[完結]クミホの恋はつづくよ~天狗の恋は神さえ惑わす時~

桃源 華

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第2章:結婚適性試験スタート!

14話:くらまの秘密の過去

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子育てシミュレーションの
試練を終えたくみほは、
燃え尽きたように
座り込んでいた。

「もう……無理……育児って、
命削る仕事だわ……」

「思ったよりはやれていた」

「そう!? くらまが
全部やってなかった!?」

「まぁな」

さらっと肯定され、
くみほはぐぬぬと唸る。

だが、その時——

「くらま様、少しお時間を」

善狐様が現れ、くらまに
神妙な顔を向けた。

「ん?」

「天狗界からの文が届いて
おります。例の件について
です」

その一言で、
くらまの表情が一瞬だけ
曇る。

「……そうか」

善狐様が取り出した巻物を
開くと、そこには天狗の
古い文字がびっしりと
並んでいた。

くみほは横から覗き込むが、
当然のように読めない。

「何それ?」

「……気にするな」

くらまは巻物を手にし、
そのまま立ち去ろうとする。

——が、

「くらま、待って」

くみほは直感的に、
これはくらまの
重要な秘密だと感じた。

「何か隠してるでしょ?」

「……」

くらまは静かにため息を
つき、視線をくみほに
向けた。

「お前に関係のないことだ」

「関係なくない! 
私、今試練のせいで
半強制的にお嫁さん候補
みたいになってるん
だから!」

「……」

くらまは一瞬、
言葉に詰まったように
見えた。

善狐様は面白そうに
くみほを見つめ——

「ふふ、では私が
ご説明しましょうか?」



くらまの秘密

「実は、くらま様は過去に
婚約を破棄したことが
あるのです」

「えっ!?」

くみほは思わず善狐様を
二度見する。

「くらま、
お前婚約者いたの!?」

「……いた」

くらまは珍しく気まずそう
に目をそらした。

「だが、
婚約は俺から破棄した」

「な、なんで!? 
まさか浮気!?」

「違う」

「なら相手が浮気!?」

「違う」

「じゃあなんで!?」

くらまはくみほをじっと
見つめ、ゆっくりと
口を開いた。

「俺は自由な相手と
結婚したいと思った
だけだ」

「自由な……相手?」

「天狗の世界では、
婚姻は政略がほとんどだ。
俺の婚約も、天狗一族の
結びつきを強めるための
ものだった」

くみほは一瞬、
言葉を失った。

「……ってことは、
くらまは親に決められた
相手と結婚させられそう
だったってこと?」

「ああ」

「でも、それを拒否した?」

「……そうだ」

くらまはゆっくりと頷いた。

「俺は、自分の意思で結婚
する相手を選びたかった」

その言葉に、くみほの胸が
ざわつく。

(……私と、同じ考え……?)

くみほは、幼い頃から
「普通の人間として生きたい」
と願ってきた。
親が決めた縁談や運命に
振り回されたくなかった。

(くらまも……
同じだったの?)

不思議な親近感が生まれるが、
同時に疑問も浮かんだ。

「でもさ……相手の人は、
くらまのこと好きだったん
じゃないの?」

くらまは一瞬だけ目を伏せた。

「……ああ」

「それなら、相手はショック
だったでしょ?」

「そうだろうな」

くらまの表情が曇る。

(あ……この話、くらまに
とってはまだ重いんだ)

そう気づいた瞬間——

「それで?」

善狐様がニヤリと微笑む。

「くらま様の元婚約者が最近、
また動き始めたという噂が
天狗界で流れておりますよ?」

「なっ……!?」

くみほの頭がフリーズした。

「も、元婚約者!? 
え、ちょっと待って、
くらまのことまだ諦めて
ないってこと!?」

「さあ? どうでしょうね」

善狐様は楽しそうに
微笑むが、くらまの表情は
険しい。

「……まさか、また俺との
縁談を復活させるつもり
なのか」

「可能性はありますねぇ」

「ちょ、ちょっと!? 
それってヤバくない!?」

「何を慌てている?」

くらまがふっと微笑む。

「関係ないだろう、
お前には」

「えっ……?」

その言葉に、くみほは
思わず心臓がギュッと
なる。

「そ、そりゃ関係ないかも
しれないけど……!」

(でも……なんか、
モヤモヤする!!)



不安とモヤモヤ

試練は続いているのに、
突然くらまの過去の婚約者
の影がちらつき始めた。

くみほは、自分の中に
生まれたこの感情が
何なのか分からず、
ひたすらモヤモヤする。

「ちょっと、くらま! 
その元婚約者って
どんな人だったの!?」

「……気になるのか?」

「そ、そりゃ
気になるでしょ!!!」

「……言いたくない」

「はあ!? なんで!!!」

「お前が面倒くさいことを
言いそうだからだ」

「なっ……!?」

くみほは言い返そうと
したが、なぜか言葉が
出てこなかった。

(え、私……そんなに
面倒くさいこと
言いそう……?)

「まぁまぁ、くみほ様」

善狐様がくみほの肩を
ポンと叩いた。

「そのうち、わかりますよ。
ふふ……」

その笑顔が意味深すぎて、
くみほの不安はさらに
膨らむのだった—

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