ファンタジー/ストーリー3

雪矢酢

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第二章

六話 正体とトラウマ

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ベルーナの宿屋は今日も賑わっている。
酒場は朝なのに多くの人が語らいお酒を飲んでいる。
ベルーナとアッカが戻ってからはより効率的となり、多くの宿泊客を満足させている。
魔女フレイアは朝一でレフトたちの部屋へ向かっていた。


「おはようございます、フレイアです」

「ああ、どうぞ開いてるわ」

「はい、失礼します」

ドアを開けて入室するフレイア。
これは面接か?という感じである。 

「アレサさん、旦那様は?」

飲み物を手にしていたアレサに確認するフレイア。
すると奥からレフトが現れ椅子に座る。

「はじめまして、レフトーラといいます。どうぞお座り下さい」

「あ、ありがとうございます。私はフレイアと言います」

「フレイアさん、早速ですが、話をお願いします。まずはその体についてですかね」


…普通の人だ。
レフトーラって冷酷無慈悲な復興機関最強候補と聞いたが…。


「は、はい。ヘルゲートでのモンスター研究が中止となり、私はカイトへ流れました」

「カイトですか…なるほど」

カイトの技術モンスター研究の成果で人の寿命を超越したってことか。

「そこで悪魔と取り引きをしました。私の知識や技術を提供することで、人の寿命から解放してくれると…」

「その後カイトが滅んで、人が少ないこの地で研究を続けていたってことね」

アレサが飲み物を置き話す。
コクりと頷くフレイア。

「最近この地を徘徊する化け物って?」

「私の実験体です」

「実験体?」

レフトがフレイアの顔を見る。

「ホープの診療所に依頼があったのよ」

「先生が来たのか…」

「制御不能のモンスターがおり、それが逃亡したんです。ちょくちょく実験体が逃げてしまうんです」

「あんた、もう研究は止めなさい」

「はい、ここで雇ってくれるそうなので…」

「なるほど、その逃げていた実験体を薬草が餌としていたのかもね。それがいなくなったから…」

「え、あの化け物がいなくなった?どういうことですか」

「刈り取ったのよ」

「刈り取った?あの再生力を上回ることができたのですか…」

「あんた、草の話はどうでもいいのよ。それより逃げた実験体についての情報を」

「すごい、あの再生力こそ私が求めた極致」

いきなり研究者へと豹変するフレイア。

「ちょっと?」

「はっ…失礼しました。逃亡した実験体ですね…アレですが奥様はご存知かと?トゲのある二足獣ですので…」

「トゲのある二足獣?」

それを聞くとアレサは突然記憶がフラッシュバックする。

「…」

「奥様?」

「…なるほどね…」

顔色が悪くなり固まるアレサ。
そのアレサをゆっくり抱えて奥の部屋に寝かせる。

「…ごめんなさい…レフト」

「大丈夫、休んでね」

アレサを休ませ再び話すレフト。

「トゲの化け物について教えて下さい」

「はい、自然界には存在しないモンスターですので見た目はグロいです」

「はぁ…グロいんですか」

「トゲには注意が必要ですが…レフトさんなら問題ないかと……あれには同化という毒が含まれています」

「つまり刺さると化け物になると?」

「そうです。とはいえ見たところ魔法が使えるようですし治癒の魔法で簡単に解毒できます」

「わかった、ありがとう。トゲだね」

「私の記憶は曖昧ですが、奥様はかつてこのタイプの実験モンスターを討伐しております」

「えっ」

「仲間だった科学者がこの怪物の原型を造りました。そして今回のように脱走してしまい…」

「アレサの言うように、あなたは研究を…止めたほうがいいかもですね…」

「はい、心底思いました」

「大丈夫ですよ、そんな実験をしなくても、ここならきっとやり直せるし、働きがいも」

「…」

うつむくフレイア。
その様子を心配するレフト。

「変なこと言いましたかね、ごめんなさい」

「いえ、そんなことないです。何というか…」

「ん」

「噂に聞くレフトーラさんとは…大違いで…私…」

もじもじと話すフレイア。

「奥様たちは怪物を容易に討ち取りましたよ。あの四人は当時、カイト国では有名な傭兵だったはずです」

「四人?」

「リーダーの奥様とアンドロイド、それに医者がいましたね。あとは名門出の人がいました」

「なるほど」

話し込む二人。

「目撃者がいて、さらに討伐の依頼があったのだから…そのモンスターは討ちますよ?」

「はい、もちろんです。制御できない私のミスでもあるので…お供致します」

拳をにぎり、過去との決別を誓うフレイア。

「妻を休ませたいので、出発は明日にしましょう。大丈夫そうですか?」

フレイアに確認をとるレフト。
丁寧な対応に感謝を伝えるフレイア。


「…では明日に…」


部屋を後にしたフレイアは思う。
あれって本当にレフトーラなのだろうか…と。



…私はどうしたのだろう…。
フレイアに話を聞いた時昔の記憶が…。


「大丈夫かい?」

横になって休んでいるアレサにレフトが声をかける。

「話の途中でごめんなさい。ちょっと記憶が…」

「気にすることはないよ。つらい過去は誰にでもあるよ」

「つらいのかさえわからないの…断片的というか…」

わりと深刻なようだねえ。
たまに気がおちることはあるけど…今回はかなりのトラウマっぽい感じだねえ。
大丈夫だろうか…。


「ねえ」

「えっ」

「心配してくれるのは嬉しいけど私は大丈夫よ」

「…そうは見えない」

「…」

沈黙するアレサ。

「つらい記憶を呼び起こすことはしたくないんだよ」

「…そうね、きっと私にとってつらい過去なのかもしれないわね」

「この依頼は…どこかおかしい…」

「えっ…どういう事?」

「まず差出人が不明って、ありえないよ」

「…そうかしら?」

急に探偵モードになるレフト。
ゆっくりと休み頭が良く回転するようだ。

「やることがあり、診療所を空けるわけにはいかない先生たちのところへ依頼を出すかい?」

「…」

「キバのところやうちらの借家に出すならまだわかるけど…」

「事情があったとか?」

考え込むアレサ。

「深読みしすぎかもしれないがこれはうちらへの依頼だったのかもしれないね」

「…正直、私もそう思ったわ」

「直接依頼するつもりがかなりこの宿屋に滞在しているから…できなかった」

「うーん」

「フレイアは何も知らないと思う」

「まあ、彼女は制御不能な化け物を荒野に放ってしまった罪悪感と草のことで頭いっぱいってとこだったわね」

「…この騒動の裏には悪魔がいる」

「…」

「ともかく明日、周囲を調べにいくよ」

「…わかった。私もいく」

「…」

「フレイアも同行するんでしょ?」

「うん」

「もし危険を感じたら、今回私は転移で後退すると約束する」

「えっ」

「ヴァンから緊急避難の札をもらったの」

「そんな便利なアイテムがあるのね」

「私が負傷したり、発狂してしまったら、躊躇なく魔力を解放してほしい…」

「…本当に…大丈夫?いつになく弱気だけど…」

「嫌な予感はする、だけど私は過去と向き合い克服したい。それに…協力してほしいの…」

「……思い当たる事が…あるんだね」

「…うん」

「わかった。任しといてよ」

笑顔でアレサを見つけるレフト。
それに笑顔でかえすアレサ。


私は…一人じゃない。



次回へ続く。
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