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第二章
番外編 ある日のヘルゲート支部
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「鷹雀鴉」 おうじゃくからす
「鷹雀鴉」はヘルゲートにて、ある程度知られていたプロの盗人三人組みのことである。
鷹「タカ」と呼ばれる優れた短剣使い。この男がリーダーをつとめる。
雀「スズメ」と呼ばれ、扉の解錠など優秀な盗賊ではあるが窃盗し続けている現状に苦悩している女性。
そして最後の鴉「カラス」は武器商人と繋がりがあったあのカラスである。
これはレフトーラがヘルゲート支部に所属していた頃、世間を騒がしていた盗人三人組み「鷹雀鴉」その一人、スズメの物語である。
「じゃ行ってくるね」
「気をつけるんだよ…」
私の名はローズ、ヘルゲートの食料工場で働く一般人だ。
両親は突如失踪してしまい今は祖父と暮らしている。
祖父は膝に矢を受けてしまい基本的に寝たきりの生活。以前は裏の組織に属していたらしいが、口数が少なく詳しいことはわからない。
そんなここでの生活はシンプルだ。
力なき者は奪われる、弱者は強者に怯えて暮らす、実力至上主義というか弱肉強食というか…。
私はそんな環境下でも生き残っている。
奪われたらその倍を奪えばいい、そうして生きてきた…。
おじいちゃんも若い頃はそうして生きてきたそうだ。
生きることは奪うこと、ただそれだけなのだけど……私は…。
「おい、ローズ、今夜いけるか」
工場の同僚が話しかけてくる。
彼はピート。
プライドが高く自信家、集団生活では嫌われる性格だ。私が休憩室で休んでいることを聞き、ある相談にきたようだ。
「機関の連中は今夜、大規模な会議があるらしく、外回りの警備は手薄。以前から狙っていたデカい山がチャンスなんだ」
「それ、ラルクさんは何て?」
「これから伝える」
「…」
私たちには裏の顔がある。
それは盗人だ。
闇市などで裏社会の者から、ポイントと呼ばれる、報酬が記載してある簡易な地図を買い、そこに印された場所へ窃盗にいく。
ピートは今夜、復興機関の者が支部に集合するため、見回りがなく窃盗しやすいと主張する。
熱苦しくなる部屋にすらりとした細身の者がくわえ煙草で入ってくる。
「ラルク、今ローズと話していたんだが…」
「あ?今夜はダメだ」
「なんだと?」
この人はラルクさん。
私たちのボスで、とても優しい人。
正直、何でこの人が窃盗やっているのか疑問だ。
「どうせ復興機関の話を聞いたんだろ?」
「おう、カラーズからの貴重な情報だ。ポイントは前に買ったある商人の屋敷」
「商人の屋敷は危険だ。リスクがありすぎる、罠かもしれん」
「…」
険悪なムードですが、これ、いつもの事です。
「おい、ローズお前も一攫千金でじいさんを楽にさせたいだろ」
「えっ…私は…」
私は正直、窃盗に限界を感じていた。
いつか捕まる。
そして報いを受ける日がきっとくる。
寝たきりになったおじいちゃんの姿は…きっと未来の…私だ。
両親の失踪もおじいちゃんが関係しているのかも…。
だけど…。
まだ間に合う。
でも、あと一回、ピートの言う一攫千金。
「お前の目は節穴か。ローズは窃盗を引退するだろうよ、盗人ごっこはもう終わりなんだよ。ここの環境は最悪だがな、だからって何でもやってイイってことじゃねえだろ。ヘルゲートは近いうちに変革される」
「はあ?…お前、なんか復興機関みたいなこと言うんだな…」
「何が言いたい?」
「それにやめるって言ってすぐ引退できると思ってんのか?」
「それ、おめえ一人じゃ何もできねえってことだぞ?」
荒れてる。
今日はどっちもおかしい。
それにラルクさんは…気づいていたんだ、私のこと。
にらみ合うピートとラルク。
休憩が終わる私はこっそりと部屋を出ようとするが…。
「夜、屋敷の裏手集合だ、遅れんなローズ」
「でも…私は」
「頼む、これで最後にする。だから二人の力を貸してくれ。お願いだ」
威張っていたピートはいきなり二人に土下座をする。
「ちっ…」
「…」
おかしいよ。
ピート絶対おかしいよ。
部屋を出た私は残りの作業を始めるが、ピートの奇行と今夜のことが気になり集中できなかった。
「いちょう復興機関…チェックしとこうかしら…」
帰宅途中に復興機関を覗いた。
「うわ、人が多い。それになんだか忙しそう…やっぱり会議があるのだろうか…」
「そうよ、会議ね。もう退屈なのよね」
「えっ」
気配がしなかった。
後ろ…誰。
「あら、お嬢ちゃんなかなか鋭いわね」
肩にポンと手をおかれた。
背後をとられ全く動けなかった。
「あ、あの…」
声が震える。
ゆっくりふりかえると、腰に銃を持つ女性が立っている。
…この人…復興機関の人?
ローズは感じたことがない恐怖に冷や汗がすごい。
「汗がすごいけど平気?私はニナ。あなたは?」
「ニナさん…私はロ、ローズといいます」
一人なら……短剣で…。
ローズは深呼吸しポケットに隠してある短剣に手をかける。
「うむ、具合が悪そうだ。ローズさん、中で休んでいかれるか?」
まずい、もう一人いたのか…。
ちょっと…これみんな復興機関の人なの?
なにこの方、機械なのかしら…。
「おいおい、ニナが脅かしたのか。嬢ちゃ、じゃなかった、ローズ、ちょっとこいよ。茶でも出すぜ」
「お茶に誘う時はもっと優しく誘いなさいよガルシア」
ガルシアさんって人、なんかピートとそっくり。
なんか私、復興機関に囲まれたの?
ニナさん、ガルシアさん、機械っぽい方。
…復興機関って怖いと思っていたけど…。
ポケットからゆっくり手を出すローズ。
平常心、バレていない。
「さあ中へどうぞ、スズメさん」
「えっ!」
誰、私の正体を知っている?
「やっと会えましたね」
ローズはまさかの事態に動揺し混乱。
短剣より強力な小型銃を取り出す。
……正気じゃない…こんな復興機関の目の前で銃なんて…。
銃を構えゆっくりと声の方向を向くローズ。
そこには誰もが知る、復興機関レフトーラが立っていた。
「…そうか……私、マークされてたんだ…」
「間に合ってよかった、もう大丈夫ですよ」
銃を落とし落胆するローズ。
レフトはその銃を拾いニナに渡す。
震えが止まらない。
起き上がれない。
いつかこんな日がくると思っていたわ。
目の前にはレフトーラ。
もう逃げられない。
「スズメさん、立てますか?」
「…あ、あぅ…」
だめだ、声が…声が出ないよ…。
怖い。
怖いよ…誰か助けて…。
「しかたねえな」
ガルシアさん、なに、私をどうするの?
「えっ…」
ガルシアはなんとローズを背負った。
「心配すんな、ローズ。少し話すだけだ」
「…すみません…」
ローズ、別名スズメは取調室へ。
取り調べにはレフト、オメガ、バイオの三人が担当した。
「いきなりで驚いたであろう、許してほしい。私はオメガ、こちらは支部長のバイオ殿、そしてレフトだ。君のことを私たちに話してほしい」
謝罪するオメガ。
…オメガさん。機械っぽいのに人みたい。
バイオさんって見た目に気がいくけど、この三人で一番隙がない…。
つい力んでしまう。
「うふふ、そんなに身構えないで大丈夫ですよ」
「私は罪人です。そんな私の話など…」
うつむくローズ。
「ローズさん、よく聞いて下さい。あなたと一緒の人物、カラスはとても危険なんです」
「えっ、ピートがですか?」
「うふふ、ピートって可愛らしい名ですね…だが、やっていることは全く可愛げがないですよ」
ピート、やっぱり問題があったのね。
もう限界だわ。
復興機関を…この方々を信じよう。
「…強引なところがあって…よくトラブルを」
「うむ、ピートなる人物、カラスは、ある危険人物と違法な取り引きを行い逮捕状が出たのだ」
「逮捕…」
オメガは写真をローズに渡す。
そこには後ろから人を刺すピートが写っていた。
写真をまじまじとみるローズ。
「闇取り引き、暗殺など、日増しに行動はエスカレート。日夜問わず行われる蛮行。暴力などに耐久があるとはいえさすがに市民は限界を感じたのだろうね。被害届が多数だよ」
「うむ、こうして君を巻き込んで申し訳ないが、一つ、奴の現行犯逮捕に協力してほしい」
「うふふ、オメガ様やレフトーラ様がお願いするのはあなたに実力があるからですよ。自分を変えるなら今です、これはあなたにとっての転機ですわ」
「バイオさん、お優しい言葉をありがとうございます」
「うふふ、ローズさん、あなたの苦悩を二人はきっと払ってくれますわ。あとはあなたがどうするかです」
三人はローズの眼をみる。
「私は……何を…」
「うふふ」
その夜、屋敷に集合するローズ。
既にピートとラルクは待機していた。
「すまないスズメ」
「…」
「いいか、これっきりだぞ。んで?」
…私はピートを、もといカラスを逮捕する。
「屋敷の地下だ、そこに宝物庫があるらしい」
「宝物庫?胡散臭いぜ…おい本当にいいのか?スズメ?」
「はい、いきましょう、扉は私が開けます」
「へへ、鷹雀鴉、最後の仕事だ」
暗闇に紛れ三人は音もなく容易に屋敷へ侵入。
内部は静まりかえっており生活感がない。
…妙だ。
人の気配がまるでない。
「静かすぎる」
ラルクこと、タカはカラスの顔を見る。
「…だな。でも侵入してからは後に引けねえだろ」
「ちっ…てめえ」
「議論している場合ではないわ、さっさと地下へいくわよ」
…宝物庫なんてのは嘘。
コイツが狙うのは「武器の取り引き者名簿」。
詳細は知らない、知る必要すらない。
私はコイツが名簿を盗んだところの証拠をおさえる。
後はレフトさんたちに任せればいい。
タカさんも私もこれで犯罪とは…。
「クリア」
地下の扉を解錠するとそこに宝はない。
そもそも宝物庫ではない。
薄暗い部屋で周りの様子がわからない。
すると急に明かりがつき銃声が響く。
ひらひらとした名簿と銃を持つカラス。
「えっ…」
「てめえが機関のスパイだって情報があってな」
「…ぐ…」
機関のスパイ?
ラルクさんが復興機関?
知らない…知らないわ。
落ち着け落ち着くんだ。
深呼吸して冷静さを取り戻すスズメ。
カラスの横にはなんと三体の屈強な獣人がいる。
「おいスズメ、お前がタカにとどめをさせ」
「えっ…」
「…すまない、せめて君だけでも逃げて…くれ」
スズメの前に立ち、獣人と戦おうとするタカ。
短剣を抜刀し傷つきながらも。
「くだらねえ、やれ」
カラスは獣人に攻撃を指示。
すばやい動きに反応できず一方的に攻撃を受けるタカ。
だが目付きは鋭く何か策があるようだ。
「はあはぁ…」
傷を負っているのだが、なかなか倒れないことにイラつくカラス。
「しぶといな、下がれ、オレがやる」
カラスは獣人を下がらせ壁にあった無骨な大剣を抜刀しタカを狙う。
「くたばれっ」
力任せに剣を振るうが、タカはこのチャンスを待っていた。
大剣の攻撃をひらりとすり抜け短剣で顔を切りつける。
「ぎゃあぁ」
悲鳴ととも怯んだカラス。
タカは名簿を奪いスズメへ渡す。
「いけっ!! スズメっ! 外にいるレフトさんたちに名簿を渡すんだ」
「…」
無言で名簿を取り走るスズメ。
…ラルクさん
ふりかえらないわ。
私は、私のできることをする。
「…逃がすな追え、俺もすぐいく」
顔面をおさえ膝をつくカラスは獣人に追跡を命令する。
凄まじい速さで追ってくる獣人。
「このままだと追いつかれる」
一階のロビーまできたところで二階からさらに獣人が三体、スズメに襲いかかる。
「逃げられないなら…戦って道を…」
スズメは名簿をポケットにしまうと、短剣と銃を手にして獣人と戦う。
「道をひらくのみだっ!こいっ」
銃で獣人二体の足を撃ち機動力を削ぎ、素早い身のこなしから短剣にて、二体を一瞬で討ち取る。
「……合流される前に…」
その様子にもう一体は冷静になる。
スズメは銃の弾を装填する。
…見た目ほどこの獣は強くない。
だがすぐに三体が合流する。
銃で入口を破壊して逃げるか…。
それとも手早く始末し残りを迎え撃つか…。
スズメは考え込み、ジリジリと距離をつめる獣人に気づかなかった。
とその時、突如鋭い爪を凪払う。
「しまった…」
微弱だがかまいたちのような衝撃波が銃に直撃。
武器破壊に成功した獣人は爪による接近戦を展開。
「くっ…押し負ける」
短剣で応戦するスズメだが体格差がありすぎる。
ついには短剣を弾かれ爪が脇腹に刺さる。
「痛い……痛いわ……ふっふっ」
自分に刺さる爪を触り突然笑い出すスズメ。
…これは今までのツケね…。
「爪で…ツケって…ことなのかしらね……」
追ってきた三体が合流し状況は絶望。
スズメは覚悟を決めた。
「レフトみたいな寒いジョークね」
「えっ…」
突然どこからか銃声がして目の前の獣人は頭を撃ち抜かれ倒れた。
残りの三体はまさかの事態に怯えている。
力尽きドサっと倒れ込むスズメ。
そこへレフトがやってくる。
レフトさん
…名簿を…ラルクさんが渡してくれた名簿を…。
うがああ、動け身体っ!
「……これ……」
最後の力で名簿をレフトへ渡す。
それを視線も合わさず無言で受け取るレフト。
よかった、受け取ってくれた。
これで…これで…任務完了…終了…。
私…も…終了…。
お疲れ様人生…。
力つきる寸前のスズメ。
その瞳には涙が滲む。
…これは…何の涙かな…わからないや。
その時、突如凄まじい音がして入口の壁がぶち破られる。
…。
「うふふ可愛い獣ちゃんね」
「おい嬢ちゃん、じゃなかったローズ。大丈夫か」
えっ復興機関…?
援軍かしら…。
ん、あれ、あそこに……カラス。
まだだ。
あと…一言。
レフトさんにカラスの…カラスが隠れていることを伝えねば…。
うおおぉ、生命力を燃やせっ!!
「カラスはそこですっ!!!」
死角を指差すスズメ。
…もうダメだ。
でも…なんか…いいや。
その言葉を聞くとレフトはスズメに回復魔法をかけ、カラスに名簿を見せつける。
そして無言で屋敷の奥へ走り去る。
「ちっ…逃がすかよ」
カラスは周囲を確認しレフトを追う。
…レフトさん。
回復を…。
私も…カラスを…許せない。
起き上がれるようになったスズメはカラスを追う。
だがすぐにガルシアが止める。
「その根性は認めるがあれは作戦だ。レフトとニナに任せろ余計なことはするな。それよりも…」
「うふふ、ほら、獣の親玉がきたわよ」
「なっ…」
壁を破壊し巨大なモンスターが登場する。
「うむ、やはりここは研究所であったか。スズメ、お手柄である」
オメガが後方から登場する。
「うふふ、さあいらっしゃい、さあうふふ」
不気味に笑うバイオ。
獣人たちは雄叫びをあげバイオに突撃。
するとバイオは右手を前に出し拳を強く握る。
その様子に背筋が凍るスズメ。
この人、普通じゃないよ…。
これは毒だ…血液が毒そのものなんだ。
握った拳からは血がにじみそれを獣人たちに浴びせる。
すると獣人たちはもがき苦しみ皮膚が焼け落ちる。
その様子を冷酷な表情で見下すバイオ。
呆気なく戦闘不能になった獣人たちに怯む巨大モンスター。
「さーて」
ガルシアは剣を抜刀し、その荒々しさとは無縁の華麗な斬撃で両足を斬撃。
足を斬られ痛みで立てないモンスターは凄まじい勢いで倒れる。
そのモンスターめがけオメガは飛び上がりキューブを槍にして急所を突く。
…強すぎる。
なにこの連携。
復興機関って…。
「うふふ、ガルシアさん、後処理、および残党の捕縛をお願いね」
「はっ、後続を呼んでおりますのでそれにて対応致します」
「うむ、ではレフトたちを追います。バイオ殿、失礼致します」
「うふふ、かしこまりましたオメガ様。ローズさん、あなたは医療班が到着したらメディカルチェックを受けたほうがいいわよ、うふふ」
「は、はい、ありがとうございます」
…復興機関。
何なのこの武装集団は…。
その後、私は罪を償い自分の過去にけじめをつけた。
本当に機関だったラルクさんは発見時心肺停止だったがなんとか回復。なんでもバイオさんが蘇生させたらしい。
あの人はもともと医者だったらしいが…。
獣人の爪には獣人化する毒が含まれているらしく、放置していたら私は獣人になっていたそうだ。
「じゃ行ってくるね」
「気をつけるんだよ…」
私は工場を辞めて別のところで働いている。
「おはようございます」
「うふふ、おはようミミズクさん」
罪を償うローズは名を代償としミミズクと改名。
その後バイオの片腕として復興機関の情報課に所属。
驚異の能力はすぐに頭角を現し支部は荒んだ環境下にありながらも鉄壁という安定感を継続。
ミミズクはバイオより地位を継承し、現在はヘルゲート支部長、みんなのリーダーである。
実は出会った瞬間にバイオはミミズクの才能を見抜いていた。
レフトたちがヘルゲートを去ってもこの支部が安定し続けているのはバイオとミミズク、この二人の先見の明が大きい。浄化しつつあるヘルゲートにも見事な対応をしており、この支部は地域密着で市民からの信頼も厚い。
「さあ今日もはりきっていくわよぉ」
「うふふ」
「鷹雀鴉」はヘルゲートにて、ある程度知られていたプロの盗人三人組みのことである。
鷹「タカ」と呼ばれる優れた短剣使い。この男がリーダーをつとめる。
雀「スズメ」と呼ばれ、扉の解錠など優秀な盗賊ではあるが窃盗し続けている現状に苦悩している女性。
そして最後の鴉「カラス」は武器商人と繋がりがあったあのカラスである。
これはレフトーラがヘルゲート支部に所属していた頃、世間を騒がしていた盗人三人組み「鷹雀鴉」その一人、スズメの物語である。
「じゃ行ってくるね」
「気をつけるんだよ…」
私の名はローズ、ヘルゲートの食料工場で働く一般人だ。
両親は突如失踪してしまい今は祖父と暮らしている。
祖父は膝に矢を受けてしまい基本的に寝たきりの生活。以前は裏の組織に属していたらしいが、口数が少なく詳しいことはわからない。
そんなここでの生活はシンプルだ。
力なき者は奪われる、弱者は強者に怯えて暮らす、実力至上主義というか弱肉強食というか…。
私はそんな環境下でも生き残っている。
奪われたらその倍を奪えばいい、そうして生きてきた…。
おじいちゃんも若い頃はそうして生きてきたそうだ。
生きることは奪うこと、ただそれだけなのだけど……私は…。
「おい、ローズ、今夜いけるか」
工場の同僚が話しかけてくる。
彼はピート。
プライドが高く自信家、集団生活では嫌われる性格だ。私が休憩室で休んでいることを聞き、ある相談にきたようだ。
「機関の連中は今夜、大規模な会議があるらしく、外回りの警備は手薄。以前から狙っていたデカい山がチャンスなんだ」
「それ、ラルクさんは何て?」
「これから伝える」
「…」
私たちには裏の顔がある。
それは盗人だ。
闇市などで裏社会の者から、ポイントと呼ばれる、報酬が記載してある簡易な地図を買い、そこに印された場所へ窃盗にいく。
ピートは今夜、復興機関の者が支部に集合するため、見回りがなく窃盗しやすいと主張する。
熱苦しくなる部屋にすらりとした細身の者がくわえ煙草で入ってくる。
「ラルク、今ローズと話していたんだが…」
「あ?今夜はダメだ」
「なんだと?」
この人はラルクさん。
私たちのボスで、とても優しい人。
正直、何でこの人が窃盗やっているのか疑問だ。
「どうせ復興機関の話を聞いたんだろ?」
「おう、カラーズからの貴重な情報だ。ポイントは前に買ったある商人の屋敷」
「商人の屋敷は危険だ。リスクがありすぎる、罠かもしれん」
「…」
険悪なムードですが、これ、いつもの事です。
「おい、ローズお前も一攫千金でじいさんを楽にさせたいだろ」
「えっ…私は…」
私は正直、窃盗に限界を感じていた。
いつか捕まる。
そして報いを受ける日がきっとくる。
寝たきりになったおじいちゃんの姿は…きっと未来の…私だ。
両親の失踪もおじいちゃんが関係しているのかも…。
だけど…。
まだ間に合う。
でも、あと一回、ピートの言う一攫千金。
「お前の目は節穴か。ローズは窃盗を引退するだろうよ、盗人ごっこはもう終わりなんだよ。ここの環境は最悪だがな、だからって何でもやってイイってことじゃねえだろ。ヘルゲートは近いうちに変革される」
「はあ?…お前、なんか復興機関みたいなこと言うんだな…」
「何が言いたい?」
「それにやめるって言ってすぐ引退できると思ってんのか?」
「それ、おめえ一人じゃ何もできねえってことだぞ?」
荒れてる。
今日はどっちもおかしい。
それにラルクさんは…気づいていたんだ、私のこと。
にらみ合うピートとラルク。
休憩が終わる私はこっそりと部屋を出ようとするが…。
「夜、屋敷の裏手集合だ、遅れんなローズ」
「でも…私は」
「頼む、これで最後にする。だから二人の力を貸してくれ。お願いだ」
威張っていたピートはいきなり二人に土下座をする。
「ちっ…」
「…」
おかしいよ。
ピート絶対おかしいよ。
部屋を出た私は残りの作業を始めるが、ピートの奇行と今夜のことが気になり集中できなかった。
「いちょう復興機関…チェックしとこうかしら…」
帰宅途中に復興機関を覗いた。
「うわ、人が多い。それになんだか忙しそう…やっぱり会議があるのだろうか…」
「そうよ、会議ね。もう退屈なのよね」
「えっ」
気配がしなかった。
後ろ…誰。
「あら、お嬢ちゃんなかなか鋭いわね」
肩にポンと手をおかれた。
背後をとられ全く動けなかった。
「あ、あの…」
声が震える。
ゆっくりふりかえると、腰に銃を持つ女性が立っている。
…この人…復興機関の人?
ローズは感じたことがない恐怖に冷や汗がすごい。
「汗がすごいけど平気?私はニナ。あなたは?」
「ニナさん…私はロ、ローズといいます」
一人なら……短剣で…。
ローズは深呼吸しポケットに隠してある短剣に手をかける。
「うむ、具合が悪そうだ。ローズさん、中で休んでいかれるか?」
まずい、もう一人いたのか…。
ちょっと…これみんな復興機関の人なの?
なにこの方、機械なのかしら…。
「おいおい、ニナが脅かしたのか。嬢ちゃ、じゃなかった、ローズ、ちょっとこいよ。茶でも出すぜ」
「お茶に誘う時はもっと優しく誘いなさいよガルシア」
ガルシアさんって人、なんかピートとそっくり。
なんか私、復興機関に囲まれたの?
ニナさん、ガルシアさん、機械っぽい方。
…復興機関って怖いと思っていたけど…。
ポケットからゆっくり手を出すローズ。
平常心、バレていない。
「さあ中へどうぞ、スズメさん」
「えっ!」
誰、私の正体を知っている?
「やっと会えましたね」
ローズはまさかの事態に動揺し混乱。
短剣より強力な小型銃を取り出す。
……正気じゃない…こんな復興機関の目の前で銃なんて…。
銃を構えゆっくりと声の方向を向くローズ。
そこには誰もが知る、復興機関レフトーラが立っていた。
「…そうか……私、マークされてたんだ…」
「間に合ってよかった、もう大丈夫ですよ」
銃を落とし落胆するローズ。
レフトはその銃を拾いニナに渡す。
震えが止まらない。
起き上がれない。
いつかこんな日がくると思っていたわ。
目の前にはレフトーラ。
もう逃げられない。
「スズメさん、立てますか?」
「…あ、あぅ…」
だめだ、声が…声が出ないよ…。
怖い。
怖いよ…誰か助けて…。
「しかたねえな」
ガルシアさん、なに、私をどうするの?
「えっ…」
ガルシアはなんとローズを背負った。
「心配すんな、ローズ。少し話すだけだ」
「…すみません…」
ローズ、別名スズメは取調室へ。
取り調べにはレフト、オメガ、バイオの三人が担当した。
「いきなりで驚いたであろう、許してほしい。私はオメガ、こちらは支部長のバイオ殿、そしてレフトだ。君のことを私たちに話してほしい」
謝罪するオメガ。
…オメガさん。機械っぽいのに人みたい。
バイオさんって見た目に気がいくけど、この三人で一番隙がない…。
つい力んでしまう。
「うふふ、そんなに身構えないで大丈夫ですよ」
「私は罪人です。そんな私の話など…」
うつむくローズ。
「ローズさん、よく聞いて下さい。あなたと一緒の人物、カラスはとても危険なんです」
「えっ、ピートがですか?」
「うふふ、ピートって可愛らしい名ですね…だが、やっていることは全く可愛げがないですよ」
ピート、やっぱり問題があったのね。
もう限界だわ。
復興機関を…この方々を信じよう。
「…強引なところがあって…よくトラブルを」
「うむ、ピートなる人物、カラスは、ある危険人物と違法な取り引きを行い逮捕状が出たのだ」
「逮捕…」
オメガは写真をローズに渡す。
そこには後ろから人を刺すピートが写っていた。
写真をまじまじとみるローズ。
「闇取り引き、暗殺など、日増しに行動はエスカレート。日夜問わず行われる蛮行。暴力などに耐久があるとはいえさすがに市民は限界を感じたのだろうね。被害届が多数だよ」
「うむ、こうして君を巻き込んで申し訳ないが、一つ、奴の現行犯逮捕に協力してほしい」
「うふふ、オメガ様やレフトーラ様がお願いするのはあなたに実力があるからですよ。自分を変えるなら今です、これはあなたにとっての転機ですわ」
「バイオさん、お優しい言葉をありがとうございます」
「うふふ、ローズさん、あなたの苦悩を二人はきっと払ってくれますわ。あとはあなたがどうするかです」
三人はローズの眼をみる。
「私は……何を…」
「うふふ」
その夜、屋敷に集合するローズ。
既にピートとラルクは待機していた。
「すまないスズメ」
「…」
「いいか、これっきりだぞ。んで?」
…私はピートを、もといカラスを逮捕する。
「屋敷の地下だ、そこに宝物庫があるらしい」
「宝物庫?胡散臭いぜ…おい本当にいいのか?スズメ?」
「はい、いきましょう、扉は私が開けます」
「へへ、鷹雀鴉、最後の仕事だ」
暗闇に紛れ三人は音もなく容易に屋敷へ侵入。
内部は静まりかえっており生活感がない。
…妙だ。
人の気配がまるでない。
「静かすぎる」
ラルクこと、タカはカラスの顔を見る。
「…だな。でも侵入してからは後に引けねえだろ」
「ちっ…てめえ」
「議論している場合ではないわ、さっさと地下へいくわよ」
…宝物庫なんてのは嘘。
コイツが狙うのは「武器の取り引き者名簿」。
詳細は知らない、知る必要すらない。
私はコイツが名簿を盗んだところの証拠をおさえる。
後はレフトさんたちに任せればいい。
タカさんも私もこれで犯罪とは…。
「クリア」
地下の扉を解錠するとそこに宝はない。
そもそも宝物庫ではない。
薄暗い部屋で周りの様子がわからない。
すると急に明かりがつき銃声が響く。
ひらひらとした名簿と銃を持つカラス。
「えっ…」
「てめえが機関のスパイだって情報があってな」
「…ぐ…」
機関のスパイ?
ラルクさんが復興機関?
知らない…知らないわ。
落ち着け落ち着くんだ。
深呼吸して冷静さを取り戻すスズメ。
カラスの横にはなんと三体の屈強な獣人がいる。
「おいスズメ、お前がタカにとどめをさせ」
「えっ…」
「…すまない、せめて君だけでも逃げて…くれ」
スズメの前に立ち、獣人と戦おうとするタカ。
短剣を抜刀し傷つきながらも。
「くだらねえ、やれ」
カラスは獣人に攻撃を指示。
すばやい動きに反応できず一方的に攻撃を受けるタカ。
だが目付きは鋭く何か策があるようだ。
「はあはぁ…」
傷を負っているのだが、なかなか倒れないことにイラつくカラス。
「しぶといな、下がれ、オレがやる」
カラスは獣人を下がらせ壁にあった無骨な大剣を抜刀しタカを狙う。
「くたばれっ」
力任せに剣を振るうが、タカはこのチャンスを待っていた。
大剣の攻撃をひらりとすり抜け短剣で顔を切りつける。
「ぎゃあぁ」
悲鳴ととも怯んだカラス。
タカは名簿を奪いスズメへ渡す。
「いけっ!! スズメっ! 外にいるレフトさんたちに名簿を渡すんだ」
「…」
無言で名簿を取り走るスズメ。
…ラルクさん
ふりかえらないわ。
私は、私のできることをする。
「…逃がすな追え、俺もすぐいく」
顔面をおさえ膝をつくカラスは獣人に追跡を命令する。
凄まじい速さで追ってくる獣人。
「このままだと追いつかれる」
一階のロビーまできたところで二階からさらに獣人が三体、スズメに襲いかかる。
「逃げられないなら…戦って道を…」
スズメは名簿をポケットにしまうと、短剣と銃を手にして獣人と戦う。
「道をひらくのみだっ!こいっ」
銃で獣人二体の足を撃ち機動力を削ぎ、素早い身のこなしから短剣にて、二体を一瞬で討ち取る。
「……合流される前に…」
その様子にもう一体は冷静になる。
スズメは銃の弾を装填する。
…見た目ほどこの獣は強くない。
だがすぐに三体が合流する。
銃で入口を破壊して逃げるか…。
それとも手早く始末し残りを迎え撃つか…。
スズメは考え込み、ジリジリと距離をつめる獣人に気づかなかった。
とその時、突如鋭い爪を凪払う。
「しまった…」
微弱だがかまいたちのような衝撃波が銃に直撃。
武器破壊に成功した獣人は爪による接近戦を展開。
「くっ…押し負ける」
短剣で応戦するスズメだが体格差がありすぎる。
ついには短剣を弾かれ爪が脇腹に刺さる。
「痛い……痛いわ……ふっふっ」
自分に刺さる爪を触り突然笑い出すスズメ。
…これは今までのツケね…。
「爪で…ツケって…ことなのかしらね……」
追ってきた三体が合流し状況は絶望。
スズメは覚悟を決めた。
「レフトみたいな寒いジョークね」
「えっ…」
突然どこからか銃声がして目の前の獣人は頭を撃ち抜かれ倒れた。
残りの三体はまさかの事態に怯えている。
力尽きドサっと倒れ込むスズメ。
そこへレフトがやってくる。
レフトさん
…名簿を…ラルクさんが渡してくれた名簿を…。
うがああ、動け身体っ!
「……これ……」
最後の力で名簿をレフトへ渡す。
それを視線も合わさず無言で受け取るレフト。
よかった、受け取ってくれた。
これで…これで…任務完了…終了…。
私…も…終了…。
お疲れ様人生…。
力つきる寸前のスズメ。
その瞳には涙が滲む。
…これは…何の涙かな…わからないや。
その時、突如凄まじい音がして入口の壁がぶち破られる。
…。
「うふふ可愛い獣ちゃんね」
「おい嬢ちゃん、じゃなかったローズ。大丈夫か」
えっ復興機関…?
援軍かしら…。
ん、あれ、あそこに……カラス。
まだだ。
あと…一言。
レフトさんにカラスの…カラスが隠れていることを伝えねば…。
うおおぉ、生命力を燃やせっ!!
「カラスはそこですっ!!!」
死角を指差すスズメ。
…もうダメだ。
でも…なんか…いいや。
その言葉を聞くとレフトはスズメに回復魔法をかけ、カラスに名簿を見せつける。
そして無言で屋敷の奥へ走り去る。
「ちっ…逃がすかよ」
カラスは周囲を確認しレフトを追う。
…レフトさん。
回復を…。
私も…カラスを…許せない。
起き上がれるようになったスズメはカラスを追う。
だがすぐにガルシアが止める。
「その根性は認めるがあれは作戦だ。レフトとニナに任せろ余計なことはするな。それよりも…」
「うふふ、ほら、獣の親玉がきたわよ」
「なっ…」
壁を破壊し巨大なモンスターが登場する。
「うむ、やはりここは研究所であったか。スズメ、お手柄である」
オメガが後方から登場する。
「うふふ、さあいらっしゃい、さあうふふ」
不気味に笑うバイオ。
獣人たちは雄叫びをあげバイオに突撃。
するとバイオは右手を前に出し拳を強く握る。
その様子に背筋が凍るスズメ。
この人、普通じゃないよ…。
これは毒だ…血液が毒そのものなんだ。
握った拳からは血がにじみそれを獣人たちに浴びせる。
すると獣人たちはもがき苦しみ皮膚が焼け落ちる。
その様子を冷酷な表情で見下すバイオ。
呆気なく戦闘不能になった獣人たちに怯む巨大モンスター。
「さーて」
ガルシアは剣を抜刀し、その荒々しさとは無縁の華麗な斬撃で両足を斬撃。
足を斬られ痛みで立てないモンスターは凄まじい勢いで倒れる。
そのモンスターめがけオメガは飛び上がりキューブを槍にして急所を突く。
…強すぎる。
なにこの連携。
復興機関って…。
「うふふ、ガルシアさん、後処理、および残党の捕縛をお願いね」
「はっ、後続を呼んでおりますのでそれにて対応致します」
「うむ、ではレフトたちを追います。バイオ殿、失礼致します」
「うふふ、かしこまりましたオメガ様。ローズさん、あなたは医療班が到着したらメディカルチェックを受けたほうがいいわよ、うふふ」
「は、はい、ありがとうございます」
…復興機関。
何なのこの武装集団は…。
その後、私は罪を償い自分の過去にけじめをつけた。
本当に機関だったラルクさんは発見時心肺停止だったがなんとか回復。なんでもバイオさんが蘇生させたらしい。
あの人はもともと医者だったらしいが…。
獣人の爪には獣人化する毒が含まれているらしく、放置していたら私は獣人になっていたそうだ。
「じゃ行ってくるね」
「気をつけるんだよ…」
私は工場を辞めて別のところで働いている。
「おはようございます」
「うふふ、おはようミミズクさん」
罪を償うローズは名を代償としミミズクと改名。
その後バイオの片腕として復興機関の情報課に所属。
驚異の能力はすぐに頭角を現し支部は荒んだ環境下にありながらも鉄壁という安定感を継続。
ミミズクはバイオより地位を継承し、現在はヘルゲート支部長、みんなのリーダーである。
実は出会った瞬間にバイオはミミズクの才能を見抜いていた。
レフトたちがヘルゲートを去ってもこの支部が安定し続けているのはバイオとミミズク、この二人の先見の明が大きい。浄化しつつあるヘルゲートにも見事な対応をしており、この支部は地域密着で市民からの信頼も厚い。
「さあ今日もはりきっていくわよぉ」
「うふふ」
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