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第一章
七話 忍び寄る脅威
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「川の上流へ行くことを禁じます」
「…」
周囲がざわめく。
「ねえレフト」
「……機関へ依頼したとか、偵察へ行くとか、過去にその大蛇が存在したのかなど……そういった踏み込んだ情報が知りたいんだと思うんだけどな…」
ボソとつぶやくレフト。
「皆様、くれぐれも川の上流へ近づかぬようお願い致します」
そう言い放ち、その場を去ろうとするダグ。だが、逃亡してきた農夫が突然大声をあげる。
「立ち入り禁止というが、おらの畑は上流にあるんだぞ。それに大蛇が川を下ってきたらここは危ない」
もっともな意見ではある。
「農夫は上流から逃げてきた。だけど過去に大蛇の目撃情報が無いというのはどうもひっかかる」
「そうね、疑うわけではないけど、事が重大なだけに事実確認が必要ね」
興奮状態の農夫は今にもダグへ殴りかかりそうだ。
一触即発で異様な雰囲気となるリーダー邸。
レフトたちはそんな危険な状況からゆっくりと後退した。
「おい、リーダーを出せ。お前じゃ話にならん」
「そうだ、自分たちの集落は自分たちで守るんだ」
いきり立つ住民を煽る農夫。
事態を収束させるためダグは懐からなんと銃を取り出し農夫に銃口を向けた。
「静かにしたまえ」
辺りの空気が豹変する。
のどかで平和だったこの地に、突然武器が登場したためだ。住民たちは驚きと恐怖、そして精神的なショックにより身動きができないでいた。
だが農夫は違った。
「そんなもんで脅してもムダだ。リーダーに会わせろ」
引かない、媚びない、屈しない。
緊迫した状況に住民たちはゆっくりと後退し二人と距離をとった。そのため銃を持つダグと農夫の一騎討ちとなった。
「銃を前にして、一歩も引かぬ度胸は認めよう。だが」
ダグは銃口を下に向け農夫の右足を射撃した。
ダン! という銃声が周囲に響く。
「ぐあっ」
射たれた農夫はその場に崩れ落ち、今度は銃口を住民に向けるダグ。
「決して上流へは行かぬことだ。従わない者、意見がある者は前に出よ」
ダグはまるで暴君のような所業だ。その様に呆れるアレサとレフト。
ここで前に出て一喝することは容易い。だが今は静養中であり目立つ行動は控えるべきだ。
病み上がりでも前に出ようとするレフトを制止するアレサ。
「気持ちはわかるけど、ここは抑えて」
「…わかったよ」
レフトの腕を握りしめて冷静に振る舞うよう諭す。
「ダグさん、旦那は病み上がりなので休ませたいの。上流には行かないから、もう帰ってよいかしら?」
住民たちは一斉にアレサ達を見る。
レフトが昏睡状態だったことを知る者はぶつぶつと帰宅させてやれ、だの心配してくれているようだ。
「ああ、目覚められたようで何よりです。とはいえ具合が悪そうですね」
ダグは入り口を解放し、手を外へ差し出す。
「失礼しました。どうぞ」
アレサは会釈しレフトを支えながらリーダー邸を出た。
「今日はもう休みましょう」
外に出たアレサはレフトの手を引き歩き始めた。
「んっ…この気配は……」
「気配?」
アレサは集落を包囲するかのようなある気配を感じた。
身構えたアレサをみて驚くレフト。
その二人に向かって走ってくる人物がいる。
「ああ、無事でしたか。すぐにここへ避難して下さい」
ジジだ。
「ジジさん、モンスターの気配がしますが…」
アレサが感じた気配はモンスターのものだった。
この集落は既にモンスターの軍団に包囲されているようだ。
「はい、こんなことは初めてです。とはいえ弱小モンスターばかりっぽいので、屋敷にある武器をダグから支給してもらえば……住民たちでも十分撃退できるはずでしょう」
淡々と話すジジ。
だが屋敷の中は大変なことになっている。
「今、屋敷の中は……修羅場ですよ」
修羅場と聞いても動じないジジにレフトは状況を説明した。
「ふむ、ダグが銃を…」
強引すぎるダグの行動を聞き、先程のアレサとレフト同様に呆れるジジ。
「帰宅しようとしていたようですが…申し訳ないです、もう一度屋敷へ入りましょう」
ジジは二人をリーダー邸に避難させた。
三人の出戻りのような行動に驚く住民たち。
ダグはジジをみて何故か恐怖しているように見える。
「ダグよ、理由はわからないが集落は今、モンスターに包囲されている。この事をマスターに伝え、住民たちに武器を渡し集落を守るのだ」
「モンスター…」
ダグだけではなく住民たちも突然のモンスターというワードに怯えている。平和な集落にモンスターの脅威が迫っている。
「……大蛇がモンスターを率いてきたんだ……」
射たれた農夫が呟く。
「…」
アレサはレフトをイスに座らせる。
ひと息つくレフト。
「ふぅ、体力をつけないとしんどいな」
「ふふ、そうね。でもまずはこの状況をなんとかしないと…」
「うん。どうやら戦闘は避けられないみたいだね」
「大丈夫よ。私は戦うつもりはないわ。それにこの一連の出来事は不可解なことが多いの」
「えっ」
「確証はないけど、何かあるわ」
「そうだね」
平和な集落に突如迫る脅威。
モンスターの包囲から集落を守れるのか。
次回へ続く
「…」
周囲がざわめく。
「ねえレフト」
「……機関へ依頼したとか、偵察へ行くとか、過去にその大蛇が存在したのかなど……そういった踏み込んだ情報が知りたいんだと思うんだけどな…」
ボソとつぶやくレフト。
「皆様、くれぐれも川の上流へ近づかぬようお願い致します」
そう言い放ち、その場を去ろうとするダグ。だが、逃亡してきた農夫が突然大声をあげる。
「立ち入り禁止というが、おらの畑は上流にあるんだぞ。それに大蛇が川を下ってきたらここは危ない」
もっともな意見ではある。
「農夫は上流から逃げてきた。だけど過去に大蛇の目撃情報が無いというのはどうもひっかかる」
「そうね、疑うわけではないけど、事が重大なだけに事実確認が必要ね」
興奮状態の農夫は今にもダグへ殴りかかりそうだ。
一触即発で異様な雰囲気となるリーダー邸。
レフトたちはそんな危険な状況からゆっくりと後退した。
「おい、リーダーを出せ。お前じゃ話にならん」
「そうだ、自分たちの集落は自分たちで守るんだ」
いきり立つ住民を煽る農夫。
事態を収束させるためダグは懐からなんと銃を取り出し農夫に銃口を向けた。
「静かにしたまえ」
辺りの空気が豹変する。
のどかで平和だったこの地に、突然武器が登場したためだ。住民たちは驚きと恐怖、そして精神的なショックにより身動きができないでいた。
だが農夫は違った。
「そんなもんで脅してもムダだ。リーダーに会わせろ」
引かない、媚びない、屈しない。
緊迫した状況に住民たちはゆっくりと後退し二人と距離をとった。そのため銃を持つダグと農夫の一騎討ちとなった。
「銃を前にして、一歩も引かぬ度胸は認めよう。だが」
ダグは銃口を下に向け農夫の右足を射撃した。
ダン! という銃声が周囲に響く。
「ぐあっ」
射たれた農夫はその場に崩れ落ち、今度は銃口を住民に向けるダグ。
「決して上流へは行かぬことだ。従わない者、意見がある者は前に出よ」
ダグはまるで暴君のような所業だ。その様に呆れるアレサとレフト。
ここで前に出て一喝することは容易い。だが今は静養中であり目立つ行動は控えるべきだ。
病み上がりでも前に出ようとするレフトを制止するアレサ。
「気持ちはわかるけど、ここは抑えて」
「…わかったよ」
レフトの腕を握りしめて冷静に振る舞うよう諭す。
「ダグさん、旦那は病み上がりなので休ませたいの。上流には行かないから、もう帰ってよいかしら?」
住民たちは一斉にアレサ達を見る。
レフトが昏睡状態だったことを知る者はぶつぶつと帰宅させてやれ、だの心配してくれているようだ。
「ああ、目覚められたようで何よりです。とはいえ具合が悪そうですね」
ダグは入り口を解放し、手を外へ差し出す。
「失礼しました。どうぞ」
アレサは会釈しレフトを支えながらリーダー邸を出た。
「今日はもう休みましょう」
外に出たアレサはレフトの手を引き歩き始めた。
「んっ…この気配は……」
「気配?」
アレサは集落を包囲するかのようなある気配を感じた。
身構えたアレサをみて驚くレフト。
その二人に向かって走ってくる人物がいる。
「ああ、無事でしたか。すぐにここへ避難して下さい」
ジジだ。
「ジジさん、モンスターの気配がしますが…」
アレサが感じた気配はモンスターのものだった。
この集落は既にモンスターの軍団に包囲されているようだ。
「はい、こんなことは初めてです。とはいえ弱小モンスターばかりっぽいので、屋敷にある武器をダグから支給してもらえば……住民たちでも十分撃退できるはずでしょう」
淡々と話すジジ。
だが屋敷の中は大変なことになっている。
「今、屋敷の中は……修羅場ですよ」
修羅場と聞いても動じないジジにレフトは状況を説明した。
「ふむ、ダグが銃を…」
強引すぎるダグの行動を聞き、先程のアレサとレフト同様に呆れるジジ。
「帰宅しようとしていたようですが…申し訳ないです、もう一度屋敷へ入りましょう」
ジジは二人をリーダー邸に避難させた。
三人の出戻りのような行動に驚く住民たち。
ダグはジジをみて何故か恐怖しているように見える。
「ダグよ、理由はわからないが集落は今、モンスターに包囲されている。この事をマスターに伝え、住民たちに武器を渡し集落を守るのだ」
「モンスター…」
ダグだけではなく住民たちも突然のモンスターというワードに怯えている。平和な集落にモンスターの脅威が迫っている。
「……大蛇がモンスターを率いてきたんだ……」
射たれた農夫が呟く。
「…」
アレサはレフトをイスに座らせる。
ひと息つくレフト。
「ふぅ、体力をつけないとしんどいな」
「ふふ、そうね。でもまずはこの状況をなんとかしないと…」
「うん。どうやら戦闘は避けられないみたいだね」
「大丈夫よ。私は戦うつもりはないわ。それにこの一連の出来事は不可解なことが多いの」
「えっ」
「確証はないけど、何かあるわ」
「そうだね」
平和な集落に突如迫る脅威。
モンスターの包囲から集落を守れるのか。
次回へ続く
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