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第一章
六話 戦慄の農夫
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「…五年…か…」
昏睡状態だったレフト。
正直なところ五年も寝ていたという実感はない。
「何よ、まだ寝足りないのかしら?」
その様子に不満そうなアレサ。
献身な介護により、寝たきりでも歩行以外は後遺症はない。
衰えた身体を鍛え上げるのに焦りは禁物だ。
「目覚めてあちこち動きたいでしょうが、少しずつよレフト」
「わかった。頭では何でもできそうなんだけど…身体がついていけないんだよね…」
「ふっふ、大丈夫よ。まずは基礎体力ね、散歩に行きましょう」
レフトの手をとり歩行を促す。
日常生活に支障がないくらいに回復したレフトであったが長時間の歩行はまだきびしい。
アレサが歩行をサポートしないと外出時は歩き続けることが困難だ。
「そういえば川の上流の小屋とか…」
「ああ、ホープが言ってたわね。行ってみる?」
「うん。だけど途中で身体がきつくなったら引き返そう」
「もちろんよ」
二人はまるでピクニックに行くかのように準備を始めた。
「ホープは小屋に何があるか教えてくれなかったわね」
「ああ、自分で確かめろとか言ってたね」
「いったい何があるのかしらね」
「なんか少し怖い気もするかな」
「あら、ずいぶんと萎縮したね。もし不安ならやめておく?」
「いこう。外にも出たいし」
「こんなこと言われるのは嫌かもしれないけど…あなたは私が守るわ」
アレサの真剣な眼差しがレフトに向けられる。
「…苦労かけてすまない。今は甘えさせてもらうね」
にっこり笑うアレサ。
レフトの手を握り外へ出る。
「おや、お出かけですか」
「はい、ちょっと散歩に」
「気をつけていってらっしゃいませ。最近、川の上流に怪物が出るとの噂がありますので。いちょうご注意下さいませ。ダグ様が復興機関に依頼するとおっしゃっていました」
周囲を清掃していたジジが二人へ伝える。
「怪物ですか…」
「とはいえレフトーラさんが目覚められて本当によかった」
「ええ、ダグさんもお世話になりました」
「いろいろありがとうございます」
深々とお礼をするレフト。
昏睡中に世話になったようだ。
確かにアレサ一人では気が休まらず、徐々に心身を消耗してしまうだろう。
ジジはこの手の世話や介護に心得があり、アレサと協力してレフトを看病していたのだ。
ジジはレフトの目覚めを心から喜んでいる。
ジジとの挨拶を終え川に着いた二人。
清流という言葉が相応しい。
目を閉じ耳をすませば清流のささやきが聞こえてくるのどかな雰囲気だ。
「風が気持ちいいわね」
時折ふく風が心地よい。
「そうだね。自然を感じるというか…」
和む二人。
ところが急に上流方向から人が走ってくる。何かから逃げてきたような印象だ。
「なんだ?」
「ちょっとレフト」
ただならぬ事態に構える二人。
走ってくる人は姿からしておそらく農夫だ。
「大蛇だ、大蛇がいた」
「大蛇?」
「うそじゃない、このままだとここは襲われて滅びちまう。とにかくリーダーに報告しなければ」
そう言うと農夫は足早や去っていった。
「レフト…これって」
「もし大蛇が凶悪なモンスターならば、ここは既に滅んでいると思う」
「そうね、こんな平和な集落にモンスターの脅威があるとは思えないわ」
「アレサ一旦戻ろう。ここはリーダーの判断に任せよう」
「ふっふ」
クスりと笑うアレサ。
「えっ、なんか変なこと言ったかい?」
「ううん、ごめんなさい。なんだかあなた、落ち着いたというか…」
「落ち着いた?」
「落ち着いたというか、精神が洗練されたというか」
「こんな状態じゃ何もできないからね」
「安心したわ。突撃でもされたらどうしようかと思ったわ」
「…突撃って…」
「うふふ、戻りましょう」
大蛇を見たという農夫。
これは平和な集落の脅威となるのか。
アレサとレフトは集落に戻ると、すぐに緊急集会が開かれた。
このような事態は初でありリーダー邸へ集まった住民は不安で怯え混乱している。
執事のダグが皆の前に集まり話し始めた。
「しばらくは川の上流へ行くことを禁じます」
次回へ続く
昏睡状態だったレフト。
正直なところ五年も寝ていたという実感はない。
「何よ、まだ寝足りないのかしら?」
その様子に不満そうなアレサ。
献身な介護により、寝たきりでも歩行以外は後遺症はない。
衰えた身体を鍛え上げるのに焦りは禁物だ。
「目覚めてあちこち動きたいでしょうが、少しずつよレフト」
「わかった。頭では何でもできそうなんだけど…身体がついていけないんだよね…」
「ふっふ、大丈夫よ。まずは基礎体力ね、散歩に行きましょう」
レフトの手をとり歩行を促す。
日常生活に支障がないくらいに回復したレフトであったが長時間の歩行はまだきびしい。
アレサが歩行をサポートしないと外出時は歩き続けることが困難だ。
「そういえば川の上流の小屋とか…」
「ああ、ホープが言ってたわね。行ってみる?」
「うん。だけど途中で身体がきつくなったら引き返そう」
「もちろんよ」
二人はまるでピクニックに行くかのように準備を始めた。
「ホープは小屋に何があるか教えてくれなかったわね」
「ああ、自分で確かめろとか言ってたね」
「いったい何があるのかしらね」
「なんか少し怖い気もするかな」
「あら、ずいぶんと萎縮したね。もし不安ならやめておく?」
「いこう。外にも出たいし」
「こんなこと言われるのは嫌かもしれないけど…あなたは私が守るわ」
アレサの真剣な眼差しがレフトに向けられる。
「…苦労かけてすまない。今は甘えさせてもらうね」
にっこり笑うアレサ。
レフトの手を握り外へ出る。
「おや、お出かけですか」
「はい、ちょっと散歩に」
「気をつけていってらっしゃいませ。最近、川の上流に怪物が出るとの噂がありますので。いちょうご注意下さいませ。ダグ様が復興機関に依頼するとおっしゃっていました」
周囲を清掃していたジジが二人へ伝える。
「怪物ですか…」
「とはいえレフトーラさんが目覚められて本当によかった」
「ええ、ダグさんもお世話になりました」
「いろいろありがとうございます」
深々とお礼をするレフト。
昏睡中に世話になったようだ。
確かにアレサ一人では気が休まらず、徐々に心身を消耗してしまうだろう。
ジジはこの手の世話や介護に心得があり、アレサと協力してレフトを看病していたのだ。
ジジはレフトの目覚めを心から喜んでいる。
ジジとの挨拶を終え川に着いた二人。
清流という言葉が相応しい。
目を閉じ耳をすませば清流のささやきが聞こえてくるのどかな雰囲気だ。
「風が気持ちいいわね」
時折ふく風が心地よい。
「そうだね。自然を感じるというか…」
和む二人。
ところが急に上流方向から人が走ってくる。何かから逃げてきたような印象だ。
「なんだ?」
「ちょっとレフト」
ただならぬ事態に構える二人。
走ってくる人は姿からしておそらく農夫だ。
「大蛇だ、大蛇がいた」
「大蛇?」
「うそじゃない、このままだとここは襲われて滅びちまう。とにかくリーダーに報告しなければ」
そう言うと農夫は足早や去っていった。
「レフト…これって」
「もし大蛇が凶悪なモンスターならば、ここは既に滅んでいると思う」
「そうね、こんな平和な集落にモンスターの脅威があるとは思えないわ」
「アレサ一旦戻ろう。ここはリーダーの判断に任せよう」
「ふっふ」
クスりと笑うアレサ。
「えっ、なんか変なこと言ったかい?」
「ううん、ごめんなさい。なんだかあなた、落ち着いたというか…」
「落ち着いた?」
「落ち着いたというか、精神が洗練されたというか」
「こんな状態じゃ何もできないからね」
「安心したわ。突撃でもされたらどうしようかと思ったわ」
「…突撃って…」
「うふふ、戻りましょう」
大蛇を見たという農夫。
これは平和な集落の脅威となるのか。
アレサとレフトは集落に戻ると、すぐに緊急集会が開かれた。
このような事態は初でありリーダー邸へ集まった住民は不安で怯え混乱している。
執事のダグが皆の前に集まり話し始めた。
「しばらくは川の上流へ行くことを禁じます」
次回へ続く
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