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第一章
十六話 二人の夢
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「ちょっと…言ってる意味が…わからないわ」
結界士アッカはベルーナを好いている。
なのにベルーナが運営している宿を爆破する?
アレサはレフトが話す内容を理解できなかった。
「アッカは精神異常者なんだ。優れた能力を持っているから重宝されていたんだけど…」
「…」
異常者を採用する組織に疑問なアレサ。
「それで?既にここへいると?」
「うん。かなりの規模の結界を準備していると思う…」
「破滅願望がある奴を見つけて逮捕する、そういうことかしら?」
アレサは深く考えるのをやめた。
異常者の考えを理解することはできないからだ。
「そうね。ただ異常者だけど能力がすごいから裏をかかれぬよう注意しないといけない」
「珍しいわね、あなたが人を評価するなんて」
「他と違う者は行動が読めないからね」
難しい顔をするレフト。
ここのところそんな顔ばかりである。
「ねえ」
「ん?」
「少し…笑ってよ」
「えっ…」
「こんな言い方は悪いけど、ここを爆破させようが私はどうでもいいわ」
「…あら…」
「宿には静養で来たのよ。よくわからない異常者や元諜報員のもめ事など、私たちには関係ないでしょ?」
「ごもっともです」
呆れた様子のアレサ。
そんな彼女の手をにぎるレフト。
「いきなりどうしたのよ」
「アレサ…」
「何よ?」
「君が…負傷する夢を見た」
「毎回負傷しているわよ」
「…」
まあそうだよねと納得するレフト。
「毎回傷つく君を見たくない…」
「ふっ」
笑いをこらえたが思わず吹き出してしまったアレサ。
「えっ」
「ごめんレフト。だけど私はちょっとやそっとじゃダメージを受けることはないわ」
「まあ、そうだろうけどさ」
ニコニコと笑顔を見せるアレサ。
「ありがとう。それでも言葉にして伝えてくれたことは嬉しいわ」
以前話をしたがアレサは自分の役目をよく理解している。
一対一の短期戦ならアレサは間違いなく最強である。だが集団戦や策略などの変則的な戦法には弱く、本人はそれを自覚している。
レフトというパートナーがいることにより、彼女の個性はより強化され、レフトも発動が難しい強大な魔法を中心とした戦略ができるのでこの二人の相性はとても良い。
「外に出たのは結果士から逃れるため?」
アレサはレフトの顔を見て話す。
「それもあるけど二人で話をしたかったんだ」
「ちょっと…本当に大丈夫?」
レフトは毅然としているが顔色は悪い。
ただ単に結果士が原因ではなさそうである。
「…」
「レフト、話して」
「赤い宝珠がアッカを見つける手がかりだと…」
「赤い宝珠?」
「うん」
考え込むアレサ。
「さっきも言ったけどアッカは実力者だよ。結界さえ展開できれば幻獣に匹敵する可能性があると…」
「ふっ」
またしても吹き出すアレサ。
さすがにイラっとするレフト。
「ねえ」
「…何?」
「あなたは世界最強の存在よ」
「…」
「まあ俺は世界最強だぜ!とか言ってたら私はあなたの側には居なかったと思う」
「どういう意味?」
「そのアッカという人物が強者で、結界士が危険な存在だってことも十分理解したわ」
「…そうは見えないけど?」
「最後まで聞いてよ、よくわからない存在を私は信じないし、どんな脅威だろうがきっとあなたは守ってくれる。それ以上の説得力があるかしら?」
「う…」
痛いところを指摘したアレサにレフトは黙り込む。
「敵には注意する。さあ戻ってその人物を見つけましょう」
「…わかったよ」
二人は宿に戻ろうとしたが、ポツリポツリと雨が降りだした。
「んっ…」
その雨に覚えがある、それは赤い雨だ。
立ち止まり考え込むレフト。
…これは…。
「ちょっと、どうしたのよ」
立ち止まったレフトに声をかけるアレサ。
その神妙な面持ちに何かを察したようだ。
「この光景に…覚えがある…そうでしょう?」
「うん…」
雨と呼べるのか微妙なくらいのポツリ具合。
この雨がやがて赤い雨となり…アレサは…。
というのがレフトの見た夢であり、心にひっかかっていることだ。
「…ねえ、このまま集落へ帰る?」
「…」
そうだ。
ここで宿に戻ると赤い雨が降り宿は爆発する。
ならば宿へ戻らないという選択をしたらどうなるのか…。
「…」
黙り込むレフト。
「苦悩しているのが気になっていたの。魔力の干渉なのかもしれないけど……あなたが宿で苦しむのならここにいる必要はないでしょう?」
「…」
アレサの言っていることは正しい。
だが違和感があるのはなぜだろうか。
「レフト聞いてちょうだい、あなたが見た私が負傷する夢なのだけど…」
「ん?」
「同じような夢を…私もみたわ」
「えっ…どういう事?」
アレサの言葉に混乱するレフト。
「あなたが私に言ってくれたことをそのまま返すわ、傷つく君を見たくない」
…。
どういうことだ。
「アレサが見た夢はどんな夢なの?」
「怖い夢よ。宿が爆発して…」
爆発…。
そんなことがあるのか…。
二人とも同じ夢をみることがあるんだろうか。
これはひょっとすると…。
「その先を言葉にしたくないのも一緒だね」
「こんな事ってあるのかしら…二人が同じ夢を」
「シンクロというのは聞くけど、いくつかわかったよ」
「えっ」
レフトはアレサから夢の話を聞いてひらめいたようである。
「もし思ったことが事実であるなら、この雨が本降りになる前に宿へ戻らないと…」
「待ってレフト。戻ったら私たちは…」
「…違うんだアレサ。詳しく説明している時間はないけど…とにかく信じてほしい」
「わかったわ」
「ありがとう。さあ戻ろう」
アレサの手を取り宿へ戻るレフト。
表情はスッキリしており、迷いが晴れたようである。
果たして二人は結界士の策を破ることができるのだろうか。
次回へ続く。
結界士アッカはベルーナを好いている。
なのにベルーナが運営している宿を爆破する?
アレサはレフトが話す内容を理解できなかった。
「アッカは精神異常者なんだ。優れた能力を持っているから重宝されていたんだけど…」
「…」
異常者を採用する組織に疑問なアレサ。
「それで?既にここへいると?」
「うん。かなりの規模の結界を準備していると思う…」
「破滅願望がある奴を見つけて逮捕する、そういうことかしら?」
アレサは深く考えるのをやめた。
異常者の考えを理解することはできないからだ。
「そうね。ただ異常者だけど能力がすごいから裏をかかれぬよう注意しないといけない」
「珍しいわね、あなたが人を評価するなんて」
「他と違う者は行動が読めないからね」
難しい顔をするレフト。
ここのところそんな顔ばかりである。
「ねえ」
「ん?」
「少し…笑ってよ」
「えっ…」
「こんな言い方は悪いけど、ここを爆破させようが私はどうでもいいわ」
「…あら…」
「宿には静養で来たのよ。よくわからない異常者や元諜報員のもめ事など、私たちには関係ないでしょ?」
「ごもっともです」
呆れた様子のアレサ。
そんな彼女の手をにぎるレフト。
「いきなりどうしたのよ」
「アレサ…」
「何よ?」
「君が…負傷する夢を見た」
「毎回負傷しているわよ」
「…」
まあそうだよねと納得するレフト。
「毎回傷つく君を見たくない…」
「ふっ」
笑いをこらえたが思わず吹き出してしまったアレサ。
「えっ」
「ごめんレフト。だけど私はちょっとやそっとじゃダメージを受けることはないわ」
「まあ、そうだろうけどさ」
ニコニコと笑顔を見せるアレサ。
「ありがとう。それでも言葉にして伝えてくれたことは嬉しいわ」
以前話をしたがアレサは自分の役目をよく理解している。
一対一の短期戦ならアレサは間違いなく最強である。だが集団戦や策略などの変則的な戦法には弱く、本人はそれを自覚している。
レフトというパートナーがいることにより、彼女の個性はより強化され、レフトも発動が難しい強大な魔法を中心とした戦略ができるのでこの二人の相性はとても良い。
「外に出たのは結果士から逃れるため?」
アレサはレフトの顔を見て話す。
「それもあるけど二人で話をしたかったんだ」
「ちょっと…本当に大丈夫?」
レフトは毅然としているが顔色は悪い。
ただ単に結果士が原因ではなさそうである。
「…」
「レフト、話して」
「赤い宝珠がアッカを見つける手がかりだと…」
「赤い宝珠?」
「うん」
考え込むアレサ。
「さっきも言ったけどアッカは実力者だよ。結界さえ展開できれば幻獣に匹敵する可能性があると…」
「ふっ」
またしても吹き出すアレサ。
さすがにイラっとするレフト。
「ねえ」
「…何?」
「あなたは世界最強の存在よ」
「…」
「まあ俺は世界最強だぜ!とか言ってたら私はあなたの側には居なかったと思う」
「どういう意味?」
「そのアッカという人物が強者で、結界士が危険な存在だってことも十分理解したわ」
「…そうは見えないけど?」
「最後まで聞いてよ、よくわからない存在を私は信じないし、どんな脅威だろうがきっとあなたは守ってくれる。それ以上の説得力があるかしら?」
「う…」
痛いところを指摘したアレサにレフトは黙り込む。
「敵には注意する。さあ戻ってその人物を見つけましょう」
「…わかったよ」
二人は宿に戻ろうとしたが、ポツリポツリと雨が降りだした。
「んっ…」
その雨に覚えがある、それは赤い雨だ。
立ち止まり考え込むレフト。
…これは…。
「ちょっと、どうしたのよ」
立ち止まったレフトに声をかけるアレサ。
その神妙な面持ちに何かを察したようだ。
「この光景に…覚えがある…そうでしょう?」
「うん…」
雨と呼べるのか微妙なくらいのポツリ具合。
この雨がやがて赤い雨となり…アレサは…。
というのがレフトの見た夢であり、心にひっかかっていることだ。
「…ねえ、このまま集落へ帰る?」
「…」
そうだ。
ここで宿に戻ると赤い雨が降り宿は爆発する。
ならば宿へ戻らないという選択をしたらどうなるのか…。
「…」
黙り込むレフト。
「苦悩しているのが気になっていたの。魔力の干渉なのかもしれないけど……あなたが宿で苦しむのならここにいる必要はないでしょう?」
「…」
アレサの言っていることは正しい。
だが違和感があるのはなぜだろうか。
「レフト聞いてちょうだい、あなたが見た私が負傷する夢なのだけど…」
「ん?」
「同じような夢を…私もみたわ」
「えっ…どういう事?」
アレサの言葉に混乱するレフト。
「あなたが私に言ってくれたことをそのまま返すわ、傷つく君を見たくない」
…。
どういうことだ。
「アレサが見た夢はどんな夢なの?」
「怖い夢よ。宿が爆発して…」
爆発…。
そんなことがあるのか…。
二人とも同じ夢をみることがあるんだろうか。
これはひょっとすると…。
「その先を言葉にしたくないのも一緒だね」
「こんな事ってあるのかしら…二人が同じ夢を」
「シンクロというのは聞くけど、いくつかわかったよ」
「えっ」
レフトはアレサから夢の話を聞いてひらめいたようである。
「もし思ったことが事実であるなら、この雨が本降りになる前に宿へ戻らないと…」
「待ってレフト。戻ったら私たちは…」
「…違うんだアレサ。詳しく説明している時間はないけど…とにかく信じてほしい」
「わかったわ」
「ありがとう。さあ戻ろう」
アレサの手を取り宿へ戻るレフト。
表情はスッキリしており、迷いが晴れたようである。
果たして二人は結界士の策を破ることができるのだろうか。
次回へ続く。
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