12 / 57
12. First Feeling
しおりを挟む
「陸、これも持って行くの?」
「あ、陽一、そうそう。頼むよ」
文化祭の実行委員に選ばれた陽一と陸は、山積みの資料を手一杯に抱え教室を出た。
「陽一、サンキューな。俺、文化祭の実行委員ってやってみたかったんだよ」
「ああ。陸となら俺は構わないよ」
「しっかし、お前がやるって決まった瞬間、女子共が急に立候補しだしてさ、俺が抜けさせられるんじゃないかって、一瞬冷や冷やしたぜ」
「陸が抜けてたら、俺は辞退してる」
「ま、そうなるよな」
手に一杯の資料を抱えながら、廊下を歩いている陽一と陸に誰かが声を掛けてきた。
「陽一ぃ 陸ぅ」
名前を呼ばれた二人は後ろを振返ると、夾と徳田が、それぞれの手に何かを持って歩いて来る。
「夾と徳ちゃんも、成功した?」
「うん。俺達もB組の実行委員だぜ」
「やりい!」
身体で嬉しさを表現したかった陸だが、手が塞がれているために、満面の笑みで応えた。
「計画通りじゃん! この4人でさ、バスケ以外で何か出来るなんて楽しみだぁ~」
「そうだね。俺も同感」
陽一が夾の気持ちに賛同すると、陸と徳田も納得の様子で首を縦に振った。
陽一と陸に合流した夾と徳田は、4人で職員室や生徒会室のある1年生の校舎に足を踏み入れる。
「うわ~ ここ懐かしいな~」
2、3年生は同じ校舎を使っているが、1年生だけ2階の渡廊下を挟んだ北側の校舎を利用しているのだ。
「懐かしいって、音楽室も美術室もこっちじゃん」
「夾、鋭いとこつくな。でも1階って滅多に来ないだろ」
「まぁ、職員室には近寄りたくないからな~」
「いえてる」
4人が、他愛のない会話をしていると、足早に階段を下りて来る1年生のグループが見えた。そして彼等は階段下の踊り場で固まると、苦笑いをしながら話始める。
「やっぱ、怪しいぜ、あの二人」
「いくら絵を描くの好きでもさ、毎休憩時間に美術室に行くか?」
「橘って、クラスではアーティスト気取りで誰とも話さない癖に、宇道とは仲良く話すだろ」
「あの二人ぜったい、そうだぜ」
「ここ共学なのによ、あり得ない」
「橘って身体デカいくせに、掘られんの好きとか」
「うわっ」
「キモいよな」
陽一達の耳に1年生の会話が届いていた。彼等の前を通り過ぎると、夾が少しトーンを下げて話出す。
「なぁ、今の橘って、あの橘の事?」
「絵が好きとか言ってたし、多分な」
「アイツってクラスで友達居ないんだな」
「全然知らなかった。陽一は、橘から聞いてた?」
陽一は、先程の会話を聞いて以来、何も耳に届かない状態に陥っていた。
「おい、陽一」
陽一の変化に気付いた陸が話掛ける。
「あ・・何か言った・・陸?」
「いや、徳ちゃんがさ ・・」
「あ、徳ちゃんごめん。何て?」
ハッとし、我を取り戻した陽一が背後を歩く徳田に視線をおくった。
「いや、橘ってクラスで1人みたいだし大丈夫なのかなって」
「ああ、俺も今のを聞いてビックリしたよ。バスケ部では馴染んでそうなのに」
陽一が、少し心配そうに応えていると、夾が何かを思い出したように陽一の後に続ける。
「そう言えばさ、去年宇道がここの学校に来た時に変な噂なかった?」
「ああ、ゲイってやつ?」
「そうそう、ここの前に教えてた私立の男子校で、そっち系の問題起こして辞めさせられたって噂、あったよな」
陸と徳田は、夾の言葉で宇道の噂を思い出した。
「あっ、そう言えば、次、俺のクラス美術だ。な、陽一」
「うん」
「あちゃ、俺だったら、宇道を変な目で見てしまいそうだぁ」
「授業に集中できねえじゃん」
「でもよ、教師も人間だし、好みなんて何でもいいだろ。俺には関係ないし」
「よ! 陸、大人。さすが、工大目指しているだけあって、機械以外は興味なしかぁ?」
夾が茶化した声で陸に問いかけると、暗くなりかけた空気が、陽一の心中以外は、明るさを取り戻した。
「地元の工大にしたんだっけ?」
「そう、陽一も残るし、離れられないだろ」
「うわ~ お前らラブラブだな。陽一は例のデッカイ町のスッゲエ名前の大学だったよな」
「デッカイ町のスッゲエ名前の大学って、どこだよ~」
「アハハハ」
「夾、うける」
「だって口に出すのも、おこがましいじゃん」
「だな~ アハハハ」
陽一を省いた3人はいつの間にか、直人と宇道の事は忘れ進路の話で盛り上がった。
職員室に資料を置いた陽一と陸は、夾と徳田に別れを告げ、1年生校舎の2階にある美術室に向って階段を上っていた。
「なぁ陸、授業まで、まだ5分もあるよ」
先程の1年生達の会話が陽一の美術室への足取りを重くさせる。
「いつも遅れってっから、たまにはいいだろ。でもさ、3年に美術の授業って必要ないよな。バックレっか?」
珍しく陸の言葉に乗っかりたい気分の陽一だったが、直ぐに残念そうな顔になる。
「もう遅いよ」
二人はいつの間にか美術室の前に到着しており、クラスの学級委員長と目が合ったのだ。
「うわっ 1番ヤバい奴に見付かったな」
陽一のクラスの学級委員長は横川杏と言う、授業態度満点の真面目女子が務めていたのだ。
「横川、何やってんだ? 入んないのか?」
美術室前で突っ立ったまま、ドアを開けようともしない横川に陸が声を掛けた。
「竹ノ内君が先に入って」
「え? おっかしな奴だな」
横川の不可解な態度を気にしながら、陸は美術室のドアを開けた。
「しっつれい ・・・・します」
美術室の扉を開けた直後3人は一瞬硬直してしまう。そして、陽一と陸は学級委員の横川が入室を躊躇っていた訳が即座に理解出来た。
何故なら、美術室前方、窓側の席で美術教師の宇道が、彼の前に座る生徒を抱きしめていたからだ。だが、それは3人の見間違いだった。宇道は、ただ彼の前で絵を描く生徒に、指導していただけだったのだ。
「あれ? お邪魔でしたか?」
誤解だったと気付いた陸が嫌味を言うと、それを聞いた宇道と彼の前に座っていた直人が振り返る。
「本当だ。いつもは遅れる癖に、3年ならもっと気を遣え」
陸と宇道の会話の意味が読み取れない直人は、いつもの様子で陽一と陸を見る。
「あ、先輩。次美術なんですか? うわ~もうこんな時間。僕、教室に戻らないと」
直人が立ち上がろうとした時、宇道がさっと直人の手を握るとペンを持たせ、直人の頬に自身の顔をすり寄せた。
「ほら、橘の絵は特別なんだから、サインちゃんとしておかないと」
宇道が直人の耳で囁く。そして、身体を直人に近づけたままの状態で目線を陽一に向けると、不敵な笑みをおくる。
その瞬間、陽一の胸が意味不明な痛みに襲われると、その場から逃れたい衝動に駆られた。
それは陽一にとっては初めての感覚。動揺を押し殺しながら陽一は、無言で美術室の後方に足を進めた。
「相澤先輩 ・・・・」
直人は、後ろに移動する陽一に声を掛けたが、陽一は俯いたまま直人に目も向けず言葉も発しなかった。
「あ、陽一、そうそう。頼むよ」
文化祭の実行委員に選ばれた陽一と陸は、山積みの資料を手一杯に抱え教室を出た。
「陽一、サンキューな。俺、文化祭の実行委員ってやってみたかったんだよ」
「ああ。陸となら俺は構わないよ」
「しっかし、お前がやるって決まった瞬間、女子共が急に立候補しだしてさ、俺が抜けさせられるんじゃないかって、一瞬冷や冷やしたぜ」
「陸が抜けてたら、俺は辞退してる」
「ま、そうなるよな」
手に一杯の資料を抱えながら、廊下を歩いている陽一と陸に誰かが声を掛けてきた。
「陽一ぃ 陸ぅ」
名前を呼ばれた二人は後ろを振返ると、夾と徳田が、それぞれの手に何かを持って歩いて来る。
「夾と徳ちゃんも、成功した?」
「うん。俺達もB組の実行委員だぜ」
「やりい!」
身体で嬉しさを表現したかった陸だが、手が塞がれているために、満面の笑みで応えた。
「計画通りじゃん! この4人でさ、バスケ以外で何か出来るなんて楽しみだぁ~」
「そうだね。俺も同感」
陽一が夾の気持ちに賛同すると、陸と徳田も納得の様子で首を縦に振った。
陽一と陸に合流した夾と徳田は、4人で職員室や生徒会室のある1年生の校舎に足を踏み入れる。
「うわ~ ここ懐かしいな~」
2、3年生は同じ校舎を使っているが、1年生だけ2階の渡廊下を挟んだ北側の校舎を利用しているのだ。
「懐かしいって、音楽室も美術室もこっちじゃん」
「夾、鋭いとこつくな。でも1階って滅多に来ないだろ」
「まぁ、職員室には近寄りたくないからな~」
「いえてる」
4人が、他愛のない会話をしていると、足早に階段を下りて来る1年生のグループが見えた。そして彼等は階段下の踊り場で固まると、苦笑いをしながら話始める。
「やっぱ、怪しいぜ、あの二人」
「いくら絵を描くの好きでもさ、毎休憩時間に美術室に行くか?」
「橘って、クラスではアーティスト気取りで誰とも話さない癖に、宇道とは仲良く話すだろ」
「あの二人ぜったい、そうだぜ」
「ここ共学なのによ、あり得ない」
「橘って身体デカいくせに、掘られんの好きとか」
「うわっ」
「キモいよな」
陽一達の耳に1年生の会話が届いていた。彼等の前を通り過ぎると、夾が少しトーンを下げて話出す。
「なぁ、今の橘って、あの橘の事?」
「絵が好きとか言ってたし、多分な」
「アイツってクラスで友達居ないんだな」
「全然知らなかった。陽一は、橘から聞いてた?」
陽一は、先程の会話を聞いて以来、何も耳に届かない状態に陥っていた。
「おい、陽一」
陽一の変化に気付いた陸が話掛ける。
「あ・・何か言った・・陸?」
「いや、徳ちゃんがさ ・・」
「あ、徳ちゃんごめん。何て?」
ハッとし、我を取り戻した陽一が背後を歩く徳田に視線をおくった。
「いや、橘ってクラスで1人みたいだし大丈夫なのかなって」
「ああ、俺も今のを聞いてビックリしたよ。バスケ部では馴染んでそうなのに」
陽一が、少し心配そうに応えていると、夾が何かを思い出したように陽一の後に続ける。
「そう言えばさ、去年宇道がここの学校に来た時に変な噂なかった?」
「ああ、ゲイってやつ?」
「そうそう、ここの前に教えてた私立の男子校で、そっち系の問題起こして辞めさせられたって噂、あったよな」
陸と徳田は、夾の言葉で宇道の噂を思い出した。
「あっ、そう言えば、次、俺のクラス美術だ。な、陽一」
「うん」
「あちゃ、俺だったら、宇道を変な目で見てしまいそうだぁ」
「授業に集中できねえじゃん」
「でもよ、教師も人間だし、好みなんて何でもいいだろ。俺には関係ないし」
「よ! 陸、大人。さすが、工大目指しているだけあって、機械以外は興味なしかぁ?」
夾が茶化した声で陸に問いかけると、暗くなりかけた空気が、陽一の心中以外は、明るさを取り戻した。
「地元の工大にしたんだっけ?」
「そう、陽一も残るし、離れられないだろ」
「うわ~ お前らラブラブだな。陽一は例のデッカイ町のスッゲエ名前の大学だったよな」
「デッカイ町のスッゲエ名前の大学って、どこだよ~」
「アハハハ」
「夾、うける」
「だって口に出すのも、おこがましいじゃん」
「だな~ アハハハ」
陽一を省いた3人はいつの間にか、直人と宇道の事は忘れ進路の話で盛り上がった。
職員室に資料を置いた陽一と陸は、夾と徳田に別れを告げ、1年生校舎の2階にある美術室に向って階段を上っていた。
「なぁ陸、授業まで、まだ5分もあるよ」
先程の1年生達の会話が陽一の美術室への足取りを重くさせる。
「いつも遅れってっから、たまにはいいだろ。でもさ、3年に美術の授業って必要ないよな。バックレっか?」
珍しく陸の言葉に乗っかりたい気分の陽一だったが、直ぐに残念そうな顔になる。
「もう遅いよ」
二人はいつの間にか美術室の前に到着しており、クラスの学級委員長と目が合ったのだ。
「うわっ 1番ヤバい奴に見付かったな」
陽一のクラスの学級委員長は横川杏と言う、授業態度満点の真面目女子が務めていたのだ。
「横川、何やってんだ? 入んないのか?」
美術室前で突っ立ったまま、ドアを開けようともしない横川に陸が声を掛けた。
「竹ノ内君が先に入って」
「え? おっかしな奴だな」
横川の不可解な態度を気にしながら、陸は美術室のドアを開けた。
「しっつれい ・・・・します」
美術室の扉を開けた直後3人は一瞬硬直してしまう。そして、陽一と陸は学級委員の横川が入室を躊躇っていた訳が即座に理解出来た。
何故なら、美術室前方、窓側の席で美術教師の宇道が、彼の前に座る生徒を抱きしめていたからだ。だが、それは3人の見間違いだった。宇道は、ただ彼の前で絵を描く生徒に、指導していただけだったのだ。
「あれ? お邪魔でしたか?」
誤解だったと気付いた陸が嫌味を言うと、それを聞いた宇道と彼の前に座っていた直人が振り返る。
「本当だ。いつもは遅れる癖に、3年ならもっと気を遣え」
陸と宇道の会話の意味が読み取れない直人は、いつもの様子で陽一と陸を見る。
「あ、先輩。次美術なんですか? うわ~もうこんな時間。僕、教室に戻らないと」
直人が立ち上がろうとした時、宇道がさっと直人の手を握るとペンを持たせ、直人の頬に自身の顔をすり寄せた。
「ほら、橘の絵は特別なんだから、サインちゃんとしておかないと」
宇道が直人の耳で囁く。そして、身体を直人に近づけたままの状態で目線を陽一に向けると、不敵な笑みをおくる。
その瞬間、陽一の胸が意味不明な痛みに襲われると、その場から逃れたい衝動に駆られた。
それは陽一にとっては初めての感覚。動揺を押し殺しながら陽一は、無言で美術室の後方に足を進めた。
「相澤先輩 ・・・・」
直人は、後ろに移動する陽一に声を掛けたが、陽一は俯いたまま直人に目も向けず言葉も発しなかった。
0
あなたにおすすめの小説
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる