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第一章
序幕
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「はぁはぁ…」
身軽な服装の者がバシャバシャとぬかるみを駆ける。
その様は何かから逃げている逃亡者のようである。
狭い裏路地を抜けて追手を振り切ろうとしたようだがこの先が行き止まり。
立ち尽くす逃亡者は観念したようにうなだれる。
「この先は…行き止まりだね」
うなだれる人物に声をかける。
追跡者であるこの人物はレフトーラ、本編の主人公である。
「ちくしょう」
退路が無いとわかると逃亡者は突然所持していた長剣を抜刀する。
「…ノーズやめたほうがいいよ」
レフトは逃亡者ノーズに投降するよう説得する。
「お前は何者だ、俺の計画は完璧だったはずだ」
このノーズという男は幻術で人に化けたジナとモンスターと共謀してこの地の食糧を盗賊集団に横流していた。レフトは物資を管理する者たちから依頼され調査した結果、このノーズという男にたどりついた。
「レフトーラ。お前のことはジナから聞いた」
「ジナだと……あいつはティマのところにいたはずだが…それにレフトーラだとっ」
ジナは魔物ハンターティマと盗賊集団の繋ぎ役として活躍していた。
ティマが討たれたこと、ジナは魔力が暴走し重傷。そのためノーズは単独で物資を盗むことになった。管理局の監視とジナの証言によりノーズが犯人だとわかり今回レフトが逮捕に動いたという経緯である。
盗賊集団のノーズは武装しており、抵抗される可能性があったためレフトが逮捕に名乗り出た。
「最悪だな…よりにもよって復興機関に遭遇するとはな…こんなへんぴな地へようこそってか…」
「よくしゃべるね…時間稼ぎかな…」
「へっ…追い詰められたのはあんただぜ」
ノーズは剣を振り周辺に小さな結界をはった。そしてレフトの後ろから盗賊と思われる人物が二名、ノーズの援軍に駆けつけた。
「レフトーラさん、これがトラップってやつよ、追い詰められた気分はどうだい…あんたは強いらしいがその強さは魔法に依存しているとか…この結界内では魔法は使えないし挟み撃ちの状況。どうみてもあんたは勝てない」
形勢逆転し勝利を確信するノーズ。
そんなノーズを睨み付けるレフト。
「集落の中で戦うのはやめろと散々言っているのだが、何故誰もわかってくれないのだろうか…」
その視線に恐怖を感じるノーズ。
なんなんだ…この圧は…。
俺たちは奴を追いつめているんだぞ。
勝利は目の前なんだぞ…。
そんな心の声が聞こえる。
「う…うるせぇな……それより俺たちを見逃してくれ…それで手を引く。砦の仲間にもここには手を出さないよう伝える…悪くない条件だと思うが…」
レフトの謎の圧に屈したノーズは土壇場にて逃亡を選択した。
この行動に仲間たちは戸惑う。
「お、おいノーズ…どういうことだ」
「たかが一人に何で…」
「黙ってろ……予定変更だ、こいつを刺激するのはヤバい…」
ノーズは結界を解き剣を納めゆっくりと歩きはじめた。
「…」
レフトの後方へ移動し仲間に撤退の合図をする。
「あんたの言うようにここでドンパチやるつもりはない。武器は置いていく」
ノーズはゆっくりと真下に剣を置き、仲間にも武器を捨てるように指示。よくわからないまま武器を捨て仲間たちはその場を去った。
「俺を本気で逮捕する気なら、この場所に来てくれ。そこで戦おう…」
すらすらとメモ用紙に場所を書きレフトに渡す。
「わかった…」
レフトはノーズの罠と思われる提案を承諾した。
ノーズはニヤりと笑い逃亡する。
「復興機関ではないから身の降り方を考えなくては…」
機関の使者としてレフトの前に現れたゴズとビルに、組織へは戻らないことを告げて証を返却している。
そのため争いやもめ事を起こすと今度はレフトが機関に拘束されてしまう。
今までのような立ち振舞いはできないのである。
「おかえり…ってちょっと、どうしたの」
レフトは診療所の近くの家を借りてアレサと暮らしていた。
龍人のキバは警備員として、幻獣ゾルムが子ヴァンはホープの助手として、それぞれの生活をスタートさせていた。
住民は集落を救ってくれたレフトに困ったことを相談していた。
この集落は西の荒れ地に近いことで、そこに住む盗賊やモンスターなどに物資を狙われていた。集落に住む優れた魔法使いたちは連携してそれらを撃退していたのだが、大規模な集団に襲撃されてしまい集落は壊滅。
現在ここはモンスターや武装集団に狙われている危機的状況である。
集落を守るため、物資の流出を防ぐべくレフトは関与しているノーズの逮捕を依頼された。
「犯人は突き止めたのだけど…逃がしてしまった…」
「ふふ」
「?」
依頼をミスったレフトを笑うアレサ。
「笑ってしまってごめんね、あなたがそんなことをするなんてはじめてだったから」
「そうね、逮捕っていっても警官ではないし、この集落内では戦いたくないんだよね…」
「それはわかるわ、ここは通路は狭いし、密集した建物が多くてオーラや魔力の解放は危険だよね」
「うん、ようやく襲撃から建て直してきているのに、また壊れたら…」
レフトは椅子に座りくつろぎながら話す。
テーブルには飲み物とお菓子があり、それに手をつける。
アレサも座り飲み物を手に取りひと息といったところだ。
「場所を指定されたから、そこへ行き捕まえてくるよ」
「わかったわ、ヴァンを連れていくといいわ。二人が戻ったら私とドラゴンマスターのことを話すわ」
「ヴァンは先生にこき使われているんだったっけ…」
「ああ、診療所は忙しいからね、ヴァンは機敏だしホープは喜んでたわね」
「…」
すぐに解放してあげようと思うレフトであった。
ヴァンを連れ出すことに怒ったホープだったが、戻ってアレサと話が済んだら頼みを聞くことで納得してもらった。
「レフト様、これはティマの時と同様に罠だと…」
「ああ、多分そうだろうね」
「それを承知で……わかりました、お供致します」
「集団をまとめて逮捕できると思っただけなのだけど…」
「逮捕できるとは思えないけど…それとくれぐれもやり過ぎてはダメよ。わかってはいると思うけど」
ヴァンは診療所に戻り二人は翌日に備え休んだ。
早朝よりヴァンとホープが家を訪れる。
「荒れ地の盗賊ってトラブルの予感しかしないわよ」
「…」
ホープの正論に誰も言い返せない。
「まあ手早く済ませて帰ってきてね」
アレサは二人を見送る。
二人は転移で荒れ地へ向かった。
場所を指定して待ち構えるノーズ。
レフトたちの新しい物語がここから始まる。
次回へ続く。
身軽な服装の者がバシャバシャとぬかるみを駆ける。
その様は何かから逃げている逃亡者のようである。
狭い裏路地を抜けて追手を振り切ろうとしたようだがこの先が行き止まり。
立ち尽くす逃亡者は観念したようにうなだれる。
「この先は…行き止まりだね」
うなだれる人物に声をかける。
追跡者であるこの人物はレフトーラ、本編の主人公である。
「ちくしょう」
退路が無いとわかると逃亡者は突然所持していた長剣を抜刀する。
「…ノーズやめたほうがいいよ」
レフトは逃亡者ノーズに投降するよう説得する。
「お前は何者だ、俺の計画は完璧だったはずだ」
このノーズという男は幻術で人に化けたジナとモンスターと共謀してこの地の食糧を盗賊集団に横流していた。レフトは物資を管理する者たちから依頼され調査した結果、このノーズという男にたどりついた。
「レフトーラ。お前のことはジナから聞いた」
「ジナだと……あいつはティマのところにいたはずだが…それにレフトーラだとっ」
ジナは魔物ハンターティマと盗賊集団の繋ぎ役として活躍していた。
ティマが討たれたこと、ジナは魔力が暴走し重傷。そのためノーズは単独で物資を盗むことになった。管理局の監視とジナの証言によりノーズが犯人だとわかり今回レフトが逮捕に動いたという経緯である。
盗賊集団のノーズは武装しており、抵抗される可能性があったためレフトが逮捕に名乗り出た。
「最悪だな…よりにもよって復興機関に遭遇するとはな…こんなへんぴな地へようこそってか…」
「よくしゃべるね…時間稼ぎかな…」
「へっ…追い詰められたのはあんただぜ」
ノーズは剣を振り周辺に小さな結界をはった。そしてレフトの後ろから盗賊と思われる人物が二名、ノーズの援軍に駆けつけた。
「レフトーラさん、これがトラップってやつよ、追い詰められた気分はどうだい…あんたは強いらしいがその強さは魔法に依存しているとか…この結界内では魔法は使えないし挟み撃ちの状況。どうみてもあんたは勝てない」
形勢逆転し勝利を確信するノーズ。
そんなノーズを睨み付けるレフト。
「集落の中で戦うのはやめろと散々言っているのだが、何故誰もわかってくれないのだろうか…」
その視線に恐怖を感じるノーズ。
なんなんだ…この圧は…。
俺たちは奴を追いつめているんだぞ。
勝利は目の前なんだぞ…。
そんな心の声が聞こえる。
「う…うるせぇな……それより俺たちを見逃してくれ…それで手を引く。砦の仲間にもここには手を出さないよう伝える…悪くない条件だと思うが…」
レフトの謎の圧に屈したノーズは土壇場にて逃亡を選択した。
この行動に仲間たちは戸惑う。
「お、おいノーズ…どういうことだ」
「たかが一人に何で…」
「黙ってろ……予定変更だ、こいつを刺激するのはヤバい…」
ノーズは結界を解き剣を納めゆっくりと歩きはじめた。
「…」
レフトの後方へ移動し仲間に撤退の合図をする。
「あんたの言うようにここでドンパチやるつもりはない。武器は置いていく」
ノーズはゆっくりと真下に剣を置き、仲間にも武器を捨てるように指示。よくわからないまま武器を捨て仲間たちはその場を去った。
「俺を本気で逮捕する気なら、この場所に来てくれ。そこで戦おう…」
すらすらとメモ用紙に場所を書きレフトに渡す。
「わかった…」
レフトはノーズの罠と思われる提案を承諾した。
ノーズはニヤりと笑い逃亡する。
「復興機関ではないから身の降り方を考えなくては…」
機関の使者としてレフトの前に現れたゴズとビルに、組織へは戻らないことを告げて証を返却している。
そのため争いやもめ事を起こすと今度はレフトが機関に拘束されてしまう。
今までのような立ち振舞いはできないのである。
「おかえり…ってちょっと、どうしたの」
レフトは診療所の近くの家を借りてアレサと暮らしていた。
龍人のキバは警備員として、幻獣ゾルムが子ヴァンはホープの助手として、それぞれの生活をスタートさせていた。
住民は集落を救ってくれたレフトに困ったことを相談していた。
この集落は西の荒れ地に近いことで、そこに住む盗賊やモンスターなどに物資を狙われていた。集落に住む優れた魔法使いたちは連携してそれらを撃退していたのだが、大規模な集団に襲撃されてしまい集落は壊滅。
現在ここはモンスターや武装集団に狙われている危機的状況である。
集落を守るため、物資の流出を防ぐべくレフトは関与しているノーズの逮捕を依頼された。
「犯人は突き止めたのだけど…逃がしてしまった…」
「ふふ」
「?」
依頼をミスったレフトを笑うアレサ。
「笑ってしまってごめんね、あなたがそんなことをするなんてはじめてだったから」
「そうね、逮捕っていっても警官ではないし、この集落内では戦いたくないんだよね…」
「それはわかるわ、ここは通路は狭いし、密集した建物が多くてオーラや魔力の解放は危険だよね」
「うん、ようやく襲撃から建て直してきているのに、また壊れたら…」
レフトは椅子に座りくつろぎながら話す。
テーブルには飲み物とお菓子があり、それに手をつける。
アレサも座り飲み物を手に取りひと息といったところだ。
「場所を指定されたから、そこへ行き捕まえてくるよ」
「わかったわ、ヴァンを連れていくといいわ。二人が戻ったら私とドラゴンマスターのことを話すわ」
「ヴァンは先生にこき使われているんだったっけ…」
「ああ、診療所は忙しいからね、ヴァンは機敏だしホープは喜んでたわね」
「…」
すぐに解放してあげようと思うレフトであった。
ヴァンを連れ出すことに怒ったホープだったが、戻ってアレサと話が済んだら頼みを聞くことで納得してもらった。
「レフト様、これはティマの時と同様に罠だと…」
「ああ、多分そうだろうね」
「それを承知で……わかりました、お供致します」
「集団をまとめて逮捕できると思っただけなのだけど…」
「逮捕できるとは思えないけど…それとくれぐれもやり過ぎてはダメよ。わかってはいると思うけど」
ヴァンは診療所に戻り二人は翌日に備え休んだ。
早朝よりヴァンとホープが家を訪れる。
「荒れ地の盗賊ってトラブルの予感しかしないわよ」
「…」
ホープの正論に誰も言い返せない。
「まあ手早く済ませて帰ってきてね」
アレサは二人を見送る。
二人は転移で荒れ地へ向かった。
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レフトたちの新しい物語がここから始まる。
次回へ続く。
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