ち着いたユカはひと呼吸し話をする。
「私は…自分のことばかり考えていたのね」
「そのようだが、別にそれは悪いことじゃない」
「うふふ」
「なんだ?どうした?」
「魔法や戦闘、さらには深層心理だのと、あれこれ勉強しているけど…満たされることはなかった…」
「勤勉なのは素晴らしいことだ」
「うふふ、肯定してくれるのね、嬉しいわ」
穏やかな雰囲気の二人だが、突如施設内に緊急事態を告げるサイレンが響く。
「これは」
「くっ…恐れていたことが…」
すると施設の壁が爆発。
爆風で二人は吹き飛ぶが、イノセンスは機敏な反応にてユカをかばう。
天井が崩落し二人は瓦礫の下敷きになってしまう。
「おい、ユカ、しっかりしろ…」
ユカはショックで気絶。
イノセンスは薄れゆく意識のなか、必死に彼女をかばい瓦礫の重さに耐えている。
「…あれは…」
うっすらと遠方に魔力を解放した人が見える。
カナは不適合者であった。
瘴気は心臓の動きを停止させ、おぞましい魔力を身体に取り込んだ彼女はそれを動力とし魔力暴走状態となった。
施設の関係者は館を閉鎖し緊急信号を国の中枢部ダークパレスへ発信。
施設の魔法使いたちがカナを止めようと戦うが強固な防壁を突破できず、圧倒的ともいえる破壊魔法にて次々と倒れていった。
魔法使い養成施設の事故報告を受けたストロンガの対応は迅速だった。
イノセンスから事前に施設で事故が起こるとの警告を受けていたからである。すぐに鎮圧する兵士や魔法使いが派遣された。
「おいおい、イノセンスさん、大丈夫か」
軽快な話し方で兵士らしからぬこの男。
数名を呼び瓦礫に潰れそうだったユカとイノセンスは救出された。
「すまないガイア、この暴走は…」
「ああ、あんたの言う通りだぜ。ストロンガはかなり焦っているようだぜ」
「そんなことはどうでもいい、して本体は?」
このストロンガ。
彼はガイアが仕切る前のヘルゲート統治者である。
「ねえ、本体って…もしやこの騒動は…」
気がついたユカが二人に問う。
「そうだ、妹のカナ。彼女の魔力暴走だ。そしてそれをこれから止める」
イノセンスはユカの眼をみて話す。
「ウソ…ウソよ…なぜ…」
「つらいが決断せねばならない。人工心臓か破呪か。このどちらかしか妹を救うことはできない」
「ちっ……人工心臓は悲惨だ、だが破呪の成功率は低い…どっちもつらいぜ…」
「人工心臓と破呪?」
イノセンスはユカに自分の腕輪を外し渡す。
「これをつければ君にも合成魔法を唱えることができる。妹を救うには君の力が必要なんだ…」
「合成魔法?」
「詳しく説明している時間はない…」
するとカナは施設の壁をぶち抜き三人の前に姿を現す。
「ああ……カナ…」
そのおぞましい姿に震えるユカ。
瞳は赤く染まり黒く禍々しい魔力を纏う。
ガイアは二人を守るように二本の剣を抜刀する。
「時間は稼ぐ……二人で決めろ」
するとガイアはカナにむかっていき戦闘が始まった。
彼は剣を十字に構えカナの防壁を無力化、近接戦を誘う。
彼女は防壁が消えても動揺することなく剣を召喚、ガイアと撃ち合う。
「…イイ腕だな、気に入ったぜカナガーデン」
「…」
イノセンスは眼を閉じ念じる。
すると二人を中心に魔法陣が展開。
「彼女は妹で家族だ、つらいだろうが決めてくれ」
「人工的な心臓は再生の代償として…記憶を失う?」
「そうだ、だがこの方法は確実に成功する。一方の破呪は、正直二人の精神状態では難しい……が、妹は君を信じているはず……それならきっと…」
…確実に成功する……それに記憶を失えばカナは……妹としての苦悩から解放されるのでは?
私という呪縛から解き放ってあげられるのでは……。
迫る選択にユカはイノセンスの言葉が頭に入らなかった。
確実に成功、その救いともいえるワードが切羽詰まった彼女の思考力を奪った。
「ユカ、私はカナを信じる」
「えっ…」
「人工心臓は確実だがカナは君のことを誰よりも信じている。そんな彼女の記憶を」
「私はカナに生きてほしい、たとえどんな状態になろうが、生きてさえいれば…」
イノセンスの言葉を否定するように声をあげるユカ。
…カナは私を妬んでいる…。
暴走させたのはきっと私なのよ……。
不安定な精神で破呪が成功するわけがないわ。
「おい、ユカ、大丈夫か」
「イノセンス、私は心臓をつくる、カナには生きて、生きてほしいの、そして世界をみてほしい」
「…」
うつむくイノセンスは魔法陣を発動させ、容易く人工物をつくった。
ガイアはそれを確認すると二人のもとへカナを誘導する。
「…これで暴走は終わる」
「わかったわ」
ユカの決断に納得できないイノセンスだったが、これは姉妹の問題。
ユカはこれでカナを救えると信じている。
それが彼にとってはつらかった。
「カナ……さあ世界を…あなたは自由よ…」
ユカは魔力を解放し彼女の胸にそれをむける。
だが、カナはその様子に突如反応、それを掴むと無表情のまま破壊してしまう。
「カナっ! なぜ、どうしてっ」
怒鳴るユカ。
カナはゆっくりと右腕をユカへむけた。
「危ないっ」
ユカをかばうイノセンス。
真下から発生した黒い物体が彼女を襲うが間一髪ユカは救われた。
「イノセンス、何これ…」
「今のは闇の魔法、暗黒だ……このまま暴走が続けばヘルゲートが滅んでしまう……なんとかせねば…」
「…カナ…」
「イノセンス……限界だ……お前、分かっているだろ…」
ガイアは剣を構えるがその彼をなだめユカはカナへとむかっていく。
「お、おい、…」
鋭い眼光の彼女に気負するガイア。
「イノセンス、私はあなたのことが…」
「待てユカ、まさか君は……」
ユカの接近にカナは暗黒を放つが彼女はそれをひらりと躱す。
ユカの表情が変わり、焦ったイノセンスは彼女を止めようとする。だが荒れ狂う暗黒によって二人へ接近することができない。
「ごめんねカナ、お姉ちゃんはあなたを信じることができなかった……ごめんなさい……だから……だからせめて…」
ユカはカナの腕を掴む。
するとカナの魔力はあっけなく飛散する。
「やめろーーーっ」
「……バカだ…ユカガーデン……お前は…本当に…」
叫ぶイノセンス。
剣を捨て立ち尽くすガイア。
カナはユカに身をゆだねその瞳からは涙が流れる。
「うふふ、もう大丈夫よカナ、ほらこの花、あなた好きでしょう?」
ユカは花のブローチをカナに渡す。
そして自分の心臓を魔力で取り出し妹の胸にあてた。
「うっ…」
カナは心臓が機能し血色が戻った。
ユカは魔力が消滅し激しく吐血、そしてゆっくりと倒れた。
「…なんて…こった…こりゃ」
言葉にならぬ言葉を放つガイア。
イノセンスはユカを抱え回復魔法を放つ。
「ユカ……なんということを……なんてことをしたんだ、君は人として失格すぎる」
言葉は否定的だがイノセンスは涙が止まらない。
「うふふ、あなたに抱かれてなら…本望よ…それに妹は助かる…」
彼の流れる涙をふくユカ。
「ユカ…君が犠牲になっても妹の記憶は戻らない…戻らないんだぞ」
「わかっているわ……でもね、これでいいの、カナはここで生まれ変わった…そういうことに…」
「バカなことを………本当に君は……君は自分のことしか考えていない…妹が望んだ世界は……君と一緒に生きる世界だ…君がいない世界は……」
「うふふ…あなたにはもっと早く……」
ユカは出血がひどく様態が悪化。
もう助からない。
手が震えるイノセンス。
「お迎えが…来たようね…」
「…」
「私は…あなたを…好きになってしまったのかしらね…うふふ」
「ガイア……ユカを病院に。そして皆には…後を頼むと…」
イノセンスは笑顔でユカを見つめる。
「おいおいおーーーいっ、お前らもうやめろ、やめるんだ、もうやめてくれ、こんなことはやめろ」
ガイアが叫ぶ。
「あなた…私を愛して……」
「ユカ……君も生きるんだ、信じることを忘れないで…生きて…」
イノセンスはユカと同じく自分の心臓を彼女へと……。
この事件はユカガーデンとカナガーデン、さらにはガイアの運命をも変えた大事件であった。
その被害は凄まじくストロンガが失脚するきっかけともなった。
妹のカナは魔力不適合者であったがやや強引に適合。
ユカの心臓が器として機能し、常人にはない絶大な魔力を得た。この能力のおかげで最強魔法とされる闇の魔法、暗黒を習得できたのだ。
カナは全ての記憶を喪失したがリハビリにより人間味を取り戻しゼノンブールの側近として保護された。
最後にユカから貰った花のブローチを気に入り、それにちなんで名を変えた、その花はユカも好きだったマーガレット。
ゼノンブールからガイアへと、ヘルゲートのためその力を捧げている。面倒見がよいため兵士からの信頼は厚い。
一方のユカはイノセンスの心臓にて生存するが出血多量により輸血が必要であった。イノセンスが倒れたことに何かの陰謀を感じたストロンガはユカが治療入院している研究所へ密使を放ち輸血する血液に猛毒を混入させる。生きることに執着する彼女はこの毒入りの血液を克服し己の力とした。これを恐れたストロンガによりユカはバイオと呼ばれるようになった。彼の失脚後、バイオは医者となり一部の記憶を取り戻すことに成功する。
医療の世界は彼女にとっては狭く、短期間にて医学を極めると別の道を模索した。彼女を煙たがる連中により復興機関にて医療支援を任される。するとこれが彼女の転機であり天職であった。
ガーデン姉妹はヘルゲートが浄化されるきっかけをつくり、レフトたちと同様にこの国への影響力は絶大である。
もし二人が記憶を完全に取り戻したら運命はまた大きく変わるだろう。
似て非なるもの。
白きバイオガーデン。
黒きマーガレットガーデン。
この二人に幸あらんこと…。
挿し絵について
イラストAC illustB様
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