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第一章
一話 盗賊たちの末路
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「…生物が住むにはきびしい環境だね」
「はい、天変地異が原因らしいですが…」
「持論なのだけど…エンデにいけば世界の謎が解ける気がするんだ…」
「エンデ?エンデ国のことでしょうか」
「うん、昔はカイト国という大都市があったようだけど、エンデについては誰も知らないようだし、あのオメガでさえエンデ国には触れたがらないんだ…」
「オメガ殿もエンデ国については何も知らないのだと思います。原生林のどこかにある国らしいですが…そこに住まう我々幻獣ですら見たことがありません。本当に存在するかも怪しいです」
「エンデ国と荒れ地…共通すると思うのだけど…」
悩むレフトにヴァンは告げる。
「エンデ国はわかりませんが、荒れ地については奥様に話せばある程度わかるかと思います。申し上げにくいのですが…悪魔が関係あるかと…」
「えっ…」
「天変地異は悪魔がこの地に降り立った時に起こりました…つまり…」
「そんな……西地方は悪魔が荒れ地に…」
「ほとんどの幻獣たちはそう認識しています。ですが私たちのように一定の理解を示すものも存在しています。いくら悪魔を毛嫌いしてようが、しょせん幻獣は自分たちのゾーンを害さなけば大人しいです、レフト様はご存知かと思います」
ついつい立ち止まって会話してしまう二人。
目の前には巨大な砦が立っており、すでに武装集団が二人を包囲している。
「…」
「…話し込んで申し訳ないです…」
レフトに謝罪するヴァン。
レフトはすぐにヴァンに防御呪文をかける。
「いや、こちらこそ申し訳ない…」
ゆっくりと剣に手を置くレフト。
集団は一斉に抜刀し、弓やら、銃を構える。
「…ざっと…三十くらい…かな」
「見える範囲はそれくらいかと。探知魔法では内部に十数名程います」
「ありがとうヴァン。強敵の存在は?」
「脅威となる存在はいませんが、頭一つ出た者の気配があります。おそらく獣人かと」
「獣人か…ヘルゲートでよく見かけたよ」
「奴らは過酷な環境下でも生存できます。ヘルゲートから追放された流れ者と考えるのが妥当です」
するとノーズが二人の前に姿を見せる。
「復興機関ってのは自信過剰な奴が多いようだな。大人しく手をひいて撤退していればこうはならなかっただろうに…」
「復興機関は関係ない。集落から物資を奪うのは止めてくれ。そうすればお互いに争う必要はない」
この状況でも武力に頼らず説得するレフトに集団は大笑いする。
「レフトーラさん、あんたに勝ち目はない」
ノーズは右手を大きく上げて一斉攻撃の合図を構えた。
集団は武器をレフトたちに向ける。
「俺がこの手を下げればあんたたちの人生は終わる」
人を見下すような鋭い眼光がレフトに向けられる。
レフトはそれに動揺することなく、剣を前に構え周囲を見渡す。
剣を出した瞬間、周囲の空気は一変した。
「……こ…これは…一体…」
前回同様に得たいの知れない圧がノーズや、集団に向けられた。
「人生が終わるのはお前たちのほうだぞ…」
ゆっくりとした口調で話すレフト。
ノーズは息をのむ。
お互いに顔を確認し合う集団。
ヴァンはその状況をすぐに理解した。
微弱だが、レフトが放っているのは紛れもなく瘴気であると確信した。
その時、突然内部から屈強な獣人が飛び出してきた。
「ノーズ下がれ、全滅するぞ。この者たちの相手はオレがする」
顔は獣そのものであるが、正装をしており、明らかに集団の者たちとは違う。
「レフト様あれです」
「…なるほどね」
集団は一斉に武器を納め状況を見守る。
一部レフトの瘴気で体調を崩す者がいた。
獣人は魔法の剣と盾を召喚して構えた。
「先ほどの無礼をお許しください、私はガーデン。ここを束ねる者である」
「ガーデン殿、集落から物資を奪う事止めていただきたい。それと誤解があると困るのでお伝えするがこの行為は復興機関とは一切関係ない」
「…」
なにやらレフトの言葉に考え込んでいるガーデン。
「ガーデンなる人物は策士、油断大敵です」
ヴァンはレフトに警戒するよう進言する。
するとガーデンはいきなり剣を振りレフトを攻撃した。
剣から火の玉が飛び出してレフトに迫るが、左手を出し火の玉を吸収する。
「後ろ楯がねえってことはもう好き勝手できねえよなぁ」
態度が豹変したガーデン。
目を見開きものすごいスピードでレフトに突撃する。
レフトは剣を抜刀せずひらりとガーデンの攻撃を見切る。
「くっくっくっさすがにこのままではきついか。ならばっ」
ガーデンは力を溜め突然咆哮をした。
それは衝撃波となり周囲を破壊、盗賊たちは彼を恐れ身を隠す。
身体が一回り大きくなり覚醒したようだ。
「ほう…ちょっとはできるかな…」
ガーデンの覚醒した姿に動揺することなくレフトはゆっくりとヴァンに下がるよう合図した。
「ノーズ、周囲の人を避難させてくれ」
「えっ…」
「早くするんだ。ここを解放する」
ノーズはその言葉を理解した。
ガーデンはここに支配者として君臨しているのだろう。集団を支配して強奪や盗みを指示していたのだろう。
力による統治。
それがこの荒れ地の盗賊集団の実態であった。
そしてその力はそこそこ強いようだ。
「甘いな、噂に聞いたレフトーラは冷酷無慈悲。魔法の剣を持つ者と聞くが…」
「力あるものが武力や恐怖で支配するのを見逃すわけにはいかない。たとえそれが盗賊集団だろうとね」
「偽善者がほざいたな」
ガーデンは再びレフトに襲いかかる。
先ほどとはスピード、パワーともに倍近く違う。
「さあひれ伏せレフトーラ」
猛攻撃を仕掛けるが涼しい顔でガーデンの攻撃を躱す。
「…くっ」
ガーデンは強い。
強者は強者に敏感であるように、レフトの異様な戦闘力に気づきはじめたガーデン。
「はぁ…はぁ…くそっ」
レフトは剣を地に刺し腕を組む。
「覚醒しようがお前は勝てない。覚悟はいいな」
その言葉に絶句するガーデン。
レフトは剣を手に取り抜刀する。
刀身には黒い炎が宿りレフトから放たれる瘴気の影響か、ガーデンは精神が崩壊した。
剣を構えたレフトだったがその崩壊した様子を見て攻撃を止めた。
ガタガタと震えているガーデン。
「悪魔だ…レフトーラは悪魔だ…」
砦の者たちも一部発狂しており、ノーズはここにレフトを招いたことを責められ暴行を受けている。
「…人間は…本当に復興していけるのでしょうかね…世界にとって」
人間の醜態を間近で見たヴァンはレフトに言う。
「…すまないヴァン」
次回へ続く
「はい、天変地異が原因らしいですが…」
「持論なのだけど…エンデにいけば世界の謎が解ける気がするんだ…」
「エンデ?エンデ国のことでしょうか」
「うん、昔はカイト国という大都市があったようだけど、エンデについては誰も知らないようだし、あのオメガでさえエンデ国には触れたがらないんだ…」
「オメガ殿もエンデ国については何も知らないのだと思います。原生林のどこかにある国らしいですが…そこに住まう我々幻獣ですら見たことがありません。本当に存在するかも怪しいです」
「エンデ国と荒れ地…共通すると思うのだけど…」
悩むレフトにヴァンは告げる。
「エンデ国はわかりませんが、荒れ地については奥様に話せばある程度わかるかと思います。申し上げにくいのですが…悪魔が関係あるかと…」
「えっ…」
「天変地異は悪魔がこの地に降り立った時に起こりました…つまり…」
「そんな……西地方は悪魔が荒れ地に…」
「ほとんどの幻獣たちはそう認識しています。ですが私たちのように一定の理解を示すものも存在しています。いくら悪魔を毛嫌いしてようが、しょせん幻獣は自分たちのゾーンを害さなけば大人しいです、レフト様はご存知かと思います」
ついつい立ち止まって会話してしまう二人。
目の前には巨大な砦が立っており、すでに武装集団が二人を包囲している。
「…」
「…話し込んで申し訳ないです…」
レフトに謝罪するヴァン。
レフトはすぐにヴァンに防御呪文をかける。
「いや、こちらこそ申し訳ない…」
ゆっくりと剣に手を置くレフト。
集団は一斉に抜刀し、弓やら、銃を構える。
「…ざっと…三十くらい…かな」
「見える範囲はそれくらいかと。探知魔法では内部に十数名程います」
「ありがとうヴァン。強敵の存在は?」
「脅威となる存在はいませんが、頭一つ出た者の気配があります。おそらく獣人かと」
「獣人か…ヘルゲートでよく見かけたよ」
「奴らは過酷な環境下でも生存できます。ヘルゲートから追放された流れ者と考えるのが妥当です」
するとノーズが二人の前に姿を見せる。
「復興機関ってのは自信過剰な奴が多いようだな。大人しく手をひいて撤退していればこうはならなかっただろうに…」
「復興機関は関係ない。集落から物資を奪うのは止めてくれ。そうすればお互いに争う必要はない」
この状況でも武力に頼らず説得するレフトに集団は大笑いする。
「レフトーラさん、あんたに勝ち目はない」
ノーズは右手を大きく上げて一斉攻撃の合図を構えた。
集団は武器をレフトたちに向ける。
「俺がこの手を下げればあんたたちの人生は終わる」
人を見下すような鋭い眼光がレフトに向けられる。
レフトはそれに動揺することなく、剣を前に構え周囲を見渡す。
剣を出した瞬間、周囲の空気は一変した。
「……こ…これは…一体…」
前回同様に得たいの知れない圧がノーズや、集団に向けられた。
「人生が終わるのはお前たちのほうだぞ…」
ゆっくりとした口調で話すレフト。
ノーズは息をのむ。
お互いに顔を確認し合う集団。
ヴァンはその状況をすぐに理解した。
微弱だが、レフトが放っているのは紛れもなく瘴気であると確信した。
その時、突然内部から屈強な獣人が飛び出してきた。
「ノーズ下がれ、全滅するぞ。この者たちの相手はオレがする」
顔は獣そのものであるが、正装をしており、明らかに集団の者たちとは違う。
「レフト様あれです」
「…なるほどね」
集団は一斉に武器を納め状況を見守る。
一部レフトの瘴気で体調を崩す者がいた。
獣人は魔法の剣と盾を召喚して構えた。
「先ほどの無礼をお許しください、私はガーデン。ここを束ねる者である」
「ガーデン殿、集落から物資を奪う事止めていただきたい。それと誤解があると困るのでお伝えするがこの行為は復興機関とは一切関係ない」
「…」
なにやらレフトの言葉に考え込んでいるガーデン。
「ガーデンなる人物は策士、油断大敵です」
ヴァンはレフトに警戒するよう進言する。
するとガーデンはいきなり剣を振りレフトを攻撃した。
剣から火の玉が飛び出してレフトに迫るが、左手を出し火の玉を吸収する。
「後ろ楯がねえってことはもう好き勝手できねえよなぁ」
態度が豹変したガーデン。
目を見開きものすごいスピードでレフトに突撃する。
レフトは剣を抜刀せずひらりとガーデンの攻撃を見切る。
「くっくっくっさすがにこのままではきついか。ならばっ」
ガーデンは力を溜め突然咆哮をした。
それは衝撃波となり周囲を破壊、盗賊たちは彼を恐れ身を隠す。
身体が一回り大きくなり覚醒したようだ。
「ほう…ちょっとはできるかな…」
ガーデンの覚醒した姿に動揺することなくレフトはゆっくりとヴァンに下がるよう合図した。
「ノーズ、周囲の人を避難させてくれ」
「えっ…」
「早くするんだ。ここを解放する」
ノーズはその言葉を理解した。
ガーデンはここに支配者として君臨しているのだろう。集団を支配して強奪や盗みを指示していたのだろう。
力による統治。
それがこの荒れ地の盗賊集団の実態であった。
そしてその力はそこそこ強いようだ。
「甘いな、噂に聞いたレフトーラは冷酷無慈悲。魔法の剣を持つ者と聞くが…」
「力あるものが武力や恐怖で支配するのを見逃すわけにはいかない。たとえそれが盗賊集団だろうとね」
「偽善者がほざいたな」
ガーデンは再びレフトに襲いかかる。
先ほどとはスピード、パワーともに倍近く違う。
「さあひれ伏せレフトーラ」
猛攻撃を仕掛けるが涼しい顔でガーデンの攻撃を躱す。
「…くっ」
ガーデンは強い。
強者は強者に敏感であるように、レフトの異様な戦闘力に気づきはじめたガーデン。
「はぁ…はぁ…くそっ」
レフトは剣を地に刺し腕を組む。
「覚醒しようがお前は勝てない。覚悟はいいな」
その言葉に絶句するガーデン。
レフトは剣を手に取り抜刀する。
刀身には黒い炎が宿りレフトから放たれる瘴気の影響か、ガーデンは精神が崩壊した。
剣を構えたレフトだったがその崩壊した様子を見て攻撃を止めた。
ガタガタと震えているガーデン。
「悪魔だ…レフトーラは悪魔だ…」
砦の者たちも一部発狂しており、ノーズはここにレフトを招いたことを責められ暴行を受けている。
「…人間は…本当に復興していけるのでしょうかね…世界にとって」
人間の醜態を間近で見たヴァンはレフトに言う。
「…すまないヴァン」
次回へ続く
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