ファンタジー/ストーリー2

雪矢酢

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第ニ章

十二話 悪魔と竜の戦い

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レフトの範囲魔法は天変地異そのものであった。

翠の宿跡地は大きくえぐれ、ここら一帯は荒れ地と化した。


「レフト…」

魔力を解除するレフト。
日に日に扱う魔力が強大になっていく手応えを感じていた。

「大丈夫かい?」

「ええ。でも…情報を聞き出す前に全部消えちゃったね」

「バースは言動こそ同情を誘うものでしたが…存在は邪悪でした…それは間違いないです。よって…」

「レフトは正しかったってわけね」

「はい、その通りです」

「…」

とりあえず地下への階段を見てみる三人だったが上空にただならぬ気配を感じる。


「これは…」

「…なっ…」

「なんだ…」


三人は固まった。

上空には白銀の竜に乗ったアウトがいた。


「ふふふっ素晴らしいわ。素晴らしい力だわ」

上空から周囲の壊滅状況をみるアウトサイド。

「ここは一体何なんだ。そしてお前は何者だ」

レフトは問う。

竜とともに地上に降りたアウトサイドはゆっくりと語る。

「アウトサイドは偽名で本名はフラット、私はドラゴンマスターフラットよ」

「ドラゴンマスター…だと」

「ああ…なんという…」

「…」

ドラゴンマスターという言葉に過剰な反応をするアレサ。
ヴァンは伝説が目の前に存在している現実に戸惑っている。
レフトは混乱しており必死に状況を整理しようとしている。

「ここはね、世界の秩序を乱す人間が犯した罪の象徴なのさ。散々好き勝手やってから、手がつけられなくなった途端に逃亡、酷いと思うだろう?」

キャラが変わったような口調のアウト、いやフラット。

「アレサ…ヴァン…一時撤退だ」

ジリジリと固まる三人。
フラットは竜を撫でている。

「バースは我々を刺客と認識していた。確かにここは邪悪な空気が漂い、危険な兵器を所有する力を持つ集団だと思う…だけど…」

レフトはフラットに問う。

「レフトーラ、言いたい事はわかる。消すことはないと考えているのでしょ?」

「そうです。ここの者たちは自分たちの居場所が欲しかっただけではないでしょうか」

レフトはアレサとヴァンの手をにぎる。

「そうやって集落や国ができていくのだよレフトーラ。結果的にここらの消滅をやらせてしまったことについては謝罪します。だからこそ転移するならご自由に」

「…」

バレている。
するとアレサが前に出る。

それはまるでいつかの悪魔との戦い、シーキヨでのロード戦の再現だとレフトは感じた。

「ドラゴンマスター……」

アレサを見た竜は激しく威嚇をする。
そんな竜をなだめるフラット。

「これも運命ねアレサ…決着をつけよう」

「以前のようにはならないわ。私は一人じゃない」

身構えるアレサ。
竜から降りてアレサに近づくフラット。手を合わせ、竜を模した剣を召喚する。

対峙する二人。

「戦う前にレフトーラへ伝えたほうがよいでしょう?」

「それはあなたでしょう?その竜にお別れしたほうがいいわよ」

二人は一触即発。
剣を構えるフラットと拳を強くにぎるアレサ。


「ヴァン、フィールドか転移か…決断が難しいな」

「ですね…二人の会話から推測するにお互い面識はあるようで、奥様はフラットに敗北しているようですが…」

「だね…加勢に入るとあの竜も動くだろうから……そうなるとここは修羅場になり、幻獣たちとて黙っていないだろう…」

「後先考えないで動くと大変なことになりますね…奥様たちの戦い次第…ということでしょうか…」


二人は睨みあっており、どちらが先手をとるかお互い出方をみている。

この勝負は一瞬で決着するだろう。

先に一撃入れたほうが勝者だとお互いにわかっているようだ。
両者の攻撃は相当の威力があるだろうからなんとかして相手の体勢を崩し必殺の一撃を決める必要がある。
お互いに一手が出せない緊張感が漂う。


「これは……」

なんとそこへ復興機関の三人が到着する。


「あれは…ドラゴンマスターか…」

「レフトもいるわ」

三人はこの緊張感のある現場をすぐに理解した。
対峙するアレサとフラット。
隙あれば加勢に入るレフト、ヴァン、それに竜。
そこへ登場した機関の三人。
ニナはすぐに銃を構える。
オメガはソロモンとニナの前に立ち不動の構えで二人を守る。
ソロモンは抜刀こそしたが状況を見定めている。


「レフト、これは?」

ニナはレフトに問う。
機関に動じることなくレフトは話す。

「ニナ、ちょっと取り込み中なんだよね」
 
「…そ、そうよね…わかるわ…」

「うむ、アレサとドラゴンマスターが決闘中のようだが……」

「この緊迫した状況…なるほど…」

ソロモンは勝負が初手で決まることを理解した。
また、レフトたちや竜が後詰めを狙っていることにも気づいたようだ。

修羅場となったこの状況。

「新しいリーダーかい?」

「ああ、レフトーラさん、あなたのチームは私ソロモンが引き継ぎましたよ」

レフトとソロモンが会話をする。

「ソロモン? ああ、空間移動のソロモンか」

「おや、私をご存知でしたか。光栄です」

そんな話をしつつオメガたちは少しずつ前進し距離を縮めてくる。

「これ以上はお互い怪我をします。さらには真剣勝負に泥をぬることになりますよ」

ヴァンが機関の三人を制止する。
その言葉を聞き動きが止まる三人。

「おやおや、新しいチームでも組みましたか?」

皮肉っぽく話すソロモン。

「私はヴァン。レフト様の従者です」

ヴァンは素性を明かす。




「外野がうるさいねアレサ」

「…」

「一瞬たりとも気を抜かないか……恐ろしい悪魔め…」



アレサはゆっくりと目を閉じた。


…くる…勝負に出たか…。


フラットは受けの構えをとり迎撃体勢だ。



「アレサ…」

レフトは剣に手を置く。



目を開きフラットの姿を確認したアレサは神速で左胸を突いた。
そのスピードに対応できず体勢を崩すフラット。
怯んだところをさらに攻撃するアレサ。激しく吐血するフラットだが、構えていた剣で応戦する。
右肩から切りつけられたアレサも怯み、二人とも後退し倒れる。 


相討ち。


竜はすぐにフラットをかばう。
レフトもアレサを受け止め、ヴァンはすぐに転移を構え指示を待つ。
機関の三人はどっちつかずで、状況を静止。


「もう大丈夫だよアレサ」

「…仕留め損なったわ」

「後で話を聞くよ。今はここから離脱を」

「ニナたちがいるわね。復興機関が動いたのかしら…」

「奥様、話すと傷が開きます。どうか」

「うっさいわね。わかったわよ。ごめんなさいヴァン、ここは退きましょう」


竜はゆっくりと後退。
フラットは負傷しつつも笑っている。

「植物を…克服したか悪魔め。このままでは終わらんぞ…」

「ニナ、ソロモン、我々も撤退だ。状況は確認できた。どっちがやったかわからないが、兵器が徘徊する危険地帯は滅んだ。それだけで十分だ」

「…そうね、レフト、また会いましょう」

ニナは銃をおろす。
その様子を見てため息をつき剣を納めるソロモン。

「わかりました。状況確認完了ですね」


それぞれが後退し、一定の距離にてレフトたちは集落へ転移。
竜はフラットを連れ飛び去った。



「やれやれ。これはレフトたちと話し合ったほうがよさそうね」

「うむ」

「ここを消滅させたのがレフトーラさんだったのなら討つのは避けられそうですね。ここは機関でも手がつけられなかったと言われています」

「部隊を派遣してもらい後処理をお願いしましょう」



次回へ続く

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