[完結]クミホの恋はつづくよ~天狗の恋は神さえ惑わす時~

桃源 華

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第2章:結婚適性試験スタート!

11話:家事スキル診断

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「では、試練開始じゃ」

大天狗の宣言とともに、
くみほの目の前に巨大な
屋敷がそびえ立つ。

「うわっ……この屋敷、
明らかに広すぎない?」

くみほが思わず引き気味に
呟くと、善狐様がふわりと
宙に浮きながら頷いた。

「うむ、
これは試練用の特別仕様。
広いのは、掃除の大変さを
体感してもらうためじゃな」

「何その嫌な仕様!?」

「結婚生活において、
家事は基本」

大天狗が腕を組みながら
続ける。

「食事、掃除、洗濯——
この三つをしっかり
こなせねば、良き家庭は
築けぬぞ」

「だからって、何でこんな
屋敷丸ごと!? いや、
普通に考えてこれ一人で
やるの無理でしょ!?」

「無理かどうか、
やってみればわかる」

そう言うなり、
屋敷の扉がひとりでに
開いた。

くみほは抵抗する間も
なく、中へと押し込ま
れる。



第一試験:「料理」

「さぁ、
料理を作るのじゃ」

くみほの目の前には、
豪華なキッチン。
そして、食材がずらりと
並んでいる。

「ええっと……じゃあ、
とりあえず目玉焼き
でも……」

くみほはフライパンを
取り出し、
卵をコンコン——

バシャッ!!!

「えっ?」

卵を割った瞬間、
殻ごとフライパンに
ぶちまける。

「ええええ!? 
何でこんなに
失敗するの!?」

「これは……
壊滅的じゃな」

善狐様が呆れ顔で
つぶやく。

「ま、まだ目玉焼きだから! 
スクランブルエッグに
変更すれば!」

慌ててかき混ぜるが——

ジュウゥゥ……

「……黒焦げになったぞ」

「いや、何で!?」

「火加減を考えねば
ならんのじゃ」

「そんなこと言われても!」

「……」

しばらく無言で見ていた
くらまが、スッと
フライパンを取り上げた。

「貸せ」

「え?」

くらまは無言で卵を割り、
丁寧に焼き始める。

ジュワァァ……

ほどよい焼き色の、
見事な目玉焼きが完成
した。

「お前……
料理できるの?」

「一人暮らしが長いからな」

「何か……
めっちゃ尊敬する……」



第二試験:「掃除」

「では次、掃除じゃ」

今度は、広大なリビングが
試練の舞台となる。

「掃除なら! ほうきで
掃けばいいだけでしょ!」

くみほは気合いを入れて
ほうきを手に取った。

ザッザッ——バサァァ!!

「きゃあっ!!??」

舞い上がる埃(ほこり)。

「いや、埃撒き散らして
どうするんじゃ」

善狐様が呆れた声を出す。

「えっ、違うの!? 
どうすればいいの!?」

「ちゃんと隅から丁寧に
掃くんじゃ」

「うう……」

くみほは涙目で掃除を
続けるが、やるたびに
余計に汚れる。

「……」

またもや無言のまま、
くらまが掃除機を
取り出し、スイスイと
掃除を始めた。

「えっ、ちょっと待って。
掃除機まであるの?」

「文明の利器は
活用するものだ」

「めっちゃスマート……」



第三試験:「洗濯」

「最後は洗濯じゃ」

「これはさすがに大丈夫! 
洗濯機にポンッと
入れれば終わり!」

そう言って、くみほは
勢いよく衣類を洗濯機
に突っ込んだ。

「洗剤を——
これくらいかな?」

ドバァァァ!!!!

「あっ」

「……入れすぎじゃ」

「泡があふれ出して
おるな……」

「え、えーっと……」

必死に止めようと
するが、時すでに遅し。

「はぁ……もういい」

くらまがボタンを押して、
適切に修正する。



試験結果発表

「うむ……
総合評価、0点じゃ」

「ひどくない!?」

「いや、妥当じゃろ」

「ええ……」

くみほはガックリと
うなだれる。

すると、くらまが
ぼそっと言った。

「……まぁ、努力するなら、
手伝う」

「……え?」

「お前は確かに家事は
ダメだ。でも、学ぶ気が
あるなら、俺が教える」

「く、くらま……」

「おお……これは……!」

善狐様が目を輝かせる。

「天狗の誓いの一つに、
“伴侶には必要なものを
教え導く”という言葉が
ある。つまり、これは——」

「いや、違うから」

くらまが冷静に遮る。

「こいつがあまりにも
ポンコツだから、仕方なく
手伝うだけだ」

「うう……
なんかムカつくけど、
助かる……」

くみほは微妙な顔を
しながらも、くらまの
言葉を思い返す。

(……結婚って、
お互いを補うこと
なのかも?)

ふと、そんな考えが
頭をよぎった。

しかし——

「では、次の試練に進もう」

大天狗の声が響く。

「次は——
ビジネスパートナー
適性じゃ!」

「はぁぁぁ!?!?」

•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆

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