[完結]クミホの恋はつづくよ~天狗の恋は神さえ惑わす時~

桃源 華

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第2章:結婚適性試験スタート!

13話:子育てシミュレーション

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「さて、お主ら。結婚とは
ビジネスパートナーの
ようなもの……
と言ったな?」

大天狗が腕を組み、
威厳たっぷりに頷く。

「そう! だからもう
試練も終わりでいいよね!」

くみほは満面の笑みで
手を叩くが——

バン!

目の前に
巨大なゆりかごが現れた。

「……え?」

「結婚したら子育てもあるぞ?」

「ちょっと待って!? 
それはまた別の問題では!?」

「子育てシミュレーション
開始じゃ!」



妖狐の赤ちゃん、降臨

ボワンッ!

ふわふわの金色の毛並みを
持つ、ちっちゃい妖狐の
赤ちゃんがゆりかごの中で
あくびをした。

「……かわいい……!」

くみほは思わず身を
乗り出す。

「こんな子育てなら
余裕じゃん!」

「ふむ、それでは開始するぞ」

大天狗が
指を鳴らした瞬間——

ギャアアアアア
アアアア!!!!!

「!?!?」

突如、赤ちゃんの大音量の
夜泣きが響き渡った。

「え、え、ちょ、待って!? 
どうすればいいの!?」

「抱っこしろ」

くらまが冷静に言う。

「お、おう!」

慌てて抱き上げるくみほ。
しかし——

バチンッ!

「ぎゃっ! 
しっぽで叩かれた!?」

妖狐の赤ちゃんは
暴れまくり、くみほの
腕から飛び降りる。

「うそでしょ!? 
もう反抗期なの!?」

「お前の扱いが
下手なんだろう」

「むぐぐ……!」

「貸せ」

くらまが赤ちゃんを
軽く抱き上げると、
ピタリと泣き止んだ。

「……は?」

「安心感だろうな」

「ズルくない!? 
なんで!?!?」

「お前がテンパるからだ」

「ぐぬぬ……!」



次なる試練:偏食問題

「さあ、次は食事じゃ」

目の前に妖狐用の離乳食
(※謎の光るおかゆ)が
現れる。

「……これを食べさせれば
いいんでしょ? 余裕余裕!」

スプーンを手に取った
くみほが、赤ちゃんの
口元へ運ぶ。

「さあ、あーん……」

ピュッ!

「ぎゃっ!?!?!?」

おかゆが顔面に
ぶちまけられた。

「えっ、えっ!? 
なんで!?」

「偏食の天才だからな」

大天狗がニヤリと笑う。

「そんなのアリ!?」

「食べないなら無理に
食わせなくていい」

くらまが別のスプーンを
手に取り、おかゆを
自分で食べる。

すると、赤ちゃんは
くらまをじーっと
見つめ——

「くぅーん……」

「食べたそうな顔を
しているな」

くらまが赤ちゃんの
口元へスプーンを
持っていくと——

パクッ!

「うそ!? 食べた!?」

「親が美味しそうに
食べると、子どもも
食べたくなる」

「そんなの聞いてない!!」

「基本だろう」

「むぐぐぐ……!」



最後の試練:いたずら対策

「さて、次はいたずらじゃ」

「待って!? なんで!?
 なんで子どもは勝手に
試練を増やすの!?」

「子育てとはそういう
ものだ」

くみほが文句を
言っている間に——

妖狐の赤ちゃんが瞬間移動。

「え!? いない!?」

「……あそこだ」

くらまが
指さした先には——

部屋じゅうを駆け回る
金色の毛玉。

「待てええええ!!!」

くみほが飛びつくが、
するりとかわされる。

「もうヤダ!!!」

「こういうときは……」

くらまが小さな布を
取り出し、ふわりと
赤ちゃんの上にかぶせた。

すると、赤ちゃんは
ピタッと止まり——

スヤァ……

「……寝た……!?」

「赤ん坊は暗くなると
安心する」

「ちょ、待って!? 
私の試練は!? これ、
くらまの合格試験
じゃない!?」



くみほの感想

その後、くみほは放心状態
のまま、寝ている赤ちゃん
を見つめた。

「……くらまって、
意外といい父親に
なりそう……?」

「なんだ?」

「い、いや、別に……」

(いやいや! これは試練! 
ただの試練! こんなのに
惑わされるな私!!)

だが、くらまの子どもを
抱く姿が妙にハマっていた
ことに、くみほは密かに
動揺するのだった——。

•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆

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