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27. Just an another Day
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陽一は、海岸沿いにあるカフェでバイトをする事にした。そして、直人は、陽一が週末の日中仕事の時は、カフェの見えるベンチから絵を描く事にしていた。
『あ、また、あの女の人、陽さんを見てる。カッコいいもんなぁ~ 僕の恋人』
心で呟きながら赤面する直人はスケッチブックで顔を隠しながらも、目線は陽一から離さずにいた。
直人は気付いた事があった。それは、陽一の肩に居る天使達が最近は寝ていないのだ。とても楽しそうな表情で髪をとかしたり、2体で遊んだりと、明らかに以前よりも行動的になっていた。
そして、天使の輝く黄金の瞳と直人の視線が合うと、それに応じるように微笑みをくれるようになった。それは、直人を意識せずに飛び回わる精霊達とは明らかに違っていたのだ。
『なんでだろう?』
「あ! こらっ! 僕の陽さんに触るな」
カフェのテラスに座る客が、陽一を誘っているのが遠目からでも分かる。
すると、困る素振りも見せず上手に対応していた陽一が、客に自身の左手を見せていた。
『あ、陽さん』
そう、陽一と直人はお揃いの指輪を付けているのだ。
陽一が、客に恋人がいることを話しているのだと思うと、多幸感に包まれながら直人は左手の指輪にキスをした。すると、陽一がそんな直人を遠くから見ていて軽く手を振る。
『あ~ 僕はなんて幸せなんだろう・・・・』
直人は心温まる気持ちをくれた陽一に感謝すると、両手でスケッチブックを抱き締めた。
「お待たせ、直」
「陽さん」
仕事を終えた陽一が直人の横に腰を下ろす。
目前のビーチでは家族や恋人が仲睦まじく遊んでおり、愉し気な笑い声が時折二人の耳に届く。
「直と同棲してから2度目の夏だね。アッと言う間だったなぁ」
「もう1年以上も一緒に住んでるんですねぇ ・・僕はまだ夢を見ているようだけど」
「俺もだよ。いつもその人の事を考えて、ドキドキする自分になれるなんて、夢みたいだ」
「陽さん ・・また花火を見に行きましょうね」
「うん。家で流し素麺もやろうね」
「はい。あれ、スッゴク楽しかった」
「だね~」
陽一は、スケッチブックを持つ直人の手を握る。
「これからも、宜しくね。直」
「はい」
涼しい浜風が火照った直人の顔に心地よく感じると、少し目を細めながら見つめる陽一の瞳に吸い込まれる。
「陽さん・・ 僕、さっき、陽さんを見ながら幸せだなって思ってたんです。こんな日がずっとずっと続いて欲しい・・」
「俺もそう思ってた。きっと、ずっと、続くよ」
ベンチに座る寄り添った二人の影が東へ長く伸びていく。
珍しく陽一よりも早く目覚めた直人は、隣でスヤスヤと眠る陽一の寝顔を拝んでいた。
「まつ毛長いな~」
直人は高鳴る鼓動を静めながら、そっと陽一の唇に自身のを重ねる。
「昨日、あんなにしたのに、まだ足りない?」
「あ、ああああ」
恥ずかしさで顔を枕に埋めた直人の髪を陽一の指先が触れる。
「身体痛くない?」
「はい。大丈夫です。陽さん、いつも優しいから」
「直の身体、段々と柔らかくなってる気がする」
「あ、確かに。部活の柔軟体操でピッタリ床に着くようになった」
「そっか」
陽一は、埋もれていた顔を上げた直人の口にキスをした。
「お返し」
「ヘヘ」
「変な笑い」
二人は朝食を済ませると廊下に軽い足音を立てながら玄関に向う。
「あ、陽さん、今日雨が降るかも? 一応折りたたみ持って行ってくださいね」
「了解。水の精霊だったっけ?」
「うん。さっき沢山空に飛んでたし、雷も来るかも」
「夕立でもあるのかな。いつも有難う」
「いえいえ。降らなかったらごめんなさい」
二人は折りたたみ傘をそれぞれの鞄に入れると靴を履いた。すると、陽一の携帯が鳴る。
「もしもし、おはよ。珍しいね。どうしたの?」
電話は陽一の母親からだったのだ。
話をしながら玄関を出た陽一の後に続いた直人は、家の鍵を閉めると、門外で待ってくれている陽一の元へ向かった。
「分かった。じゃあそうするよ」
話し終えた陽一は、電話をパンツの前ポケットに入れると直人と一緒に歩みを進める。
「お母さんですか?」
「あ、うん。何か用事があるから学校の帰りに家に来いって」
「そうですか」
「あ―あ、今日はバイトがないから、直とユックリ出来ると思ったのに」
「最近、全然実家に帰ってなかったんで、ユックリしてきてください」
「あ、うん。母親気持ち悪いくらいご機嫌だったんだよね。今晩仕事じゃないのも珍しい」
「何か良い話だといいですね」
二人は駅に向って坂道を下って行く。
残暑で未だ朝から陽射しが強く、沢山の日傘が二人の眼下に見えた。
「そう言えば、直ってもう進学決めたの?」
「え?」
「やっぱ美大?」
「あ、うん、多分」
「多分? まだ決めてないの? 宇道イライラしてんじゃない?」
「アハハハ。ご名答」
「美大かぁ ・・俺には全然分からないけど、倍率高いって聞く。あ、でも直なら推薦だよね。幾つも来てるの?」
「あ、まぁ」
「さすがだね。俺に気を遣わないで直にとって最良の道を選んでね。俺は直の事を応援してるからさ。離れ離れになったら寂しいけど、でも、俺達なら絶対に大丈夫だと信じてるから」
「陽さん ・・嫌です! 僕、絶対に離れません。何処にも行きません! ずっとずっとこうしていたい・・陽さんが居ない世界なんて考えられない」
直人は、珍しく声を荒げると目線を足元に落としながら悲しい顔をした。
陽一は直人の頭を抱くと自分の肩に引き寄せる。
「ごめん ・・変な事を言って。俺も直が居ない世界なんて考えたくもないよ。あ――やっぱり今日は早く帰って直と、いちゃいちゃしたい!」
頭を抱えられたままで、直人は落としていた目線を陽一に向けると微笑んだ。
「ダメですよ。お母さんに会ってください ・・アハハハ」
無数の雲がいつもよりも早く流れる中、二人は駅へと向かった。
『あ、また、あの女の人、陽さんを見てる。カッコいいもんなぁ~ 僕の恋人』
心で呟きながら赤面する直人はスケッチブックで顔を隠しながらも、目線は陽一から離さずにいた。
直人は気付いた事があった。それは、陽一の肩に居る天使達が最近は寝ていないのだ。とても楽しそうな表情で髪をとかしたり、2体で遊んだりと、明らかに以前よりも行動的になっていた。
そして、天使の輝く黄金の瞳と直人の視線が合うと、それに応じるように微笑みをくれるようになった。それは、直人を意識せずに飛び回わる精霊達とは明らかに違っていたのだ。
『なんでだろう?』
「あ! こらっ! 僕の陽さんに触るな」
カフェのテラスに座る客が、陽一を誘っているのが遠目からでも分かる。
すると、困る素振りも見せず上手に対応していた陽一が、客に自身の左手を見せていた。
『あ、陽さん』
そう、陽一と直人はお揃いの指輪を付けているのだ。
陽一が、客に恋人がいることを話しているのだと思うと、多幸感に包まれながら直人は左手の指輪にキスをした。すると、陽一がそんな直人を遠くから見ていて軽く手を振る。
『あ~ 僕はなんて幸せなんだろう・・・・』
直人は心温まる気持ちをくれた陽一に感謝すると、両手でスケッチブックを抱き締めた。
「お待たせ、直」
「陽さん」
仕事を終えた陽一が直人の横に腰を下ろす。
目前のビーチでは家族や恋人が仲睦まじく遊んでおり、愉し気な笑い声が時折二人の耳に届く。
「直と同棲してから2度目の夏だね。アッと言う間だったなぁ」
「もう1年以上も一緒に住んでるんですねぇ ・・僕はまだ夢を見ているようだけど」
「俺もだよ。いつもその人の事を考えて、ドキドキする自分になれるなんて、夢みたいだ」
「陽さん ・・また花火を見に行きましょうね」
「うん。家で流し素麺もやろうね」
「はい。あれ、スッゴク楽しかった」
「だね~」
陽一は、スケッチブックを持つ直人の手を握る。
「これからも、宜しくね。直」
「はい」
涼しい浜風が火照った直人の顔に心地よく感じると、少し目を細めながら見つめる陽一の瞳に吸い込まれる。
「陽さん・・ 僕、さっき、陽さんを見ながら幸せだなって思ってたんです。こんな日がずっとずっと続いて欲しい・・」
「俺もそう思ってた。きっと、ずっと、続くよ」
ベンチに座る寄り添った二人の影が東へ長く伸びていく。
珍しく陽一よりも早く目覚めた直人は、隣でスヤスヤと眠る陽一の寝顔を拝んでいた。
「まつ毛長いな~」
直人は高鳴る鼓動を静めながら、そっと陽一の唇に自身のを重ねる。
「昨日、あんなにしたのに、まだ足りない?」
「あ、ああああ」
恥ずかしさで顔を枕に埋めた直人の髪を陽一の指先が触れる。
「身体痛くない?」
「はい。大丈夫です。陽さん、いつも優しいから」
「直の身体、段々と柔らかくなってる気がする」
「あ、確かに。部活の柔軟体操でピッタリ床に着くようになった」
「そっか」
陽一は、埋もれていた顔を上げた直人の口にキスをした。
「お返し」
「ヘヘ」
「変な笑い」
二人は朝食を済ませると廊下に軽い足音を立てながら玄関に向う。
「あ、陽さん、今日雨が降るかも? 一応折りたたみ持って行ってくださいね」
「了解。水の精霊だったっけ?」
「うん。さっき沢山空に飛んでたし、雷も来るかも」
「夕立でもあるのかな。いつも有難う」
「いえいえ。降らなかったらごめんなさい」
二人は折りたたみ傘をそれぞれの鞄に入れると靴を履いた。すると、陽一の携帯が鳴る。
「もしもし、おはよ。珍しいね。どうしたの?」
電話は陽一の母親からだったのだ。
話をしながら玄関を出た陽一の後に続いた直人は、家の鍵を閉めると、門外で待ってくれている陽一の元へ向かった。
「分かった。じゃあそうするよ」
話し終えた陽一は、電話をパンツの前ポケットに入れると直人と一緒に歩みを進める。
「お母さんですか?」
「あ、うん。何か用事があるから学校の帰りに家に来いって」
「そうですか」
「あ―あ、今日はバイトがないから、直とユックリ出来ると思ったのに」
「最近、全然実家に帰ってなかったんで、ユックリしてきてください」
「あ、うん。母親気持ち悪いくらいご機嫌だったんだよね。今晩仕事じゃないのも珍しい」
「何か良い話だといいですね」
二人は駅に向って坂道を下って行く。
残暑で未だ朝から陽射しが強く、沢山の日傘が二人の眼下に見えた。
「そう言えば、直ってもう進学決めたの?」
「え?」
「やっぱ美大?」
「あ、うん、多分」
「多分? まだ決めてないの? 宇道イライラしてんじゃない?」
「アハハハ。ご名答」
「美大かぁ ・・俺には全然分からないけど、倍率高いって聞く。あ、でも直なら推薦だよね。幾つも来てるの?」
「あ、まぁ」
「さすがだね。俺に気を遣わないで直にとって最良の道を選んでね。俺は直の事を応援してるからさ。離れ離れになったら寂しいけど、でも、俺達なら絶対に大丈夫だと信じてるから」
「陽さん ・・嫌です! 僕、絶対に離れません。何処にも行きません! ずっとずっとこうしていたい・・陽さんが居ない世界なんて考えられない」
直人は、珍しく声を荒げると目線を足元に落としながら悲しい顔をした。
陽一は直人の頭を抱くと自分の肩に引き寄せる。
「ごめん ・・変な事を言って。俺も直が居ない世界なんて考えたくもないよ。あ――やっぱり今日は早く帰って直と、いちゃいちゃしたい!」
頭を抱えられたままで、直人は落としていた目線を陽一に向けると微笑んだ。
「ダメですよ。お母さんに会ってください ・・アハハハ」
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